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第4章 ジャンヌの西進
第42話 我不及韓信
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嚢沙之計と呼ばれる策がある。
まぁ簡単に言えば水攻めだ。
上流で堤を築いて川をせき止め、敵が川に入ったタイミングを見計らって水を流す。
要はダムを決壊させて、その鉄砲水で敵を押し流すという自然の力を使ったものだ。
有名なところとしては楚漢戦争の天才軍略家韓信だろう。
戦力差があっても覆せるところ、(戦死者への補填と戦力の補充と比べて)安価であること、何より決まった時に確実に相手の戦意をへし折れるところから、洋の東西を問わずいたるところで使われている。
そして今。
戦力差がある状態で、兵を無駄にできない環境で、相手の戦意をへし折りたい状況のこのタイミングにはぴったりな策だ。
しかしただ川をせき止めるだけでは、充分な水量を得られない。
だから何日も前――敵の砦を荒らして回ったころ――からクロエたちに命じて堤を築かせていた。
幸いにして雨も降り、水量は充分だと報告は受けている。
そのクロエたちは、今か今かと俺からの合図を待っているだろう。
とはいえ策が成功する条件はまだ整っていない。
まずは敵を川に引きずり込まなければならない。
だが背後から敵が迫っている以上、相手からすれば対峙しているだけで勝ち確なのだ。だから無謀であってもこちらから攻める必要がある。
「全軍、川を渡れ!」
旗を振り、全軍に進軍を指揮する。
本当は先頭に立って進みたかったが、サカキやクルレーンにフレール、サールだけでなく、ヴィレスとグロスにも止められた。
仕方なく中軍に下がったが、それでも俺には『古の魔導書』がある。
地図により戦場を俯瞰で見て、シミュレーションゲームみたくタイミングを見計らうことが可能だ。
ヴィレスが3千の兵で川を渡り始める。
その後に俺たち中軍が川を渡ることになるが、敵は動かない。
『半ば渡らしめてこれを撃つは利なり』
孫子の行軍篇における有名な一説だ。
敵が川を渡って来たのなら、半数が川を渡り切ってから攻撃するのが良い。川を渡ったばかりで濡れた兵は動きが鈍くなるし、渡河していない部隊は戦闘に参加できないから兵力差が生まれやすい。
さらに敵は撤退しようにも再び川を渡らなければならないし、渡っている最中の部隊とぶつかって混乱するから容易に討つことができるというものだ。
「さすがに来ないか……」
相手にも相応の知恵者がいるのだろう。
まぁこの世界に孫子がいるわけはないだろうけど、兵法の真理はどの世界でも同じだと思う。
案にたがわず敵はヴィレスの軍が渡りきってから攻撃してきた。
まずは弓矢による攻撃。
それをヴィレスたちは木の盾で防ぐ。
幸いだったのは鉄砲の音がしないこと。
ここまで速度を優先したから持ってきていなかったのだろう。さすがに鉄砲は木の盾だと防げない。
弓の攻撃にヴィレスたちが耐えている間に、俺たちも渡河を急ぐ――わけではなくゆるりと進む。
喚声があがった。
敵の歩兵が突っ込んできたのだ。
ヴィレスたちを川に落とそうと、猛烈な勢いで迫ってくる。
ヴィレスはそれに対し、その場でとどまり応戦する。
だが3千対3万だ。徐々に兵力差により押されていく。
ここまでか。
「撤退する! 鉦を鳴らせ! 弓隊構え、仰角にて一斉射! とにかく飛ばせ! 味方に当てるなよ!」
撤退の下知をしながらも、中軍1千に弓を構えさせた。
鉦が鳴る。するとヴィレスたちが崩れるようにこちらに向かってきた。
距離を開けていたからぶつかり合って混乱するようなことはない。
「よし、撃て!」
矢が空気を裂く音が響く。
上向きに放たれた矢は味方の上を飛んで敵の方へと落ちる。
とはいえそこまで正確な射撃が行えるわけがない。
3万もいるのだから、どこかに当たればラッキー程度の射撃なだけ。要は敵の進軍をわずかでも鈍らせ、ヴィレスたちの撤退を援護するだけでいい。
「よし、ここは下がる。だが矢はいつでも撃てるよう準備しておけ!」
後ろを見れば、味方の後軍はすでに川岸から十分に離れた。
俺は馬を返すと、元の岸へと戻る。
「敵は!?」
川を渡りきった。
振り返るとヴィレスたちはまだ敵の追撃を受けていた。
「弓でヴィレスを援護! 味方に当てるな!」
弓が再び帝国軍の上に降り注ぐ。
わずかに敵が怯んだ間に、ヴィレスが部下たちを叱咤して一気に川を渡り切った。俺たちの横をヴィレスたちが脱兎のごとく走り抜ける。
そうなると今度は俺が3万の追撃を受ける番だ。
相手は若干足を弱めたものの、追撃の手を止めることはない。
まず追ってきたのは先鋒の1万ほどか。その後ろからもう1万がついてくる。
どうやら相手も1万を3段に分けて攻撃してくるらしい。
「鉄砲隊! 構え、放て!」
クルレーンが叫ぶと同時、大音声が響き、敵の一部が崩れる。
だが1万に対し150の鉄砲では焼け石に水だ。
しかも次弾を装填する前に、敵は来る。
「クルレーン隊、退くぞ!」
クルレーン率いる鉄砲隊が逃げる。
一瞬、クルレーンと視線がかち合った気がした。
俺は小さく頷く。
敵はもう川を渡りきろうとしている。
いや、前衛の1万だけだ。何をもたついているのか、中軍は半数が川を渡り始めたころだ。
もう少し引き入れたいが……これ以上は1万を止められない。どうする。
「ジャンヌさん、早く退きましょう!」
フレールが俺を急かすようにして、馬の轡を取った。
いや、まだできる。
敵の中軍を動かしてみせる。
だから俺はそれを無視して、旗を大きく振り上げ、そして叫ぶ。
「私がオムカ国軍師、ジャンヌ・ダルクだ! この首、取って見ろ!」
どれだけその声が響いたか分からない。
それでも敵の目の色が変わった。そんな気がした。
「一体何を――」
フレールの抗議を遮って、俺は馬をひるがえした。
「よし、逃げる!」
「ああ、もうなにがなんだか!」
「兄さん。黙って。ジャンヌさんが無駄なことするわけないじゃない。馬鹿なの?」
「なんでこっちが悪者だよ……」
後ろを見ながらタイミングを計る。
敵の先頭が上陸した。その背後からも怒声が轟き、中軍もスピードアップしたように思える。
手元の『古の魔導書』を見ても、今がその時。
――よし。
「鉦、鳴らせ!」
叫び、旗を振る。
それに応えるように、先に逃げていた味方の一団が鉦を猛連打する。
敵の怒声のほか静まり返った大自然の中に、激しく鉦の音が鳴り響く。
だが何も起こらない。
もしかしてタイミング間違えたか。欲張ろうとして遅すぎたのか。
敵がどんどん上陸してくる。
こうなったら潰走前提で逃げるか、玉砕覚悟で足止めするしかない。
――死。
これまで何度か口にした言葉が、重くのしかかってくる。
あれだけ自分はどうなってもいいとか言いながらも、こうしてしっかり恐怖を感じている。
どれだけ身勝手かって話だ。
だが、その思いも一気に霧散した。
聞こえた。大気を揺るがす振動。そして、地鳴りが。
足元が揺れ、馬が怯えたように身じろぎするのを押さえつけるのに必死。フレールたちも、敵も同じく何事かと足を止めた。
そして――
「来た!」
川の上流。
山々が連なる連峰のふもと。そこに小さな――いや、対比で見れば巨大なものが近づいてくる。
敵も味方も、その音と振動に気を取られて全てが制止する。
そして、それが何か判明した時、起こったのは恐慌。
「洪水だぁぁぁぁ!」
敵の悲鳴。
川辺にいた兵は少しでも川から離れるよう、川の中にいた兵は一刻でも早く岸に上がるよう必死にもがく。
だが水の流れは恐ろしく速く、見えたと思った十秒後には怒涛の波となって俺たちの位置まで到達した。
悲鳴が上がる。
濁流となった水が、敵兵を飲み込んでいく。
その光景に、誰もが目を奪われ呆然とする中、俺は小さく歯噛みしていた。
対岸に目を凝らす。残った敵は1万以上いる。
流されたのはわずかだった。中軍が警戒したようで思った以上に川へ入り込んでこなかったのだ。
策がバレていたのか。
あるいは退き方が露骨すぎたか。
どちらにせよ、俺は韓信に及ばないというわけだ。
それでもいい。常勝将軍を気取るわけじゃないし、失敗してばっかりの俺にはおこがましい限りだ。
気負わなくていい。
俺にできることを堅実にやるだけだ。
そしてまた数千の命が俺の手によって消えていった。更にそこに1万が加わるのだから、勝ったなんて気楽に喜んでいられない。
「全軍反転! 残った敵を殲滅しろ!」
即座にクルレーンが敵の先鋒に鉄砲を撃ちかける。
ただでさえ嚢沙之計で唖然としていたところに鉄砲を撃ちかけられたのだ。
こちらは少し減って7千弱、それに対し相手は1万とはいえ、背後には激流と化した川。退路はなく、援軍も来れない状態となれば、誰もが浮足立って当然。
そこに鉄砲を撃ちかけられ、しかもこれまで逃げていた敵が逆襲してくれば、たまったものではないだろう。
戦は数じゃない。
結局は人間の心理だ。
どれだけ数で上回っていても、戦うことを諦めてしまえば負ける。
そんな彼らを憐れと思う心はもちろんある。
だが、ここで彼らを討ち取らなければ自分たちが死ぬ。
自分たちが死にたくないから、相手に死んでもらう。
本当に、戦争なんてものは最低の所業だ。それを強要する、この世界も最低。
あぁ、帰って里奈に会いたい。
よくわからないテンションに苦笑することもあるけど、やっぱり彼女と一緒にいると落ち着く。
だから早く帰りたい。
今すぐにでも帰って、こんな光景から目を背けたい。
そうしないと、俺の心が壊れてしまう。そんな気がした。
まぁ簡単に言えば水攻めだ。
上流で堤を築いて川をせき止め、敵が川に入ったタイミングを見計らって水を流す。
要はダムを決壊させて、その鉄砲水で敵を押し流すという自然の力を使ったものだ。
有名なところとしては楚漢戦争の天才軍略家韓信だろう。
戦力差があっても覆せるところ、(戦死者への補填と戦力の補充と比べて)安価であること、何より決まった時に確実に相手の戦意をへし折れるところから、洋の東西を問わずいたるところで使われている。
そして今。
戦力差がある状態で、兵を無駄にできない環境で、相手の戦意をへし折りたい状況のこのタイミングにはぴったりな策だ。
しかしただ川をせき止めるだけでは、充分な水量を得られない。
だから何日も前――敵の砦を荒らして回ったころ――からクロエたちに命じて堤を築かせていた。
幸いにして雨も降り、水量は充分だと報告は受けている。
そのクロエたちは、今か今かと俺からの合図を待っているだろう。
とはいえ策が成功する条件はまだ整っていない。
まずは敵を川に引きずり込まなければならない。
だが背後から敵が迫っている以上、相手からすれば対峙しているだけで勝ち確なのだ。だから無謀であってもこちらから攻める必要がある。
「全軍、川を渡れ!」
旗を振り、全軍に進軍を指揮する。
本当は先頭に立って進みたかったが、サカキやクルレーンにフレール、サールだけでなく、ヴィレスとグロスにも止められた。
仕方なく中軍に下がったが、それでも俺には『古の魔導書』がある。
地図により戦場を俯瞰で見て、シミュレーションゲームみたくタイミングを見計らうことが可能だ。
ヴィレスが3千の兵で川を渡り始める。
その後に俺たち中軍が川を渡ることになるが、敵は動かない。
『半ば渡らしめてこれを撃つは利なり』
孫子の行軍篇における有名な一説だ。
敵が川を渡って来たのなら、半数が川を渡り切ってから攻撃するのが良い。川を渡ったばかりで濡れた兵は動きが鈍くなるし、渡河していない部隊は戦闘に参加できないから兵力差が生まれやすい。
さらに敵は撤退しようにも再び川を渡らなければならないし、渡っている最中の部隊とぶつかって混乱するから容易に討つことができるというものだ。
「さすがに来ないか……」
相手にも相応の知恵者がいるのだろう。
まぁこの世界に孫子がいるわけはないだろうけど、兵法の真理はどの世界でも同じだと思う。
案にたがわず敵はヴィレスの軍が渡りきってから攻撃してきた。
まずは弓矢による攻撃。
それをヴィレスたちは木の盾で防ぐ。
幸いだったのは鉄砲の音がしないこと。
ここまで速度を優先したから持ってきていなかったのだろう。さすがに鉄砲は木の盾だと防げない。
弓の攻撃にヴィレスたちが耐えている間に、俺たちも渡河を急ぐ――わけではなくゆるりと進む。
喚声があがった。
敵の歩兵が突っ込んできたのだ。
ヴィレスたちを川に落とそうと、猛烈な勢いで迫ってくる。
ヴィレスはそれに対し、その場でとどまり応戦する。
だが3千対3万だ。徐々に兵力差により押されていく。
ここまでか。
「撤退する! 鉦を鳴らせ! 弓隊構え、仰角にて一斉射! とにかく飛ばせ! 味方に当てるなよ!」
撤退の下知をしながらも、中軍1千に弓を構えさせた。
鉦が鳴る。するとヴィレスたちが崩れるようにこちらに向かってきた。
距離を開けていたからぶつかり合って混乱するようなことはない。
「よし、撃て!」
矢が空気を裂く音が響く。
上向きに放たれた矢は味方の上を飛んで敵の方へと落ちる。
とはいえそこまで正確な射撃が行えるわけがない。
3万もいるのだから、どこかに当たればラッキー程度の射撃なだけ。要は敵の進軍をわずかでも鈍らせ、ヴィレスたちの撤退を援護するだけでいい。
「よし、ここは下がる。だが矢はいつでも撃てるよう準備しておけ!」
後ろを見れば、味方の後軍はすでに川岸から十分に離れた。
俺は馬を返すと、元の岸へと戻る。
「敵は!?」
川を渡りきった。
振り返るとヴィレスたちはまだ敵の追撃を受けていた。
「弓でヴィレスを援護! 味方に当てるな!」
弓が再び帝国軍の上に降り注ぐ。
わずかに敵が怯んだ間に、ヴィレスが部下たちを叱咤して一気に川を渡り切った。俺たちの横をヴィレスたちが脱兎のごとく走り抜ける。
そうなると今度は俺が3万の追撃を受ける番だ。
相手は若干足を弱めたものの、追撃の手を止めることはない。
まず追ってきたのは先鋒の1万ほどか。その後ろからもう1万がついてくる。
どうやら相手も1万を3段に分けて攻撃してくるらしい。
「鉄砲隊! 構え、放て!」
クルレーンが叫ぶと同時、大音声が響き、敵の一部が崩れる。
だが1万に対し150の鉄砲では焼け石に水だ。
しかも次弾を装填する前に、敵は来る。
「クルレーン隊、退くぞ!」
クルレーン率いる鉄砲隊が逃げる。
一瞬、クルレーンと視線がかち合った気がした。
俺は小さく頷く。
敵はもう川を渡りきろうとしている。
いや、前衛の1万だけだ。何をもたついているのか、中軍は半数が川を渡り始めたころだ。
もう少し引き入れたいが……これ以上は1万を止められない。どうする。
「ジャンヌさん、早く退きましょう!」
フレールが俺を急かすようにして、馬の轡を取った。
いや、まだできる。
敵の中軍を動かしてみせる。
だから俺はそれを無視して、旗を大きく振り上げ、そして叫ぶ。
「私がオムカ国軍師、ジャンヌ・ダルクだ! この首、取って見ろ!」
どれだけその声が響いたか分からない。
それでも敵の目の色が変わった。そんな気がした。
「一体何を――」
フレールの抗議を遮って、俺は馬をひるがえした。
「よし、逃げる!」
「ああ、もうなにがなんだか!」
「兄さん。黙って。ジャンヌさんが無駄なことするわけないじゃない。馬鹿なの?」
「なんでこっちが悪者だよ……」
後ろを見ながらタイミングを計る。
敵の先頭が上陸した。その背後からも怒声が轟き、中軍もスピードアップしたように思える。
手元の『古の魔導書』を見ても、今がその時。
――よし。
「鉦、鳴らせ!」
叫び、旗を振る。
それに応えるように、先に逃げていた味方の一団が鉦を猛連打する。
敵の怒声のほか静まり返った大自然の中に、激しく鉦の音が鳴り響く。
だが何も起こらない。
もしかしてタイミング間違えたか。欲張ろうとして遅すぎたのか。
敵がどんどん上陸してくる。
こうなったら潰走前提で逃げるか、玉砕覚悟で足止めするしかない。
――死。
これまで何度か口にした言葉が、重くのしかかってくる。
あれだけ自分はどうなってもいいとか言いながらも、こうしてしっかり恐怖を感じている。
どれだけ身勝手かって話だ。
だが、その思いも一気に霧散した。
聞こえた。大気を揺るがす振動。そして、地鳴りが。
足元が揺れ、馬が怯えたように身じろぎするのを押さえつけるのに必死。フレールたちも、敵も同じく何事かと足を止めた。
そして――
「来た!」
川の上流。
山々が連なる連峰のふもと。そこに小さな――いや、対比で見れば巨大なものが近づいてくる。
敵も味方も、その音と振動に気を取られて全てが制止する。
そして、それが何か判明した時、起こったのは恐慌。
「洪水だぁぁぁぁ!」
敵の悲鳴。
川辺にいた兵は少しでも川から離れるよう、川の中にいた兵は一刻でも早く岸に上がるよう必死にもがく。
だが水の流れは恐ろしく速く、見えたと思った十秒後には怒涛の波となって俺たちの位置まで到達した。
悲鳴が上がる。
濁流となった水が、敵兵を飲み込んでいく。
その光景に、誰もが目を奪われ呆然とする中、俺は小さく歯噛みしていた。
対岸に目を凝らす。残った敵は1万以上いる。
流されたのはわずかだった。中軍が警戒したようで思った以上に川へ入り込んでこなかったのだ。
策がバレていたのか。
あるいは退き方が露骨すぎたか。
どちらにせよ、俺は韓信に及ばないというわけだ。
それでもいい。常勝将軍を気取るわけじゃないし、失敗してばっかりの俺にはおこがましい限りだ。
気負わなくていい。
俺にできることを堅実にやるだけだ。
そしてまた数千の命が俺の手によって消えていった。更にそこに1万が加わるのだから、勝ったなんて気楽に喜んでいられない。
「全軍反転! 残った敵を殲滅しろ!」
即座にクルレーンが敵の先鋒に鉄砲を撃ちかける。
ただでさえ嚢沙之計で唖然としていたところに鉄砲を撃ちかけられたのだ。
こちらは少し減って7千弱、それに対し相手は1万とはいえ、背後には激流と化した川。退路はなく、援軍も来れない状態となれば、誰もが浮足立って当然。
そこに鉄砲を撃ちかけられ、しかもこれまで逃げていた敵が逆襲してくれば、たまったものではないだろう。
戦は数じゃない。
結局は人間の心理だ。
どれだけ数で上回っていても、戦うことを諦めてしまえば負ける。
そんな彼らを憐れと思う心はもちろんある。
だが、ここで彼らを討ち取らなければ自分たちが死ぬ。
自分たちが死にたくないから、相手に死んでもらう。
本当に、戦争なんてものは最低の所業だ。それを強要する、この世界も最低。
あぁ、帰って里奈に会いたい。
よくわからないテンションに苦笑することもあるけど、やっぱり彼女と一緒にいると落ち着く。
だから早く帰りたい。
今すぐにでも帰って、こんな光景から目を背けたい。
そうしないと、俺の心が壊れてしまう。そんな気がした。
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