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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた
第33話 受け継がれる意死
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「明彦くん、大丈夫?」
しばらく放心していた俺を里奈が心配して声をかけてくれた。
「……ああ」
だがそれ以上に声が出ない。
言っていいことなのか。
頭が固まる。
「何があったの? 教えて」
里奈に求められるが、それでも戸惑う。
あるいは里奈なら。
そう思って口を開きかけるが、
「さて、会見はこれで終わりですね」
煌夜に邪魔された。
振り向いて改めて煌夜を見るが、小さく首を振るだけだ。
話すなってことか。
なるほど。
こいつは全部1人で抱えてきたってことか。
おそらく相方にも伝えていないだろう。
なら、俺もそれに倣うべきだ。
無理に心配させる必要はない。
「いや、ちょっとこいつの妄言を検討してただけだ。その結果、こいつは新興宗教の教祖様だよ。怪しいことこの上ない。とんだ電波だって分かって愕然としたんだ」
「心外ですね、それに教祖ではなく教皇です」
「どっちも同じだろ」
「違います。私は廃れた教義を復活させただけです」
「中興の祖ってことだろ。それでも十分、教祖の立場だ。ま、それもあの女神に騙されてたってことだろうけど」
「本気で怒りますよ、ジャンヌ・ダルク?」
「どうぞ、天罰をくだしてみやがれ、教祖様?」
もちろん本気で口論しているつもりはない。
里奈から話をそらすためにやっているだけにすぎない。
相手もそれを分かっている。
そこら辺の息の合い方に、どこかホッとしている自分がいる。
あるいは。
本当にあるいは。
俺が帝国側に転生していたら……こいつとも仲良くできたのではないか。
達臣も、堂島元帥も、長浜大将軍も。
いや、そんなもしも、考えるだけでもむなしい。
というより恐ろしい。
それはつまり、敵対していたということだから。
ジル、サカキ、ニーア、クロエ、そして……マリア。
彼ら彼女らを、俺の采配で命を散らしていたかもしれないなんて、考えたくもない。
だからこの出会いは必然で、この別れは運命だ。
もはや時計は逆に戻ることもない。
ここからさらに転生することもない。
なら、ここまでだ。
俺と彼の関係性の物語は。
「あー、なんか盛り上がってるとこ悪いけど。ボクはどうすればいいかな?」
仁藤が心細そうに声をあげる。
あぁ、そういえばそうか。
このまま帝国に残れば、女神に殺される。
それは心苦しい。
「うちに来るか?」
「いいのかい? ああ、けど煌夜さん」
「遠慮することはない。君は生きたまえ」
「……お世話になりました」
「うん」
それで別れは終わった。
が、そういえばと煌夜が思い出したように、
「1つだけ、お願いしてもいいですか?」
「負けたのに、図々しいな」
「そうでなくては、1つの宗教の教主にはなれませんよ」
やれやれ、仕方ない。
俺はうなずいて相手の言葉を待つ。
そして、
「あの女神を、倒してください」
「っ!」
まさか、という想いと、やはり、という想いが胸を駆け巡る。
思い出すのは尾田張人の言葉。
『煌夜をあまり舐めない方がいい』
舐めない方がいいのは、彼の執念。
彼にとって自分の命はどうでもいいらしい。
必要なのは、女神への復讐。
いや、そんな浅いものじゃない。
きっとこれは――
「世界への、抵抗か」
「そんな格好いいものではないですよ。ただ、自分がやり残した仕事を、頼もしい同志に託した。それだけのことです」
…………同志、ね。
都合のいい言葉だ。
「なんで俺なんだ。勝ったけど、俺は力は貧弱。武器も持てない。あの女神を倒そうと思っても、無理だって分かるだろ」
「それは、私がやろうとしたやり方ができるのは、この大陸広しといえどあなたしかいないからです。本当は、もっと仲間を集めて決戦に挑みたかったのですが、もはやそれも叶いません。ですから、あなたにしか託せない」
「…………」
「それに倒すといっても、あの女神を引きずり出さなければならない。それができるのは、これまで女神に繋がりを持った者、あなたしかいない。そしてその後、女神を倒すための環境を整えること、それもあなたしかいない」
「環境?」
「そう、女神を引きずり出し、戦いを挑む環境づくり。それは、知力に突出した私かあなたしかできなかった」
「それなら達臣にもできるだろ」
「彼も優秀ですが、それほどの執念はない。それに、どちらかというと、政治家ですよ、彼」
そういうものか……。
けど、まぁそうだな。
これは彼の遺言みたいなもの。
きっと、俺が恐れていた共倒れという線がないという告白だ。
その覚悟に対し、応えるのはそれを受け入れるしかないのなら。
俺は感謝の言葉を込めてうなずく。
「確約はできない。けど、善処しよう。俺も、あの女神には相当いらついてるし」
「それで構いません。それで、私と麗明は救われる」
「お前たちは――」
その後に、何を言おうとしたのだろう。
分からない。
だからそれ以上、何も言えなくなって、口をつぐんだ。
「それでは、これにてお別れです」
そんな俺を元気づけるためか、大仰に頭を下げる煌夜。
「……ああ」
俺はそれしか言えなかった。
「さようなら、煌夜さん」
「ええ、さようなら、里奈さん。お元気で」
里奈はお辞儀をして、仁藤は軽く会釈をした。
そのまま煌夜はカジノを――いや、つぶれた教会から出ていく。
その背には、覚悟を決めた男の力がみなぎっている。
そんな風に思えた。
しばらく放心していた俺を里奈が心配して声をかけてくれた。
「……ああ」
だがそれ以上に声が出ない。
言っていいことなのか。
頭が固まる。
「何があったの? 教えて」
里奈に求められるが、それでも戸惑う。
あるいは里奈なら。
そう思って口を開きかけるが、
「さて、会見はこれで終わりですね」
煌夜に邪魔された。
振り向いて改めて煌夜を見るが、小さく首を振るだけだ。
話すなってことか。
なるほど。
こいつは全部1人で抱えてきたってことか。
おそらく相方にも伝えていないだろう。
なら、俺もそれに倣うべきだ。
無理に心配させる必要はない。
「いや、ちょっとこいつの妄言を検討してただけだ。その結果、こいつは新興宗教の教祖様だよ。怪しいことこの上ない。とんだ電波だって分かって愕然としたんだ」
「心外ですね、それに教祖ではなく教皇です」
「どっちも同じだろ」
「違います。私は廃れた教義を復活させただけです」
「中興の祖ってことだろ。それでも十分、教祖の立場だ。ま、それもあの女神に騙されてたってことだろうけど」
「本気で怒りますよ、ジャンヌ・ダルク?」
「どうぞ、天罰をくだしてみやがれ、教祖様?」
もちろん本気で口論しているつもりはない。
里奈から話をそらすためにやっているだけにすぎない。
相手もそれを分かっている。
そこら辺の息の合い方に、どこかホッとしている自分がいる。
あるいは。
本当にあるいは。
俺が帝国側に転生していたら……こいつとも仲良くできたのではないか。
達臣も、堂島元帥も、長浜大将軍も。
いや、そんなもしも、考えるだけでもむなしい。
というより恐ろしい。
それはつまり、敵対していたということだから。
ジル、サカキ、ニーア、クロエ、そして……マリア。
彼ら彼女らを、俺の采配で命を散らしていたかもしれないなんて、考えたくもない。
だからこの出会いは必然で、この別れは運命だ。
もはや時計は逆に戻ることもない。
ここからさらに転生することもない。
なら、ここまでだ。
俺と彼の関係性の物語は。
「あー、なんか盛り上がってるとこ悪いけど。ボクはどうすればいいかな?」
仁藤が心細そうに声をあげる。
あぁ、そういえばそうか。
このまま帝国に残れば、女神に殺される。
それは心苦しい。
「うちに来るか?」
「いいのかい? ああ、けど煌夜さん」
「遠慮することはない。君は生きたまえ」
「……お世話になりました」
「うん」
それで別れは終わった。
が、そういえばと煌夜が思い出したように、
「1つだけ、お願いしてもいいですか?」
「負けたのに、図々しいな」
「そうでなくては、1つの宗教の教主にはなれませんよ」
やれやれ、仕方ない。
俺はうなずいて相手の言葉を待つ。
そして、
「あの女神を、倒してください」
「っ!」
まさか、という想いと、やはり、という想いが胸を駆け巡る。
思い出すのは尾田張人の言葉。
『煌夜をあまり舐めない方がいい』
舐めない方がいいのは、彼の執念。
彼にとって自分の命はどうでもいいらしい。
必要なのは、女神への復讐。
いや、そんな浅いものじゃない。
きっとこれは――
「世界への、抵抗か」
「そんな格好いいものではないですよ。ただ、自分がやり残した仕事を、頼もしい同志に託した。それだけのことです」
…………同志、ね。
都合のいい言葉だ。
「なんで俺なんだ。勝ったけど、俺は力は貧弱。武器も持てない。あの女神を倒そうと思っても、無理だって分かるだろ」
「それは、私がやろうとしたやり方ができるのは、この大陸広しといえどあなたしかいないからです。本当は、もっと仲間を集めて決戦に挑みたかったのですが、もはやそれも叶いません。ですから、あなたにしか託せない」
「…………」
「それに倒すといっても、あの女神を引きずり出さなければならない。それができるのは、これまで女神に繋がりを持った者、あなたしかいない。そしてその後、女神を倒すための環境を整えること、それもあなたしかいない」
「環境?」
「そう、女神を引きずり出し、戦いを挑む環境づくり。それは、知力に突出した私かあなたしかできなかった」
「それなら達臣にもできるだろ」
「彼も優秀ですが、それほどの執念はない。それに、どちらかというと、政治家ですよ、彼」
そういうものか……。
けど、まぁそうだな。
これは彼の遺言みたいなもの。
きっと、俺が恐れていた共倒れという線がないという告白だ。
その覚悟に対し、応えるのはそれを受け入れるしかないのなら。
俺は感謝の言葉を込めてうなずく。
「確約はできない。けど、善処しよう。俺も、あの女神には相当いらついてるし」
「それで構いません。それで、私と麗明は救われる」
「お前たちは――」
その後に、何を言おうとしたのだろう。
分からない。
だからそれ以上、何も言えなくなって、口をつぐんだ。
「それでは、これにてお別れです」
そんな俺を元気づけるためか、大仰に頭を下げる煌夜。
「……ああ」
俺はそれしか言えなかった。
「さようなら、煌夜さん」
「ええ、さようなら、里奈さん。お元気で」
里奈はお辞儀をして、仁藤は軽く会釈をした。
そのまま煌夜はカジノを――いや、つぶれた教会から出ていく。
その背には、覚悟を決めた男の力がみなぎっている。
そんな風に思えた。
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