知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第2章 南郡平定戦

第11話 軍船の上で

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 2週間を爆雷の量産と取り扱いの訓練に当て、ケイン・ウギから出発して3日。
 俺はまた船の上にいた。

 ただシータ王国に来た時に乗っていた船とはサイズも乗組員もすべてにおいて桁が違う。長さ40メートル、幅15メートルほどの大型の船で、乗員は300人ほど。うち漕ぎ手が100人ほどなので、実際に戦闘に参加するのは200人ほどだ。
 それが100艘もあるのだから、総兵力は2万ほど。それが編隊を組んでウォンリバーを北上していく。

 俺が乗るのはあまつがいる旗艦きかんで、それを先頭に残る99艘が続く。
 船尾から見た時のその陣営の壮大さは見事で、これが向かってくれば近代兵器のないこの時代なら我先に逃げ出したくなる気分は分からないでもない。むしろそうなってほしいものだと思う。

 話ではあと1時間ほどで対岸に着くというのだから、いやがおうにも緊張感が高まるというものだ。

 ――が。

「うぅー、風が気持ちいーけどだめー、しぬー」

 緊張感のない声が甲板に響く。

 忘れていたわけじゃないけど、そういえばニーアはこうなってしまうんだった。
 あの水鏡との一戦を見た後だとこれが同一人物? と疑いたくなる変貌へんぼうだ。

「申し訳ない、こんな緊張感のないやつで」

 甲板の左舷に固定された机を挟んで俺と天は向き合って座っている。
 その足元付近に、へりにもたれかかって倒れているニーアがいるのだ。

「問題ありませんよ。これくらいで士気が下がるような半端な訓練はしておりませんので」

「ならいいけど」

 そうつぶやき船首の方に顔を向ける。その時、一陣の風が吹き、髪の毛が顔にかかって、視界が遮られた。

 随分伸びたな。
 この世界に来て半年以上。これまでオシャレのために髪の毛を切るという発想がなかったし、天然パーマだったせいもあって暑さ以外で邪魔だと感じることもなく伸びるままに放置していた。
 けれど今や手ですけるほどにサラサラな髪質も手伝い、肩より長く伸びてくるとこういう時にさすがに邪魔だ。

 そういえば里奈もこれくらいの長さだったなぁ。
 よく邪魔とか思わなかったものだ。それともオシャレとは我慢なのか?

「素晴らしい」

「は? 何が?」

 急に天がそうつぶやいたので、何が起きたと思ってしまう。
 だがその目には熱があり、若干頬が紅潮しているように見える。

「いえ、ジャンヌさんの物憂げな横顔。我が船に舞い降りた天女と見間違うほどの美しさ。私に画才があれば、今ここで絵に残せたのにと残念に思います」

 うわー、そうだった。こいつ、こういうこと平気で言っちゃうんだよなぁ。
 しかもイケメンだからたちが悪い。

「初めてお会いした時は私の髪に負けぬ白い肌も美しいと思いますが、ここ半月ほどで焼けた健康的な肌も刺激的です。何よりそんな薄着を見せていただけるとは。この記憶を、どう後世に伝えたらよいのかと思うと……」

「お前のためじゃないから! 暑いんだよ! てか後世に残すな、そんなもん!」

 確かに焼けた。
 このシータの国が暑いというのもあるけど、俺にしてはかなりアウトドアな数週間だったわけで。最初の頃は日焼けでお風呂に入るのがつらかったものだ。日焼け止めとか欲しかったなぁ。

「そういえばこの後はどうする? 今回の作戦で、この川の対岸に橋頭保きょうとうほを作るってことは分かったけど、そこから更に攻め込むのは難しいんじゃないか?」

 というより対岸に拠点を築くのはいいとして、それを維持するとなればまた一苦労だ。
 よほど広範囲を占領するか、複数の拠点を連動させるか、強固な砦を築くかしないとすぐに攻め取られる。
 なにせ敵は陸続きに次々と兵を送れるのに対し、シータの方はこうして数時間の渡航が必要になるのだ。

「今はエインも反乱の鎮圧でこっちに戦力を割り振れないってのもあるけど、それが終わったら確実に本腰を入れて攻め寄せて来るだろうね」

「ええ、ですから今回の出兵で1つ大きな城を作るつもりです。ウォンリバーに面したところに船が乗り付けられる水陸両用の城を。そのためには一度、大きく勝たなければなりませんが、なに。上陸してしまえばこちらのものです」

 なるほど。これも他国との交易で財を成したシータ王国だからこそ成せる策か。
 敵を打ち破って奪った地域、金を大量につぎ込んで城塞化してしまうのだから。

「なら城の前方に出城でじろを作るのがいいと思う。空堀で掘り返した土を盛ってそこを出城にすれば、敵が攻めてきても鉄砲で追い返せるし、仮に落とされたとしても援軍が来るまでの時間稼ぎができる。それと平地に作るなら、こういう風に外周を星型にするといい。それでここに鉄砲を配備すれば敵が攻めてきた時に十字砲火で大打撃を与えることができる。あと敵の砲撃で壊されないよう、城壁は低く、分厚くかな」

「なるほど。それは素晴らしい。ジャンヌさんは軍の動かし方だけでなく、築城術にも秀でているのですね」

「いや、まぁ……そんなたいそうなことじゃないけど」

 出城を作っての防衛は大坂の陣の真田丸さなだまるだし、星型のは函館の五稜郭ごりょうかくだ。

 真田丸は大阪城の弱点と言われる城の南に作られた出城(城の外に作る小規模の城)で、敵を引き付け鉄砲で撃退するための施設。
 さらに正面以外に出入口を作れば側面から奇襲したり撤退する敵を追撃できる、攻守に優れた小城だ。

 五稜郭はもともとが中世ヨーロッパで開発が進んだ星型要塞を取り入れた城塞で、これは銃や大砲が普及したことによりこれまでの壁の高い城(オムカの王都バーベルのような)では対処しづらくなったために作られたもの。
 四角ではなく星型にすることで十字砲火ができたり、敵の攻め口を限定できるなど、攻撃の死角をなくすことが可能だ。俺が王都防衛戦で高い城壁のせいで城門への対処に苦慮したものが、この構造なら容易に対処できるのだ。

 それもこれも鉄砲が普及しているこの国だからできる戦法だった。
 軍事機密だから正確な数値は教えてくれなかったが、船に積まれた鉄砲と火薬の量を見るにこの国には最低1万丁ほど鉄砲が存在していると見た。
 信長の長篠の戦いが3千丁の鉄砲という比較だけでなく、なんと先込め式の火縄銃ではなく、元詰め式の銃も開発されているというのだからその火力はもしかしたら三国一かもしれない。

 というかこの世界の技術革新がどうなっているのかよく分からない。
 あるいは俺が言った五稜郭みたいに、そういったものに詳しいプレイヤーが開発したのかもしれない。

 しかし、そう考えると今のオムカにシータ軍が攻めてきたらかなりヤバいことになるんじゃないか。
 そもそも平野のど真ん中にあるから防御に適していないし、弱点だらけじゃないか。これは帰ったら王都の改築、可能なら遷都も視野に入れて対応しないと。

「ではさっそく構想を考えましょう。しかし心苦しいですね。こんな秘策を教えてもらって私には返せるものがない」

「いや、いいんだよ。ここで天が頑張ってくれればオムカに対する圧力が増えることはない。それが一番の報酬。というより、これでようやく命を救ってくれた恩返しができるってものさ」

「そう言っていただけるとありがたいですね」

 天はにっこりと微笑む。

 こいつにこうやって微笑まれると、なんだかこうお尻がむずかゆいというか、まんざらでもないというか。

 ……いやいや、こいつは男。俺も男。変なことは何もない。ただ単に褒められて嬉しい、それだけのこと!

 なんて俺が頭を振って雑念を打ち消していると、のしのしと甲板を踏みしめながら男が近づいてくるのが見えた。

「よぅ、ジャンヌ殿! 元気そうだな!」

 淡英たんえいだ。
 相変わらず重そうな衣服と宝石で彩った格好をしているのに、汗一つかいていない。

「ちょうどいいところに淡英。ジャンヌさんからよき城の縄張りを教えてもらいました。後でそのことについて意見をいただきたい。水軍の統括として船をどこにつけるか」

「おう、分かったぜ。いや、しかし城づくりもできるんだな、ジャンヌ殿は。あの海賊どもをぶっとばした手腕を見てただもんじゃねぇと思ったけど、やっぱ正解だな!」

「報告で聞きましたよ。時雨と淡英、2人を指揮して見事に勝利したとか。改めてお礼を申しあげます」

「いや、いいって。降りかかった火の粉を払っただけだし。むしろ他国の人間が勝手して悪かったと思ってる」

「いいってもんよ。あれはまさに総帥殿に指揮を受けているような感じだったからよ。いい感じに暴れられてすっきりしたぜ」

「ならば私の命令ももう少し聞いてもらえると助かるのですが……」

「はっは! それはそれ、これはこれだぜ、総帥殿」

 なんともまぁ、竹を割ったというか豪快な奴だ。
 天ももはや苦笑するしかない。

「ところでニーアってのはどこだい?」

「ん?」

「聞いたぜ、あの水鏡とドンパチやって、しかも勝ったってな! あれに勝つとは大したもんだ。なら次は俺とやるのが筋ってもんだろ!」

 強い奴がいたら戦いたいってか? どのバトル漫画の主人公だよ。
 でも残念だったな。

「どこって、そこ」

「あん?」

 足元で転がっているニーアを指し示すと、淡英は不可思議なものを見るような目線をニーアに向け、

「あーーーーー、そっか。そういや前も死にそうな顔してたな……」

 魂が抜けるんじゃないかと思うほどつまらなさそうに盛大なため息をつく淡英。

「またの機会を」

「んじゃあ戦争しようぜ。ほら、カルゥム城塞あんだろ。あそこ巡ってよ! よく考えたらジャンヌ殿にも借りがあんだよな。もっかいやって清算を――」

「淡英!」

 天の鋭い叱責に、淡英がびくっと体を震わせた。
 今は相談役の立場だが、同盟の使者でもあるのだ。そんな相手に同盟を破棄して戦争しようなんて言えば、怒られて当然だわな。

「す、すまん……忘れてくれ」

 天の刺すような視線を受け、これまでの威勢はどこへやら。塩を賭けられたナメクジのように小さく、借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった淡英だった。

「ま、同盟国になったんだから交流試合なんてのもできるんじゃないかな?」

 体の大きな男がしょぼんとしおれて小さくなった姿があまりに気の毒なので、そうフォローしていた。

「そ、そうか! そうだな! そんときにはそいつだけじゃない、オムカの強ぇ奴と――ひっ、総帥殿、そんな睨まないで……」

 叱られてしぼんだり、急に元気になったり。面白い奴だ。

「失礼しました、ジャンヌさん。これには後できっつく言い渡しますので」

「いや、いいんじゃないか。これから戦闘に入るんだ。元気なくらいがちょうどいい」

「そう、そうなんだよ。水軍は一に元気! 二に元気! 三四は飛ばして五に元気だからな!」

 うーん、いい感じに残念な脳筋ぶり。サカキに通じるものがあるぞ。もしかしたら親友になれるかもな。

「それより後続の船は問題ありませんか?」

「ああ、みんなちゃんとついてきてる。ただ一応最後に確認だけしたくってよ。本当にあれを使うのか?」

「ええ。あれを使って敵軍が混乱しているうちに上陸する。それが今回の作戦です」

「はぁ……まぁ一応訓練で使ったけどよ。あんなんで大丈夫かね」

「おやおや、淡英は私の策は気に入らないと? ジャンヌさんが気に入ったならオムカに行けば良いでしょう」

「そ、そんなんじゃねぇ! いや、その……というか本当に上手くいくのかなって」

「それが気に入ってないという意味でしょう。ならジャンヌさんに聞いてみましょうか。この作戦は上手くいくと思いますか?」

「え、俺? えっと……その、うん。大丈夫じゃないかな」

「なら大丈夫だな!」

「淡英、あなたはクビです」

「じょ、冗談がうまいなぁ総帥殿は!」

 天と淡英のやり取りを聞きながら見上げる。

 淡英の背後に帆のように突き出た木造の物体。艦橋とかマストではない。
 以前、俺はこれに悩まされた。王都防衛戦でのことだから、正直良いイメージはない。

 投石機が突き出た異物のようにそびえ立っていた。
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