聴かせてよ愛の歌を…翔と華那恵のラブストーリー

かのん

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第二部第二章〈2学期編〉act.28

-決闘-~戦う理由は我にあり…3~〈-YOBIDASI-〉

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〈-決闘-〉
 ~戦う理由~

手紙の指示どおり、
翔は第二剣道場までやってきた。

ここに来るまでにシャツを脱ぎTシャツ
一枚になって身体を十分に解してきた
翔であった。

シャツを手に持ちながら剣道場の入り口で
中の様子を伺う翔であった。

(おそらく。中条は用意周到に準備を
 しているに違いない。
 剣道場の中には、ヤツの手足となる者が
 多数配置されているだろう)

翔は扉を音を立てずにそっと開き出入り口
付近を警戒しながら中に入っていった。

「あれ? 
 誰もいない…いや…奥に誰か座っている」

しかし、翔の考えとは違って、
道場の入り口付近には人影はなく…。

出入り口から右手奥の方、つまり神棚の
ある正面で神棚に向かって姿勢を正し
正座している胴着姿の少女が見えた。

翔はゆっくりと道場の中に入っていった。

「よくきたな!」

翔が道場の中央辺りに来た時、その少女は
ゆっくりと立ち上がり頭の後ろで
束ねているポニーテールを揺らしながら
振り返って翔の顔を睨みつけながら
言ってきた。

「へっ?……菜緒ちゃん!」

剣道場で待っていたのは、光一ではなく
菜緒だった。
その事実におどろく翔。

「おまえに「ちゃん」付けで
 呼ばれる筋合いはない」

菜緒は柳眉を吊り上げきっぱりと言い放つ。

菜緒の手に握り締められている2本の竹刀が
ワナワナと震えていた。

しかし、翔はそんな菜緒の様子にまったく
気付かず、自分の顎に手を当てて考え込む。

「なんで、ここに……?
 そ、そうか、剣道部だもんな。
 部活、今から?」

ブツブツと独り言のように呟く翔に菜緒は
さらに眉を吊り上げて翔の顔を睨み文句を
言って来た。

「なにわけのわからないことを……
 ちゃんと「果し状」出しただろ?」

「果し状?」

菜緒に言われた言葉を繰り返し、翔は
腕を組み「う~ん」と唸るように
考え始める。

翔の頭の中には幾つものクエスチョン・
マークが浮かび上がっていた。

(俺、果し状なんか貰ったことあったっけ?
 手紙というカタチでなら、ついさっき中条
 からのを貰ったばかりだけど……)

その時ポンという音と共に頭の中に浮かんで
いたクエスチョン・マークの一つが
エクスクラメーション・マークに
変り次々と変化していく。

「え? あれ、菜緒ちゃんから?」

翔はポカンとした表情を菜緒に見せて聞いた。

菜緒はげんなりとした表情を浮かべ
翔に吐き捨てるように言ってきた。

「だから「ちゃん」付けはやめろ。
 …菜緒でいい」

「じゃあ。
 この「第二剣道場に来い」っていうの…
 菜緒ちゃ――菜緒、からなのか?」

翔は手紙を菜緒に見せながら確認するよう
に聞いた。

菜緒は小さく頷き呆れるように聞いてきた。

「そうだ。 誰からだと思ったんだ?」

「それは中――……いや、なんでもない」

菜緒に聞かれ、中条の事を正直に答えよう
とした翔は慌てて口元を抑え誤魔化した。

菜緒はジトッとした視線を翔に向けてから、
小さく溜息を吐き出す。

そして翔の前に持っていた竹刀を一本置いて
から体を起こして一歩下がり翔の顔を睨み
つけて話しかけてきた。

「とにかく。私はおまえみたいな軟派野郎
 に助けられたのが、どうしても納得
 できない!
 その竹刀を取って私と決闘しろ!」

持っている竹刀の剣先を翔に向けて来る
菜緒であった。

「決闘? …俺と菜緒が? …やれやれ…」

思ってもいなかった菜緒の話にフーと
ため息を付く翔であった。

「さあ、拾え!」

竹刀に両手を添えて正眼に構え、
翔に向かっている菜緒。

翔は竹刀を拾い立ち上がり
正面に構えながら言った。

「しかたないな…。
 俺には決闘する意味がないんだけどな…」

「うるさい! お前になくても、
 私にはあるんだぁぁぁ…!!」

構えを取ってもやる気のない口調の翔に
怒り、叫びながら翔に向かって打ち込んで
くる菜緒。

翔はブツブツ言いながらも菜緒の決闘に
応じていった。

「オリャァァァァ!」

 バシッィ!
 ビッシィッ!
 バッシッ!
 ビシッィ!

 ・
 ・
 ・

「オリャァッ!
 メーンッ!
 コテェーッ!」

 バシッバシッィ!
 ガッガガッ!
 ビッシィッ!

「ウリャァァッァア!
 ドォオォォオゥッ!!」

 カシィッ!
 カガッガッバッシッ!
 ビシッィ!
 バッバシッ!!

十数分程であろうか、菜緒の打ち込みが
続いていた。

翔は素早く繰り出される菜緒の打突を全てを
自分の持つ竹刀で受け止め流している。

菜緒は汗だくになりながら、
翔に攻撃を続けていた。

菜緒は翔から少し距離を取り
攻撃の手を休ませた。

正眼に竹刀を構えたまま
両肩で大きく息をする。

「ハア、ハア、ハア、
 お前…なぜ…打ち返してこない!?」

菜緒は呼吸を整えながら何時まで立っても
攻撃に転じてこない翔に、しびれを切らして
聞いてきた。

「あのなぁ…。なんども言ってるだろ?
 俺にはと戦う理由が見当たらないんだ…。
 無意味なことはやめようぜ?」

翔は竹刀を両手で持ち変則的な正面斜め
左前に構えたままに話しかけ、心の中
では別の事を考えていた。

(剣道を知らない俺が下手に攻撃すれば
 必ず隙が生まれる)

翔は「それならば」と思い、防御だけに
徹していた。
――と言えば聞こえはいいが、打ち返さ
なかったのではなく打ち返せないでいたのだ。

菜緒の剣撃のスピードに今の翔はついていく
のがやっとだった。

翔は竹刀を握っている手首…自分の両腕に
巻かれているサポーターをチラリと見て
思った。

(まいったな? こんな事なら…リストと
 アンクルを外しておくべきだった…)

翔の両足首にも手首と同じサポーターが
巻かれていた。

そして翔は目の前で正眼に構えている
菜緒の佇まいを見て思った。

(菜緒の構え…。綺麗な…隙の無い構えだ。
 だけど…なんとなく…動きがギクシャク
 している感じがする)

菜緒の鋭い踏み込みは、翔が全力で向かわ
なければいけないほどのかなりのレベルに
値する。

しかし翔は、どこか菜緒の動きが
おかしいと感じていた。

「待ってばかりいないで、
 そっちからきたらどうだ」

少しの時間で呼吸を整え終わった菜緒が
目を細め眉を吊り上げて翔に向かって
言ってきた。

竹刀を構えなおすために一歩前に足を
出した時、菜緒の顔が一瞬歪んだのを
翔は見逃さなかった。

「菜緒……おまえ、足怪我してるだろ?」

「な……」

翔に足の怪我の事を指摘され
言葉を失う菜緒。

翔はその菜緒の反応を見てフーと大きく
息を吐いて呟く。

「……やっぱりな」

「どうして……?」

菜緒は動揺した心をスグに立て直し
翔の顔を睨みながら聞いてきた。

「確かに…菜緒の動きは目をみはるほど
 速いけど、ほんの少しだけ動きが
 ぎこちない感じがした。
 左足を…かばっているせいだ…」

翔の正確な指摘を黙って聞いている
菜緒であった。

「…………」

「なあ、やめようぜ?
 怪我が悪化したらどうすんだよ」

翔は構えを解き、竹刀を下に降ろして
菜緒に気持ちを伝える。

菜緒は顔を真っ赤にして叫んできた。

「う……うるさいっ。
 これぐらい、ちょうどいいハンデだ!」

「菜緒?」

感情を爆発させるような菜緒の叫び声に
思わずたじろぐ翔であった。

「得意な剣道なら、怪我をしていても
 おまえなんかには負けない!
 おまえが攻撃してこないなら、
 それでもいい!
 当たるまで打ち込むまでだっ!!」

菜緒は叫び声を上げながら竹刀を握りなおし
憤怒の形相で翔に向かって飛び込んでくる。

「お、おい――」

竹刀を振り上げ上段に構え大きく踏み込んで
くる菜緒に対応しようと翔は竹刀を上に
持ち上げようとして止めた。

「キエェェェーッ」

バァシィィィー!!

気合の声と共に振り下ろす菜緒の鋭い
面打ちが、あっけなく翔の頭に入った。

「えっ!?」

今まで受け止められていた自分の打突が
翔の頭に決まり驚く菜緒であった。

その場で跪く翔の額に一筋の血が
流れ落ちていく。

翔は竹刀を床に置いて、菜緒の剣先を
その手で握り締める。

「いってぇぇ!…菜緒…これでいいだろう?
 お前の勝ちだ!」

そして驚いている菜緒の顔を見上げながら
言った。

「なっ…!?
 おっお前!馬鹿にするのか?」

「菜緒!ちょっとこっちに来い!」

「えっ!?」

翔は立ち上がりながら、激怒する菜緒の
手を掴み自分の方に引き寄せその身体を
抱き上げる。

「なっ、なにをする!はなせ!」

「静かにしろ!おっこちるぞ!」

顔を真っ赤にしながら翔の腕の中で暴れる
菜緒を怒鳴りつける翔。

「!!」

菜緒は言葉を飲み込み翔の腕の中で
大人しくなった。

翔はその菜緒の顔を真剣な顔で見つめ
静かに語った。

「……悪い、大声出して。
 なあ…菜緒?…お前…武道家だろ?
 だったら、自分の身体は大事にしろ!」

「あっ!」

その一言で菜緒は自分の口に手を当てて
塞ぐ様な仕草を見せる。

翔は道場の壁際まで歩いていき、
膝を立てて菜緒を静かに降ろし
床の上に座らせた。

菜緒は黙ったまま翔の顔を見上げていた。

その正面に片膝を立てて座る翔は菜緒に
向かって頭を下げた。

「決闘を早く終わらせるためとは言え、
 お前の面をワザと受けてしまった…。
 今回の件は謝る。すまなかった!
 しかし…決してバカにしていた
 訳ではない!
 とにかく早く終わらせたかっただけだ…。
 菜緒が気に入らないのなら、
 俺は何時でも菜緒の決闘をうけてやる!

 だから今は無理をするな…。
 こんな事で無理をしたら…、
 本当に…取り返しの付かないことになる!」

翔は頭を上げに向かって静かに言った。

「おまえ…?」

真剣な瞳で誠意を込めて謝ってくる翔に
驚くで菜緒あった。

「こんなことで取り返しのつかないことに
 なったら、菜緒だって悔やんでも
 悔やみきれないだろ?」

翔は優しくを見つめて言葉を続ける。

「…………わかった」

菜緒は静かに頷きながら小さな声で
返事をした。

 バタン!
 ドカドカ!

その時、道場の扉を荒っぽく開け、
土足で入ってくる男達がいた。
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