知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

文字の大きさ
394 / 627
第4章 ジャンヌの西進

第72話 いざ会見へ

しおりを挟む
 翌日。
 何事もなく夜が明けた翌日。

 俺、クロエ、サール、喜志田と2人の護衛に加え、ウィット率いるオムカ軍300は北上して会見の予定地に向かう。

 天気はあいにくの曇り空。
 陽の光もなく寒風吹きすさぶ中では、毛皮のコートを羽織っての移動となった。

 それでも誰一人文句も言わず、黙々と進む。
 あるいはこれからのことに想いをはせていたのかもしれない。

 相手は帝国元帥。
 喜志田が勝てず、ビンゴ王国の滅亡を決定づけた人物。

 一体、どんな人物なのか。

 あるいはそれを考えていたのは、俺一人だったかもしれない。
 そんなことを思いながらも、村には約束の時間より少し早く到着した。

 村の入り口には5人ほどの男性が集まって出迎えてくれた。
 一番若いので40代くらいか。中央にいるのが村長らしく頭は禿げ上がり、蓄えた立派な髭も真っ白だった。
 昨日、多少の金品と共に会見のセッティングをお願いしたから、そのふるまいは丁寧だ。

「ようこそ、ゼートク村へ。お相手のお方はすでに来ております」

「来てる……?」

「はい。1時間ほど早く来られ、今は神殿の間でお待ちです」

 1時間も早く来た?
 何を考えているんだ。
 いや、意味なんてないのかもしれない。
 とにかく先手を打たれたことだけは確かだ。

「分かった。ここからは俺たち6人が向かう」

「承知しました。ご案内いたします」

 村の入り口でウィットと別れ、そのまま村へ入る。
 あまり豊かな村ではないらしい。
 家屋は板張りの平屋で、とりあえず寒さをしのげるくらいにしか見えず、それも経年劣化でボロボロだ。その数も100あるかないかで、どこか寂れた感じのする村だ。

 それでもこの村が特異なのは、村の中央に見える巨大な建造物のおかげだろう。
 そこだけ石造りで、かつ3階建てくらいの大きさがあり、周囲から浮いている。

 そこが今回の会合場所。ゼートク神殿だ。
 なんでもビンゴ王国より歴史があり、天地創世の神をまつっているとか。今ではさびれてしまったが、かつては参拝に来る客でごったがえしていたとのこと。

 そんなことを嬉々として語るのは、案内人である村の代表の1人の男。
 若い、といっても他と比べてで40代後半。残りの人生をこの村に腰を落ち着けて過ごそうという人物だろう。

 神殿の門をくぐる。
 なんとなくその前に一礼。

 扉が開き、案内人が先に入り、俺、サール、クロエ、喜志田ほか2人と続く。
 中は昼間だというのに真っ暗。明かりといえば、石造りの壁のところどころにロウソクが並び、それがどうにか周囲を照らすくらいだ。

 外の寒さはないが、どこかひんやりとした空気が停滞している。
 どこかおごそかな雰囲気を感じて、背筋が伸びる思いだ。

 廊下を案内人の後をついていく。
 7人分の石畳を打つコツコツという音が響く。

 音はそれだけで、誰も言葉を発しない。
 どこか気圧されている気分になり、息苦しい。

「こちらでございます」

 時間にすれば1分くらいだろうが、何分も続く気がした廊下の行き止まりで案内人が停止する。
 そして左手にある木製の扉を示す。

 この奥に帝国軍最強の人物がいる。
 そう思うと丹田のあたりがうずく。

「アッキー」

「分かってる」

 喜志田の言葉に背中を押され、俺は扉に手をかける。
 ぎぃっときしんだ音を立てて扉が開いた。

 一歩、部屋の中に入る。

 そこは閉じた世界だった。
 10メートル四方はあるだろうそこそこの広さの円形の部屋。
 総石造りという点はこれまでと共通しているが、天井がやけに高い。

 円柱型の部屋に半球が乗っているようなイメージを持ってもらえればいいだろう。東欧の修道院がこんな感じじゃなかったか。

 部屋の大半は何もない広場になっていて、そこには今、テーブルが1つと背もたれのない椅子が手前と奥に6つずつ並んでいる。
 視線を右手に向けてみると、そこには大きな神像がまつられていた。

 古いものらしく、石造りのせいもありところどころ欠けているが、全体としては美品といってもいい保存状態だ。
 だが、その姿がどうも気に食わない。

 あの女神に似ていたからだ。
 顔の造形はそっくりというほどではないが、なんとなく服の印象も似ている。

 天地創造の神を祀ってるとか言ったけど、アレが? まさかな。

 その思考も一瞬。
 神像なんかどうでもいいくらいに、感じるのは圧迫感。
 広く開放感のある部屋にもかかわらず、どこか息苦しい思いを抱く。

 部屋の中央にある机。
 対面の椅子に座った1人の人物。

 女性だ。

 年齢は20代半ばから30前といったところか。
 真っ白な布地の服に真っ白の肌に反し、髪の毛が燃えるような派手な赤。
 そのコントラストが情緒じょうちょをかき乱し、落ち着かない気にさせる。

 何より腕を組んで目を閉じて座っているだけなのに、その圧はこれまで感じた誰よりも強い。
 圧倒的に、完璧に、文句の付け所なしに、ふとすれば目の前の女性にひざを折ってしまうほどの威圧感を受けている。

 それは他の全員も同じだったようで、誰もが身じろぎひとつせず、固まってしまっている。
 ゴクリと唾を飲む音。
 それは自分のものだったかもしれないし、他の誰かのものだったかもしれない。

 それほどの静寂が周りを包んでいた。

 その中で一番最初に声を発したのは、やはりというべきか、当然というべきか、この場を支配する赤髪――そして開いた燃えるような赤い瞳を持つ人物だった。

「ようこそ、ジャンヌ・ダルク。私は堂島。エイン帝国軍元帥をしている」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...