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第187話:取り乱した王様。そして宴会場のガブリエル王太子に挨拶された
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「「どうか頼む、陛下!!」」
「あ!....ああ、あぁあぁ....そ、その姿――っ!」
....ん?
どういうことか、...俺たちが必死になって懇願してるところをそこの玉座で見てるレイクウッド8世はみるみるうちに顔が真っ青になり、そしてー
「え、エリカ――――!!!我が娘のエリカかあぁ――――――――!!!??」
タタタタタタ――――――!!
「うおー?」
「すごく会いたかったぞ――!!あの時以来じゃったかぁ―、お前が『部屋から出して――!!城から出して―――!!』って懇願してきた時な悲痛そうな姿をー!でももう安心していいんじゃ、これからはお前に何の束縛も軟禁もせずに自由にしてていい~ひぐっ!うわあああ――――――!!我が娘よ―――――!!!~エリシャもいなくなってから本当に寂しかったぞえーーー!じゃから妹のお前が戻って今、せめてーー、うわあああ―――――――――――!!!ひぐっ~!ぐす~んっ!!」
「へい、陛下、ご気分をしっかりにして下さいー!その子はルミナリス王女ですよー!陛下の仰る、....【エリ...カ】?って子ではないんです!」
「そうですぞ、陛下!お気をご確かに―!」
ななー!どういう訳か、さっきまで、ただ懇願しながらの土下座をしていた俺とルミナリス王女だったのに、いきなり王女のそういう姿を見ていた陛下から、いきなり血相を変えた彼は悲痛そうな気分になりながら、こうして近くまで寄ってきて、王女を半ば強引に立ち上がらせてきてからは号泣しながら王女を抱きしめているところだが――!?
というか、そもそもエリカって誰だよ―――!?話に聞く限り、【最悪な一年間】の昔にアフォロ―メロによって攫われた王様の一人娘ってエリシャって名前の王女だったじゃんー!だから、そのエリカーって何なんだよーーー!?
「ナー!」
ん?どうしたんだ、あそこのクリス先輩はー!?いきなりそこまで近づいてきて俺達3人の王様に抱きしめ合ってるところへと歩いてきそうな仕草を見せるのはー!
「陛下、頼みますよー!威厳をお保ちになるべくすぐ離れて下さい!彼女は陛下の仰る人物らしき名前がしていた者ではありませんよー!」
ワシャー!
あ、どうやら王様を抱きしめていたルミナリスの身体から引きはがしたことに成功した大司祭のようだ! 困ってたところの王女を助けてくれてありがとう、クローディッシアーさん~!
「は、離せー!お前達二人――!あの子は確かにエリカじゃ!....6年前、【あの部屋】で、余が―」
バコ―――――!!!!
「おぎゃーっ!?」
「「「「「「「「「「―――!!」」」」」」」」」」
ショートヘアな金髪を綺麗に切り揃えた20代らしき青年が奥のドアから慌てて駆け出してきては老人である王様を気絶させるよう、頭部から鋭いチョップをかましてきたその男は―――!?
「ガブリエル殿下―――!?一体なにをー?」
「で、殿下―!お年寄りの陛下をなんて――!?」
気絶させた....確かに、去年はダンス会場で一度はオードリーと踊ったことあるって言われてた、あの男は、......そう!王様の息子にして、今はしっかりと王太子になったばかりっていう【ガブリエル王子】だった!
.....なんか、取り乱していた父を鎮めるためとはいえ、あそこまで乱暴な扱いをするとは....
「王族の沽券に関わることだよ。これ以上みっともないところを臣下である彼らに見せてやる訳にはいくまい」
タタタ――!
それだけ言って、直ぐに自分の気絶させた父をここの謁見の間から連れ出して、奥の部屋へと退室していった王族の親子二人を見てるしかない俺達だった!
「.....こ、コホン!...陛下は少し具合が良くありませんでしたので、今日はここで解散とします!みんなはすぐに退室して下さい!」
大司祭に続く、次もすかさずに、
「ええ!....どうやら、場の雰囲気に呑みこまれていたか、もしくは他国の王女からそんな真剣な懇願なさる姿をお目の前にして昔に誘拐されたエリシャ王女殿下との愛しき思い出でも思い起こされたのか、......ルミナリス王女をまるで自分のお娘さんに見えるかのように、...ご錯覚になってしまわれたのかと....だから、今はそっとして差し上げるべく、みんなもご退場願おうー」
今度はリノールト大臣にそう説明されたが、なんか最大に腑に落ちない点に感じちゃった。.....そもそも、さっきの王様は【エリシャ】ではなく、明らかにはっきりと【エリカ】って名前でルミナリスを呼んでいたんだったー!
エリシャ王女なら知っていたけど、エリカって誰なんだろうー?まさか取り乱した王様が、仮にも自分の娘の名前を間違えるはずがないし、どうしてー
「オケウェ―くん」
ぱしー!
ん?いきなり側までやってきたクリス先輩が俺の肩を強く握ってきてるようだが、なんでー?
「キミも王女も気分はどうデス?懇願してるところデシタのに、思わぬ事態になってしまって...」
「...え、..ええ、まあ。.....最初は妾の側まできて立ち上がらせに来ていただけでも驚いたことであったのに~、いきなり抱きしめながらの『エリカ―!』、『エリカ―!』って叫んできたであるもん~~!一体全体なにが何であるか、分かり兼ねていたぞー!?」
ルミナリスも当然のように王様の変貌っぷりに戸惑ってる感じの様子だ!
「まあ、まあ、その事について話し合うのはここから出てからにしようー?もう大司祭たちからも両端の壁に陣取ってる近衛騎士の皆からも鋭い視線で睨まれてるし、早く出ようー!?」
「ソうデスな、早く出よう!」
「リリも同意見なのです」
「わたくしもですわ!」
タタタタ―!
これ以上、城の者の反感を買わぬようにあっという間に退散していった俺達だった。
パチー――!!
「ひーっ!?」
心なしか、そこの両開き扉に向かって優雅な歩みをしてらっしゃるシルヴィン聖女は、なんでか俺の方に一瞬だけ冷たくて鋭い目線を向けてきたって感じたー!?でも見てみると、彼女は今、真正面に顔を向けてる様子で、こっちに振り向こうとしてないし、本当に気のせいだったのか...?
..................................................
.....................
それから、謁見の間から半ば追い出された感じって気分の俺達は外で色々起こったことを整理してから王城を出ようかってところに、
「待ったであります!ガブリエル殿下からの勅命を持ってきましたので、これからはここに記された通りに、予定の晩餐会が開かれる宴会場に参って下さい。そして十分に召し上がったら、今夜だけはここの王城に泊まって頂こう。各人の部屋はもう既に用意してあったと王太子殿下がおしゃられたので今すぐ宴会場へ来るようにと」
と、俺達【チーム・オケウェ―】と【チーム・純粋なる淑女研鑽会】に向けて、そう言ってきた王子直下の【近衛騎士団長】らしき装飾やマントがついてる立派な鎧を身に纏う若き騎士がいるようだ!かなりの使い手の経験を積んでるって外見から感じ取れたので、さすがは団長を務めるだけのことはあるな!
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それから、俺達は言われた通りに宴会場へ行ってきた。さっきいた謁見の間は4階だったが、宴会場が開かれてるのは2階になるので降りてきたのだ。
2階の中心部の奥深くに位置するのはここの広大な宴会場。その扉が開かれるや否や、目の前に広がるのは、まるで幻想的な高位な者だけ存在していい華やかな場所そのものだった~!高くそびえるアーチ型の天井には、数え切れないほどの燭台が吊るされ、純金と水晶で装飾されたシャンデリアが燦然と輝いている。ほ、本当に圧巻って感じだぜ!....で、その光が天井の紅色と金色の混合色ある装飾に反射し、まるで夜空に輝く星々のごとき幻想的な輝きを放っているみたいだな!
金色の壁には、歴代の王や偉業を成した貴族たちの肖像画が厳かに並び、額縁には精緻な金細工が施されていた。その中には、今宵この宴に集う貴族たちの祖先の姿もあるだろうね。
そして、宴会場の中央には、王侯貴族たちが優雅に舞うための広大なダンスフロアも広がっていた。...大理石の床は磨き上げられ、まるで鏡のように滑らかに光を反射してる! シルクやサテンの煌びやかな衣装を纏った貴婦人たちが軽やかにステップを踏めば、まるで天上の妖精が戯れるかのように映る。絶景だな~!更に、周囲には宮廷楽団が控え、弦楽器と笛が奏でる荘厳な旋律が場をさらに華やかに彩っている様子だ!......やはりどう見ても御伽噺みたいな光景だな、この田舎者な森育ちだった自分にとっては....
「オケウェ―男爵、やはりそのタキシードは良くお前に似合うんだな。ダークチョコレートみたく濃い褐色肌とバランス良く反対色の白いタキシードと黒いネクタイ、本当に格好良く映るぞ?がーはっはっ!」
「お、...お世辞でも嬉しいね、ドレンフィールド公爵」
「何よ、オケウエー~!お父様と話していてニヤニヤ微笑みながら無駄に舞い上がってるそのだらしない顔はー!ちょっと褒められただけで調子に乗り過ぎるわよ、もう~~!」
「オードリーもあまり男爵に厳しく当たり過ぎないようにな!こう見えて、実は純情で繊細な少年のようにも見えるがな、がーっははっは!」
「む~!お父様もお父様で、可憐な少女だったあたくしの子供時代には厳しく当たって育ててた癖に、今のあたくしにできた男の子の友達に対してだけ甘やかすなんて~!」
「あ~はははは.......」
...俺は今、宴会場のとある一隅にて、ドレンフィールド親子二人と仲良く会話を交わしている。青いドレスを着ているオードリーはやはり、その氷の契約精霊、【ベネフォーロッス】とよく合う配色だ。キラキラとよく煌めいている青いハイヒールもそうだ。白いタキシードを着てきた俺とはお揃いな感じも近くて、なんか周りから見たらカップルの側に父親が混ざって縁談の会話でもしてるように映るだろうな、あ~ははははは......
「ところで、お前達はいつ踊る気になるんだ?ついさっき、軽く召し上がっただろう、あそこのテーブルから?」
そう。
確かにダンスフロアの端には、一際目を引く長大な晩餐のテーブルが設けられていたな。金箔を散らしたローストビーフ、蜂蜜とスパイスで香り高く仕上げた鴨肉のコンフィ、バターとハーブが絡みつくプリプリのオマール海老。俺もここに入ってから直ぐにローストビーフの十数口か食ってたね。
さらに、宝石のように輝く果物の盛り合わせ、極上のクリームとナッツがふんだんに使われた洋菓子の数々が、まるで芸術品のように美しく客のために振る舞われているようだー!
「そ、そう...だね。そ、それは、えっと、そのぅ.....」
確かに屋敷の中でだけなら、オードリーと踊ったこともあるが、こんな大勢の人達が見てる中でオードリー嬢とダンスの披露目をするなんて~~、は、恥ずかしい!も、もしステップを踏んでるうちに躓いて転んだらどうしよう?....俺だけじゃなく、俺をダンスのパートナーとして選んでくれてるオードリーの顔にまで泥を塗るよー
「むふ~!?」
「もう~。みんなまで言う必要ないわよ?....あんたの考えてそうなことは筒抜けだわ」
「お、おう?」
「大方、緊張してるでしょー?あたくしと踊ってる最中に、ミスをしてみんなの笑い種にされるのって...」
「あ、あ~ははははー。そ、それは、まあ...」
「まったくだわ、あんたって人は...でも~!」
ぎゅむ~!
「ううおー!?」
いきなり強引にオードリーから俺の手を力強く掴んでから引っ張っていき、そして俺の腰までをその触れるだけで壊れちゃうような繊細そうな白い手のそれでー
「考えろ、ではなく、やれ、ってものでしょー?」
「あ」
「だから、踊ろう?去年、望まぬダンスをさせられたあたくしの過去をも上書きできちゃうような、...もっともっと素敵な思いでの一環として...?」
なんか、俯き出して顔を赤らんでいるオードリーがいる様子なんだけど、ったく!
お前から誘って実力行使まで見渡しのいいダンスフロア中心のここまで引っ張ってくれたんだろう~!それを今更俺のリードを期待してるとか、本当に素直じゃないな、お前!
「オケウェ―!次は私と踊ってくれるよねー!」
あ、あそこにいるのは、....ジュディだ!
「わたくしとも踊って下さいなー!」
ヒルドレッドまで―!?そのアダルティな感じのピンク色なセクシな貴族用ドレスをひらひらさせながらウィンクしてきたの~!
「ふふふ....うちも忘れてもらっては困るのよ?」
そこで優雅にゴブレットから何かを飲みながら妖しげに微笑んでくれてるクレアリスまでー?見目麗しい夕闇のドレスを着ながらで!
「ほら、見たでしょー?オケウェ―と踊りたいってうちのチームメンバーの子はもちろん、あそこもー」
「ねえねえー!あそこにるのはオケウェ―男爵様だわー!」
「うんうん~!確かにこの間、氷竜マインハーラッドを討伐してきたばかりっていう学院のチームリーダって男の精霊術使いかしら?」
「ええ、そうですわね!フェクモ出身の人ですけれど、先月、結界が張られた王都の中から信じられないぐらい出てきた【新型世界獣】も討伐してくれたあの【聖騎士】様って殿方ですわよー!」
「わおー!そんな素敵な殿方....あ、あたしも彼と踊ってみたい~!」
「まあ、ずるいですわ、シャーリンヌさん!わたくしという上級貴族令嬢を差し置いて真っ先に彼と踊ってみたいなんて~!」
「そもそも、わたしたちは彼ら彼女らと違って精霊術学院生の生徒でもなく、精霊とも契約できてない普通な【四元素魔術使い】ばかりだわ~!あの雲の上にいらっしゃるかのような規格外な【奇跡の南地男子】と釣り合う訳がないわ」
「だ、だからといって、【希望の才女】ばかり美味しい思いができると見て悔しくないの~?あたし達も努力してきたのに~、ドレンフィールド家に生まれただけで何でも簡単に手に入るなんて―!
「ぴくっ!」
あ、オードリーの青筋がたってしまった!やはり『ドレンフィールド家に生まれただけで何でも簡単に手に入るなんて―!』って言葉が彼女にとって地雷だったので、喧嘩になる前に早くー!
なので、オードリーの奴が怒り出す前に、早くダンスをこいつと始めてみないと―!
「じゃ、オードリーお嬢さん、俺と踊ってみない?」
「~~!?......い、いいわよ、....別に」
俺の大胆な切り出しと優雅なポーズの伴ったダンスへの誘いに、オードリーも再び俺の腰へとその白い手を添えながら、片方の手を俺の右手へ...
「「踊ろう―!」」
たたたーたたたーたたたん~!たたたーたたたーたたたたん~たたたたたたたん~!た~た~た~た~た~たん!た~た~た~た~た~たん!たたたーたたたーたたたん~!たたたーたたたーたたたたん~!た~た~た~た~た~たん!た~た~た~た~た~たん!
「あはは...」
「くすくす...」
俺とオードリーはクラシック音楽の音色に聴覚が心地よく撫でられながら、お互いにステップを踏み変えつつ位置も回転したりの優雅でお上品な舞踊を大勢の上流階級の王侯貴族に見守られながら、楽しいひと時を過ごしていたのだった。
こうして見ると、なんか感慨深いものを感じるな...
だって、ここの、白い顔と肌ばかりしている人達に囲まれながら、俺一人だけ濃い褐色肌をしている唯一なフェクモ人なのだからな。
......それだけじゃなくて、【南地不干渉条約】にて、このレイクウッド王国ではフェクモ人の移住者が全くと言っていいほど一人もいなかったのに反して、俺だけ学院長の後ろ盾に恵まれてこの国にいていいだけじゃなくて男爵の爵位まで貰うことになるなんて........
やっぱり、彼らの呼んでくれてる通りに、奇跡的な連続で本当に俺は【奇跡の南地男子】だなって噛み締めてるところだ、今は....... ジェームズというとっても親しい男友達を失って本当に残念だと思う......。彼さえいれば、少しはこの胸に抱く暖かくて嬉しい気持ちを同性の仲間と共有もできたのに........後、シャルロットという恋人までゲットした彼と、未来の俺の選んだ相手と一緒のダブルデートの楽しさも満喫できたのに..........
さらばだ、ジェームズ!俺は絶対に、お前と過ごした楽しい思い出と恋人を得たお前の人生体験を参考に、これからもオードリー達との関係を進めていきたいと思う(但し、誰も悲しい思いにさせないために心掛けながらで.......)
「「「「「「「「「「「「「「ウウおおおお――――!」」」」」」」」」」」」」
周りからの反応も上々って言ったところだし、結果オーライってとこだね!俺とオードリーのダンスが!
それから、ジュディともヒルドレッドともクレアリスとも一通り踊った後ー
「ん?ルミナリス姫はどこに?」
「さあ?あたくしも知らないわよ、そんなの」
「私も王女さんがどこにいたか見てなかったね」
オードリーとジュディはああ言ってるんだけど、
「どこにいるのでしょうね、ふふふ......」
「......ん?ルミナリス王女サンなら、確か、さっきからずっとベランダにて何やら黄昏れてた感じな調子そのままですわ。何考えてるのか知りませんけれど、ついさっき、わたくし達数人の目の前で、他国の国王である我がレイクウッド8世陛下に向かって土下座してきたばかりでしょう?ですから、それでー」
「王女ともあろうお方に、そんな切羽詰まったような大胆な行動まで出てフェクモ人視察を頼みたいって恥も外聞も捨てたような軽はずみな懇願で......」
すごく悩んでるって気持ちは伝わった。後は.......
「ふーん!あたくしはまだ姫を認めたわけじゃないけれど、一応我が国の王様にまで真摯なような、切ないとまで言えるようなことを敢行したわけだったし?だったらー」
「ああ......」
さっき、王様がどうしてルミナリス姫の懇願してるところを見て未だに行方不明のままのエリシャ王女を思い起こされたような取り乱した状態になったか分からないが、今俺達がそれについて考えていても答えが出ないので、まずは王女のメンタルケアの方を優先しよう。そう決めた俺はベランダの方へ歩を進ませようとしたらー
「やあー、君達。......初めまして、...と言ってもついさっき謁見の間で軽く顔合わせも済ませたか」
ん?そこにいる、色んな上品な装飾が飾られてる深紅色と純白の色が混合した配色のある王族用っぽい礼服を着ながら、豪華な王家の紋章まで刺繍された赤いマントを羽織ってるその最上級な格好で近づいてきたのは――――!!
「良くぞ来てくれた、僕らの王城の宴会場へ。氷竜を討伐してくれた君達なら、もはや着飾った言葉で僕と話することもしなくていいんだ。さて、さっき、ルミナリス姫に対する返答が先のはずなので、父に代わって僕から返事を出そう。という訳で、王女とだけじゃなくて、【チーム・オケウェ―】のリーダーの君、オケウエー男爵、そしてそこの【チーム・純粋なる淑女研鑽会】のリーダーであるクリスティーナ嬢、君達もルミナリス姫と一緒に、僕の部屋までお話し合いの場を提供しよう。ま、そうだ、忘れるところだったが一応は去年まで一度は僕と踊ったこともあるそこの、【麗足の舞姫嬢】、とまで呼ばれたこともあるオードリー嬢。...君も一緒に来てくれ」
さっき、謁見の間で会ってきたばかりのガブリエル王太子だ――――――――!!
俺から会うのは初めてだけど、王子は名乗る必要がない程、俺達には彼のことを既にある程度は知ってた事を察したからだな!オードリーからの昔話も聞かされてきたし、新聞も画像も彼の顔は覚えてたしな。
「....王子殿下、...いいえ、もう王太子殿下になってたんですわね。....お久しぶり」
なんか、オードリーも表にでないが少しだけの隠れたままの棘のある表情と声でガブリエル王太子に対して返事してるしー!やっぱり、昔に王子からの結婚とか婚約をせがまれたり、ダンスを強要されたりしたあの日のことをまだ許せなかったのか?
「あら?その場からワタクシの同席もアピールしてくれないとはつれない王太子だこと。ふふふ...」
え?王太子の直ぐ後ろに隠れてにょきっと現れたそこの豪華すぎるお姫様っぽいフワフワなプリンセスラインの金色のドレスを着てるそこの美し過ぎる金髪ロングの令嬢は―――!?
「エクリエシース第一王女、セシリアだわ」
ん?側のオードリーがそう囁いたけど、あ!それってー
「そうだった、紹介するのまだだっけ?なら、こちらは僕が先日、婚約の儀を済ませてきたばかりの、僕の生涯の伴侶とすべく王国の未来の王妃となる女性、【エクリエシース王国】の第一王女、セシリア・フォン・エクリエシースだね」
な、成程!ついにこの国を指導する未来の後継者も安泰だなー。......ん?そういえば、さっきからクリス先輩がどこにいるか見当たらないがー、あ、そこだ!
タタタタタタ―――!
ベランダの窓があるここの会場の壁際に、静かにダンスをお互いに踊ってるクリス先輩とジュリア先輩、そしてレイーザリン先輩とリーリスちゃんの姿をついに見かけたー!どうやら、どっちも女同士の組み合わせで踊ってた様子だ!
聖女シルヴィンはさっき、大事な教会の用事があると言ったからこの会場に参加出来なかったけどな。
「さあ、ついてこい、僕の部屋まで。......父がどうして取り乱してしまったか、原因についても触れよう」
「ジュディ、お前はルミナリス姫を呼びに行ってきて」
「はい~!」
............................................
そして、クリス先輩達もここに集まってもらってから、
「オケウェ―くん、王太子の言葉を良く聞くようにな。特に、行方不明になったままのエリシャ王女に関する話で......。【あの二人】のように、デシタ......」
ん?どうしてなのか、いきなり俺の側まで寄ってきてそう囁いてきたクリス先輩がいるんだが、なんでだろう...... そして、なんでそんな意味深な言葉まで最後に―?
これから、俺、ルミナリス王女、オードリーとクリス先輩は、ガブリエル王子とその婚約者である【エクリエシース王国】のセシリア王女の後を追いながら、王族の知り合いに相応しく優雅な足取りを心掛けて歩を進ませていくだけだった。
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「あ!....ああ、あぁあぁ....そ、その姿――っ!」
....ん?
どういうことか、...俺たちが必死になって懇願してるところをそこの玉座で見てるレイクウッド8世はみるみるうちに顔が真っ青になり、そしてー
「え、エリカ――――!!!我が娘のエリカかあぁ――――――――!!!??」
タタタタタタ――――――!!
「うおー?」
「すごく会いたかったぞ――!!あの時以来じゃったかぁ―、お前が『部屋から出して――!!城から出して―――!!』って懇願してきた時な悲痛そうな姿をー!でももう安心していいんじゃ、これからはお前に何の束縛も軟禁もせずに自由にしてていい~ひぐっ!うわあああ――――――!!我が娘よ―――――!!!~エリシャもいなくなってから本当に寂しかったぞえーーー!じゃから妹のお前が戻って今、せめてーー、うわあああ―――――――――――!!!ひぐっ~!ぐす~んっ!!」
「へい、陛下、ご気分をしっかりにして下さいー!その子はルミナリス王女ですよー!陛下の仰る、....【エリ...カ】?って子ではないんです!」
「そうですぞ、陛下!お気をご確かに―!」
ななー!どういう訳か、さっきまで、ただ懇願しながらの土下座をしていた俺とルミナリス王女だったのに、いきなり王女のそういう姿を見ていた陛下から、いきなり血相を変えた彼は悲痛そうな気分になりながら、こうして近くまで寄ってきて、王女を半ば強引に立ち上がらせてきてからは号泣しながら王女を抱きしめているところだが――!?
というか、そもそもエリカって誰だよ―――!?話に聞く限り、【最悪な一年間】の昔にアフォロ―メロによって攫われた王様の一人娘ってエリシャって名前の王女だったじゃんー!だから、そのエリカーって何なんだよーーー!?
「ナー!」
ん?どうしたんだ、あそこのクリス先輩はー!?いきなりそこまで近づいてきて俺達3人の王様に抱きしめ合ってるところへと歩いてきそうな仕草を見せるのはー!
「陛下、頼みますよー!威厳をお保ちになるべくすぐ離れて下さい!彼女は陛下の仰る人物らしき名前がしていた者ではありませんよー!」
ワシャー!
あ、どうやら王様を抱きしめていたルミナリスの身体から引きはがしたことに成功した大司祭のようだ! 困ってたところの王女を助けてくれてありがとう、クローディッシアーさん~!
「は、離せー!お前達二人――!あの子は確かにエリカじゃ!....6年前、【あの部屋】で、余が―」
バコ―――――!!!!
「おぎゃーっ!?」
「「「「「「「「「「―――!!」」」」」」」」」」
ショートヘアな金髪を綺麗に切り揃えた20代らしき青年が奥のドアから慌てて駆け出してきては老人である王様を気絶させるよう、頭部から鋭いチョップをかましてきたその男は―――!?
「ガブリエル殿下―――!?一体なにをー?」
「で、殿下―!お年寄りの陛下をなんて――!?」
気絶させた....確かに、去年はダンス会場で一度はオードリーと踊ったことあるって言われてた、あの男は、......そう!王様の息子にして、今はしっかりと王太子になったばかりっていう【ガブリエル王子】だった!
.....なんか、取り乱していた父を鎮めるためとはいえ、あそこまで乱暴な扱いをするとは....
「王族の沽券に関わることだよ。これ以上みっともないところを臣下である彼らに見せてやる訳にはいくまい」
タタタ――!
それだけ言って、直ぐに自分の気絶させた父をここの謁見の間から連れ出して、奥の部屋へと退室していった王族の親子二人を見てるしかない俺達だった!
「.....こ、コホン!...陛下は少し具合が良くありませんでしたので、今日はここで解散とします!みんなはすぐに退室して下さい!」
大司祭に続く、次もすかさずに、
「ええ!....どうやら、場の雰囲気に呑みこまれていたか、もしくは他国の王女からそんな真剣な懇願なさる姿をお目の前にして昔に誘拐されたエリシャ王女殿下との愛しき思い出でも思い起こされたのか、......ルミナリス王女をまるで自分のお娘さんに見えるかのように、...ご錯覚になってしまわれたのかと....だから、今はそっとして差し上げるべく、みんなもご退場願おうー」
今度はリノールト大臣にそう説明されたが、なんか最大に腑に落ちない点に感じちゃった。.....そもそも、さっきの王様は【エリシャ】ではなく、明らかにはっきりと【エリカ】って名前でルミナリスを呼んでいたんだったー!
エリシャ王女なら知っていたけど、エリカって誰なんだろうー?まさか取り乱した王様が、仮にも自分の娘の名前を間違えるはずがないし、どうしてー
「オケウェ―くん」
ぱしー!
ん?いきなり側までやってきたクリス先輩が俺の肩を強く握ってきてるようだが、なんでー?
「キミも王女も気分はどうデス?懇願してるところデシタのに、思わぬ事態になってしまって...」
「...え、..ええ、まあ。.....最初は妾の側まできて立ち上がらせに来ていただけでも驚いたことであったのに~、いきなり抱きしめながらの『エリカ―!』、『エリカ―!』って叫んできたであるもん~~!一体全体なにが何であるか、分かり兼ねていたぞー!?」
ルミナリスも当然のように王様の変貌っぷりに戸惑ってる感じの様子だ!
「まあ、まあ、その事について話し合うのはここから出てからにしようー?もう大司祭たちからも両端の壁に陣取ってる近衛騎士の皆からも鋭い視線で睨まれてるし、早く出ようー!?」
「ソうデスな、早く出よう!」
「リリも同意見なのです」
「わたくしもですわ!」
タタタタ―!
これ以上、城の者の反感を買わぬようにあっという間に退散していった俺達だった。
パチー――!!
「ひーっ!?」
心なしか、そこの両開き扉に向かって優雅な歩みをしてらっしゃるシルヴィン聖女は、なんでか俺の方に一瞬だけ冷たくて鋭い目線を向けてきたって感じたー!?でも見てみると、彼女は今、真正面に顔を向けてる様子で、こっちに振り向こうとしてないし、本当に気のせいだったのか...?
..................................................
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それから、謁見の間から半ば追い出された感じって気分の俺達は外で色々起こったことを整理してから王城を出ようかってところに、
「待ったであります!ガブリエル殿下からの勅命を持ってきましたので、これからはここに記された通りに、予定の晩餐会が開かれる宴会場に参って下さい。そして十分に召し上がったら、今夜だけはここの王城に泊まって頂こう。各人の部屋はもう既に用意してあったと王太子殿下がおしゃられたので今すぐ宴会場へ来るようにと」
と、俺達【チーム・オケウェ―】と【チーム・純粋なる淑女研鑽会】に向けて、そう言ってきた王子直下の【近衛騎士団長】らしき装飾やマントがついてる立派な鎧を身に纏う若き騎士がいるようだ!かなりの使い手の経験を積んでるって外見から感じ取れたので、さすがは団長を務めるだけのことはあるな!
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それから、俺達は言われた通りに宴会場へ行ってきた。さっきいた謁見の間は4階だったが、宴会場が開かれてるのは2階になるので降りてきたのだ。
2階の中心部の奥深くに位置するのはここの広大な宴会場。その扉が開かれるや否や、目の前に広がるのは、まるで幻想的な高位な者だけ存在していい華やかな場所そのものだった~!高くそびえるアーチ型の天井には、数え切れないほどの燭台が吊るされ、純金と水晶で装飾されたシャンデリアが燦然と輝いている。ほ、本当に圧巻って感じだぜ!....で、その光が天井の紅色と金色の混合色ある装飾に反射し、まるで夜空に輝く星々のごとき幻想的な輝きを放っているみたいだな!
金色の壁には、歴代の王や偉業を成した貴族たちの肖像画が厳かに並び、額縁には精緻な金細工が施されていた。その中には、今宵この宴に集う貴族たちの祖先の姿もあるだろうね。
そして、宴会場の中央には、王侯貴族たちが優雅に舞うための広大なダンスフロアも広がっていた。...大理石の床は磨き上げられ、まるで鏡のように滑らかに光を反射してる! シルクやサテンの煌びやかな衣装を纏った貴婦人たちが軽やかにステップを踏めば、まるで天上の妖精が戯れるかのように映る。絶景だな~!更に、周囲には宮廷楽団が控え、弦楽器と笛が奏でる荘厳な旋律が場をさらに華やかに彩っている様子だ!......やはりどう見ても御伽噺みたいな光景だな、この田舎者な森育ちだった自分にとっては....
「オケウェ―男爵、やはりそのタキシードは良くお前に似合うんだな。ダークチョコレートみたく濃い褐色肌とバランス良く反対色の白いタキシードと黒いネクタイ、本当に格好良く映るぞ?がーはっはっ!」
「お、...お世辞でも嬉しいね、ドレンフィールド公爵」
「何よ、オケウエー~!お父様と話していてニヤニヤ微笑みながら無駄に舞い上がってるそのだらしない顔はー!ちょっと褒められただけで調子に乗り過ぎるわよ、もう~~!」
「オードリーもあまり男爵に厳しく当たり過ぎないようにな!こう見えて、実は純情で繊細な少年のようにも見えるがな、がーっははっは!」
「む~!お父様もお父様で、可憐な少女だったあたくしの子供時代には厳しく当たって育ててた癖に、今のあたくしにできた男の子の友達に対してだけ甘やかすなんて~!」
「あ~はははは.......」
...俺は今、宴会場のとある一隅にて、ドレンフィールド親子二人と仲良く会話を交わしている。青いドレスを着ているオードリーはやはり、その氷の契約精霊、【ベネフォーロッス】とよく合う配色だ。キラキラとよく煌めいている青いハイヒールもそうだ。白いタキシードを着てきた俺とはお揃いな感じも近くて、なんか周りから見たらカップルの側に父親が混ざって縁談の会話でもしてるように映るだろうな、あ~ははははは......
「ところで、お前達はいつ踊る気になるんだ?ついさっき、軽く召し上がっただろう、あそこのテーブルから?」
そう。
確かにダンスフロアの端には、一際目を引く長大な晩餐のテーブルが設けられていたな。金箔を散らしたローストビーフ、蜂蜜とスパイスで香り高く仕上げた鴨肉のコンフィ、バターとハーブが絡みつくプリプリのオマール海老。俺もここに入ってから直ぐにローストビーフの十数口か食ってたね。
さらに、宝石のように輝く果物の盛り合わせ、極上のクリームとナッツがふんだんに使われた洋菓子の数々が、まるで芸術品のように美しく客のために振る舞われているようだー!
「そ、そう...だね。そ、それは、えっと、そのぅ.....」
確かに屋敷の中でだけなら、オードリーと踊ったこともあるが、こんな大勢の人達が見てる中でオードリー嬢とダンスの披露目をするなんて~~、は、恥ずかしい!も、もしステップを踏んでるうちに躓いて転んだらどうしよう?....俺だけじゃなく、俺をダンスのパートナーとして選んでくれてるオードリーの顔にまで泥を塗るよー
「むふ~!?」
「もう~。みんなまで言う必要ないわよ?....あんたの考えてそうなことは筒抜けだわ」
「お、おう?」
「大方、緊張してるでしょー?あたくしと踊ってる最中に、ミスをしてみんなの笑い種にされるのって...」
「あ、あ~ははははー。そ、それは、まあ...」
「まったくだわ、あんたって人は...でも~!」
ぎゅむ~!
「ううおー!?」
いきなり強引にオードリーから俺の手を力強く掴んでから引っ張っていき、そして俺の腰までをその触れるだけで壊れちゃうような繊細そうな白い手のそれでー
「考えろ、ではなく、やれ、ってものでしょー?」
「あ」
「だから、踊ろう?去年、望まぬダンスをさせられたあたくしの過去をも上書きできちゃうような、...もっともっと素敵な思いでの一環として...?」
なんか、俯き出して顔を赤らんでいるオードリーがいる様子なんだけど、ったく!
お前から誘って実力行使まで見渡しのいいダンスフロア中心のここまで引っ張ってくれたんだろう~!それを今更俺のリードを期待してるとか、本当に素直じゃないな、お前!
「オケウェ―!次は私と踊ってくれるよねー!」
あ、あそこにいるのは、....ジュディだ!
「わたくしとも踊って下さいなー!」
ヒルドレッドまで―!?そのアダルティな感じのピンク色なセクシな貴族用ドレスをひらひらさせながらウィンクしてきたの~!
「ふふふ....うちも忘れてもらっては困るのよ?」
そこで優雅にゴブレットから何かを飲みながら妖しげに微笑んでくれてるクレアリスまでー?見目麗しい夕闇のドレスを着ながらで!
「ほら、見たでしょー?オケウェ―と踊りたいってうちのチームメンバーの子はもちろん、あそこもー」
「ねえねえー!あそこにるのはオケウェ―男爵様だわー!」
「うんうん~!確かにこの間、氷竜マインハーラッドを討伐してきたばかりっていう学院のチームリーダって男の精霊術使いかしら?」
「ええ、そうですわね!フェクモ出身の人ですけれど、先月、結界が張られた王都の中から信じられないぐらい出てきた【新型世界獣】も討伐してくれたあの【聖騎士】様って殿方ですわよー!」
「わおー!そんな素敵な殿方....あ、あたしも彼と踊ってみたい~!」
「まあ、ずるいですわ、シャーリンヌさん!わたくしという上級貴族令嬢を差し置いて真っ先に彼と踊ってみたいなんて~!」
「そもそも、わたしたちは彼ら彼女らと違って精霊術学院生の生徒でもなく、精霊とも契約できてない普通な【四元素魔術使い】ばかりだわ~!あの雲の上にいらっしゃるかのような規格外な【奇跡の南地男子】と釣り合う訳がないわ」
「だ、だからといって、【希望の才女】ばかり美味しい思いができると見て悔しくないの~?あたし達も努力してきたのに~、ドレンフィールド家に生まれただけで何でも簡単に手に入るなんて―!
「ぴくっ!」
あ、オードリーの青筋がたってしまった!やはり『ドレンフィールド家に生まれただけで何でも簡単に手に入るなんて―!』って言葉が彼女にとって地雷だったので、喧嘩になる前に早くー!
なので、オードリーの奴が怒り出す前に、早くダンスをこいつと始めてみないと―!
「じゃ、オードリーお嬢さん、俺と踊ってみない?」
「~~!?......い、いいわよ、....別に」
俺の大胆な切り出しと優雅なポーズの伴ったダンスへの誘いに、オードリーも再び俺の腰へとその白い手を添えながら、片方の手を俺の右手へ...
「「踊ろう―!」」
たたたーたたたーたたたん~!たたたーたたたーたたたたん~たたたたたたたん~!た~た~た~た~た~たん!た~た~た~た~た~たん!たたたーたたたーたたたん~!たたたーたたたーたたたたん~!た~た~た~た~た~たん!た~た~た~た~た~たん!
「あはは...」
「くすくす...」
俺とオードリーはクラシック音楽の音色に聴覚が心地よく撫でられながら、お互いにステップを踏み変えつつ位置も回転したりの優雅でお上品な舞踊を大勢の上流階級の王侯貴族に見守られながら、楽しいひと時を過ごしていたのだった。
こうして見ると、なんか感慨深いものを感じるな...
だって、ここの、白い顔と肌ばかりしている人達に囲まれながら、俺一人だけ濃い褐色肌をしている唯一なフェクモ人なのだからな。
......それだけじゃなくて、【南地不干渉条約】にて、このレイクウッド王国ではフェクモ人の移住者が全くと言っていいほど一人もいなかったのに反して、俺だけ学院長の後ろ盾に恵まれてこの国にいていいだけじゃなくて男爵の爵位まで貰うことになるなんて........
やっぱり、彼らの呼んでくれてる通りに、奇跡的な連続で本当に俺は【奇跡の南地男子】だなって噛み締めてるところだ、今は....... ジェームズというとっても親しい男友達を失って本当に残念だと思う......。彼さえいれば、少しはこの胸に抱く暖かくて嬉しい気持ちを同性の仲間と共有もできたのに........後、シャルロットという恋人までゲットした彼と、未来の俺の選んだ相手と一緒のダブルデートの楽しさも満喫できたのに..........
さらばだ、ジェームズ!俺は絶対に、お前と過ごした楽しい思い出と恋人を得たお前の人生体験を参考に、これからもオードリー達との関係を進めていきたいと思う(但し、誰も悲しい思いにさせないために心掛けながらで.......)
「「「「「「「「「「「「「「ウウおおおお――――!」」」」」」」」」」」」」
周りからの反応も上々って言ったところだし、結果オーライってとこだね!俺とオードリーのダンスが!
それから、ジュディともヒルドレッドともクレアリスとも一通り踊った後ー
「ん?ルミナリス姫はどこに?」
「さあ?あたくしも知らないわよ、そんなの」
「私も王女さんがどこにいたか見てなかったね」
オードリーとジュディはああ言ってるんだけど、
「どこにいるのでしょうね、ふふふ......」
「......ん?ルミナリス王女サンなら、確か、さっきからずっとベランダにて何やら黄昏れてた感じな調子そのままですわ。何考えてるのか知りませんけれど、ついさっき、わたくし達数人の目の前で、他国の国王である我がレイクウッド8世陛下に向かって土下座してきたばかりでしょう?ですから、それでー」
「王女ともあろうお方に、そんな切羽詰まったような大胆な行動まで出てフェクモ人視察を頼みたいって恥も外聞も捨てたような軽はずみな懇願で......」
すごく悩んでるって気持ちは伝わった。後は.......
「ふーん!あたくしはまだ姫を認めたわけじゃないけれど、一応我が国の王様にまで真摯なような、切ないとまで言えるようなことを敢行したわけだったし?だったらー」
「ああ......」
さっき、王様がどうしてルミナリス姫の懇願してるところを見て未だに行方不明のままのエリシャ王女を思い起こされたような取り乱した状態になったか分からないが、今俺達がそれについて考えていても答えが出ないので、まずは王女のメンタルケアの方を優先しよう。そう決めた俺はベランダの方へ歩を進ませようとしたらー
「やあー、君達。......初めまして、...と言ってもついさっき謁見の間で軽く顔合わせも済ませたか」
ん?そこにいる、色んな上品な装飾が飾られてる深紅色と純白の色が混合した配色のある王族用っぽい礼服を着ながら、豪華な王家の紋章まで刺繍された赤いマントを羽織ってるその最上級な格好で近づいてきたのは――――!!
「良くぞ来てくれた、僕らの王城の宴会場へ。氷竜を討伐してくれた君達なら、もはや着飾った言葉で僕と話することもしなくていいんだ。さて、さっき、ルミナリス姫に対する返答が先のはずなので、父に代わって僕から返事を出そう。という訳で、王女とだけじゃなくて、【チーム・オケウェ―】のリーダーの君、オケウエー男爵、そしてそこの【チーム・純粋なる淑女研鑽会】のリーダーであるクリスティーナ嬢、君達もルミナリス姫と一緒に、僕の部屋までお話し合いの場を提供しよう。ま、そうだ、忘れるところだったが一応は去年まで一度は僕と踊ったこともあるそこの、【麗足の舞姫嬢】、とまで呼ばれたこともあるオードリー嬢。...君も一緒に来てくれ」
さっき、謁見の間で会ってきたばかりのガブリエル王太子だ――――――――!!
俺から会うのは初めてだけど、王子は名乗る必要がない程、俺達には彼のことを既にある程度は知ってた事を察したからだな!オードリーからの昔話も聞かされてきたし、新聞も画像も彼の顔は覚えてたしな。
「....王子殿下、...いいえ、もう王太子殿下になってたんですわね。....お久しぶり」
なんか、オードリーも表にでないが少しだけの隠れたままの棘のある表情と声でガブリエル王太子に対して返事してるしー!やっぱり、昔に王子からの結婚とか婚約をせがまれたり、ダンスを強要されたりしたあの日のことをまだ許せなかったのか?
「あら?その場からワタクシの同席もアピールしてくれないとはつれない王太子だこと。ふふふ...」
え?王太子の直ぐ後ろに隠れてにょきっと現れたそこの豪華すぎるお姫様っぽいフワフワなプリンセスラインの金色のドレスを着てるそこの美し過ぎる金髪ロングの令嬢は―――!?
「エクリエシース第一王女、セシリアだわ」
ん?側のオードリーがそう囁いたけど、あ!それってー
「そうだった、紹介するのまだだっけ?なら、こちらは僕が先日、婚約の儀を済ませてきたばかりの、僕の生涯の伴侶とすべく王国の未来の王妃となる女性、【エクリエシース王国】の第一王女、セシリア・フォン・エクリエシースだね」
な、成程!ついにこの国を指導する未来の後継者も安泰だなー。......ん?そういえば、さっきからクリス先輩がどこにいるか見当たらないがー、あ、そこだ!
タタタタタタ―――!
ベランダの窓があるここの会場の壁際に、静かにダンスをお互いに踊ってるクリス先輩とジュリア先輩、そしてレイーザリン先輩とリーリスちゃんの姿をついに見かけたー!どうやら、どっちも女同士の組み合わせで踊ってた様子だ!
聖女シルヴィンはさっき、大事な教会の用事があると言ったからこの会場に参加出来なかったけどな。
「さあ、ついてこい、僕の部屋まで。......父がどうして取り乱してしまったか、原因についても触れよう」
「ジュディ、お前はルミナリス姫を呼びに行ってきて」
「はい~!」
............................................
そして、クリス先輩達もここに集まってもらってから、
「オケウェ―くん、王太子の言葉を良く聞くようにな。特に、行方不明になったままのエリシャ王女に関する話で......。【あの二人】のように、デシタ......」
ん?どうしてなのか、いきなり俺の側まで寄ってきてそう囁いてきたクリス先輩がいるんだが、なんでだろう...... そして、なんでそんな意味深な言葉まで最後に―?
これから、俺、ルミナリス王女、オードリーとクリス先輩は、ガブリエル王子とその婚約者である【エクリエシース王国】のセシリア王女の後を追いながら、王族の知り合いに相応しく優雅な足取りを心掛けて歩を進ませていくだけだった。
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