知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

閑話49 九神明(シータ王国国王)

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「ジャンヌ・ダルクの旗のもとにつどえ! この戦いに勝利し、世界を救う!」

 はっ。

 笑うしかない。
 よくもそんな恥ずかしい言葉を口にできる。

 集え?
 勝利する?
 世界を救う?

 どうせ彼も同じだ。
 これまで耳当たりの良い言葉だけを吐き出していた偽善者と。

 あの王女さまは違うとか言っていたけど、人間、死のふちまで追いつめれば本性を表す。

 だから徹底的に追い詰める。

 この部屋には50人程度の人間がいる。
 そのすべてが敵。

 つまり、向かって来るものすべてをなぎ倒せばいい。

「はぁぁぁぁぁ!」

 ニーアが一番最初に来る。
 闘技場の三女神とか言われた彼女とは、それなりに因縁がある。

 彼女とはアッキーに関して同好の士とも言えたが、こうなっては仕方ない。

「『神の吐息ゴッド・ブレス』」

 大きく吸い込み、そしてゆっくりと吐く。
 それだけで、世界が変わった。

 何もかもがスローモーションに見える世界。
 普通なら高速で突っ込んできているだろうニーアも、水の中のように動きが重い。
 正直、遊びでやってるのかと思うほどの緩慢さ。

 だから一歩、左に動いて相手の攻撃の死角に入ると、思いっきり右手の甲でぶん殴った。

「がっ!」

 悲鳴をあげてニーアが10メートルほど吹っ飛ぶ。

 それほど力を込めたわけでもない。
 それでもこうなってしまう。
 それがこのスキル。

 次が来た。四方から剣を抜いて兵たちが来る。
 50人ほどが一斉に襲い掛かってくる。

「雑兵が!」

 両手に念を送る。
 それだけで両手が燃えた。

 熱さは感じない。
 むしろみなぎるような感じがする。

 体を回転させて、両手を左右に振る。
 手のひらから放出された炎が、周囲に熱をまき散らしていく。

 悲鳴が上がる。
 ある者は炎にまかれ、ある者は炎に怯え、ある者は炎に包まれた味方を恐れる。

「ふっ、ふははははは! 燃やし尽くせ、アグニ!」

 愉快だ。
 これだけの大人数で、近づくこともできないのか。
 正直、敗ける気がしない。

「熱いか? なら消してやろう! ヴァーユ!」

 今度は両手をくるりと回転させると、そのまま自分の顔の前で思い切り手のひら同士をたたきつけた。
 そこで起きるのは風。

 いや、突風だ。

 風にあおられた兵たちが、風にあおられて面白いように転がっていく。
 愉快。愉快だ。

 それでもまだ、起き上がろうとするものがいる。
 こちらに敵意を振りまくものがいる。

 それらの戦意を根こそぎ奪うための仕掛けはできている。

 右手を上に。
 同時、何かが体を駆け巡る。

 来る。
 それが分かるから、笑いが止まらない。

「天に逆らう愚か者ども、天の力にひれ伏し、恐れ、そして死ね」

 少しやりすぎか。いや、これくらいがいい。
 これくらいが“神”として人間どもに罰を与える者としては、いい!

「インドラ」

 パリッとした何かが上げた右手に通じ――落ちた。

 耳にとどろく轟音。
 天井を何かが打ち砕き、同時に地面に衝撃が走る。

 落雷だ。

 小規模ながらも、3本の雷が天井を突き破り自分の周囲に落ちた。

 衝撃と轟音、そして熱。
 普通ならそれで死んでいる。

 だが神である自分の体には何の影響もない。
 むしろ心地よい。

 対して、人間たる彼らにはそうは映らない。
 目の前に雷が落ちて、それが超自然ではなく明らかに人為的なものだと知り、完全に戦意を喪失している。

 愉快。
 爽快。
 痛快。

 これだからこれはやめられない。

 いや、まだだ。
 そういえばアッキーはどこだ。
 今の超常的な現象に対し、どんな反応を見せるのかが気になる。

 だからアッキーを探して周囲を見渡したところ――背後に気配を感じた。

「死ね」

 淡々としたつぶやき。
 同時に必殺の一撃を放ってくる。
 スローモーションの世界でも、速いと感じるほどの速度。

 それだけは少し、肌がざわついた。

 けど神の力の前には無意味。
 相手の攻撃を受け流し、カウンターで強烈なボディを放ってやる。
 普通なら内臓破裂ものだが、それでもこの女は生きている。それが分かる。

「ふぅ、危ない危ない」

 立花里奈と言ったか。

 面識はないけど色々聞いている。
 情報もまた、この商売においては重要なものだから。

 2年前のオムカの王都攻めでの暴走を皮切りに、各地でその屍を積み上げていった彼女を、名前は知らずとも知らないものはいない。
 未確認ながらも、帝国の北の戦線でもそれを行っていたという。
 だから比較的情報は集まりやすい。

 その凶暴さ、残忍さ、手の付けられなさは、帝国最強を謳った堂島という元帥を討ち取ったことで極まった。

 だがそれも所詮は人間レベルの話。
 神の力を持った自分の前には無意味だ。

 立花里奈は、ボディに強烈な一撃をくらい、床を転がりながらも受け身を取って落ちた瓦礫を蹴り砕いてブレーキにした。

 落雷により崩壊した天井からは瓦礫が降り注ぎ、雷とその前の炎でところどころ絨毯に火がついている。

 崩壊し、炎上する王宮。

 ふふっ、ラストバトルにはふさわしい場所じゃあないか。

「なんだ……なんなんだ、その力」

 どこにいたのか、アッキーが茫然としたようにしてつぶやく。
 全滅までわずか2分たらず。

 いいね。その顔が見たかった。
 このまま一気にアッキーと女王様の首をねじ切って、それで終わらそうと思ったけど。

 もうちょっとその顔を眺めていたい。
 そんな気分だ。

 だから少し座興として彼らの問いに答えるとしよう。

「勝てなくても気にすることはないよ。だって、僕は神だから」

「か、神……?」

「そう、神だよ。10年、この世界で生きてきた僕には1つランクの上がったスキルが与えられた。それがこのスキル『神の吐息ゴッド・ブレス』。神のごとき、最強の力を使うことができる。まさに無敵の力だ」

「10年……? そんな、じゃあ私たちが出会ったのは」

 水鏡が愕然とした表情で聞いてくる。

 あぁ、懐かしい。
 水鏡と出会ったころが思い出される。

「あぁ、放浪の旅の途中だったからね。色々聞かれるのは面倒だったから、今来たってことにしてた」

「そんな……」

 10年。
 思えば長いようで短い10年だった。
 実年齢を考えれば30を超えてるわけか。
 それにしては見た目も変わらず、若いと言われるわけだけど。

「神の力……だと」

「ああ、そうさ。アッキーなら分かるだろ? 天地を支配し、神羅万象に通じ、老いず、死なず、完璧な存在の神だよ。それが発動した今、人間が敵う相手じゃないのさ」

「……っ」

 歯噛みするアッキーの顔。
 あぁ、これだ。
 この顔が見たかったのかもしれない。

 さんざん知力で勝ってきたアッキーが、圧倒的な力の前にボコボコにされる。
 ざまぁと言ってやりたい。

 もちろん、このスキルにも弱点はある。
 発動条件が限りなく面倒で、そのため平時は脆い。

 その時に暗殺でもされればそれで終わりだが、ことここに至ってはもはやその心配はない。

 それもこれも、この力をひた隠しにして、さらに真の実力を表に出さずに乾坤一擲の勝負に出た僕の実力に他ならない。

 だから言っただろう?
 この世は嘘と欺瞞と騙しでできているって。
 それを駆使した者が勝つんだって。

 だからこの結末は必然。
 あとは彼らの寿命が少し伸びるか縮まるかの差でしかない。

 とはいえ、今の状況を改めて見て嘆息する。

 少し暴れすぎたか。

 そこらに散らばった瓦礫を盾にして、こちらへの攻撃の意志を見せている輩が多い。
 その場にいってしらみつぶしにするのもめんどくさい。

 なら一撃で終わらせよう。

 ヴィシュヌ。
 最強たる神の一撃。
 周囲10キロほどを破壊する衝撃波。

 この王宮はもちろん、この王都もほぼ破壊する。

 欠点としては、発動までに時間がかかること。
 だが敵はすでに戦意を喪失しているのか、物陰に隠れたまま出てこない。

 いや、あのアッキーが諦めるわけがない。
 あれほど無様に生に執着していたアッキーが大人しく死を受け入れるとは思えない。

 なら、これも一興か。
 どんな手で逆転を考えているか。
 力を溜めながら、それを鑑賞させてもらおう。

 その答えが間違っていた時には、その命で代償を支払ってもらうけど。

「さぁ受けるがいい、神の一撃を」
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