政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成

文字の大きさ
13 / 68

12話 メイド流

しおりを挟む

「カシュトルゼ……まさか大臣の?」

「嘘だ、娘は死んだって噂だぜ!?」

 気絶したらしい仲間を背負って隣室に運ぼうとしている先ほどのうぇーい系が耳ざとく反応する。

「あいにく生きてますわ。こうして、ぴんぴんと」

「に、偽物だ! そうやって俺たちを騙そうと――」

「いや、本物だろう」

 うぇーい系の言葉を遮ってアニキが答える。

「え、アニキ。なんて?」

「いいからお前はさっさとこいつらかたせ。うちの大事な仲間を失うなんざぜってぇさせねぇからな。誰かに後遺症でも残してみろ、お前に後遺症が残る傷を植え付けてやる」

「へ、へい、アニキぃぃ!!」

 うぇーい系の彼のせいじゃないのに。かわいそうに。

「信じてもらえてうれしいわ」

「信じたわけじゃねぇ。合理的に判断しただけだ」

「聞いても?」

「……まず、そこの姉ちゃん。そいつが嘘をついてるかもしれねぇが、その敬意は本物だ。だから少なくともそれに守られるお前は貴族様ってことだろう」

「ま、それくらいは当然でしょう。それで?」

「あとは勘だよ。てか、今この状況で、この場所で、カシュトルゼを名乗る馬鹿はいねーだろってことだ。政敵に足元をすくわれ、崖っぷちの大臣サマ。下町しもまちの浄化政策を着々と進める俺たちの敵。それをわざわざ名乗る馬鹿はいねぇ。馬鹿じゃねぇとすると……本物ってことだろ」

「GOOD」

「な、なんだよ」

「失礼。本音が漏れました」

 琴音だけに。琴音の本音。見た目がいいだけ。ゴロは悪いわね。

 それにしても、こんな場末のところにいるガテン系アニキなら情勢も理解してなくて頭より先に手が出る脳筋系だと思ったけど。なかなかどうして。

 これならアンチガーヒルへの駒として十分に機能してくれそうだ。
 しかも何やら画策しているようだし。

 そこらへんを含めて、私の強い味方にできるんじゃないかと皮算用していると、

「はっ。ってわけだ。正真正銘の亡霊ってことなら、なら俺がもう一度殺してやる。この国をぶっ壊した悪徳大臣のお嬢様なら、誰も文句言わねぇだろうなぁ!!」

 って、やっぱ手が出る脳筋!

「アーニィ!」

「はい、エリ様!」

 打って響くように、アーニィが前に出る。
 振り上げられた右腕。それをアーニィは迎え撃つ。下から突き上げるような掌底。

 言っておいてなんだけど、アーニィとアニキはふた回りはサイズが違う。それを相手にしろなんて命令はいかにも酷いかも、と自分ながらに思ってしまうのでした。

「えっと、アーニィ?」

「全力で守ります!」

 いや、逃げなさいよ。勝てるわけないでしょ!?
 こっちも脳筋なの?
 ちょっとは考えなさい!

 といっても私にはアーニィを引き留める力も度胸もなく。
 嗚呼、アーニィ。これまで色々ありがとう。ほんの数日だったけど、その本当に……色々と、色々……何かあったかしら。朝起こしてもらって、ご飯を運んでもらってくらいしか覚えがないんだけど。あとは花瓶の水をぶちまけたり、窓拭いてて落ちそうになったり、一枚二枚って皿屋敷並みにお皿割ったりってエピソードばっかだったけど。
 まぁ一応、今さっきこの狼藉者たちを排除して、このアニキから私を守ろうとしてくれたのは、うん。ありがたいわ。

 というわけで逃げさせてもらいます。
 アーニィがこの男に叩き潰される間に。

 酷い? それは彼女の意志を裏切ることになるのよ?
 彼女が身を挺して守ろうとした私が、この男に潰されでもすれば、それは彼女が命がけでやろうとした仕事を無にすることになる。それは彼女に対して失礼。プロフェッショナルとしての仕事をまっとうさせるためには、私は今ここで逃げるのが一番。よって私は悪くないQ.E.D(証明終了)。

 というわけで回れ右してこの場からエスケープ。ランナウェイ。

「潰れろ!!」

 はい、アーニィ今日まで。ありがとう。忘れないから、たぶん。

 ――と思ったけど。

「はぁ!」

「なにぃ?」

 おお、受け止めた。アーニィの細腕がその倍以上あるアニキの剛腕を受け止め――いや、弾き飛ばした。
 え、なにこの最強キャラ? 出て来るジャンル間違えてない?

「ちびっこが!」

「関節を見極めれば!!」

 アニキが左腕を横に薙ぎ払う。それをアーニィは深く沈み込み、そして右の肘を打ち上げる。それはアニキの剛腕――その肘に当たって軌道を変えた。
 ああ、ピンポイントで方向を変えて軌道をずらしてかわしてるってわけ。とんでもないことするわね、この娘。

 うん。これはもう勝ち確じゃない?

 左の横なぎも回避したアーニィは、そのまま一歩アニキに向かって踏み出す。

「アーニィ、手加減」

「承知です! メイド流暗殺術・秘技・ダンダンブラスター!!」

「こんのぉ!!」

 アニキが決死の様子で抵抗を示す。だがそれより速くアーニィは踏み込んで両手を前に突き出す。
 その踏み出す際、アーニィの体が数倍に膨れ上がったように怒張し、バリっという音と共にスカートと上着の背中が裂けた。

 ……えぇ、なにそれ。

 そのまま突き出した両手は、アニキの脇腹に直撃し胴体を弾き飛ばす。まるでボールになったみたいにアニキの体が跳ねて奥のテーブルにぶつかっても止まらず、先ほど彼が寝ていたソファに再びその体を沈み込ませた。そのまま動かない。

「ふぅ、討滅完了です!」

「…………」

 開いた口がふさがらない。最強はいいけど、反則級じゃない?
 アーニィの小さな体がその数倍あるだろう巨漢を吹き飛ばすなんて。というか手加減って言ったわよね、私。

「うっ……」

 ソファに倒れたアニキが苦しそうにうめく。

 ま、いいか。とりあえずあちらは全部これで倒したわけだし。
 少しは話を聞いてくれると、いいなぁ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

ヒロイン? 玉の輿? 興味ありませんわ! お嬢様はお仕事がしたい様です。

彩世幻夜
ファンタジー
「働きもせずぐうたら三昧なんてつまんないわ!」 お嬢様はご不満の様です。 海に面した豊かな国。その港から船で一泊二日の距離にある少々大きな離島を領地に持つとある伯爵家。 名前こそ辺境伯だが、両親も現当主の祖父母夫妻も王都から戻って来ない。 使用人と領民しか居ない田舎の島ですくすく育った精霊姫に、『玉の輿』と羨まれる様な縁談が持ち込まれるが……。 王道中の王道の俺様王子様と地元民のイケメンと。そして隠された王子と。 乙女ゲームのヒロインとして生まれながら、その役を拒否するお嬢様が選ぶのは果たして誰だ? ※5/4完結しました。 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました

処理中です...