お嬢様は、今日も戦ってます~武闘派ですから狙った獲物は逃がしません~

高瀬 八鳳

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㊼超直球で投げてみました

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「ロバート様は、トウゾウ国からお越しと伺いましたが、アクセントがなんだかポノボノ国の方のようですね」

 こちらの世界では、国が違っても、言葉はほぼ共通だ。

 元の世界で言うところの、ラテン語を元にしたフランス語、スペイン語等は、言語が違ってもお互いに理解できるのと同じというか。東北弁、関西弁、九州弁のようなものというか。アクセントは多少違うが、まあとにかく意思疎通はできる。

 ちなみにロバートに、ポノボノ国のアクセントは見受けられない。ちょっと引っ掛けてみた。

「そのような事を言われたのは初めてですよ、ジェシカ様。私は生まれも育ちもトウゾウです。だが、色んな国に滞在してきましたから、アクセントも混ざっているのでしょう」

 シレッと笑顔のまま、ロバートはそう応えてくる。よほど大きく揺さぶりをかけないと、本性は出てこなさそうだ。

(もう、いっそ、派手にやっちゃって、今晩中にケリをつけようかな。騒ぎになれば、皆こちらに集中して、その分ライガというかアーシヤが逃げやすくなるしね)

 私はオールノット公爵の方へ顔を向け、声をかけた。

「オールノット公爵様、わたくし、本音全開でまいる事に致します。ご迷惑をおかけしましたらごめんあそばせ」

 最初はダンディで余裕たっぷりに見えた公爵だが、今は困ってる大型犬みたいな表情になってて申し訳なく感じる。

「そんな訳でロバート様。あなた様は本当はどこのどちら様で、何の目的でここにいらっしゃるの? 誰に頼まれて、我が国の国王を弑するおつもりですの?」
「……ハアーーっ?! な、なんだと……? 」

 ロバートが大声を上げ、思わず立ち上がった。

 さすがの彼も、私のこの超直球には度肝を抜かれたようだ。ポーカーフェイスが崩れ、驚愕と狼狽の表情をあらわした。

 私は彼から視線を外さず、事実と虚実を混ぜ合わせながら澄まして答える。

「往生際が悪いわ。ロバート様、明日のあなたの計画はとっくに露呈しておりますの。まあ、まだ黒幕はこちらにもつかめておりませんが」

 ロバートは一瞬の放心状態の後、すぐさま態勢を立て直した。まだ目には憤りと怒りが見えるが、口元は笑いを貼り付けた。さすがだ。

「はは……ハハハハハッ……。何をおっしゃっるかと思えば。ジェシカ様、冗談にしても、度が過ぎますぞ」
「冗談で申したつもりはございませんが、ロバート様にとっては冗談にした方が都合がよろしいのかしら?」
「このような虚言を……嘘八百を並びたて、私の事を疑うなど、いくら公爵令嬢とは言え見過ごせません。これ以上は許容できませぬぞ、御令嬢」

 ロバートは引きつった笑顔で、オールノット公爵をチラ見しながら、私に話し続ける。

「そうですわね。もし、全くの嘘であれば、私くしは名誉を貶めた罪でロバート様に訴えられてもおかしくないですわ。でも、心配ご無用です。私くしは、その事が事実であると知っておりますから」

 私はオールノット公爵に話しかけた。

「オールノット公爵様、、ロバート様を明日の夜まで、公爵家の部屋に軟禁して下さいませ。万が一、何も起きなければ、私くしは公爵令嬢として、然るべき方法でロバート様にお詫びを致しますわ。公爵様にご迷惑はおかけしません。まあ、謝ることはないかと存じますけど。そうそう、明日の朝一番に国王に使いを出すことをお忘れなきよう。国外からの干渉と国内の謀反の疑いにより、とりあえず1週間の行事の中止と国境の封鎖、そして王族の皆様の安全対策の強化をされますようにと。これは緊急事態ですから」
「ジェシカ様!! いい加減になされよ! 私はトウゾウ国からの使者として明日は国王様への謁見を許されているのだ! あなたはいったい何の権限で……」
「オールノット公爵様。 私くしの言葉か聞こえましたか?」

 私はロバートを完全に無視して、オールノット公爵に話し続ける。公爵は私とロバートの両方の顔を見比べながら、声を出せずにいる。

「わ、わたし……は……」
「オールノット公爵様!! これはいったいどういう事なのですか?! この小娘は何なのですか?」
「コムスメ……ね……ナルニエント公爵令嬢の私くしを小娘呼ばわりですか。ロバート様、貴族らしからぬお言葉遣いですわね」

 ニヤリと笑いながら、ドスの効いた声でロバートを睨みつける。

「い、いや……これは、つい……。混乱してしまい……」
「そうですわ、ほど、ですもの。仕方ありませんわね」

(まあ、そこはねーー。私も同類だから、よくわかるけど。つい、いつもの言葉遣いで喋っちゃいそうになるものね)

 私は無言で立ち上がり、扉を開けて、オールノット公爵に向かって大きな声でこう告げた。

「さあ、オールノット公爵様。あなた様の騎士に命じて下さいませ。ロバート様を部屋にお連れし、一歩も城の外へ出られぬよう、誰とも接せぬよう、お守りするようにと」
「いい加減にしてくれ!! 私はオールノット公爵の賓客なのだぞ!!」

 緊迫した雰囲気が漂うなか、睨み合う私とロバートをしばらくみつめた後、オールノット公爵は諦めたかのように大きなため息をついた。

「すまない、ロバート。今夜一晩だけ、窮屈だろうが部屋で我慢してくれたまえ。明日になれば、今回の事はきちんと詫びを入れるので、今宵だけ、な」
「オールノット公爵!! 私よりその娘を信用するというのか? これは許されることではないぞ!!」
「ロバート様、落ち着いて下さいませ。あなた様はオールノット公爵様と旧知の間柄でしょう? ここは、公爵様のお顔を立てて、今宵一晩、大人しくお部屋でお過ごしくださいな。明日にはあなた様の潔白が証明され、私くしは公式に謝罪致しますのよ。あなた様に、隠された裏がないのであれば、さほど大騒ぎする必要はございませんわ。違いまして? 」

 うっすらと笑顔を貼り付けた私と違い、私を睨みつけるロバートからは、貴族らしからぬ荒々しい怒りと抑えきれない攻撃オーラが感じられた。

「聞こえたか? 騎士達よ。ロバート様を今すぐ彼の部屋に案内しろ。明日、私が命を出すまで、誰もロバート様と接する事は禁じる。また部屋から出られぬよう、しっかりお守りするように! 」
「はっ。かしこまりました」

 オールノット公爵の命令に、4人の騎士達がロバートを囲みこんだ。
 忌々しそうに私をみながら、ロバートは部屋を去った。

 オールノット公爵は顔を両手で覆い、再度大きくため息をついた。

 私はピアノの前で、このために選んだ着脱しやすいドレスを脱いだ。簡易の鎧代わりのコルセットの上に薄手のTシャツ、下にはいつもの練習着の踝まであるパンツをはいてきているのだ。腰に巻き付けていた長袖のシャツをTシャツの上に羽織り、ヒールの高い靴を脱ぎ、パンツのポケットに入れておいた薄手の布製の靴を履く。
 持参した短剣、鞭に、先程騎士から強奪した借り物の剣を腰にセットし、いつでも出陣可能な状況に整えた私を見て、より一層顔を白くするオールノット公爵に、私は声をかけた。

「公爵様、さあ、これからが本番ですわよ」
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