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第182話:ヴェルマの提案。そしてシルヴィン聖女の計画...
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学院本棟2階の図書室にて、小さな声ならお喋りしてもいい【気楽コーナー】で:
「ほなほな、そないな時にオクウェーちゃんとジュディちゃんが食われたっちゅうんか?そんなどえらい壊滅的な状況で、よう腹ぶち破って出てこれたもんやなぁ!」
「あ~はははは。そ、そんな時の私たちは、運よくイーズベリアちゃんが発動してくれた【聖護守英防壁ホリー・ディーフェンシーヴ・エックセレント・ガーディングバリアー】にて、噛み砕かれることなくお腹まで飲み込まれて以降は胃酸から守ってくれたんだ。障壁がね~」
「ホンマに運が良かったなぁ、あんたらは~。うちやったら間違いなく死んでるわ。【3体の大聖霊】、どっちも使役してへんしー」
俺、ジュディとオードリーは今、図書室の小さな声ならお喋りしてもいい【気楽コーナー】にて、氷竜マインハーラッドと戦った時の戦況を取材の一環でヴェルマと話し合っている。さっきのオードリー曰く、『あたくしたちの武勇伝をもっと広めれば、学院でのチームの立場がもっと良くなっていき、うちのドレンフィールド家の再興にも役立つことになるわ』って...... 俺からすれば、もう学院長との約束もクリアーしたし、後はこれからの訓練と学院生活の活動次第でいずれはおじちゃんのケクル病を直せる【新魔術】を開発できたら、俺のここでの役割が終わったも同然となるので、何も卒業するまでここに留まる必要はないのだが.........
「あの時はどうなるかと思ったわよー!無我夢中で吐き出させるべく追おうとしたけど、ヒルドレに止められちゃったわね」
「でも、ヒルドレッドさんがああもしなければ、単独行動に突っ走っちゃうでしょー?皆を置いて一人だけで特攻していっちゃったらー」
「各個撃破される第1号様ってとこやったなぁ~。」
「む~!...あたくしだってそんなこと分かってたわよ~!けど、ちょっとだけの突っ走りでも何とかなってたじゃない!あの時のあたくし、【氷の戦乙女状態】だったし~!」
俺とジュディが竜の腹の中へ飲み込まれていった時、オードリーが一人だけ皆を置いていくよう俺達を吐き出させるために追おうとしたみたいなので、ヒルドレッドに止められたその場面を取材してくれてるヴェルマに伝えるところだ。確かに【氷の戦乙女状態】は超強力過ぎるオードリーの能力だけど、【伝説の世界獣】相手に一人だけで挑んでいくの無謀だったはず!ヒルドレッドは本当にいい仕事したな!
と、俺達4人はこの【気楽コナー】にある長テーブルに腰かけ、小さすぎず大きすぎない声で会話を交わしてる最中だ。
............................
「...ほな、それからジェームズちゃんのこと、....やな...?」
「「「..........」」」
ジェームズのことを聞かれる今になったら、俺、ジュディとオードリーのどっちもが気が重くなるような顔と心情になって、何から喋るべきか、上手い言葉を見つけられず俯いたまま黙っていることしかできない俺達だった....
ジェームズ.......ぐすっ~。
「......ご、ごめん~。も、…もしかしなくても、こんな早い時期に取材しに来たんはマズかったん?ほんなら、中断してもええけど、どない…する?」
「...そ、れは....」
ジュディの両目が潤んで、涙が滴りそうな悲痛な顔になった。
「....あ、あたくしも...中断しても....」
と、二人とも安直に辛い事実から目を背けて思い出したくなさそうな表情を浮かべた様子なので、
ぎゅ~むっ!
「「-!?」」
ヴェルマは向こう側の席で座りながら俺達と話してる、そしてここでは俺が中心になって座り、左右両側のオードリーとジュディに挟まれる形で取材を受けているので、こうして俺は自分の左右にいる彼女たちの手を握って、元気づけようとした!
「.....取材を打ち切っても、...いいと思うよ?ただ......」
いつまでも彼の死去を負い目に感じて、話すことになる途端、気分が悪くなったり頭の中が暗くなるという条件反射みたいに振る舞うことばかりしていても埒が明かないので、
「....ジェームズ死去という事実から、....いつまでも真剣に向き合おうとせず、話される途端に暗い気持ちになるのは、........」
上手い言葉を見つけられず伝わる気がしないので、ここはー
「...だ、だから、ヴェルマ先輩に、話していても、......」
「....ああ」
「......あたくしは、...別に何でもないけど、そのぅ........」
ん?顔を紅潮させたオードリーがいるんだけど、なんで?
「...お、オケウエーが、....望むなら、な、何でも...いい..わ...」
どうやら、オードリーもその気持ちのようだ。
だからー
「ヴェルマ先輩、...話すよ。ジェームズがどうやって戦場で殉職したのかをー」
.................................................
....................
「....なるほどなぁ。それはほんまに残念でしゃーないわ...」
「ジェームズのあの時の自爆.....あれほどの聖魔力量を迸らせられていたこと.....まるでー」
「犯人少女が使ってたっていう【妙薬エヌトロイス】みたいなこと?」
「あ、それだわ、それ!」
確かに、あの時のジェームズの突然な変貌と強化....普通じゃなかったな!やっぱり、どこかで手に入れられたのか、犯人少女の摂取してたのと同じものを......
それから、ジェームズがなぜそんなものを持っていただろうと、色々意見を述べ合ってたけど、答えに繋がる有効な持論が出てこないため考えるの断念した!
...........................
「.....ふむふむ、そうかぁー。ほな、これにて取材終了や!協力してくれておおきに~!あ、あと、そこのオケウェーちゃん~!」
「ん?俺?」
「そう、あんたやで。うちの新聞部な、来月特別版の新聞を出す予定なんよ。別版を出すときにな、ちょっとだけ【チーム・オケウェー】全員の5人に【特殊なコスプレ衣装】を着てもろて、ポーズ決めてもらって、何枚か写真撮らせてもらいたいなーって思ってるんやけど、どないやろ?」
「「「え?」」」
.......
「「「こ、コスプレ衣装―――――!?」」」
図書室なのにも関わらず、柄にもなくちょっとだけ驚いた俺達3人だった。
...........だって、ほら。
ここは精霊使いを育成するための学院だったよね?
そんな学院に、ああも暢気でコスプレ衣装してバカ騒ぎしてみんなに色々言われたりして着せ替え人形になっちゃってていいのかってなる!
まあ、....今のところはただの無難なメイド衣装と執事衣装を着ることになった俺達なんだが、ヴェルマ先輩の最後の言葉がちょっと心配:
「もちろん、あれは前菜みたいなもんで、本番ちゃうで?ホンマの新聞の超~メインイベント用の衣装は別にちゃんと用意しとるから、楽しみにしときや。…きっと気に入ると思うで、特に【男女混合のポーズ陣形】としてはな!」
と、そんな警戒したくなるような謎の期待感に満ちている顔を浮かべながら言った先輩!
どういう衣装か知らないけれど、エッチなものだけはちょっと、な?
オードリーが激怒しちゃう想像を思い浮かべてちょっと身震いした俺だった..............
................................................
..................
聖女シルヴィンの視点に切り替わる:
ター!ター!ター!ター!
やっぱり、彼は本当に底の知れない男だよ!
お母さんの言う通りに、確かにクレガーキールの手下によって我がセルレス法王国が保護した亜人達が攫われていったけど、厳重な基地にまであんな転移系魔法陣を発動できたのは、事前に仕掛けが設置されたことがあるとお母さんが言っていたので、
「やっぱりスパイなんだね」
今、授業を終えたばかりのあたしはちょっと状況を整理するため、そして自分に課された任務の内容の再確認を行うため、そこの学院の屋外公園にあるベンチへ座りにきた。
「さて、お母さんからの指示だとー」
思い出そうとした、【大聖堂シルフェリオン】にて、お母さんとあの日で交わした話の内容とは:
「【異端審問執行部隊】にスパイが紛れ込んでいましたか――?」
「そうだ。だから本部や基地内にまで侵入を許したのだな、報告通りの転移系魔術を使ったことで」
「た、確かに何重の結界までも張られているあいつらの本拠地から人をああも堂々と攫えるのには事前の仕掛けがないとそんな魔術も遠くからの術者との聖魔力の接続が不可能になっていたでしょうね。つまり、その遠いところからの接続を可能にしたのはー」
「ああ、部隊に紛れ込んでいたスパイが何か特殊な見えぬ機械でも要所に設置し、それで拠点内への転移魔術の接続を可能としたのだろう......」
「そして、あたしの成功させるべき任務は、ギャラ―ルホルツ第13番目の国際会議へ対クレガーキールの【世界樹奪還作戦】を各国が協力し合って国際討伐チームを形成できるよう、交渉するために参加するだけじゃなくてー」
「レイクウッド王国にて、【アズリオン教会】に害を成す異端者やスパイが暗躍してないか、突き止めるのがお前の任務でもあるのだ」
大聖堂の奥にある祭壇にて、鋭い目線を向けてきたお母さんにそんな釘も刺されたので、
「御意。この国の最先端に戦うべき聖女としての責任と自覚を持って、これ以上我が教会に対する狼藉を働く輩をのさばらせないため、国際会議に向かう途中でのレイクウッド王国滞在する間にもそんな輩がいないか、調査も行って参りますので、どうか良い知らせをご期待ください」
「....よろしい、我が娘。では下がれ」
「はい」
それから、レイクウッド王国へ暫定教師として宗教学を少し教えたりしてからの国際会議が開かれる予定のグランドブードリックへの旅を始めたあたしは【聖艦メリディオ】に乗って、まずはレイクウッド8世の頼みで【氷竜討伐任務】に参加していた王国の討伐チームの支援をすべく、ちょっと学院へ生徒会長エルヴィーナを拾ってから行く予定だったのだけれど、まさか途中の会長に、
「確かに、今はすっかり英雄扱いなんだけどぉ、最初からどこかの馬の骨とも分からないフェクモ人がいきなりうちの学院にやってきて早々、色んな魔術をスラスラと発動できたというおかし過ぎる光景を見てしまったので、あの時からは彼を絶対にボクの要注意な人物としてこっそり監視する対象にしたの覚えてたねぇ。今でも後悔してないことだよぉー?」
ほう?
そんなに規格外すぎて、【奇跡の南地男子】とまで呼ばれたのに足る凄まじい成長速度を見せてきたのか、あのオケウエーという移住してきたばかりの男爵が....
ならば、これは一つの重大な発見であり、教会に仇を名す存在であるかどうか、調べるのに値する事件の可能性があるんだねー。
【ブルークラール連邦】にも何十年も前からフェクモ人の移民が住んできた北大陸における唯一な国なんだけど、あそこから聞いてきたフェクモ人に関する情報は今まで、1年間も満たない間で魔術使いになることはおろか、精霊術使いになった女性のフェクモ人も殆どいないと聞き及んでいる。
というか、これだけの60年間以上も長い月日が経ってしまっても、ギャラ―ルホルツのブルークラール連邦に移住して魔術使いや精霊術使いになったフェクモ人の数は指折りの11人しかいない現状なのに、オケウェ―男爵の1ヶ月間も満たない間での奇跡的成長は確かにエルヴィーナ会長が言うようにおかしいったらないんだねー!
連邦での現状を見るに、やはり生まれた瞬間から幼少期を魔術の使えない大地で育ったという土地柄の影響下に晒されてきたのか、自身たちの体内にある聖魔力における使用頻度の乏しさにより、中々魔術を構成する術式構築が困難に感じるフェクモ人が何度も訓練してきても同じような苦難を味わったばかりだとも聞いた。
だから、今までは男の【四元素魔術使い】はもちろん、女性フェクモ人の【精霊術使い】も殆どいない。
それを、ギャラ―ルホルツにやってきて1ヶ月間も満たない間でそこまでの成長速度を誇るバケモノ級フェクモ人がいるとしたらー
(やはり、南大陸フェクモにて、唯一使える魔術と聞いたあの、...【死霊魔術】と関連性が深いかもね)
確かに、小さい頃から教会が厳重に保管してきた古文書から読んできた情報だと、フェクモにて唯一使える魔術は【純正聖魔力気】という聖魔力の下位互換だけを発動条件としている【異空間収納】で(これも限られた熟練度高い天才的フェクモ人しか使えないというもので)、そしてもう一つは、...............
(...邪神ヴェルグニール....が由来の力の源、その【死の息吹】ってものを扱える【死霊魔術使い】、という辺りだと考えるべきね.........)
つまり!
既にある種の魔術を使いこなせたのなら、北大陸にやってきて早々、【四元素魔術】、【物理的無視魔術】だけじゃなくて、同時に【精霊術使い】になれたのも、自然な流れだとも言えるんだよね?
まだ定かじゃないけれど、
もし貴公が本当に教会にとっての脅威となる存在だと判明したら、
その時は、
容赦なくー
(討伐するよ!)
.........................................................
........................
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「ほなほな、そないな時にオクウェーちゃんとジュディちゃんが食われたっちゅうんか?そんなどえらい壊滅的な状況で、よう腹ぶち破って出てこれたもんやなぁ!」
「あ~はははは。そ、そんな時の私たちは、運よくイーズベリアちゃんが発動してくれた【聖護守英防壁ホリー・ディーフェンシーヴ・エックセレント・ガーディングバリアー】にて、噛み砕かれることなくお腹まで飲み込まれて以降は胃酸から守ってくれたんだ。障壁がね~」
「ホンマに運が良かったなぁ、あんたらは~。うちやったら間違いなく死んでるわ。【3体の大聖霊】、どっちも使役してへんしー」
俺、ジュディとオードリーは今、図書室の小さな声ならお喋りしてもいい【気楽コーナー】にて、氷竜マインハーラッドと戦った時の戦況を取材の一環でヴェルマと話し合っている。さっきのオードリー曰く、『あたくしたちの武勇伝をもっと広めれば、学院でのチームの立場がもっと良くなっていき、うちのドレンフィールド家の再興にも役立つことになるわ』って...... 俺からすれば、もう学院長との約束もクリアーしたし、後はこれからの訓練と学院生活の活動次第でいずれはおじちゃんのケクル病を直せる【新魔術】を開発できたら、俺のここでの役割が終わったも同然となるので、何も卒業するまでここに留まる必要はないのだが.........
「あの時はどうなるかと思ったわよー!無我夢中で吐き出させるべく追おうとしたけど、ヒルドレに止められちゃったわね」
「でも、ヒルドレッドさんがああもしなければ、単独行動に突っ走っちゃうでしょー?皆を置いて一人だけで特攻していっちゃったらー」
「各個撃破される第1号様ってとこやったなぁ~。」
「む~!...あたくしだってそんなこと分かってたわよ~!けど、ちょっとだけの突っ走りでも何とかなってたじゃない!あの時のあたくし、【氷の戦乙女状態】だったし~!」
俺とジュディが竜の腹の中へ飲み込まれていった時、オードリーが一人だけ皆を置いていくよう俺達を吐き出させるために追おうとしたみたいなので、ヒルドレッドに止められたその場面を取材してくれてるヴェルマに伝えるところだ。確かに【氷の戦乙女状態】は超強力過ぎるオードリーの能力だけど、【伝説の世界獣】相手に一人だけで挑んでいくの無謀だったはず!ヒルドレッドは本当にいい仕事したな!
と、俺達4人はこの【気楽コナー】にある長テーブルに腰かけ、小さすぎず大きすぎない声で会話を交わしてる最中だ。
............................
「...ほな、それからジェームズちゃんのこと、....やな...?」
「「「..........」」」
ジェームズのことを聞かれる今になったら、俺、ジュディとオードリーのどっちもが気が重くなるような顔と心情になって、何から喋るべきか、上手い言葉を見つけられず俯いたまま黙っていることしかできない俺達だった....
ジェームズ.......ぐすっ~。
「......ご、ごめん~。も、…もしかしなくても、こんな早い時期に取材しに来たんはマズかったん?ほんなら、中断してもええけど、どない…する?」
「...そ、れは....」
ジュディの両目が潤んで、涙が滴りそうな悲痛な顔になった。
「....あ、あたくしも...中断しても....」
と、二人とも安直に辛い事実から目を背けて思い出したくなさそうな表情を浮かべた様子なので、
ぎゅ~むっ!
「「-!?」」
ヴェルマは向こう側の席で座りながら俺達と話してる、そしてここでは俺が中心になって座り、左右両側のオードリーとジュディに挟まれる形で取材を受けているので、こうして俺は自分の左右にいる彼女たちの手を握って、元気づけようとした!
「.....取材を打ち切っても、...いいと思うよ?ただ......」
いつまでも彼の死去を負い目に感じて、話すことになる途端、気分が悪くなったり頭の中が暗くなるという条件反射みたいに振る舞うことばかりしていても埒が明かないので、
「....ジェームズ死去という事実から、....いつまでも真剣に向き合おうとせず、話される途端に暗い気持ちになるのは、........」
上手い言葉を見つけられず伝わる気がしないので、ここはー
「...だ、だから、ヴェルマ先輩に、話していても、......」
「....ああ」
「......あたくしは、...別に何でもないけど、そのぅ........」
ん?顔を紅潮させたオードリーがいるんだけど、なんで?
「...お、オケウエーが、....望むなら、な、何でも...いい..わ...」
どうやら、オードリーもその気持ちのようだ。
だからー
「ヴェルマ先輩、...話すよ。ジェームズがどうやって戦場で殉職したのかをー」
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「....なるほどなぁ。それはほんまに残念でしゃーないわ...」
「ジェームズのあの時の自爆.....あれほどの聖魔力量を迸らせられていたこと.....まるでー」
「犯人少女が使ってたっていう【妙薬エヌトロイス】みたいなこと?」
「あ、それだわ、それ!」
確かに、あの時のジェームズの突然な変貌と強化....普通じゃなかったな!やっぱり、どこかで手に入れられたのか、犯人少女の摂取してたのと同じものを......
それから、ジェームズがなぜそんなものを持っていただろうと、色々意見を述べ合ってたけど、答えに繋がる有効な持論が出てこないため考えるの断念した!
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「.....ふむふむ、そうかぁー。ほな、これにて取材終了や!協力してくれておおきに~!あ、あと、そこのオケウェーちゃん~!」
「ん?俺?」
「そう、あんたやで。うちの新聞部な、来月特別版の新聞を出す予定なんよ。別版を出すときにな、ちょっとだけ【チーム・オケウェー】全員の5人に【特殊なコスプレ衣装】を着てもろて、ポーズ決めてもらって、何枚か写真撮らせてもらいたいなーって思ってるんやけど、どないやろ?」
「「「え?」」」
.......
「「「こ、コスプレ衣装―――――!?」」」
図書室なのにも関わらず、柄にもなくちょっとだけ驚いた俺達3人だった。
...........だって、ほら。
ここは精霊使いを育成するための学院だったよね?
そんな学院に、ああも暢気でコスプレ衣装してバカ騒ぎしてみんなに色々言われたりして着せ替え人形になっちゃってていいのかってなる!
まあ、....今のところはただの無難なメイド衣装と執事衣装を着ることになった俺達なんだが、ヴェルマ先輩の最後の言葉がちょっと心配:
「もちろん、あれは前菜みたいなもんで、本番ちゃうで?ホンマの新聞の超~メインイベント用の衣装は別にちゃんと用意しとるから、楽しみにしときや。…きっと気に入ると思うで、特に【男女混合のポーズ陣形】としてはな!」
と、そんな警戒したくなるような謎の期待感に満ちている顔を浮かべながら言った先輩!
どういう衣装か知らないけれど、エッチなものだけはちょっと、な?
オードリーが激怒しちゃう想像を思い浮かべてちょっと身震いした俺だった..............
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聖女シルヴィンの視点に切り替わる:
ター!ター!ター!ター!
やっぱり、彼は本当に底の知れない男だよ!
お母さんの言う通りに、確かにクレガーキールの手下によって我がセルレス法王国が保護した亜人達が攫われていったけど、厳重な基地にまであんな転移系魔法陣を発動できたのは、事前に仕掛けが設置されたことがあるとお母さんが言っていたので、
「やっぱりスパイなんだね」
今、授業を終えたばかりのあたしはちょっと状況を整理するため、そして自分に課された任務の内容の再確認を行うため、そこの学院の屋外公園にあるベンチへ座りにきた。
「さて、お母さんからの指示だとー」
思い出そうとした、【大聖堂シルフェリオン】にて、お母さんとあの日で交わした話の内容とは:
「【異端審問執行部隊】にスパイが紛れ込んでいましたか――?」
「そうだ。だから本部や基地内にまで侵入を許したのだな、報告通りの転移系魔術を使ったことで」
「た、確かに何重の結界までも張られているあいつらの本拠地から人をああも堂々と攫えるのには事前の仕掛けがないとそんな魔術も遠くからの術者との聖魔力の接続が不可能になっていたでしょうね。つまり、その遠いところからの接続を可能にしたのはー」
「ああ、部隊に紛れ込んでいたスパイが何か特殊な見えぬ機械でも要所に設置し、それで拠点内への転移魔術の接続を可能としたのだろう......」
「そして、あたしの成功させるべき任務は、ギャラ―ルホルツ第13番目の国際会議へ対クレガーキールの【世界樹奪還作戦】を各国が協力し合って国際討伐チームを形成できるよう、交渉するために参加するだけじゃなくてー」
「レイクウッド王国にて、【アズリオン教会】に害を成す異端者やスパイが暗躍してないか、突き止めるのがお前の任務でもあるのだ」
大聖堂の奥にある祭壇にて、鋭い目線を向けてきたお母さんにそんな釘も刺されたので、
「御意。この国の最先端に戦うべき聖女としての責任と自覚を持って、これ以上我が教会に対する狼藉を働く輩をのさばらせないため、国際会議に向かう途中でのレイクウッド王国滞在する間にもそんな輩がいないか、調査も行って参りますので、どうか良い知らせをご期待ください」
「....よろしい、我が娘。では下がれ」
「はい」
それから、レイクウッド王国へ暫定教師として宗教学を少し教えたりしてからの国際会議が開かれる予定のグランドブードリックへの旅を始めたあたしは【聖艦メリディオ】に乗って、まずはレイクウッド8世の頼みで【氷竜討伐任務】に参加していた王国の討伐チームの支援をすべく、ちょっと学院へ生徒会長エルヴィーナを拾ってから行く予定だったのだけれど、まさか途中の会長に、
「確かに、今はすっかり英雄扱いなんだけどぉ、最初からどこかの馬の骨とも分からないフェクモ人がいきなりうちの学院にやってきて早々、色んな魔術をスラスラと発動できたというおかし過ぎる光景を見てしまったので、あの時からは彼を絶対にボクの要注意な人物としてこっそり監視する対象にしたの覚えてたねぇ。今でも後悔してないことだよぉー?」
ほう?
そんなに規格外すぎて、【奇跡の南地男子】とまで呼ばれたのに足る凄まじい成長速度を見せてきたのか、あのオケウエーという移住してきたばかりの男爵が....
ならば、これは一つの重大な発見であり、教会に仇を名す存在であるかどうか、調べるのに値する事件の可能性があるんだねー。
【ブルークラール連邦】にも何十年も前からフェクモ人の移民が住んできた北大陸における唯一な国なんだけど、あそこから聞いてきたフェクモ人に関する情報は今まで、1年間も満たない間で魔術使いになることはおろか、精霊術使いになった女性のフェクモ人も殆どいないと聞き及んでいる。
というか、これだけの60年間以上も長い月日が経ってしまっても、ギャラ―ルホルツのブルークラール連邦に移住して魔術使いや精霊術使いになったフェクモ人の数は指折りの11人しかいない現状なのに、オケウェ―男爵の1ヶ月間も満たない間での奇跡的成長は確かにエルヴィーナ会長が言うようにおかしいったらないんだねー!
連邦での現状を見るに、やはり生まれた瞬間から幼少期を魔術の使えない大地で育ったという土地柄の影響下に晒されてきたのか、自身たちの体内にある聖魔力における使用頻度の乏しさにより、中々魔術を構成する術式構築が困難に感じるフェクモ人が何度も訓練してきても同じような苦難を味わったばかりだとも聞いた。
だから、今までは男の【四元素魔術使い】はもちろん、女性フェクモ人の【精霊術使い】も殆どいない。
それを、ギャラ―ルホルツにやってきて1ヶ月間も満たない間でそこまでの成長速度を誇るバケモノ級フェクモ人がいるとしたらー
(やはり、南大陸フェクモにて、唯一使える魔術と聞いたあの、...【死霊魔術】と関連性が深いかもね)
確かに、小さい頃から教会が厳重に保管してきた古文書から読んできた情報だと、フェクモにて唯一使える魔術は【純正聖魔力気】という聖魔力の下位互換だけを発動条件としている【異空間収納】で(これも限られた熟練度高い天才的フェクモ人しか使えないというもので)、そしてもう一つは、...............
(...邪神ヴェルグニール....が由来の力の源、その【死の息吹】ってものを扱える【死霊魔術使い】、という辺りだと考えるべきね.........)
つまり!
既にある種の魔術を使いこなせたのなら、北大陸にやってきて早々、【四元素魔術】、【物理的無視魔術】だけじゃなくて、同時に【精霊術使い】になれたのも、自然な流れだとも言えるんだよね?
まだ定かじゃないけれど、
もし貴公が本当に教会にとっての脅威となる存在だと判明したら、
その時は、
容赦なくー
(討伐するよ!)
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筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
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