知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第5章 帝国決戦

第19話 女神の営業

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「つかそんなことで恨まれても困るんですけどー!」

 あぁ、来ちゃったよ。
 誰が呼んだわけでもないのに、勝手に来ちゃったよ。

「そりゃ来ますよ! アッキーがヘタレでろくでなしで甲斐性なしでうじうじ悩んで事態を悪化させただけなのに、わたしのせいにするなー!」

 あぁ、その件ね。
 確かに恨んだけど、前からお前のことは恨んでるからな。

「だーかーらー! わたしのは仕事! イッツアワーキング! しょうがないでしょ。これでもノルマとか決算とか色々大変なんだから」

「だから営業か!」

「はいそーでーす! 地獄の営業部長の女神ちゃんとはわたしのことだー!」

 もうわけがわかんねぇ。
 何者なんだ、こいつ。

「女神ちゃんでーす」

「ウザい」

「ギャース! てかそうじゃなくて! 運命に関しての苦情はわたしじゃなくて、ちゃんとそっちに言ってよね。わたしはあくまで転生担当! 本当、こういうの風評被害なんだから。だから運命について文句があるなら運命担当の運命の女神に言いなさい」

「だからお役所か!」

 いや、でも神って昔から色々担当決まってたよな……。
 それもこれも人間という世界を運用するのに必要なことだというなら……神というのも実は人間と大差ない?

「お、でたねー。アッキーの神だろうが人だろうが我が知力の前にひれ伏せ宣言」

「いや、してねーから」

「むふふー、でもまぁお役所っぽいのはいいね。わたしもあのよくわからない手首につけるやつ。してみようかなー。地獄の営業部長として!」

「お前、転生担当じゃなかったのかよ……」

 もう何もかもが意味不明だった。

「で、“人でなし”で“ろくでなし”で“甲斐性なし”の『ナイナイ16』のアッキーとしてはどうよ?」

「お前やっぱり日本人だろ! しかも俺よりかなり年上の!」

「知りませーん。ヤックンとかフックンとかモックンとか知りませーん」

「絶対ファンだろ!」

 もうなんだか色々アウトだった。

「で? で? こんな危機的状況だけどどうすんの、アッキー? そろそろ心は決まったかにゃー?」

「別に。ただ降りかかる火の粉は払うだけだ」

「あー、違う違う。そうじゃなくって」

「ん?」

「ジルたんの告白にどう答えるのって話!」

「ぶっ!」

 そうだった。うかつだった。
 こいつは知ってるんだ。
 てかこの流れ、前もあったような……。

「いやー、あのリンドーって子? いいセンサーしてるよね。というわけで、お姉さんに恋バナ、いっちゃいな!」

「絶対断る」

「えー、なんでよー」

「そうやって面白がるからだよ!」

「アッキー! わたしはそんなことしないわよ! これでも地獄の営業部長なんだから!」

「全然意味が通じないけど……てか何? その肩書、気に入ったの? とにかく断固ノー!」

「ひどいよアッキー。これでもアッキーのこと本気で気にしてるんだよ。そもそもアッキーをそんな風にした原因の一旦はわたしにあるわけだし、これから一大決戦を迎えるアッキーの心の負担を少しでも軽くしてあげたいと思うのは女神として当然じゃなくて?」

「お前……」

「だから断じて、アッキーとジルたんとサカキくんの三角関係とか、あるいは里奈ちゃんとマリアちゃんとニーアちゃんに加えて、水鏡っちと竜胆のプレイヤー組に、クロエたんとウィットくんのデコボココンビに、ととどめにブリーダとアイザの地雷を織り交ぜた十二角関係を期待してるわけじゃないから! 男女混合11股いっちゃいなとか思ってないから!」

「お前いい加減にしろよ!?」

「うわー、てか改めて考えるとアッキー、よくこんな状況で生きてられるね。普通なら20回くらい刺されてるんじゃないの?」

「お前に言われたくねーよ!」

「てか11股とか最低! アッキーは女の風上にも置けない女の敵ね!」

「もうどこから突っ込んだらいいのか!」

 もう嫌。
 なんでこいつのどうでもいい戯言たわごとに付き合わなくちゃいけないのか。

 里奈とかから聞いたけど、ここまで付きまとわれてるの俺だけっぽいよ?
 なにこれ。貧乏神ひいちゃった?

「貧乏神とはなんじゃー! こちとら八面玲瓏はちめんれいろうのザ・女神・オブ・ザ・イヤーの大女神様じゃーーーい!」

 もう貧乏神そのものだった……。

「もう、本当に失礼しちゃう。こんな麗しい女神様を捕まえてそんなことを言うなんて。ぷんぷん!」

「いや、可愛く言っても無駄だから」

「あー、そうですもんねー。アッキーには11股いますもんねー。ん? いや、そこにわたしが入れば十三角形に!? 裏切り者ユダは誰だ的な展開!? 恐怖と緊張の間で揺らめく恋心……出会いと別れ、裏切者の正体とは!? 真実の愛が試される……カミングスーン……」

「劇場版か!」

 結局営業だよな、こいつ。

「いや、まぁいうじゃん? 人生とは1つの詩であるとか。だからまさにそれを見てる感じだよ。“人でなし”で“ろくでなし”で“甲斐性なし”のアッキーが、どんな愛を選ぶとか」

「勝手に人の人生で楽しむなよ……本当に最低だな」

「誉め言葉をありがとう。だって、それこそが“女神”という存在そのものだからね。むふふー、パリスの審判でもやってみる?」

「いや、全力で遠慮しておく」

 ちなみに『パリスの審判』とはギリシャ神話にある事件。
 王子パリスに迫った3人の女神だが、選ばれなかった2人の女神が敵国に肩入れし、あの有名なトロイア戦争を引き起こしたというもの。
 まぁ女神の気まぐれによる、とんだお騒がせ事件なわけだが。

「あの時はわたしも若かったからなー」

「え、お前だったの!? ヘラ!? アテナ!? アフロディーテ!? どれだ!?」

「もちろん美の女神アフロディーテとはわたしのことだー! どうだ、まいったかー!」

 いやー、ないわー。
 絶対ないわー。

 てかこいつを選んだの? パリスは?
 余計ないわー。

「もう、本当に失礼しちゃう! こうなったらアッキーにはわたしの素晴らしさと美しさを5時間くらい……あ、もう終業時間じゃん。しょうがないか。じゃあまったねー、アッキー」

 どこまでお役所根性丸出しなんだ、こいつ。

「あ、そうそう。アッキー、これはついでの業務連絡なんだけど」

 もう本当にお役所だな。

「うん。えっとね、北ばっかり注目してると足元すくわれるゾ☆! というわけで今回の女神ちゃんは以上! サラダバー! わははー」

「え、おいちょっと待て。今のなんだ!? 足元!? 帝国以外ってこと!? まさかシータ!? いや、南群もか!? 何!? 何かあんの!? てかゾ☆じゃねぇよ! そんな意味深なこと言って逃げるな! ちゃんと説明責任を果たせ! おい、戻ってこい、この女神オブザ――――」
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