聴かせてよ愛の歌を…翔と華那恵のラブストーリー

かのん

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第二部第二章〈夏休み編〉act.06

テニス部~夏合宿2

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「ふー。疲れた…。」

桜庭とのコート練習を終えて、コート脇
のベンチに座る翔。

「せんぱい。お疲れ様です」

そこに香織が良く冷えたスポーツドリンク
を持って近づいてきた。

「せんぱい。 これ飲んでください」

「おっサンキュー香織ちゃん」

翔はそれを受け取り飲み始めると香織は
翔の隣に座り、自分のドリンクを飲み始める。

「せんぱい。
 今日もありがとうございました」

ドリンクを飲み干し翔の方に身体を
向き直してお礼を言ってくる香織であった。

「えっなにが?」

「部長の練習相手をしてくれて…
 私、部長が全力でプレーしているのを
 久々に見ました」

香織は嬉しそうにそう言って、
コートの端に視線を移す。

その先にはコートの上で寝転がって
呼吸を整えている桜庭の姿があった。

「まあ、試合じゃないからなぁ…
 サーブは俺が中心だったし…
 まあ後半は桜庭もだんだん反応が
 追いついて返球できるように
 なってたからなぁ…」

「はは。せんぱい最後の方はけっこう
 本気(マジ)になってましたよね?」

「やっぱり得意なサーブを返されると
 悔しいからな…つい、いやらしい球を
 返しちゃった…」

香織が笑いながら聞いてくる質問に、
翔はテヘッと言う感じで笑いながら
返事をした。

「せんぱいが何球か返したあの球
 凄かったですよね?
 追いついてもあの部長がまったく
 返球できなかった…」

「ああ、あれね?
 まあ普通じゃ返せないかな?」

「せんぱい。あのレシーブ…
 私に教えてくれませんか?」

「えっ?あの高く跳ね上がるレシーブ
 のことか?」

「ハイ。あの大波のように跳ね上がる
 レシーブです。私もあのレシーブを
 打ってみたいんです」

「う~ん。どうしようかな?」

「せんぱい!お願いします!」

香織は翔の腕を掴みながら真面目な顔で
お願いしてきた。
翔は少し困った顔で返事をする。

「いや、あの…教えるっていうか
 ちょっと難しいかなって…」

「私じゃ無理なんでしょうか?」

「香織ちゃんだから言うけど、
 あのレシーブは…
 限られた条件でしか発動しない
 レシーブなんだ」

「えっ?」

「発動条件はツイストサーブと
 スライスでの返球なんだよ」

「そ、それって…」

「うん。つまり…俺のツイストサーブを
 桜庭がスライスで返してくれて…
 初めて条件が揃うんだ…」

「じゃあ…あのサーブが打てないと…
 ダメって言う事なんでしょうか?」

「そうなんだよ。でも、まてよ?
 一緒に遊んでた友人が何回か
 成功したな?と言う事は、
 普通のフラットサーブでも条件は
 揃うのかな?
 だったら可能かもしれない。

 とりあえず、
 やり方と型を教えようか?」

「本当ですか!? だったらぜひ!
 お願いします!!」

香織は喜びながら翔の腕に抱きついて
お願いしてくる。

香織の胸が翔の腕にしっかり
当たっていた。

「あーー!!
 香織!なにしてるですか!!」

「あ、瑠璃…」

その時、二人の正面に瑠璃が
怒りながら立っていた。

「香織!!早く翔せんぱいから
 腕を離すです!!
 翔せんぱいは瑠璃の翔せんぱいです!!」

「瑠璃のじゃないもんね!
 テニス部に来ている時はみんなの
 翔せんぱいだし!」

香織は瑠璃を挑発するように俺の腕に
頬を摺り寄せながら返事をする。

「ダ、ダメですーーーー!!
 翔せんぱいはーーー
 瑠璃のですーーーーー!!」

瑠璃は怒りながら香織の反対側に座り、
翔の空いている腕を掴み叫んでいた。

「私は翔せんぱいに抱きつきたいから
 抱きついているんだし、
 瑠璃には関係ないじゃない!」

「瑠璃も抱きつくです!!」

「なら、私ももっと!!!」

 ぎゅうっ
 ぎゅうっ

「…………」

瑠璃も翔の腕にしがみ付く様に
抱きついてきた。
それを見た香織がさらに強く抱きつく。

翔の両腕には二人の少女の胸の膨らみが
しっかりと感じられていた。

翔は諦めたように黙っていた。

翔を挟んできゃいきゃいと
叫びあっている香織と瑠璃。
瑠璃は真剣に取られまいと
必死の表情で怒っているが、
瑠璃とは対照的に香織の表情は
どこか嬉しそうであった。

「私なんか翔せんぱいにレシーブを教えて
 もらうんだから、ねえせんぱい!」

さらに追い討ちを掛けるように
甘えた表情で翔の顔を見上げて
言って来る香織。

「……!」

(か、香織ちゃん…君は…)

驚いて思わず香織の顔を見つめる翔に
今度は瑠璃も身を乗り出して言ってきた。

「あーずるいです!
 それなら瑠璃にもサーブを
 教えるですーーー!」

「残念でしたーー!
 翔せんぱいの身体はひとつしか
 ありませーーん!」

「香織だけずるいです!!
 瑠璃も!瑠璃にも教えるですー!!」

「わかったわかった。
 じゃあ、二人に同時に教えるよ?
 二人共それで良いよね?」

翔が諦めたように二人の顔を
交互に見ながら伝える。

「せんぱいが良いなら、
 私はそれで良いです」

「瑠璃もわかったです…」

香織は嬉しそうに微笑み、瑠璃は少し
不貞腐れた感じで返事をしてきた。
二人は返事をした後も翔の腕に
しがみついたままであった。

「あれれー、三角関係??」

「「部長!?」」

二人が驚いて顔をあげると
そこには桜庭が立っていた。

「なんだよ桜庭?
 その『三角関係』って」

「いや、なんか『二人に教える』って
 聞いたのと、二人が翔を取り合って
 いる感じがして…
 なんとなく言ったんだが…」

「取り合うって…」

鼻の頭をポリポリと掻きながら
答える桜庭に呆れたように言う翔。
そんな翔の言葉を遮るように香織が
翔の腕を強くしがみつきながら伝える。

「そうです! 私は翔せんぱいを瑠璃と
 取り合ってるんです!
 部長は邪魔しないで下さい!」

しがみついている香織の手が
震えているのが伝わってきた。

「そ、そっか。邪魔して悪かったな浅倉」

「ぁっ…」

桜庭が香織に謝りながらその場を去ろう
とする。香織はそんな桜庭を見て
小さな声で呟いた。

「ぶ、部長の…ばかぁ…」

香織の表情が泣きそうになっていた。

「あっ桜庭!」

「なんだ翔?」

「香織ちゃんにお前のフラットサーブを
 教えてやってくれないか?」

「えっ?」

「俺が?浅倉に?」

翔の提案に驚き顔を上げる香織。
桜庭も意外そうな顔をして
翔を見下ろしていた。

「ああ、フラットなら俺より桜庭のサーブの
 方が彼女に合うような気がして…。
 俺のサーブは独特のクセがあるからさ…」

「まあ確かに…。
 翔のフォームは独特だからな?
 浅倉はそれと対照的な綺麗なフォームを
 持っているし…」

「だろ?」

「わかった。じゃあ俺が浅倉にサーブを
 教えるよ」

「香織ちゃんもそれで良い?」

翔が微笑みながら香織の顔を見て聞くと、
香織は少し頬を紅く染めて言って来た。

「べ、べつに、サーブは翔せんぱいじゃ
 なくてもかまわないし…。
 でもわ、私がぶ、部長に…教えて
 欲しいなんて…た、頼んだわけじゃ…
 無いんですからね…」

「あ、うん。
 まあよろしく頼むよ浅倉」

「香織ちゃん…」

(ツンデレだ…ツンデレ様が降臨された…。
 そして桜庭…。
 なぜお前が『よろしく…』なんだ?
 良いようにコントロールされてるぞ?)

「香織…ツンデレです…」

目の前で照れて頭を掻きながら答える桜庭
に少し嬉しそうにそれを見つめる香織。

翔が呆れて二人を見ていると翔だけに
聞こえるかどうかの小さな声で
瑠璃が呟いていた。




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