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第4章 ジャンヌの西進
閑話1 長浜杏(エイン帝国大将軍)(前)
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「おい、煌夜。今日は何の集まりだよ。俺たちゃ暇じゃねーんだけど」
いつもの教会。
キッドが相変わらずのだみ声で品のない声を出す。
対する煌夜ちんは薄く笑みを浮かべたまま、天気の話でもするかのように切り出した。
「ええ、実はジャンヌ・ダルクの情報を得まして」
声にならないざわめきが教会を包んだ。
煌夜ちんと相方の麗明。僕様に、仁藤とキッドに諸人さん。あとクリスティーヌと、見知らぬ女子が1人。
元帥は今、ビンゴ王国の戦線で指揮を取っているというから来ていない。
こう見ると減ったものだ。
張人きゅんが帝国を裏切って里奈を連れてどこかへ逃げたというのにはちょっとショックだった。どちらも好ましい方の人間には入っていたから。
しかし……ジャンヌ・ダルクねぇ。
その名前に僕様も内心、さざ波立つのが分かる。
というか周囲の視線を感じる。
今も右の肩が痛むし、何より僕様のプライドと兵を打ち砕いたその名前には反応せざるを得ない。
まぁ、前よりは?
僕様も大人ですから?
一カ月前のことですし?
そりゃ少しは冷静になりましたよ。
というかあそこで冷静になれれば負ける勝負じゃなかった。
どうも僕様にはカッとなるところがあるらしい。今まではそれほど互角の戦いなんてしたことなかったから気づけなかった僕様の弱点。
まぁ、元帥は気づいてたみたいだけど。
忌々しいことに。
「で? そのジャンヌがどうしたって?」
「えぇ、彼女のことで重大な事実が分かりました」
まさか、弱点でも探っていたのか。
煌夜ちんは仲間に引き入れるとか言っておきながらこういうことするから油断ならないんだよ。
「それで? 何が分かったんだい?」
諸人さんが話を促す。
この人、苦手なんだよなぁ。ミスター正論というか。
「ええ、実はジャンヌ・ダルクは――」
ごくり、と唾を飲む音が聞こえる。
「どうやら川遊びをしたらしいです」
「へ?」
「というわけで、我々もしましょう」
「は?」
と、いうわけで。
まさかの水着回突入という珍事が発生した。
「なーにーがー、というわけなんだよ! 煌夜ちんは!」
そう吠えてみるけど、なんら意味はなかった。
まぁ、だって僕様。来ちゃってるし。着ちゃってるし(水着を)。
蒼い空! 青い海! 白い砂浜!
いやー、どこからどう見ても海だ。
ヤシの実なんて生えちゃってるし、南国リゾート万歳だ。
けどここは帝都。しかも教会の中というのだから驚き。
麗明のスキル『限界幻怪世界』で海の空間を作り出し、そこで遊ぶという。なんかもうスキルの使い方間違ってるよね。
ま、いいけど。
「ふん。精々、僕様の美しさに酔うがいいさ!」
この日のために新調した水着のお披露目だ。
日頃の調練のおかげか、きっちり締まった体は前の世界とは大違い。
これならどんな男でもイチコロだろ。
「はっ、おこちゃまが」
失笑が響く。
見なくても分かる。キッドだ。
とはいえその言葉にはカチンときたわけで、文句の一つでも言ってやろうと振り返る。
砂浜にキッド、その横に仁藤。
仁藤は普通のボクサーパンツ型だけど、キッドは……。
「はぁ? てかなんでビキニパンツなんだよ! 馬鹿じゃないの? キモ!」
「あ? てめぇぶっ放すぞ? 男の戦闘服なめんな、コラ」
「え、てゆうかないわー。それむしろセクハラだからね。いや、お前の存在がセクハラ」
「よし、抜け。てめぇの脳天に俺の相棒をぶち込んでエクスタシーにぶっ飛ばしてやるよ」
「はいもうお前逮捕な。罪状は僕様侮辱罪。大将軍舐めんな」
「誰がてめぇみたいなガキを舐めるか。20年後に出直しやがれ」
にらみ合う。
本当、こいついい性格してるよなぁ!
「はいはい、キッドもそんなに熱くなるなよ。てか長浜くん? 君よくあんなにボロ負けして元気だね? 恥ずかしくないの?」
仁藤が間に入って来た。
キッドを止めるかと思ったけど、どうやらキッド派らしい。
「ふん、勝敗は兵家の常って言葉知らないの? それにね、過去は過去! 反省した僕様は強いんだぞ」
「うわ、それ皆の前で言える? 死んだ人の家族に言える? そんな開き直られたら、少なくともボクは許せないなぁ」
「そういうお前こそ、恥ずかしくないの? 汚れ仕事は全部僕様たちに任せて、たまたま所属しているだけで元の世界に戻ろうっていう魂胆。コバンザメというか寄生虫もいいところ。図々しいにもほどがあるよね。それにボロ負けしたのはお前も一緒だろ? ジャンヌじゃなくてその部下にあそこまでボコボコにやられて。うわ、恥ずかしい」
「よし、キッド。殺れ。ボクが許す」
「なんでてめぇの許しがいるんだよ。まぁいい。ご指名だ、来やがれガキ」
はぁ、まったく。
これだから野蛮人たちは。
僕様は更に言い返そうと口を開いたが、その前に調停者がやって来た。
「まぁまぁ、お三方。今日は折角の休日です。楽しみましょう」
いつものにこやかな笑みを浮かべる諸人さん。
柄の入ったトランクス姿で、まぁ……うん、普通。どこか気の良い眼鏡のお兄さんだ。
「あぁ? 諸人、てめぇまた邪魔するのか?」
「邪魔、というより交渉ですね。せっかくこんなところに来たのですから、楽しまないと損ですよ」
「このガキをぶち殺すのが楽しみなんだよ。邪魔だ、そこどけや」
「なるほど、つまりキッドさん。あなたは――『私の言葉を聞きたい』ということでしょうか?」
キッドの顔がさっと青くなる。
あぁ、そういえばこないだ、里奈とのいさかいでボコボコにされてたっけ。
「……ふん! 分かったよ。だがガキ、てめぇ覚えてろよ」
「生憎、つまらないことは忘れるタイプなんでね」
「けっ、てめぇはいずれ殺す。覚えてやがれ」
三流の言葉を繰り返すなんて、五流だなぁ。
「では、わたしはこれで。可愛らしい大将軍様」
「ん、ありがとうね。諸人さん。けど美しいくらいは言って欲しいなぁ」
「はっはっは」
……いや、なんか言えよ!
はぁ、本当に苦手だ。
というわけで独りになった僕様は、さっそく手持ち無沙汰になった。
うーん、てゆうかこのメンツ。まともに遊べる相手、もとい常識人いなくない?
「ふん、そんな貧弱な体でよく美しいなんて言えますね」
また変なの来るしさ。
「そっちだって似たようなものだろ」
振り返ると、そこにはテーブルセットを出して、そこで優雅にお茶を飲んでいる女がいた。
このクソ暑いのにロングドレスを着こなしており、その横には執事服を着こなした長身の男が控えている。
うわ、馬鹿だ。馬鹿がいる。
「……えっと、誰?」
「貴女! この私を知らないの?」
「あぁ、そういえばいたなぁ。クリスティーヌなんとかっていう馬鹿が」
「馬鹿ではありません。淑女です」
やっぱ馬鹿だろ。
「なんですの? その目は」
「いやー、暑くないのかなぁって」
「そりゃ滅茶苦茶あつ――くないですわ。こんなところでも優雅にお茶を楽しむ。それが淑女というものですから。アラン? もっと氷を入れて頂戴。あぁ、あと風を」
いや、絶対淑女はこんなことをしないだろ。知らないけど、これだけは断言できる。
「暑いなら脱げばいいのに」
「そうはいきませんわ。この格好で待つこと。それもまた煌夜様の期待に添うことになるのですから」
「いや、煌夜ちんもそんなやせ我慢するためにこの空間作ったわけじゃないだろうしさ」
「煌夜様も……?」
クリスティーヌが煌夜という言葉に異様に反応した。
あぁ、そういえばこいつ。煌夜ファン、というか信者だっけ。
「アラン! 着替えをします。ふふ、見ていなさい。その貧弱な体に、パーフェクトなボディというものがどういうものか! 見せて差し上げますわ!」
アランと呼ばれた執事が、その場で即席の着替え場所を作る。
カーテンに遮られた中で、何やらごそごそとクリスティーヌが動く。
「あれ、えっとこれってどうやって脱ぐんでしたっけ。あ、汗で滑って……アラン? アラン? ちょっと助けて頂戴!」
はぁ……なんというか時間の無駄だった。
「少し泳ごうかな……」
「ああ、それがいいと思う」
「だよね。てかせっかく気合入れてきたのに、これじゃあ見せる相手いないじゃん」
「そうだな。俺たちは全員身勝手だから」
「あー、失敗したなぁ」
「ふっ、大将軍様でも失敗するんだな」
「まぁ、そりゃ完璧までとは――」
ちょっと待て。
僕様は今、誰と話している?
クリスティーヌとやらは今カーテンの向こうで苦戦中。
野郎どもは砂浜でビーチバレーみたいなことしてる。泳げや。
そして煌夜ちんは今いないし、麗明は論外。
となると――
「誰!?」
振り向く。
クリスティーヌが用意したお茶会セット。
そこに、悠然と座ってお茶をしている人物――少女がいた。
金髪のショートカット。年齢は12か13か。
だがその落ち着き具合と佇まいは、それ以上の貫録を持っているように思える。上は青のインナーに胸当て、さらに白のマントを羽織っている。下はスカートにブーツという、このシチュエーションにはまったくそぐわないもの。
だが、見覚えがある。
この顔、この格好。
「お前……いや、貴様は!」
「そんなところで突っ立ってないで、こっちに来てマッド・ティー・パーティでもどうだ、大将軍様?」
初めて見たのは教会で。
次に見たのは戦場で。
僕様に消えない心の傷を与えた人物。
一目見ただけで、はらわたが煮えくり返るほどの激情を与える人物。
「ジャンヌ・ダルク!」
後編へ続く
//////////////////////////////////////
帝国側も水着回です。
なんで?という感じですが、ようやくこちらの陣営も人が揃い、女の子も多いということでこうなりました。(なぜ?)
彼らとジャンヌの死闘は今後展開されていきますので、ここは1つ息抜きということでお楽しみください。
いいねやお気に入りをいただけると励みになります。軽い気持ちでもいただけると嬉しく思いますので、どうぞよろしくお願いします。
いつもの教会。
キッドが相変わらずのだみ声で品のない声を出す。
対する煌夜ちんは薄く笑みを浮かべたまま、天気の話でもするかのように切り出した。
「ええ、実はジャンヌ・ダルクの情報を得まして」
声にならないざわめきが教会を包んだ。
煌夜ちんと相方の麗明。僕様に、仁藤とキッドに諸人さん。あとクリスティーヌと、見知らぬ女子が1人。
元帥は今、ビンゴ王国の戦線で指揮を取っているというから来ていない。
こう見ると減ったものだ。
張人きゅんが帝国を裏切って里奈を連れてどこかへ逃げたというのにはちょっとショックだった。どちらも好ましい方の人間には入っていたから。
しかし……ジャンヌ・ダルクねぇ。
その名前に僕様も内心、さざ波立つのが分かる。
というか周囲の視線を感じる。
今も右の肩が痛むし、何より僕様のプライドと兵を打ち砕いたその名前には反応せざるを得ない。
まぁ、前よりは?
僕様も大人ですから?
一カ月前のことですし?
そりゃ少しは冷静になりましたよ。
というかあそこで冷静になれれば負ける勝負じゃなかった。
どうも僕様にはカッとなるところがあるらしい。今まではそれほど互角の戦いなんてしたことなかったから気づけなかった僕様の弱点。
まぁ、元帥は気づいてたみたいだけど。
忌々しいことに。
「で? そのジャンヌがどうしたって?」
「えぇ、彼女のことで重大な事実が分かりました」
まさか、弱点でも探っていたのか。
煌夜ちんは仲間に引き入れるとか言っておきながらこういうことするから油断ならないんだよ。
「それで? 何が分かったんだい?」
諸人さんが話を促す。
この人、苦手なんだよなぁ。ミスター正論というか。
「ええ、実はジャンヌ・ダルクは――」
ごくり、と唾を飲む音が聞こえる。
「どうやら川遊びをしたらしいです」
「へ?」
「というわけで、我々もしましょう」
「は?」
と、いうわけで。
まさかの水着回突入という珍事が発生した。
「なーにーがー、というわけなんだよ! 煌夜ちんは!」
そう吠えてみるけど、なんら意味はなかった。
まぁ、だって僕様。来ちゃってるし。着ちゃってるし(水着を)。
蒼い空! 青い海! 白い砂浜!
いやー、どこからどう見ても海だ。
ヤシの実なんて生えちゃってるし、南国リゾート万歳だ。
けどここは帝都。しかも教会の中というのだから驚き。
麗明のスキル『限界幻怪世界』で海の空間を作り出し、そこで遊ぶという。なんかもうスキルの使い方間違ってるよね。
ま、いいけど。
「ふん。精々、僕様の美しさに酔うがいいさ!」
この日のために新調した水着のお披露目だ。
日頃の調練のおかげか、きっちり締まった体は前の世界とは大違い。
これならどんな男でもイチコロだろ。
「はっ、おこちゃまが」
失笑が響く。
見なくても分かる。キッドだ。
とはいえその言葉にはカチンときたわけで、文句の一つでも言ってやろうと振り返る。
砂浜にキッド、その横に仁藤。
仁藤は普通のボクサーパンツ型だけど、キッドは……。
「はぁ? てかなんでビキニパンツなんだよ! 馬鹿じゃないの? キモ!」
「あ? てめぇぶっ放すぞ? 男の戦闘服なめんな、コラ」
「え、てゆうかないわー。それむしろセクハラだからね。いや、お前の存在がセクハラ」
「よし、抜け。てめぇの脳天に俺の相棒をぶち込んでエクスタシーにぶっ飛ばしてやるよ」
「はいもうお前逮捕な。罪状は僕様侮辱罪。大将軍舐めんな」
「誰がてめぇみたいなガキを舐めるか。20年後に出直しやがれ」
にらみ合う。
本当、こいついい性格してるよなぁ!
「はいはい、キッドもそんなに熱くなるなよ。てか長浜くん? 君よくあんなにボロ負けして元気だね? 恥ずかしくないの?」
仁藤が間に入って来た。
キッドを止めるかと思ったけど、どうやらキッド派らしい。
「ふん、勝敗は兵家の常って言葉知らないの? それにね、過去は過去! 反省した僕様は強いんだぞ」
「うわ、それ皆の前で言える? 死んだ人の家族に言える? そんな開き直られたら、少なくともボクは許せないなぁ」
「そういうお前こそ、恥ずかしくないの? 汚れ仕事は全部僕様たちに任せて、たまたま所属しているだけで元の世界に戻ろうっていう魂胆。コバンザメというか寄生虫もいいところ。図々しいにもほどがあるよね。それにボロ負けしたのはお前も一緒だろ? ジャンヌじゃなくてその部下にあそこまでボコボコにやられて。うわ、恥ずかしい」
「よし、キッド。殺れ。ボクが許す」
「なんでてめぇの許しがいるんだよ。まぁいい。ご指名だ、来やがれガキ」
はぁ、まったく。
これだから野蛮人たちは。
僕様は更に言い返そうと口を開いたが、その前に調停者がやって来た。
「まぁまぁ、お三方。今日は折角の休日です。楽しみましょう」
いつものにこやかな笑みを浮かべる諸人さん。
柄の入ったトランクス姿で、まぁ……うん、普通。どこか気の良い眼鏡のお兄さんだ。
「あぁ? 諸人、てめぇまた邪魔するのか?」
「邪魔、というより交渉ですね。せっかくこんなところに来たのですから、楽しまないと損ですよ」
「このガキをぶち殺すのが楽しみなんだよ。邪魔だ、そこどけや」
「なるほど、つまりキッドさん。あなたは――『私の言葉を聞きたい』ということでしょうか?」
キッドの顔がさっと青くなる。
あぁ、そういえばこないだ、里奈とのいさかいでボコボコにされてたっけ。
「……ふん! 分かったよ。だがガキ、てめぇ覚えてろよ」
「生憎、つまらないことは忘れるタイプなんでね」
「けっ、てめぇはいずれ殺す。覚えてやがれ」
三流の言葉を繰り返すなんて、五流だなぁ。
「では、わたしはこれで。可愛らしい大将軍様」
「ん、ありがとうね。諸人さん。けど美しいくらいは言って欲しいなぁ」
「はっはっは」
……いや、なんか言えよ!
はぁ、本当に苦手だ。
というわけで独りになった僕様は、さっそく手持ち無沙汰になった。
うーん、てゆうかこのメンツ。まともに遊べる相手、もとい常識人いなくない?
「ふん、そんな貧弱な体でよく美しいなんて言えますね」
また変なの来るしさ。
「そっちだって似たようなものだろ」
振り返ると、そこにはテーブルセットを出して、そこで優雅にお茶を飲んでいる女がいた。
このクソ暑いのにロングドレスを着こなしており、その横には執事服を着こなした長身の男が控えている。
うわ、馬鹿だ。馬鹿がいる。
「……えっと、誰?」
「貴女! この私を知らないの?」
「あぁ、そういえばいたなぁ。クリスティーヌなんとかっていう馬鹿が」
「馬鹿ではありません。淑女です」
やっぱ馬鹿だろ。
「なんですの? その目は」
「いやー、暑くないのかなぁって」
「そりゃ滅茶苦茶あつ――くないですわ。こんなところでも優雅にお茶を楽しむ。それが淑女というものですから。アラン? もっと氷を入れて頂戴。あぁ、あと風を」
いや、絶対淑女はこんなことをしないだろ。知らないけど、これだけは断言できる。
「暑いなら脱げばいいのに」
「そうはいきませんわ。この格好で待つこと。それもまた煌夜様の期待に添うことになるのですから」
「いや、煌夜ちんもそんなやせ我慢するためにこの空間作ったわけじゃないだろうしさ」
「煌夜様も……?」
クリスティーヌが煌夜という言葉に異様に反応した。
あぁ、そういえばこいつ。煌夜ファン、というか信者だっけ。
「アラン! 着替えをします。ふふ、見ていなさい。その貧弱な体に、パーフェクトなボディというものがどういうものか! 見せて差し上げますわ!」
アランと呼ばれた執事が、その場で即席の着替え場所を作る。
カーテンに遮られた中で、何やらごそごそとクリスティーヌが動く。
「あれ、えっとこれってどうやって脱ぐんでしたっけ。あ、汗で滑って……アラン? アラン? ちょっと助けて頂戴!」
はぁ……なんというか時間の無駄だった。
「少し泳ごうかな……」
「ああ、それがいいと思う」
「だよね。てかせっかく気合入れてきたのに、これじゃあ見せる相手いないじゃん」
「そうだな。俺たちは全員身勝手だから」
「あー、失敗したなぁ」
「ふっ、大将軍様でも失敗するんだな」
「まぁ、そりゃ完璧までとは――」
ちょっと待て。
僕様は今、誰と話している?
クリスティーヌとやらは今カーテンの向こうで苦戦中。
野郎どもは砂浜でビーチバレーみたいなことしてる。泳げや。
そして煌夜ちんは今いないし、麗明は論外。
となると――
「誰!?」
振り向く。
クリスティーヌが用意したお茶会セット。
そこに、悠然と座ってお茶をしている人物――少女がいた。
金髪のショートカット。年齢は12か13か。
だがその落ち着き具合と佇まいは、それ以上の貫録を持っているように思える。上は青のインナーに胸当て、さらに白のマントを羽織っている。下はスカートにブーツという、このシチュエーションにはまったくそぐわないもの。
だが、見覚えがある。
この顔、この格好。
「お前……いや、貴様は!」
「そんなところで突っ立ってないで、こっちに来てマッド・ティー・パーティでもどうだ、大将軍様?」
初めて見たのは教会で。
次に見たのは戦場で。
僕様に消えない心の傷を与えた人物。
一目見ただけで、はらわたが煮えくり返るほどの激情を与える人物。
「ジャンヌ・ダルク!」
後編へ続く
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帝国側も水着回です。
なんで?という感じですが、ようやくこちらの陣営も人が揃い、女の子も多いということでこうなりました。(なぜ?)
彼らとジャンヌの死闘は今後展開されていきますので、ここは1つ息抜きということでお楽しみください。
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