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第72話:小さな鬼がもたらした戦慄
しおりを挟む学生寮の屋根にて:
「す、すごくて激しい戦いです……みんながあっちこっち、……容赦もなく叩かれ過ぎますよね………」
「本当ですねー!オードリー殿とオケウエー殿だけじゃなくて他も満身創痍なのばかりです!」
「まだ交戦を開始してないヒルドレッド嬢とジェームズを除いて、【チーム・オケウエー】はやっぱり少しぐらい苦戦してるようだね、【チーム・純粋なる淑女】に対して……」
屋根に座って、イザベラとニナと一緒に下の円盤で生中継で放送されている森での【チーム対抗試合】を観戦している【チーム・リルカ】の面々であるエリス、リルカとシャルロットがいるのだった!
「でも、オケウエー殿は既に相手のチームリーダーであるクリスティーナ殿を前の【新型剛力級】と戦った時と同じ『真っ白い球体』の中へと包み込んでいる最中ですし、それではもう勝った、ってことにはなりませんでしょうかー?……」
「私達……彼の契約精霊のことや能力の幅、…全部把握してないからどんな効果があってあの大きな白いのに捉えられたクリスティーナ会長が晒されてるのか、…外からだと何も見えないようだから分からないんだけど、...きっと勝負がまだついていない…可能性もあります...よね?」
リルカとエリスの見解に対し、シャルロットが、
「多分、そうに違いないんだけどー?オケウエー君が完全に相手を打ち負かしたら、きっとあの中からもう出てくるだろうし!ああ、ジェームズ、もうあのリーリスっていうイルレッドノイズ家の末っ子と対面してるようだよ!これから戦うんだね、1対1の場面で!」
「勝てるのでしょうか、ジェームズくん……」
シャルロットのジェームズ対リーリス戦への関心が高まるのを見たニナはそんな疑問を口にすると、
「ヒルドレッドさんに関してはもうレイーザリンのいる位置に到達しているようで、つまりもう敵陣営の奥に行ったようだけれド、あたしちゃんにはそっちの方がもっと苦戦しそうな予感がするんだよネーー」
「そう?……自分からすれば、ジェームズ君とリーリスさんの戦いこそ、…注目すべき方だと思うのですが……」
イザベラとエリスはそんなこと言ってる様子だが、
「問題はあの傷いっぱいついてる3人の方ね。どうにかジュリアを3人がかりで圧倒して倒すことができれば、後は相手チームのリーダーたるクリスティーナ嬢を球体の中でなにかやっつけて勝利を掴んだはずのオケウエーさんが出てくるのを待つだけだねー?」
肝心なことを指摘したシャルロット。それもそのはずだ!
なにせ、いくらジェームズがリーリスに勝とうが負けようが、他のチームメンバがどんな戦果を残せるかに関わらず、肝心のチームリーダーであるクリスティーナを倒さないことには『チーム・オケウエー』の勝利にはならない。
もちろん、あの球体の中へと入っていったリーダーのオケウエーに万が一にも敗れると、それこそ【チーム・オケウエー】の敗北ともなる瞬間のはずなのであろうー!
………………………………………………………
………………………………
真っ白くて巨大な球体に入っていった後のオケウエーの場面:
「どんな気分なんだ、クリスティーナー?」
「~!クそ!イますぐこんな卑怯なものを解除して正々堂々とアタクシと剣を交えろ――!!」
今、この固体化した空洞の巨大な真っ白い球体の中には俺とクリスティーナがいるのだが、俺はこうして自由に動き回れるのに対して、クリスティーナだけが全身を石化される寸前で、今は胸のところまでを石化され、上へと浸食を徐々に濃くしていくようだ!
「この調子なら、2分も経たぬうちに頭すべてを石化されるはずだが、これはあくまでも学園開催の【チーム対抗試合】だ!お前の母である学院長の【物理と魔術全類耐性万丈】っていう万能級の【物理法則無視魔術】の発動の影響下により、俺がお前の身体すべてを石化できていても、死に至るようなものではなく、ちゃんとその魔術のお陰で石化されていても外への隙が微細ながらも空気が通るようにいくつかできており、呼吸が困難になったり神経系統も完全にすべてが石化するわけでもあるまい!」
だが、身体全身が石化して死んだりすることがなくとも、石化されたことで戦闘不能となったクリスティーナは審判役の彼女の母親が10までカウントダウンしなければならなくなったので、そうなった場合は俺の勝利で終わるのだろう!
「ソれがどうしたというのデスー!?今すぐアタクシを解放しろ、南蛮人少年ー!ソして今度は一切の精霊魔術も股間や急所への攻撃もなく正々堂々と剣術だけで競い合おうー!」
「ほうー?それは確かにいい提案だな……なにせ、俺達『チーム・オケウエー』はこの後の2週間近くも経過していくと、氷竜マインハーラッドと戦わなければならないから、お前ともっと手合わせして訓練の練習台として付き合ってもいいが、まずは俺からの質問を答えてからだ!」
「質問だとーー!?後、しれっとこのアタクシの事を練習台扱いだとーー!?」
「練習台にするかどうかともかく、お前、……知ってんだろう―?お前の母親との約束で、俺はさっき言った通りにこれから普通の学生として学院生活を続けていく権利を得るために、もうすぐ氷竜マインハーラッド討伐任務に参加して倒す必要があるが、お前がその男嫌いのあまり自分の母親が俺とかわした約束を無視した形までという決断をとって俺とジェームズをそんなに焦って追い出す必死さが分からん!一体何がどうしたら、お前をそこまでの大の男嫌いな女の子にさせたんだー?」
「……キサマには関係のないことデス……」
「…そして、なんで自分の母の取り決めたことをただの娘の身でありながら無視して俺を追い出せるよう試合を通させたんだー?学院長が約束を違うような人間だとは思わないので、お前がなにかをして学院長を俺との約束を守ろうとする気力をそいで、庇わせないように、約束を果たせぬような追放退学処分がかかったこんな試合をー」
実際に、氷竜を討伐出来なかったら召使い認定され、一生は学院長の奴隷メイドみたいな扱いを受ける取り決めだったから、その討伐任務にさえ参加できぬまま学院から追い出されたら、こっちとしても万が一は生涯を学院長の下で仕えなくてもいいような結果となるが、そんなことにでもなったら、自分の母親の名誉だけが傷ついちゃうしな!も、もしかしたら、まだそんなことについて自分の母から聞いてないっていうのかー!?
「ズいぶんと饒舌になってきたようだが、ソんなことに関しては何もしゃべる気はないぞー!?ナぜなら、お前は薄汚い『男』だからデスー!ハあああーー!!」
がちー!がちーー!!
「---!!?なにーー!?」
あろうことか、俺の詰問がそんなに気にくわないか、顔を歪ませながら怒るような視線を向けてきながら自身の持つすさまじい聖魔力量で石化を溶けるようありったけの力を迸らせている最中のようだ!
ガチー!ガチガチチチチイイーーーーーー!!!!
顎にまで浸食が上へと進んでいったら、クリスティーナの憤怒に触発されての聖魔力の夥しい放出により、顎と首の石化した箇所が殆ど溶けて元通りに戻って、今は胸の石化したところにまでひび割れが生じる様子だー!
「そんなことさせると思うのか、クリスティーナー!」
負けじと、俺もこの真っ白い球体である【聖封第7、莫大規模聖白浄清球状魔封】というイーズの究極の聖霊魔術にもっと聖魔力量を注入して、クリスティーナが石化から抜け出せぬようにするための石化の再構築を頑張って全力を尽くしてみせるーー!
ガチャーガチー!ぎちぎちぎちぎちー!ガチ!ガチャー!ぎちぎちぎちー!
「コの~~!!調子に乗る出ないぞ、南蛮人少年よーーー!!」
「はーッ!男だからってバカにされてきたので、これはただの普通の対抗心からくるものなんだからねー!調子に乗ったつもりは微塵もないんだぜ、クリス!」
「キサマー!アタクシの名前をそんなに馴れ馴れしく省略したような真似をーー!?」
「ええー!それがどうかしたのか、男嫌いだって言いながら本当は男に白ケツを真っ赤まで叩かれながら甘い声でひいひい鳴いて媚びるのが大好きなむっつりスケベな淫乱な女の子のはずのお前がー!?」
「ナんだとキサマーーーーー!!!焼け焦げたような肌してる文明最下位の南蛮人の下等種の鬼畜男のくせに良くもまあ、高貴なるイルレッドノイズ家の長女であるアタクシに向かってそんな戯言をーーー!!」
さっき、俺の股間を蹴ってきた恨みでまだ溜飲が下がらないままなので、事実でなくとも最大限の罵倒で以ってクリスを怒らせるために煽ってみたのだ!
前に、俺がオードリーと一騎打ちの決闘をしていた時に、オードリーからの罵倒を自分からも汚くて酷い言葉で返さないのは俺がオードリーに対する『胸を触ってしまった罪悪感』があるんだけど、何のしがらみも正当性も貸し切りもないただの男嫌いの喧嘩腰のクリスとなら、遠慮のない言葉遣いでの反発もできるというものだ!
こうして、俺達は挑発しあって嘘も混じって罵り合いながら、男女の価値観の違いを通じて口喧嘩しながらお互いが【クリスの石化】をめぐりお互い一歩も譲らぬような【聖魔力】の放出と注入を争っている最中なのだー!
……………………………………………
……………………………
「【武器化した契約精霊ウェパナイーゼッド・スピリット】を出さないのですか、ジェームズ様?」
「どうぞあんたからっす!」
「いいえ、まずは貴公からなのですよー?」
「いやいや、あんたの方が先に出しなよー!」
「いいえ、いいえ、貴公の方が先に出すべきでしょうー?」
「………」
「………」
「ぷー!」
「は―ッ!」
「ぷははははー!」
「あはははははー!」
どうやら、どっちかが先に契約精霊を相手に見せるべきかお互いに譲り合っていて一向に解決のしようがなくて噴き出してしまっているジェームズとリーリスがいる様子だ。
無垢な少女が屈託もなく同い年の男の子と笑い合っていると、否が応でも青春って感じの構図に見えるはず。
「じゃんけんで決めようっていうのはどうっすかねー?」
「それなら良さそうなのですねー、ジェームズ様!それでやりましょう~」
至近距離まで向かい合っているジェームズとリーリスに、
「「じゃん、けん、ぽん!」」
「あ~!僕!僕がパーであんたはグーのようっすね!じゃ、リーリスが先にどうぞー!」
「……むむむ~!仕方ないなのですねー!見せればいいなのですよね?見せればー!」
素直に負けを認めたリーリスが一旦ジェームズから離れた距離にいくと、
「『我が残酷なる声に答えて降臨なさって下さい、悪銀なる対刃よ、【ベリヘリヤール】--!!』
パ――――チーーー!!!
………………
「…そ、それはーー!?」
今、ジェームズの目の前にはリーリスの両手にに握り持っている2刀の対となっているコンバットナイフがあり、どっちも柄の部分が紫色と紅色に深く彩られているようだ!
「【ベリヘリヤール】なのですよー!リリの敵に向かって、一切の容赦を示すこと自体を苦手にしている我が愛する『契約精霊』……ふーひ!ふひひひひ~ーー!!」
どういうことか、いきなりニヤッと笑みを浮かべ変な声を漏らし始めているリーリスは、
「さあ、ジェームズ様~?貴公の番~なのですよ?…ふひひ~!」
「---!!?くッ!【セフィーブレニエル】ーーー!! 我が声に応じ鉄砲の脅威を振りまけ―!」
いきなり踊り出したリーリスが変な回転と丸い軌道を描きながらの接近で向かってくるので、その1歩2歩の動きには得体の知れなさを感じて背筋に悪寒が滲み出てしまっているジェームズは直ぐに魔道ライフルのような形をした武器を召喚させー
ター!
「ワン!」
「く―――ッ!」
シュウウゥゥーーー!!
ダァ――――――!!
どうやら、瞬間移動でもしたかのように紫色と紅色の光に伴われながらジェームズの懐に入りながら現れたリーリスは一振りのナイフを振り上げたので、魔道ライフルを握ったまま運よく本能に従ったまま跳躍して【空中浮遊魔術】を発動したジェームズが真っ直ぐに上空のもっと上へと飛び上がるが―!
「駄目~なのですっ~よ!ツー!」
くちゅー!ふしゅうーー!!
「があああーーーーーー!!?」
あろうことか、片方のナイフを素早い速度で投げていったリーリスが躊躇もなくそれなりのスピードで一直線上の真上へと飛行したいったジェームズの背中に命中して、それで落ちてきた彼を!
バサ――!!
リーリスにお姫様抱っこされたのであるー!
さっきの突き刺さったままのナイフが霧散して、またもリーリスの下の地面で突き刺さったままにして再生された!
「どうなのです?優しくされながらおねんねしてイキたいのか?それとも痛みがお好きでザクザクザクってナイフの味わい深さを貪欲に堪能してみたいなのですかー?」
「え、え~っと……?」
聖母のような慈愛に満ち溢れる両目を閉じてにっこり顔のリーリスに抱き留められているまま、どこか不気味な雰囲気を纏うリーリスに対して戦慄を感じて困った顔をしているジェームズがいるのだったー!
「リリの手、怖いヤンチャな鬼みたいなモノなのですよー?だから早く返事をして下さいね、ジェームズ『様』~?……地獄っ子にはなりたくないハッピーボイーなのでしょー?ふひひ……」
小柄な身体を持っている彼女の真っ白い手の中に抱きかかえられるままにしたジェームズにはリーリスからの手の力強い鷲づかんでいる食い込みを感じ始めたので、若干の痛みを感じながら冷や汗を漏らしたジェームズは早く答えようと口を開けるのだったー!
…………………………………………
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