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㉜一方聞いて沙汰するな、的な
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(ビーが、ライガの一族の族長?)
よく状況が理解できていないものの、私はビーの次の言葉を聞き、ライガに裏切られたように感じた。
「正直、公爵令嬢であるジェシカお嬢様が、鍛錬に耐えてここまで強くなるとは思ってなかったよ。でもまあ、チカは神鳥のお告げを受けた人間だし、何か特別な能力があるかもとは期待してたんだ。とにかく、私達はこの5年間、ライガを通してずっとあんたを見ていた」
「……私はずっとみはられてたってこと? あなた達の駒としてモノになるかどうか、もしくは害のない人間かどうかを、監視していたってこと?」「なんと思われてもしかたないけど。まあ、とても注目して見ていたのは確かさ」
悪びれず肩をすくめるビー。
私は、再び強い怒りを感じる。
(……ライガは使える駒にする為に私を鍛錬してたの?! 自分達の都合で私に近づいてきたの?! 私の為に側にいてくれてたんじゃなく、ただ見張って報告してたんだ……!)
私はついライガを睨みつけた。
しかし、ライガはいつもとかわらない。
罪悪感もない。焦る様子もない。
何も言わず、ただいつものように、静かに私を見つめ返した。
(……おのれを信ずるということは、むずかしいことだ。おのれを信ずるということは、ひっきょう他人を信じぬくということでもある)
急に晏嬰のセリフが頭の中に響いた。私の大好きだった宮城谷昌光先生の作品の、主人公の言葉だ。
私は細く長く息を吐きながら目を閉じた。
よく知らないビーの言葉に、何故私は一喜一憂しているんだろう。
私がこの世界にきて5年間、ずっと一緒にいたのはライガだ。専任剣士として、従者として、剣の師として。常に近くにいて、助けてくれたのはライガだ。
なのに、ライガの話も聞かず、ビーの言葉だけで一方的に裏切られたと思い、ライガに対して腹を立てるなんて……。失礼にも程がある。
片方の意見だけを聞いて、物事を判断する危険性はイヤってほどわかってたつもりだったのに。
私は、ライガを信じた。ライガを信ずるに足る人物だと認めたのだ。
一度信じると決めたライガを、よく知りもしない他人の一言で疑うのは、自分自身を疑うのと同じ事。
私はライガを信じる。
私は自分自身を信じる。
(言葉でなく、行動を見るのよ。何を言ったかではなく、どう行動したのか。人間の本質は、その行動にあらわれるわ。それに、ビーの言ってる事が本当だとしても、それがライガが私を裏切ったという証明にはならない。……さっきビーは、私を神鳥のお告げを受けた人間だと言った。つまり、私が本当は神鳥の神託なんて受けてない事実を、ライガがビーには話をしていないって事。彼は私についての全てをビーに報告している訳ではないんだわ……。まさに、一方聞いて沙汰するな、よね)
そもそも、ビーはなぜ、自分の身元を明かしたのか? なぜ今、このタイミングなのか? もし私が彼女だったら、それを今言う目的は何?
「……あ……そういう事か………」
目を閉じていても、気配でビー達4人皆が私を見ていることに気づいていた。
今この瞬間も、彼等は私がお眼鏡にかなう人間かどうかを観察しているのだ。
「……危なかった――。つい、ライガに怒っちゃうとこだった。ビーも意地悪だね。それで? この私へのテストはいつまで続くの?」
私は目を開いて、そう言いながら彼らに笑顔を向けた。
ビーも嬉しそうに笑い、後ろの2人に語りかけた。
「どうだい? チカは挑発にのらず、この通り冷静に理論的に対応できる子だよ。私は仲間に入ってもらうのに賛成だけどね」
「まあな、いいんじゃないか。俺としては、あとは彼女が剣大会でベスト8まで進むことができれば、仲間に迎えるのに異存はない」
「俺もだ。早く、実戦での腕を見たいな」
2人はもはや私を見る事なく、ビーと話し続ける。
ライガは無言だ。
「あの――、私、仲間に入れてほしいなんて一言も言ってないんだけと……」
(そもそも、平和の為の協力って? 一族は、いったい何をしてるグループなの? 勝手に話進められても困るんだけど)
ライガの口元がフッと緩んだ。
「ライガ、どうだい。 チカはベスト8まで残れるのかい? 」
「お前の本音を聞かせてくれ」
「わ、私も聞きたい! 私、彼奴等に勝てる? 」
皆の視線がライガに集まる。
彼は、私を見つめながらこう言った。
「チカ、本気で剣大会に出場する気か? 」
「出る! 二言はない」
「わかった。なら、出て優勝しろ」
「ゆ、優勝……?!」
「ちょっと、ライガ……!」
「さすがに優勝は無理だろ……!」
「お前……本気か?」
4人が一斉に叫んだ。
「チカが出るなら、優勝してもらう。その自信がないなら、出なくていい」
ライガは本気だ。
静かな表情だが、彼の眼光はいつもより鋭い。
(私はどうなんだろ……? 優勝する気概と自信と覚悟がある?)
……正直、自信は全くない。
でも、この状況で、やっぱりやめるという選択肢を選びたくはなかった。
「……わかった。いいわ、出るわよ。剣大会に出て、私は優勝する……!!」
よく状況が理解できていないものの、私はビーの次の言葉を聞き、ライガに裏切られたように感じた。
「正直、公爵令嬢であるジェシカお嬢様が、鍛錬に耐えてここまで強くなるとは思ってなかったよ。でもまあ、チカは神鳥のお告げを受けた人間だし、何か特別な能力があるかもとは期待してたんだ。とにかく、私達はこの5年間、ライガを通してずっとあんたを見ていた」
「……私はずっとみはられてたってこと? あなた達の駒としてモノになるかどうか、もしくは害のない人間かどうかを、監視していたってこと?」「なんと思われてもしかたないけど。まあ、とても注目して見ていたのは確かさ」
悪びれず肩をすくめるビー。
私は、再び強い怒りを感じる。
(……ライガは使える駒にする為に私を鍛錬してたの?! 自分達の都合で私に近づいてきたの?! 私の為に側にいてくれてたんじゃなく、ただ見張って報告してたんだ……!)
私はついライガを睨みつけた。
しかし、ライガはいつもとかわらない。
罪悪感もない。焦る様子もない。
何も言わず、ただいつものように、静かに私を見つめ返した。
(……おのれを信ずるということは、むずかしいことだ。おのれを信ずるということは、ひっきょう他人を信じぬくということでもある)
急に晏嬰のセリフが頭の中に響いた。私の大好きだった宮城谷昌光先生の作品の、主人公の言葉だ。
私は細く長く息を吐きながら目を閉じた。
よく知らないビーの言葉に、何故私は一喜一憂しているんだろう。
私がこの世界にきて5年間、ずっと一緒にいたのはライガだ。専任剣士として、従者として、剣の師として。常に近くにいて、助けてくれたのはライガだ。
なのに、ライガの話も聞かず、ビーの言葉だけで一方的に裏切られたと思い、ライガに対して腹を立てるなんて……。失礼にも程がある。
片方の意見だけを聞いて、物事を判断する危険性はイヤってほどわかってたつもりだったのに。
私は、ライガを信じた。ライガを信ずるに足る人物だと認めたのだ。
一度信じると決めたライガを、よく知りもしない他人の一言で疑うのは、自分自身を疑うのと同じ事。
私はライガを信じる。
私は自分自身を信じる。
(言葉でなく、行動を見るのよ。何を言ったかではなく、どう行動したのか。人間の本質は、その行動にあらわれるわ。それに、ビーの言ってる事が本当だとしても、それがライガが私を裏切ったという証明にはならない。……さっきビーは、私を神鳥のお告げを受けた人間だと言った。つまり、私が本当は神鳥の神託なんて受けてない事実を、ライガがビーには話をしていないって事。彼は私についての全てをビーに報告している訳ではないんだわ……。まさに、一方聞いて沙汰するな、よね)
そもそも、ビーはなぜ、自分の身元を明かしたのか? なぜ今、このタイミングなのか? もし私が彼女だったら、それを今言う目的は何?
「……あ……そういう事か………」
目を閉じていても、気配でビー達4人皆が私を見ていることに気づいていた。
今この瞬間も、彼等は私がお眼鏡にかなう人間かどうかを観察しているのだ。
「……危なかった――。つい、ライガに怒っちゃうとこだった。ビーも意地悪だね。それで? この私へのテストはいつまで続くの?」
私は目を開いて、そう言いながら彼らに笑顔を向けた。
ビーも嬉しそうに笑い、後ろの2人に語りかけた。
「どうだい? チカは挑発にのらず、この通り冷静に理論的に対応できる子だよ。私は仲間に入ってもらうのに賛成だけどね」
「まあな、いいんじゃないか。俺としては、あとは彼女が剣大会でベスト8まで進むことができれば、仲間に迎えるのに異存はない」
「俺もだ。早く、実戦での腕を見たいな」
2人はもはや私を見る事なく、ビーと話し続ける。
ライガは無言だ。
「あの――、私、仲間に入れてほしいなんて一言も言ってないんだけと……」
(そもそも、平和の為の協力って? 一族は、いったい何をしてるグループなの? 勝手に話進められても困るんだけど)
ライガの口元がフッと緩んだ。
「ライガ、どうだい。 チカはベスト8まで残れるのかい? 」
「お前の本音を聞かせてくれ」
「わ、私も聞きたい! 私、彼奴等に勝てる? 」
皆の視線がライガに集まる。
彼は、私を見つめながらこう言った。
「チカ、本気で剣大会に出場する気か? 」
「出る! 二言はない」
「わかった。なら、出て優勝しろ」
「ゆ、優勝……?!」
「ちょっと、ライガ……!」
「さすがに優勝は無理だろ……!」
「お前……本気か?」
4人が一斉に叫んだ。
「チカが出るなら、優勝してもらう。その自信がないなら、出なくていい」
ライガは本気だ。
静かな表情だが、彼の眼光はいつもより鋭い。
(私はどうなんだろ……? 優勝する気概と自信と覚悟がある?)
……正直、自信は全くない。
でも、この状況で、やっぱりやめるという選択肢を選びたくはなかった。
「……わかった。いいわ、出るわよ。剣大会に出て、私は優勝する……!!」
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