聴かせてよ愛の歌を…翔と華那恵のラブストーリー

かのん

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第二部第二章〈夏休み編〉act.05

テニス部~夏合宿1

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グリフォの夏合宿の後、翔は夜のほとんどを
バイトとライブに費やしていた。

昼間はテニス部の練習に顔を出していた。

「は~い」

 パコーン

「ほ~い」

 パコーン

「は~い――きゃっ!?」

 スカッ

「いや~ん。空振りしちゃった~」

「……休憩時間か?」

(なんかなごみすぎてるような?
 ……まあいいや。
 とりあえず瑠璃ちゃんを捜して――)

翔がコートに入ると、女子部員達が
ゆるーい練習をしていた。
翔は瑠璃の姿を探し、少し離れたベンチ
のところで部活の用意をしている彼女を
見つけ駆け寄っていく。

「…………発見」

 タタッ…

「瑠璃ちゃーん」

「あっ、翔せんぱい。
 やっと来てくれたです」

「へ?」

翔が声を掛けると瑠璃は少し寂しそうに
言ってきた。

「瑠璃、毎日せんぱいが来るの待ってた
 です。でも、今週に入って、一度も
 来てくれなかったです。
 なにしてたですか?」

「な、なにってそりゃ合――」

(グリフォの合宿に行ってたって素直に
 言うの、まずくない?
 聞き方によっては、
 俺がそっちを取ったってことに
 なるわけだから。
 瑠璃ちゃん、傷つくかもしれないし)

「……なに、してたですか?」

翔が返事に詰まっていることで瑠璃の
眼差しが疑惑の色に染まっていく。

「う、うん。このところ…
 ハードスケジュールで、なかなか時間が
 とれなかったんだ。
 ちょっと体調を崩したって
 いうのもあるし……」

「えっ? そ、そうなんですか?
 ひょっとして瑠璃のせいで……?」

慌てて言い訳を考え返事をした翔に
詰め寄り、翔の腕を掴みながら
心配そうに聞いてくる瑠璃。

「ち、ちがうよ。腹出して寝てたのが
 悪かったみたいで。
 それに体調のほうはもうよくなった
 からさ。だから今日は瑠璃ちゃんの
 練習を見ようと思って」

「でも翔せんぱい。
 無理しないでくださいです。
 瑠璃せんぱいが忙しいの知ってるです。
 瑠璃のせいでせんぱいが倒れちゃったら
 瑠璃たえられないですぅ~」

「だ、大丈夫だよ。
 そこまでひどくなかったし。
 それにもう、全然元気だから」

「よかったです。あっ、翔せんぱい。
 今度疲れたときは、
 ぜひ瑠璃に言ってくださいです。
 看病してあげますです」

「ほんと? 嬉しいな」

「任せてくださいです。
 瑠璃、おかゆを作ってあげますです。
 それをア~ンで食べさせてあげて……
 …えへへ」

「う、うん…そのときは、よろしくね」

「はいです。えへへへ……。
 あ、瑠璃、準備してくるです」

瑠璃は翔にペコリと頭を下げて
コートの方に走っていった。

「瑠璃ちゃんの手料理か…
 美味しそうだな…」

「せんぱい…。
 それは止めた方が良いですよ?」

「えっ香織ちゃん?」

翔がボソッと呟きながら瑠璃を見送って
いると、突然後ろから香織に声を掛け
られた。

「や、止めるって…なにが?」

「ごめんなさい。
 近くにいたから二人の会話が
 聞こえちゃたんです。
 それは瑠璃の手料理の事です」

「えっ?瑠璃ちゃんの手料理?」

「はい。…瑠璃の手料理は…人の…
 人間の食べれるものではないです。

 瑠璃は…独自の味覚を持っていて…
 あの子の作る料理は…食べた人全てを…
 破壊する料理です。

 中学の家庭科で…あの子が作った料理
 を食べた人が、瑠璃以外、次々と倒れて
 いって…救急車や警察が来て大騒ぎに
 なった事があるんです。

 警察の人が…残ったその料理を口にした所
 …その人が倒れて…毒が入っている可能性
 があると言う事で、検査官が調べても
 当然入っている訳もなく…ただ…味付けが
 凄まじい料理である事が判明しました…」

「…………」

香織は淡々と話を続けていた。
その時の状況を思い出しているのか顔色が
青くなっているのが解る。
その話を黙って聞いている翔。

「あの子の料理の凄い所は…あの子自身は
 その料理を食べてもなんでもないんです。
 ただ、それを食べた人達は意識が遠のき…
 冥府に旅立とうとします。

 そして、何とか現世に踏み止まっても
 何らかの影響を受けます。

 ある者は味覚を破壊され…
 ある者はその料理と同じ物を見るだけで
 変調をきたし…最悪、台所に立てなく
 なる人もいました。

 まあ、数ヶ月から半年で元に戻れたん
 ですけど…
 あの子の所為でその年の家庭科は料理の
 授業が一切行われなかった位です。

 そんなあの子についたあだ名が
 冥府の神『オシリス』です…」

「…そんな…事が…」

「せ、せんぱい。絶対に瑠璃の手料理は
 食べないで下さい。

 もし食べたら…死んじゃいます…」

香織は青い顔をあげて翔の腕を掴み
心配そうな眼差しで訴えてきた。

「解った。絶対に食べないようにするよ」

「約束ですよ?翔せんぱいに何かあったら…
 私、私…」

「心配しなくて良いよ? 約束は守る」

「!?」

翔は香織の頭に手を載せてよしよしと
撫でながら返事をした。
その思いがけない翔の行動に驚き身体を離し、
照れながら自分の頭におもわず手を載せる
香織であった。
  
「じゃあ、私は用意がありますから…」

香織は頬を赤く染めて慌ててコートの方に
走って行った。

「瑠璃ちゃん…ゴメン。
 瑠璃ちゃんのおかゆ……
 食べたいけど、食べれない。
 俺の心境、わかるよな?」

翔は遠くを見ながら呟いていた。




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