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第二章
2-7 論理的思考を鍛える課題をだされているような
しおりを挟む「あの、ヌンジュラ様。……正直にお伺いしますね。いったい何の目的で、我が国へお越しになり、私と婚姻を望まれたのですか? 他国の、一介の公爵令嬢との婚姻など、ヌンジュラ様にメリットはありませんよね。神鳥の神託も大昔の事ですし、今さらじゃないですか?」
私は本音で勝負に出た。
あらためて、彼の顔立ち、表情、声の強弱と高低、立ち居振る舞い、発した言葉を検証してみたが、心の底からの悪人だとは思えなかったのだ。
かと言って、善人かどうかはわからない。
何となく、この人には直球で問いかけて、揺さぶって、本音を引き出すべきだと判断した。
「ほう、……なるほど。それがあなたの本性か? 先程は、典型的な貴族令嬢にみえたが、さすがは神鳥の神託を受けた方だ。おもしろい」
「あなたこそ、帝王の甥でいらっしゃるのに、お一人で他国を訪ねるなんて、普通じゃありませんよ。どういう意図で、そして、なぜ今、我が国いらっしゃるのか、本当の理由をお聞きしたいですね」
「知ってどうする?」
お前ごときが理由を知ったところで、何もできまいという、馬鹿にしたようなもの言いに、イラッとした。
「ハァ、もう少し賢い方かと思いましたが、残念ですわあ」
「何だと?」
「だってそうでしょう? どんな理由があれ、あなたは我が国にやってきた。何らかの目的がある訳ですよね? そこに、私っていう、使えそうな駒が目の前に現れたんですよ。形式的でなく、本音で話せそうな貴重な相手。手懐けて味方にするのが得策なのに、それを利用しないなんて、私には信じられなくって……」
完璧な淑女の笑顔をつくりながら、挑発してみた。
ゴージャス氏は、一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに同じような貴族の笑みを浮かべた。
「……なるほど。そうだな、あなたの言う通りだ。いいだろう、あなたの質問に答えよう。ただし、ただ答えるだけでは面白みがない。私とナゾナゾ勝負をしないか?」
「……はい? な、ナゾナゾ?」
いや、ちょっと待ってください。
どういう事?
「互いに質問を3つするのだ。ただし、条件がある。3つの質問のうち、2つには正直に答えること。つまり、2つは正しい情報提供を行い、一つは嘘をついてもよい、という事だ。質問については、なんの制限もない。どうだ?」
そう言って、彼は嬉しそうに本気で笑った。
どうも、この状況が楽しくて仕方ないらしい。
(とりあえず、この人が本当に王族なんだって事がわかった。庶民は、こんなまわりくどいことしないもんね。時間も財政的にも、余裕があるのは確かだわ)
そう考えて、ホテル時代の事を思い出した。その昔、研修でだされた課題の思考ゲーム。
登場人物が、それぞれ台詞を言う。その内容を読んで、例えば3人の内、噓つきは誰だとか、10人の内、本当の事を言ってるのはどの人か、とか、そんな問い。
理論的な思考力を必要とされる。
そういうゲームには、ひっかけがつきものだ。
そして、ゴージャス氏が本当に正直に答えているのかどうか、正解を知らない私にはわかりようがない。
だとしたら、どれが正直な答えかを考えるより、私の質問に対する彼の反応を見る事に注力した方が、得策かもしれない。
つまり、彼の体が正直に反応するような、意外性のある驚きを与える質問をする必要がある。
言葉では嘘をつけても、体の反応までは、なかなかコントロールできないものだ。
「わかりました。ナゾナゾ勝負、やりましょう。どちらから、質問しますか?」
「あなたに選択権を差し上げよう。質問は一つずつだ。先に質問したいか? それとも、質問されたいのかい?」
「ありがとうございます。では、ヌンジュラ様から先に質問していただけますか?」
「いいだろう」
私達は互いの顔をじっと見ながら、言葉を交わす。
「そうだね、では、私からあなたへの、最初の質問だ。あなたは、本当に神鳥の神託を受けたのか?」
うわっ! ……そこ、ついてきますか。んーー、無表情を維持したかったけど、ちょっと表情筋がピクついたのが、自分でもわかった。
「本当です。私は、神鳥の声を受け取りました」
「そうか、本当なのだな。神鳥はどのように聞こえのだ?」
「それは、2つ目の質問ですか?」
「いや、これは質問ではない。なかなかに手厳しいな」
「全ての質問が終わって、信頼関係が築けたら、いくらでもお答えしますよ。では、私からの一つ目の質問を申し上げます」
「いいだろう」
余裕の表情で目を細めた彼に、私は温めていた質問をぶつけた。
「ヌンジュラ様。コフィナさんとピーターソンさんは、あなたの配下ですか?」
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