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第5章 帝国決戦
第47話 会議の前
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翌日。
俺は話し合いの場となる軍本営の前で水鏡を待った。
だがやってきた水鏡を一目見てギョッとした。
「……大丈夫か?」
「寝不足よ。何も問題ないわ」
そう水鏡は答えたが、その腫れた目を見れば、泣いた痕だと分かる。
無理しやがって。
「え、いやでも姐さん……」
「良介、昨日のこと。誰かに言ったら……どうなるか分かるよね? アッキーも?」
「「は、はい! 姐さん!」」
思わず声をそろえて姐さんと答えていた。
こぇーよ。
まぁこいつがそう言うなら仕方ない。
そして話し合いの場へと俺は水鏡を連れていく。
その場にいるのはマリア、ニーア、ジルの3人。
そこに俺と水鏡を加えた5人が参加者だ。
内容は講和会議の方針について。
オムカは皇帝と約1万の捕虜を条件に、ギリギリまでこちらの有利な条件で和睦を図る。
和睦の期間は5年を目安にしたいが、どれだけ長くても3年が限度だろう。
その間にどれだけ自国を強化し、どれだけ相手の成長を阻害するかが戦いの肝になってくる。
つまり軍事面での衝突から、水面下の戦いへと移行するのだ。
そうなると俺よりマツナガの出番が増えるということだが。
「なるほどね」
水鏡は説明を受けて頷く。
彼女はシータ王国の全権を担っていると聞く。
つまり彼女の判断が国の方針になるということ。
俺としては講和に賛成してほしいところ。
もし同意しなければ、シータ王国一国では帝国に抗いきれず、いずれは滅ぼされることになる。そうなれば俺たちの命運は断たれることになる。
シータ王国を併呑したエイン帝国は、北と東から大軍を送ってくるだろう。
そうなれば勝ち目はない。
だからこの講和はオムカ王国、ビンゴ王国、シータ王国すべてが帝国と結んで対等となるのだ。
だから水鏡には何としても折れてもらわないと困るわけだが。
昨日、一応こちらに賛成しているような様子は見せていたが、あくまで非公式の場で、さっきの様子を見れば結論はまだ保留中に違いない。
だから俺は最後に付け加える。
「あくまでも各国が帝国と結ぶ講和だ。シータにはシータの言い分があるだろうから無理強いはできない。けど、もし一緒に講和してくれるなら。俺は全力で帝国との講和を実現させる」
あるいはそれができなければ、シータに向かって負けない戦を手伝うことになるかもしれないな、と思った。
それに対し、水鏡は目をつむったまま反応しない。
おそらく彼女の中で色々な葛藤が渦巻いているに違いない。
だから俺も、ほかの皆も何も言わず彼女の返答を待つ。
やがて、たっぷり時間を置いてから目を開いた彼女は、小さく深呼吸すると、
「シータ王国も、帝国と講和します」
そう、断言した。
俺は一瞬、全身から力が抜ける思いだった。
だがこれはスタートラインに立っただけにすぎない。
これで帝国から講和を断られたら、これまでの仕組みも水泡に帰すしかない。
だからすべては明後日。
おそらく出てくるのはあの教皇様だろう。
それを何がなんでも説き伏せなければ、じり貧の末に滅亡する未来しかないわけで。
けど、そのスタートラインに立てなければ、ゴールも見えないわけで。
俺としては彼女の身を切るような判断に感謝するしかない。
「ありがとう、水鏡」
「別に、アッキーのためじゃないから」
「それでも、だよ」
「…………ぅ、うるさいわね! そんかわり、絶対講和成立させなさいよ!」
顔を真っ赤にして怒鳴り散らす、水鏡に思わず苦笑。
「こちらもありがとうなのじゃ、ミカガミ殿」
「だから別に……てか、どうして女王様がここに?」
俺は水鏡にマリアが来た理由を語った。
「へぇ、うちの王様より全然立派だわ。私に全投げして引きこもってる明より」
「一応、当事者じゃからの」
「ふぅん? シータも当事者なんだけど」
「あ、いや。そういうわけじゃないのじゃ……」
「冗談よ。帝国を破って皇帝捕虜にしたのはそっちなんだから、一番の当事者なのは間違いないわよ。けど、それだけじゃなく、思い切ったことするのね。あの皇帝に会おうだなんて」
「もう会ったのか?」
「一応ね。そちらの総司令官さんに許可を取って」
「ええ、私も付き添いました」
ジル立ち合いの元で合ったってことか。
「ふーん? で、どうだった?」
「ゴミね。あんなのが国のトップとかありえないわ」
バッサリだった。
うわぁ、本当にゴミや虫けらを見るような視線とか。
何を言われたんだ、と考えるまでもないか。
「……まぁうちの明もその片鱗あるから、ちょっと帰ったら説教ね」
なんつーか、似たような気苦労を持ってるんだな、水鏡も。
「一応警告しとくわ。あれをどこかの聖人君子の王様と見たら後悔するから」
「……身に染みて分かってるよ」
そうか、あの皇帝とまた会うのか。
そう考えると若干憂鬱になってきたな。
「うむ! 今夜皇帝と会うのじゃ! 楽しみじゃのう」
てか、マリアに悪影響与えないかなぁ。
それだけが心配だった。
「それはお気をつけて。で、話がずれたけど本番は明後日でしょう? 私たちも一緒に行くから」
「ああ。頼む」
それから2、3の確認事項についてすり合わせ、その場は解散になった。
不安なところは少しあるけど、きっとうまくいく。
皆が講和に向かって動いている。
そんな歴史の流れを感じる。
それはとても素晴らしいことだと。
俺はその時に思ったんだ。
俺は話し合いの場となる軍本営の前で水鏡を待った。
だがやってきた水鏡を一目見てギョッとした。
「……大丈夫か?」
「寝不足よ。何も問題ないわ」
そう水鏡は答えたが、その腫れた目を見れば、泣いた痕だと分かる。
無理しやがって。
「え、いやでも姐さん……」
「良介、昨日のこと。誰かに言ったら……どうなるか分かるよね? アッキーも?」
「「は、はい! 姐さん!」」
思わず声をそろえて姐さんと答えていた。
こぇーよ。
まぁこいつがそう言うなら仕方ない。
そして話し合いの場へと俺は水鏡を連れていく。
その場にいるのはマリア、ニーア、ジルの3人。
そこに俺と水鏡を加えた5人が参加者だ。
内容は講和会議の方針について。
オムカは皇帝と約1万の捕虜を条件に、ギリギリまでこちらの有利な条件で和睦を図る。
和睦の期間は5年を目安にしたいが、どれだけ長くても3年が限度だろう。
その間にどれだけ自国を強化し、どれだけ相手の成長を阻害するかが戦いの肝になってくる。
つまり軍事面での衝突から、水面下の戦いへと移行するのだ。
そうなると俺よりマツナガの出番が増えるということだが。
「なるほどね」
水鏡は説明を受けて頷く。
彼女はシータ王国の全権を担っていると聞く。
つまり彼女の判断が国の方針になるということ。
俺としては講和に賛成してほしいところ。
もし同意しなければ、シータ王国一国では帝国に抗いきれず、いずれは滅ぼされることになる。そうなれば俺たちの命運は断たれることになる。
シータ王国を併呑したエイン帝国は、北と東から大軍を送ってくるだろう。
そうなれば勝ち目はない。
だからこの講和はオムカ王国、ビンゴ王国、シータ王国すべてが帝国と結んで対等となるのだ。
だから水鏡には何としても折れてもらわないと困るわけだが。
昨日、一応こちらに賛成しているような様子は見せていたが、あくまで非公式の場で、さっきの様子を見れば結論はまだ保留中に違いない。
だから俺は最後に付け加える。
「あくまでも各国が帝国と結ぶ講和だ。シータにはシータの言い分があるだろうから無理強いはできない。けど、もし一緒に講和してくれるなら。俺は全力で帝国との講和を実現させる」
あるいはそれができなければ、シータに向かって負けない戦を手伝うことになるかもしれないな、と思った。
それに対し、水鏡は目をつむったまま反応しない。
おそらく彼女の中で色々な葛藤が渦巻いているに違いない。
だから俺も、ほかの皆も何も言わず彼女の返答を待つ。
やがて、たっぷり時間を置いてから目を開いた彼女は、小さく深呼吸すると、
「シータ王国も、帝国と講和します」
そう、断言した。
俺は一瞬、全身から力が抜ける思いだった。
だがこれはスタートラインに立っただけにすぎない。
これで帝国から講和を断られたら、これまでの仕組みも水泡に帰すしかない。
だからすべては明後日。
おそらく出てくるのはあの教皇様だろう。
それを何がなんでも説き伏せなければ、じり貧の末に滅亡する未来しかないわけで。
けど、そのスタートラインに立てなければ、ゴールも見えないわけで。
俺としては彼女の身を切るような判断に感謝するしかない。
「ありがとう、水鏡」
「別に、アッキーのためじゃないから」
「それでも、だよ」
「…………ぅ、うるさいわね! そんかわり、絶対講和成立させなさいよ!」
顔を真っ赤にして怒鳴り散らす、水鏡に思わず苦笑。
「こちらもありがとうなのじゃ、ミカガミ殿」
「だから別に……てか、どうして女王様がここに?」
俺は水鏡にマリアが来た理由を語った。
「へぇ、うちの王様より全然立派だわ。私に全投げして引きこもってる明より」
「一応、当事者じゃからの」
「ふぅん? シータも当事者なんだけど」
「あ、いや。そういうわけじゃないのじゃ……」
「冗談よ。帝国を破って皇帝捕虜にしたのはそっちなんだから、一番の当事者なのは間違いないわよ。けど、それだけじゃなく、思い切ったことするのね。あの皇帝に会おうだなんて」
「もう会ったのか?」
「一応ね。そちらの総司令官さんに許可を取って」
「ええ、私も付き添いました」
ジル立ち合いの元で合ったってことか。
「ふーん? で、どうだった?」
「ゴミね。あんなのが国のトップとかありえないわ」
バッサリだった。
うわぁ、本当にゴミや虫けらを見るような視線とか。
何を言われたんだ、と考えるまでもないか。
「……まぁうちの明もその片鱗あるから、ちょっと帰ったら説教ね」
なんつーか、似たような気苦労を持ってるんだな、水鏡も。
「一応警告しとくわ。あれをどこかの聖人君子の王様と見たら後悔するから」
「……身に染みて分かってるよ」
そうか、あの皇帝とまた会うのか。
そう考えると若干憂鬱になってきたな。
「うむ! 今夜皇帝と会うのじゃ! 楽しみじゃのう」
てか、マリアに悪影響与えないかなぁ。
それだけが心配だった。
「それはお気をつけて。で、話がずれたけど本番は明後日でしょう? 私たちも一緒に行くから」
「ああ。頼む」
それから2、3の確認事項についてすり合わせ、その場は解散になった。
不安なところは少しあるけど、きっとうまくいく。
皆が講和に向かって動いている。
そんな歴史の流れを感じる。
それはとても素晴らしいことだと。
俺はその時に思ったんだ。
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