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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた
第23話 イリッパ
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さすがに連日、猛暑の中の対陣はそれだけで疲れれる。
だから相手より少し遅く出撃したり、
「第二紋! 水竜(すいりゅう)! あたたたー!」
夜に水鏡のスキルで川の水を少し引いて来て、それを竜胆のスキルで味方の陣に雨のように降らせた。
それだけでも体温が下がり、のども少し潤うのだから本当に2人がいてくれてよかった。
もちろん鉄砲が濡れないよう注意する羽目になったクルレーンは良い顔をしなかったが。
「一体、なんなのでしょう。まったく動きませんね」
「まったくね。こっちもいい加減に倦んできてるわ」
中央本隊の中央部で、水鏡を迎えて俺とジルの3人で額を突き合わせる。
議題はもちろん、動かない帝国軍のことだ。
ここ3日、初日を含めれば4日。敵は最初以外まったく動かなかった。小競り合いもない。
ただ出てきて、日照りの中ずっと何も言わずに突っ立っているだけ。
その沈黙が逆に怖い。
もちろん、そうする理由があってのことだろうけど、それが分からない。
「順当に言えば、何かを待ってるってことになるけどな」
「待ってるって何をよ。援軍? もう来てるじゃない。てか兵力は拮抗してるんでしょ。だったらぼやぼやしてる理由はないじゃない」
「あるいはさらなる援軍を待っているのでは? 再び10万以上も来ればさすがに」
「それはあるかもしれないが、ジル。こないだの親征の失敗から兵力的も金銭的にも難しいと思うぞ」
「ってことは無理すればあと1万くらいなら来るってことじゃない?」
水鏡の指摘は一理ある。
あと5万とかは無理でも、無理すれば1万くらいは出せる底力は帝国にあるはずだ。
「けど今から1万増えても、って感じだろうな。正直、あの援軍の質を見れば、増えたところで足手まといだろう」
「じゃあ援軍じゃないとすると何? まさか収穫の時期まで待つとか? そんな気の長い話ないでしょ」」
「あるいは天候とかではないですか。先日みたいな雨を待っていて、それに乗じて来るとか」
援軍、季節、天候。
うーーーーん。どれもピンとこないんだよなぁ。
「あとは……そうね。私たちの撤退かしら」
「どういうことだ?」
水鏡の新しい切り口に興味を覚える。
「まぁ申し訳ないからあまり言いたくないんだけどね。さっき倦んでるって言ったでしょ。ここに来て半月以上経って、兵たちも故郷に帰りたいって声が出てるのよ。こないだもこっちに来ただけで帰ったこともあって、特に恩賞もなかったわけで」
「ん……それは、まぁこっちもすまないと思ってる」
シータ王国からすれば、正直言って他国の戦闘なのだ。
オムカが帝国に潰されれば次は自分たちの番だ、と言っても、人間いざ自分の番が来ないとそれを自覚しづらいものだ。
それに今年中に決着をつけなくちゃいけないというのは、俺たちプレイヤーの話であって、大部分の兵士にとってはそれほど逼迫した状況でもない。
それなのにこうして遠くまで来てもらって、土地を得るわけでもなく命を賭ける戦いに駆り出されるのだから、士気も下がって当然だろう。
「あとは暑さね。シータ本国も暑いけど、水が近くにあるから。ここみたく、川はあるけどだだっ広い平原でずっといるってのは、うちには辛いみたい」
「まぁ確かにな……シータの人たちには辛いのは分かる。でも辛いのは相手も一緒だと思ってくれたらいいんだけど……」
そう、こうやって出てきている以上、相手も辛いのだ。
それより俺たちを逃がさないためか、早めに出てきているのだからなおさらだろう。
あれ、そういえばこういった戦い方って何かなかったっけか。
あれは確か……。
「シータ王国の意向も分かりました。ならば、こちらから攻めるしかないのではないでしょうか」
「いえ、それが相手の狙いじゃなくて? 私たちを動かして、こっちの一番弱いところ――あの南群の兵、狙われるわよ」
「確かに。そうなれば兵力差は大きくなります。それが狙いなんでしょうか」
「多分そうじゃない? そうやって私たちを北と西から押し出して、そのまま川に落とすつもりなのよ。こないだのアッキーみたいにね」
「あ――――」
そこで閃いた。
そして『古の魔導書』を開く。
もし前に会敵した相手なら……よかった、いた。
「何よ、いきなり声を出して」
「いや、水鏡のおかげだ。相手が狙ってたのは、包囲殲滅だ。さらにもう一枚カードが来る」
「何か思いついたのですか、ジャンヌ様」
「ああ。相手がどうしてこうやって無駄に時間を重ねてくるのか分かった。なら対処法だけど……水鏡、また雫を借りたい」
「いいけど、まさかまた城攻めするつもり?」
「いや、そうじゃない。あとは水軍を少し。あとは、あいつらにも頼む必要があるな」
あぁ、そうだ。思い出した。
この展開、何かと思えばイリッパの戦いだ。スピキオだ。
相手にそれを知る人間がいるだろうか。
いや、いないだろう。それは相手がまさしくカルタゴ軍と同じ動きをしているから自明だ。
相手の手札は読み切った。
ならそのカードに対する、こちらの切り方を間違わなければ……勝てる。
ああ、勝てる。
これは勝てるぞ。
しかも、アレを俺がやるのだ。
それを思うと、不謹慎にも少しテンションが上がるというもの。
「勝負は明日。やることは簡単。しっかり寝て、しっかり食べること! 以上!」
少し興奮しているのだろうか。
俺の尋常じゃない様子を見たジルと水鏡が、目をぱちくりさせていた。
だから相手より少し遅く出撃したり、
「第二紋! 水竜(すいりゅう)! あたたたー!」
夜に水鏡のスキルで川の水を少し引いて来て、それを竜胆のスキルで味方の陣に雨のように降らせた。
それだけでも体温が下がり、のども少し潤うのだから本当に2人がいてくれてよかった。
もちろん鉄砲が濡れないよう注意する羽目になったクルレーンは良い顔をしなかったが。
「一体、なんなのでしょう。まったく動きませんね」
「まったくね。こっちもいい加減に倦んできてるわ」
中央本隊の中央部で、水鏡を迎えて俺とジルの3人で額を突き合わせる。
議題はもちろん、動かない帝国軍のことだ。
ここ3日、初日を含めれば4日。敵は最初以外まったく動かなかった。小競り合いもない。
ただ出てきて、日照りの中ずっと何も言わずに突っ立っているだけ。
その沈黙が逆に怖い。
もちろん、そうする理由があってのことだろうけど、それが分からない。
「順当に言えば、何かを待ってるってことになるけどな」
「待ってるって何をよ。援軍? もう来てるじゃない。てか兵力は拮抗してるんでしょ。だったらぼやぼやしてる理由はないじゃない」
「あるいはさらなる援軍を待っているのでは? 再び10万以上も来ればさすがに」
「それはあるかもしれないが、ジル。こないだの親征の失敗から兵力的も金銭的にも難しいと思うぞ」
「ってことは無理すればあと1万くらいなら来るってことじゃない?」
水鏡の指摘は一理ある。
あと5万とかは無理でも、無理すれば1万くらいは出せる底力は帝国にあるはずだ。
「けど今から1万増えても、って感じだろうな。正直、あの援軍の質を見れば、増えたところで足手まといだろう」
「じゃあ援軍じゃないとすると何? まさか収穫の時期まで待つとか? そんな気の長い話ないでしょ」」
「あるいは天候とかではないですか。先日みたいな雨を待っていて、それに乗じて来るとか」
援軍、季節、天候。
うーーーーん。どれもピンとこないんだよなぁ。
「あとは……そうね。私たちの撤退かしら」
「どういうことだ?」
水鏡の新しい切り口に興味を覚える。
「まぁ申し訳ないからあまり言いたくないんだけどね。さっき倦んでるって言ったでしょ。ここに来て半月以上経って、兵たちも故郷に帰りたいって声が出てるのよ。こないだもこっちに来ただけで帰ったこともあって、特に恩賞もなかったわけで」
「ん……それは、まぁこっちもすまないと思ってる」
シータ王国からすれば、正直言って他国の戦闘なのだ。
オムカが帝国に潰されれば次は自分たちの番だ、と言っても、人間いざ自分の番が来ないとそれを自覚しづらいものだ。
それに今年中に決着をつけなくちゃいけないというのは、俺たちプレイヤーの話であって、大部分の兵士にとってはそれほど逼迫した状況でもない。
それなのにこうして遠くまで来てもらって、土地を得るわけでもなく命を賭ける戦いに駆り出されるのだから、士気も下がって当然だろう。
「あとは暑さね。シータ本国も暑いけど、水が近くにあるから。ここみたく、川はあるけどだだっ広い平原でずっといるってのは、うちには辛いみたい」
「まぁ確かにな……シータの人たちには辛いのは分かる。でも辛いのは相手も一緒だと思ってくれたらいいんだけど……」
そう、こうやって出てきている以上、相手も辛いのだ。
それより俺たちを逃がさないためか、早めに出てきているのだからなおさらだろう。
あれ、そういえばこういった戦い方って何かなかったっけか。
あれは確か……。
「シータ王国の意向も分かりました。ならば、こちらから攻めるしかないのではないでしょうか」
「いえ、それが相手の狙いじゃなくて? 私たちを動かして、こっちの一番弱いところ――あの南群の兵、狙われるわよ」
「確かに。そうなれば兵力差は大きくなります。それが狙いなんでしょうか」
「多分そうじゃない? そうやって私たちを北と西から押し出して、そのまま川に落とすつもりなのよ。こないだのアッキーみたいにね」
「あ――――」
そこで閃いた。
そして『古の魔導書』を開く。
もし前に会敵した相手なら……よかった、いた。
「何よ、いきなり声を出して」
「いや、水鏡のおかげだ。相手が狙ってたのは、包囲殲滅だ。さらにもう一枚カードが来る」
「何か思いついたのですか、ジャンヌ様」
「ああ。相手がどうしてこうやって無駄に時間を重ねてくるのか分かった。なら対処法だけど……水鏡、また雫を借りたい」
「いいけど、まさかまた城攻めするつもり?」
「いや、そうじゃない。あとは水軍を少し。あとは、あいつらにも頼む必要があるな」
あぁ、そうだ。思い出した。
この展開、何かと思えばイリッパの戦いだ。スピキオだ。
相手にそれを知る人間がいるだろうか。
いや、いないだろう。それは相手がまさしくカルタゴ軍と同じ動きをしているから自明だ。
相手の手札は読み切った。
ならそのカードに対する、こちらの切り方を間違わなければ……勝てる。
ああ、勝てる。
これは勝てるぞ。
しかも、アレを俺がやるのだ。
それを思うと、不謹慎にも少しテンションが上がるというもの。
「勝負は明日。やることは簡単。しっかり寝て、しっかり食べること! 以上!」
少し興奮しているのだろうか。
俺の尋常じゃない様子を見たジルと水鏡が、目をぱちくりさせていた。
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