知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第4章 ジャンヌの西進

第33話 桑折景斗

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 少年の名前は桑折こおり景斗けいとと言った。
 休憩の後、村に着くまでの道中、俺と里奈で彼と話をしたのだ。

 もう1人のアイラ――後に分かるのだが愛良あいらと書くらしい――は竜胆に任せた。
 ああいった手合いは、良く言えば物怖ものおじしない、悪く言えば何も考えてない奴の方がうまくいくような気がしたのだ。木刀仲間だし。

 景斗いわく、彼らは数日前にこの世界に放り出されたらしい。
 しかもヴィレスらビンゴ軍残党と帝国軍の攻防のど真ん中に、だ。

 愛良と出会った景斗は、必死に逃げ回っている間にヴィレスに拾われ保護されたということだ。

 こうしてめでたくこの世界の軍に保護された2人だが、不運なことにヴィレスらビンゴ軍は圧倒的な物量差に敗走しているところだったのだ。
 なんだかデジャヴを感じる。俺が初めてジルの軍に保護された時も負けて逃げてる最中だったからなぁ。

 そんなこんなで必死に逃げ回っていたところで、俺たちと出会い、そして今、こうして共に歩いているというわけだけど……。

「ひぃ……ひぃ……」

 歩き始めて30分も経った頃には、いい感じに呼吸が乱れてきた。
 それでも聞くべきことは聞いておく必要がある。

「で……なん……で……けん……かした……?」

「えっと……すみません。なん、です?」

 通じてないし!
 ただ答えようにも動悸が激しくてうまく言葉にならない。

「なんで愛良ちゃんと喧嘩してたのかって」

 さすが里奈。
 ちゃんと通訳してくれた。

 てかあと2時間って言ったのに、全然目的地見えてこないぞ!
 まさか道に迷ってないよな?

「明彦くん、おぶろうか?」

 里奈にこんな心配もされた。
 けどさすがに俺にもプライドがある。里奈の前で格好悪いとこ見せてられない……いや、もう十分格好悪いか。

 けどやっぱりそれは断って、なんとか頑張ろうと決意を新たに大きく深呼吸して歩き出す。

「それで……どう、なんだ?」

 まだ呼吸が辛いけどあとは我慢だ。
 男の半分は見栄とやせ我慢でできているんだと知った。

「えっと……その、ごめんなさい」

「いや、うん。謝らなくて、いいから」

 この感じ。なんかイッガーと同じ匂いを感じるぞ。

「えっと……その……あの……」

 もしかしたらそれ以上かもしれない。
 イッガーはのんびりゆっくりだけど話は前に進めようとした。けど景斗はまったく進まない気がする。

「別に、怒ってるわけじゃ、ないんだ。から、ゆっくり、話してくれ」

「は、はい……ごめんなさい」

 駄目だこりゃ。

 とりあえず俺は喋るのも疲れるので、質問は里奈に任せて、大事なところだけ突っ込むことにした。

 それをまとめるとこうだ。

「なんでも……僕がいけないらしいんです。黙って隠れてなきゃいけないのに……怖くて。スキル使って逃げ出そうとして、それで敵に見つかって……。それに、一目散に逃げたから……卑怯だって」

 ちなみにこれは俺の意訳。
 これだけの話を30分近く根気よく聞きだした俺たちの忍耐を褒めて欲しい。さらにそれをまとめて、いらないところを削って削ってこんな感じに落ち着いた。なお、「ごめんなさい」と発言したのは37回もあった。謝りすぎだろ。

 まぁつまり、いきなり戦いに放り込まれて怖くなったということだ。それ自体は全然責められるようなことじゃない。俺だって最初はそうだった。
 今でも怖いけど、取り乱すことはなくなったと思う。それだけ背負っている命があるからだろう。

「ふぅ……てかそれでお仕置きってか……? 愛良ちゃんっての見た目に寄らず……いや、見た目通りか……」

「そうだね。あれだけ気合入ってるの、初めてみるかも」

 なんてことを言いながら笑ってる里奈。
 何が楽しいんだろうか……。

「ところで明彦くん?」

 里奈がくるりとこちらを向く。
 笑顔のままだけど、どこか不自然な感覚。

「なんだよ。だからジャンヌだって――」

「愛良ちゃんって何?」

「へ?」

「いや、なんでちゃん付けなのかなぁって?」

「え、いや……別に」

「なんでちゃん付けなのかなぁ?」

 ゾッと来た。

 ヤバい、怖い、殺される、収穫される!
 笑ってるように見えるけど、とんでもない。背後にどす黒いオーラが見えている気がするぞ。

 てかこれはやきもちってことでいいのか?
 里奈にはちゃんをつけずに愛良にちゃんをつけたから怒ってるでいいのか?
 嫉妬ってのは悪くない気分だけど、命がけとなれば話は別だ。

「ゴメンナサイ、本当にゴメンナサイ」

「いや別に? 怒ってるわけじゃないの。なんで知り合ってすぐの子にちゃん付けなのかな、ってちょっと疑問に思っただけだし? 別にそれで何が変わるってわけじゃないし? ふーん、明彦くんってあぁいうのが好きなんだ、って思っただけだし? ふーん、へー、ほー? 綺麗だったもんねー、愛良“ちゃん”って」

 あぁ、理解した。
 これが世間一般に言う『修羅場』という奴なのか……。

 まさか自分がその場所に入り込むとは夢にも思わなかったわけで。

「えっと、その……里奈………………」

「どうせ私には呼び捨てですもんねー。そうですよねー。しょうがないですもんねー」

 うぅ、完全に意固地になってしまっている。
 く……こうなったら呼ぶしかないのか。
 里奈を、ちゃん付けで。

 でも思う。
 俺と里奈はそういう関係でいいのか?
 そんな気軽に呼び合う仲でいいのか?

 でもそれが里奈の望みであるなら……俺は……。

「ごめん! もうちょっと俺に覚悟する時間をくれ!」

 駄目だ。恥ずかしすぎて言えない。
 なんか前から知っているのだと、今さらという気がする。

 てかちゃん付けなんて、意識して誰かを呼べるわけない。
 さっきも無意識で呼んでたわけだし。

 というわけでもう里奈には平謝り。
 すると、里奈は小さく嘆息して、

「ちぇっ、惜しい。もう少しで明彦くんにちゃん付けで呼ばせられたのに」

 え? それってわざとってこと?
 もしかして演技だったってこと?
 もう何がなんやら分からない。

 知力99あっても、こうやって経験がないと良いように転がされるわけね……。よく勉強になりました。

「あの……えっと、その……ご、ごめんなさい。ぼ、僕のせいで……その……」

「いーのいーの。明彦くんだもん。それよりきっかけくれてありがとねー」

 なんか里奈が悪女になっていく……。
 いや、前からこんな感じだったっけか?
 もしかしたらマリアとニーアの影響を受けたのかもしれない。あぁ頭が重い。手足が重ければ鎧も重い。

「うーん、でもそれだけで殴るなんて酷いよね」

 里奈が自分で話を軌道修正した。
 今まで好き勝手話を脱線させて放置する奴が多かったせいで、なんだか里奈が特別に見える。

「あ……いや、その……ごめんなさい」

「いや、えっと何がかな?」

 まぁだからって話が進むわけじゃないんだけど。

「えっと……それは……あの……ご、ごめんなさい」

「うん、ゆっくりで言いから話してみて」

 里奈にさとされるように言われ、小さく頷いた景斗は、恐る恐るといった様子で話し出した。

「殴られたのは……愛良さん、じゃ……ないです。他の兵の人に……殴られて……その……」

「じゃあ愛良さんはどうして?」

「その……分からない、です。急に腕掴まれて、引っ張られて……あの広場に連れてかれて…………『あんたみたいな卑怯な男、嫌い』だって……そこに、ジャンヌさんとか、来ました。その、ごめんなさい」

 あぁ、惜しい。
 もう少しで『ごめんなさい』なしの会話ができたのに。

「なるほどね」

 里奈がこちらに視線を向けてくる。
 俺は小さく頷いた。

 どうも愛良ちゃ――愛良は景斗を助けたように見える。
 それ以上放っておいたら、なぶり殺しに遭うと思い、間に入ったのだろう。
 しかもその後の言動で、自分に非が集まるようにしてまで。一体何がしたいんだろうか。何を考えているのだろうか。

「こうなったら……竜胆に任せるしかないか、愛良ちゃ――」

「(ギロッ)」

「愛良のことは……」

 っと、危ない危ない。
 里奈が凄い目で睨んできた。死ぬかと思った。

「ところで景斗。さっき、スキルって……言ったよな。どんなスキルなんだ?」

 竜胆には前、あまり他人に喋るなと言っておいてなんだけど、彼らの身柄を預かる以上は知っておくのが重要なことになる。

「あ、はい……その……」

 景斗がそう言った次の瞬間、その体が大きくなった。
 いや、違う。
 景斗がこちらに近づいたのだ。

 そして減速もなくそのままくれば――激突する!

「うぉぁ!?」

「明彦くん!?」

 俺が後ろに転びそうになったのを、里奈が咄嗟に抱き着いて頭から落ちるのを助けてくれた。
 行軍から外れたため、後続に踏みつぶされることはなかったが。

「あ、危なかった……」

「うん。明彦くん、ちょっと匂うよ。せっかくのさらさらヘアーが台無しだよ?」

 そりゃ風呂入ってないからな。
 じゃなく!

 てか里奈に抱き着かれるようにしている形になっているので、里奈の顔がものすごく近い。

 里奈は顔の下半分はマフラーで隠しているが、整った鼻筋に長く伸びたまつげ、そして丸く見開かれた瞳など、あぁ可愛いなぁと思ってしまう。さらに鎧なんて着ずに、薄い布地の服にベストを一枚羽織っただけ、下はスカートにタイツという10月の山の上だというのにかなりの軽装だから、直に体温を感じてしまう。
 それがなんとも生の人間を感じてしまうような気分がして、どこか背徳感を覚えてしまうのだ。

「お、俺はもう大丈夫だから!」

「え、もう? もうちょっとギュッとしてたいのに」

 里奈の手を振りほどいて慌てて立ち上がる。
 疲労からクラっと来たけど、少し息を整えてなんとか回復する。

 てかやっぱり里奈、あの馬鹿2人の影響受けてないか?

「あ、その……ごめんなさい。脅かすつもりは……なかった、かもです」

 と、景斗が俺たちの前に出て謝罪してきた。
 その様子を、俺は――里奈も一緒に目を見開いて眺めていた。

「え……? なにこれ? 景斗くんが、2人?」

 どうやら俺の目の錯覚じゃないらしい。
 目の前に桑折景斗。そしてその横に、全く同じ背格好の男が横に立っているのだ。

 まさか双子だった!?
 いや、そんなわけない。今までどこにいたんだって話だ。

 つまりこれがスキル。

「これが僕のスキル……『ドッペルゲンガー』です」

 ドッペルゲンガー。またはダブル。その人間とまったくまったく同じ人間のことだ。

 この世には3人同じ顔をした人間がいるというが、そういうのではない。
 完全に同個体として定義されるもの。本人の霊体とか、本人がそれを見たら死ぬとか、眉唾な話を数多く残してきた有名な超常現象だ。

「ど、ドッペルゲンガーって……それ、実体なのか?」

「あ……はい。ごめんなさい、触れます」

 右にいる景斗がゆっくり近づくと、俺の手を握った。
 暖かい、人間のぬくもり。間違いない。これが景斗のスキルか。
 しかもこうやって使役も出来るというなかなか使い勝手がよさそうだ。

 景斗の体が離れ、もう1つの体に近づき、そしてそれが重なった時、もう1人の景斗は消えていた。

「そういうことです。だから、これに身代わりになってもらって……逃げました、ごめんなさい」

 なるほど。そういう使い方もあるのか。
 感心すると同時、色々な活用法を考えてしまう。
 身代わり、囮とかだけじゃなく、武器が使えれば1対1の状況でも2対1にできる。意識をどう共有するのか分からないが、俺だったら2方面の指揮を撮れたりする。それだけじゃない。なんとアリバイ工作までできるのだ! これによって1千キロ離れたところで起きた殺人事件でも鉄壁のアリバイを……いや、それは違うか。

 はぁ……まぁ色んな使い方ができるから、後でその活用法でもまとめてみるか。

 とりあえずこちらのプレイヤーは大方理解できた。
 竜胆の方も、しっかり聞き出してくれていればいいんだが。

「おーい、もうすぐだぞー」

 先頭の方から声が聞こえた。
 いつの間にか最後尾まで下がって来たらしい。

「もう少しだって、いこ、明彦くん」

「……ああ」

 とりあえず彼らのことは落ち着いてから考えよう。
 あともう少し。大丈夫。いける。俺はできる子。

 そうやって震える足を叱咤して、俺は再び歩き始めた。
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