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第106話:もう一人の犯人少女の登場!
しおりを挟むガチャアアーーーーーーーーーーーーーーーーンングウ!!!!
【災乱弾五円陣撃】から放たれた全ての【中型氷弾】は単発の【氷柱】と同じ仕組みで、全てが一つの標的に着弾して【大氷太巨柱】という融合された氷の山が出来ても10秒後には自動に氷が解除されることになる精霊魔術なので、今はその時間が経過して氷の山が氷解された!
すううううーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ター!ター!
凍った中から解放された犯人少女は真っすぐに地面へと落下して、俺とオードリーが一緒になって近くに様子を見に寄ってきた。
「んん……脈を確かめたけれど、やっぱりまだ死んでないみたいわね。……一応、手加減して【災乱弾五円陣撃】を発動してもこの子に攻撃を仕掛けた【中型氷弾】の数をただの一つの魔法円陣から発射された12発に絞って、残りは空のあっちこっちで弾けさせ氷柱を発生させたんだけど…」
犯人少女の首を触って脈を確かめながらそんな事実を述べたオードリーに、
「でも、あの薬ってマジでヤバすぎるんだよねー?こいつは紛れもなく、契約精霊を持ってないただ【火炎系魔術】が超得意な【四元素魔術使い】というだけなのに……」
それなのに、俺からの【聖刃波斬】を至近距離で喰らっていてもフライングキック途中だったこいつの足の裏が深く切り裂かれただけで本来は脚全体が両断されても不思議じゃないのにそうならなかったしー!
そして、オードリーから12発の【中型氷弾】を受けていて小さい方でもれっきとした【大氷太巨柱】で氷漬けにされたんだ!本来は【精霊魔術】に対する耐性がある【精霊術使い】でなくてはあれで死んでいてもおかしくないレベルだったのに結局は死んでいないようなので、俺の予測通りにマジですご過ぎるよな、あの妙薬なんとかって薬はーー!
「彼女が精霊術使いじゃないと知ったあの瞬間から、確かにあんたは手加減しようと思ったでしょうー?でも、彼女からのフライングキックを両拳による打撃を迎撃手段にせず、あんたの聖剣から放った聖霊魔術で攻撃したり、あたしに【災乱弾五円陣撃】を使わせてきたことから察すると、もう手加減することを止めたみたいだけれど、やっぱりあの薬の効果が凄まじいと予想してたから方針を変えたわよね?」
「……まあ、そんなところかな。もしかしたら、あの薬って只ものじゃないって恐れがあったから、いい匙加減で力を出しつつも精霊魔術をこいつに喰らわせてみてもいいかって腹をくくったんたが、やっぱり思った通りに魔術に対する防御力がすごく弱いはずの非精霊術使いなのに、あの薬を摂取しただけでそれなりに耐性が『俺達』みたいに良く上がってきてるようで、予感が的中したみたいだねー!」
「もう~!得意げに言ってるようだけど、もしそうじゃなかったらどうするのよー!一応、これは【殲滅任務】じゃなくて【捕縛任務】なんだから、明らかに相手が死ぬレベルの精霊魔術を喰らわせることになってたじゃないー!?」
「あ~はははは……まあ、その時はその時に考えればいいだけのことだ!それに、相手は沢山の人の命や健全なる生き方と日常生活を脅かそうとした極悪人みたいだったぞー?この国の民を大量に巻き込もうとした連中だし、早く止めたいと思うのは理に適ってる思考だが、何も捕縛だけに限る必要じゃないだろうー?もし捕縛が難しい状況だったら、…さすがにこのレイクウッド王国における絶大な権力を有するはずの【四大貴族】であるお前にとっても手加減をしてやれるほど普通な犯人って訳じゃないだろうー?」
「…くっ!……ま、まあね~?そう言われれば反論しようがないけど、やっぱりあんたっていくら相手が極悪罪人であろうとも、人が死ぬような攻撃手段を実際に躊躇する素振りも見せずに実行したことはおかしいわよー!確かに、南大陸だった頃のあんたは人を殺めたことがないと言ったわよねー?それなのに、あ、あ、……『あいつ』を…仕方なく『討伐』した以来、ここにきて初めてバケモノ状態じゃない普通の魔術使いだけの犯人を躊躇わずに精霊魔術で攻撃するというのは………」
オードリーの言う事も御尤もだね!俺が逡巡もせずに死ぬ確率のある者に対して精霊魔術で攻撃してもいいって姿勢だったから、もしかしたら俺って人殺しの素質ありそうなんじゃないかなって不安になっただけだろうな!だがー!
「安心していいぞ、オードリー?俺は別に見境もせずに人を殺めていいとは思ってないよー?ただ、時と場合を考慮して、然るべき時だけは誰か一人必ず『やらなきゃならない』って場面もあると思うので、その覚悟があるってだけなんだよね、俺……」
正直に話したら、
「そう…。じゃ、もうあんたのスタンスも分かったから、今はこれぐらいにしておいてやるわね」
それだけ言って、今度は【異空間収納魔術】を召喚した彼女は、
ずーう!
カチャ―!
「ん?オードリー、それってー?」
何か金属製とも複合素材で出来たピカピカと光ってる縄を魔法陣から取り出した彼女がそれをいそいそと縄をぐるぐる巻かれた状態から解くのを見て疑問に思ってると、
「【魔導式複合材料縛縄マジック・コンポジットマテリアルズ・バインディングロープ】わよ。複合素材と【物理的無視魔術】の『とある魔技』で融合した製造法で作られた特別性の縄だわ。いくらあんなデタラメな薬を飲んだからと言って、これで縛り付けられたら絶対に抜け出せなくなるし、どんなに【身体能力強化】の魔術が何倍も威力が高くなろうとこの縄についてるここの魔導パネルの暗号数字を正確に入力出来なかったら縄が自動的に解かれないわよー!」
魔導式縄かぁー。確かに強力そうな捕獲道具だねー!ってー?
「オードリー、……そんな優れもの、お前はどこからそれを手に入れてきたんだー?」
「お父様からもらったわ。彼、レイクウッド王国軍における【三大家将軍】の一人の大将だから、有事の際にこれを使ってもいいって渡されたの」
大将かぁ......さっきのグッテンナフって少将よりもっと上の階級の将官のようで、やっぱり【四大貴族】だなって再確認できたオードリーの家の凄さだなー!前に会った時は自分の職業を述べなかったしな、ドレンフィールド公爵さん......俺も緊張して聞くことをしなかったし。
「成程ね!それがあればどんな状況でも応用が効きそうみたいだから、なんか便利そうで羨ましいねー!」
とまあ、そんな便利なものがあって感心した俺は気絶した犯人少女を縛りつけ終えたオードリーにそういう感想を聞かせた。
実際に、それほどの強度と頑丈さで出来ている超強力な縄だったら、いくらイーズと契約できた俺といえどもあれで縛り付けられたら、俺自身も簡単には破けそうにないだろうな!まあ、クリス先輩と戦った前の【改:絶清大聖シリーズ第3段階】の浄化できる聖魔力の純粋な大海のような洪水なら多分その縄の強度があるにせよ、消滅させられる気もするけどね!イーズのあれはマジですごかったし!
「物欲しそうで見てくれちゃって~~。敵を無力化して捕まえる時にこれ持ってれば便利そう…って顔してるわね!……まあ、もしあんたもこれが欲しいなら、そ、その………」
ん?なんか顔を赤らめるオードリーがいるようだけれど、どうしてー?
「どうしたのか、オードリー?顔真っ赤だぞー?」
「~~~!?大事な話してるのにあたくしの顔について指摘する気ー?あんたってバカなのー!?まったくもう~~!だだ、だからー!言いたいことはね、もしあんたもこれと同じ縄が欲しいなら、あたくしに言って頂戴って言ってるだけわよー!だから、欲しいなら言いなさいよねー?お父様にもう一本取り寄せてもらうから!」
憤怒のごとく顔を近づけてきてすごい剣幕で言ってきたオードリーに、一瞬たじろいでしまう、
「あははは……確かに俺も持ってれば便利そうだなって思ったけど、今は使い道がなさそうで遠慮しておくよ。必要だと思ったらまたお前に聞くけど」
「そう?まあいいわ、犯人の一人も縛り終えたし、これで残りの捕縛すべき犯人は一人だけ残ってるわね。さあ、そいつも捕まえに探そう、オケウエー!」
「ああ!そういえば、ジュディはどこかな?まださっきからのショックが抜けきってないのかな?」
「そうかもしれないわね。まあ、彼女はもう子供じゃないし、ついてきたければついてくるだろうし、もし恐怖のあまり身がすくみそうならあそこで怯んでばかりいてもいいと思うし、そっとしておいてあげるべきわよ。そもそも、これは任意で参加してる【捕縛任務】であって、別に国王陛下からの命があって参加させられた訳じゃないわ」
「……ジュディが聞いたら冷たいなって思ってそう……こういう時のお前って本当にドライなんだよな?」
「理屈を述べただけのことわよ?だって、戦場に立つ者こそ相当な覚悟のある人のみやってきてもいいところだって言うわよ?あんな脆弱そうな心理状態でついて来られても迷惑なだけだわ。たかがキスされそうだっただけなのに……何もそこまで怯えて震えなくても…(あたくしだったら望まざる接吻をされてたら相当怒りを露わにして、その憤怒を原動力にして絶対に相手に罰を与えるまで休まないというのに)」
ふむ。確かに正論なんだけど、一応お前とあいつって距離感が縮まってきたばかりの友達同士だろうに......
そこまで割り切れる辺り、さすがは幼少期より過酷な訓練を強いられた責任重大な持ち主である、実力主義の公爵令嬢の出の精霊術使いというだけのことはあるな。
とはいえ……
「でも、さすがにただジュディを放置したまま任務を突き進むのは得策じゃないと思うよー?動揺してるままにロクな反応もできない今のジュディをもう一人の犯人で人質に取られればどうするんだよー?」
「そんなことになる可能性は低いと思うし、それにジュディもさすがにそこまで繊細な子だって思ってないわよ?でも、あんたがそうやって自分に納得のいく方法で進めたいなら、あたくしも………行くわよー」
「オードリー……」
なんかそっぽを向きながらツンツンと先にジュディのいるあそこの岩場の隠れたところへと歩き出した彼女を見て、素直じゃないなってなって笑みを浮かべそうな俺だが、
「ちょっと待て、俺も行くから先を急ぐ―」
「どこに向かって喋ってるんですのー!?ワタクシ様ならここですわよー!」
「--!?」
いきなり背後から声がしたので、直感が俺に伏せろー!って言ってきた気がしたのでー!
ズシュウウウウーーーーー!!!
「くそー!」
「これでも避けられたんですのー!?噂通りに、【奇跡の南地男子】の呼び名は伊達じゃないってところですわねー!」
タタ―――!!
敵から狙われた俺の首の後ろが薙ぎ払いの槍の攻撃を受けそうだったので、俺の反射神経に感謝したくなるほどぐらい、避けて距離を取れた俺なんだが、すぐに騒ぎを聞きつけたオードリーも、
「あんたがもう一人の犯人ねー!のこのこと自分からあたくし達のところへわざわざ捕まりに来てくれるなんておバカさんもいいところだわー!受けなさいわーーーー!!」
バン!バン!バン!バン!
小手調べに素早く【小型氷弾】を撃ったオードリーだったが、
「残念ですけれど、ワタクシ様はそちらと遊ぶためにやってきた訳じゃありませんの。妹を取り返しにきただけですわ!」
「なにー?」
それだけ言った金髪をストレートに腰まで伸ばしたもう一人の【犯人少女】はすかさずに空へと跳躍して、そして彼女が目を向ける先にはあそこでずっとオードリーに運ばれていたけど、さっきの射撃で手放したことを好機ととらえ、何かの『翼を羽ばたかせている大型の亀』に示し合わせた通りの作戦でも実行中なのか、縄で縛られた子を亀が回収したようだ!
恐らくあれがさっきの槍持ち犯人の【契約精霊】だということかあーー!?
『ハキイイーーーーーーー!!!ジャキイイーーーーーーー!!!』
なんか変な大きな鳴き声を鳴らしたあの飛んでる亀は、次に自分の甲羅の中へと入れられる穴を開けて、さっきの縛り付けられたままの子をその中へと収納した模様ーー!!
「してやられたぞ、オードリー!早くあの亀を追おうーーー!!」
「ええー!分かったわーー!」
「やれやれですわねー!バカリンダであることは間違いないけれども、バカでも一応は自分の妹をそう簡単にワタクシ様から奪えると思わないことですわー!【アールクシュネリオン】ーーー!!」
『ハキイイーーーーーーー!!!バキイイーーーーーーー!!!』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーー!!!!
「「----!!?」」
あろうことか、『縛り付けられたままの子を甲羅の中へと収納したはずの飛んでいる亀』は、今度は体内にあいつが入ったままの亀は空中で小型な魔導砲台っていう武器みたいな姿に変えられ、そしてーーーー!!!
ビュウウウ――――――――――!!!
さっき俺を槍で攻撃しようとしたもう一人の犯人少女が真っ直ぐに亀の方へと飛んでいくと、
ガチャ―――――――!!
さっきの槍(おそらくは武器化した精霊じゃなくてただの魔導兵器の類)を異空間収納魔術で保管し終えた彼女は、肩に乗せられるぐらいのサイズがした軽そうな小型な魔導砲台と化した亀を実際に肩に乗せるとーー!!
「【我が敵全員に向かって天石の憤怒を思い知らせなさいー!【大隕石落下爆撃雷功砲ヌレリアー・アスタラヴァスター】ーーーーーーーーーーー!!!!」
ブワワワワワワワアアアアアアアーーーーーーーー!!!!!
バココココココココココココオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!
あの小さな砲台からどこから来たのか、砲口から通過してぶっ放された大型な普通な岩が0.5メートルも満たない距離で撃ちだされた途端、いきなりとてつもない大きさを誇る燃え盛る紫色の聖魔力オーラで包まれている隕石みたいな風貌に姿を変えて、あれが砲口から次々と放たれてはこちらの位置に向かって一斉に落下してきたので、ここら辺の山々が消し飛ばされる程の大爆発を巻き起こさせたようだ――――――――――――――!!!!
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