異世界転移したけど王様がクズなので旅をします。〜邪神に選ばれし男は神へと至る〜

悪鬼さん

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古の島編

強くなってもまだ勝てない

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 【side 明人】
魔人族の罠に掛かり数人のクラスメイトが行方不明になってから2日が経った時、偉そうな騎士から城からの連絡があった。
「少し遅れる事になったが予定通り迷宮に入り、力を蓄えて欲しいとのことだ」
まだ2日しか経っていないのにも関わらず迷宮に行かされる事になり、当然クラスメイト達の反発もあったが…
「俺はクラスメイトの仇を討ちたい、その為の力を手に入れることが出来るなら命を賭けてでも強くなりたい!」
と言った事で皆んなの士気が上がって、迷宮に行く事になった。

何人かでバランス良くチーム分けをする事になり、前衛は俺と蓮斗と賢治とイヴァン、後衛は美咲と黒川と高梨になった。
前衛のジョブは俺はジョブは神侍で素早くそして鋭く斬り込む、蓮斗は勇者でオールラウンダー、賢治は焔騎士で炎を纏ったりして高い防御力と持っているので盾役でイヴァンは重戦士で高い防御力と攻撃力を持っていて最前線で戦える。

後衛のジョブは美咲が付与魔術師エンチャンター仲間の補助魔法って言うのを付与して強くしたり出来て、魔法で攻撃も出来るらしい。黒川は賢者セージ攻撃魔法に関してはオールラウンダーで、高い火力が期待できる。高梨は高位神官ハイプリーストで美咲と同じく補助魔法が使えるらしいが、それ以外にも回復魔法を使えるらしい。

…ここだけ見ればバランスの良いパーティーなんだが、問題は全員が未熟ということだな、俺はある程度慣れて来たが、それでもまだ危ない、他の奴等なんて子供に刃物や拳銃を与えた様な…いやもっと危険だな、幼児にバズーカを持たせてる感じか?

もっと問題なのは全員数日程度の訓練しかやってない上に前衛職の奴等はつまらないからという理由で適当にやってたことなんだよな…しかも自分達が未熟という自覚もない。
急に武器を持たされて数日で実戦で使えるのは驚異的な才能を持ったやつか経験者だけだ。

まあ決まった事はしょうがない、もし事故があっても物凄い身体が丈夫になってるから死人は出ないはずだ。俺はそういう考えて忠告するのとかは苦手だから何かが起きて危なさを自覚してくれるのが一番手っ取り早い。

一先ずは俺が事故の犠牲者になったら目も当てられないので前衛の戦い方は大体俺が教えた、後衛は皆んな簡単な魔法が使えるようになっていて美咲が凄い意欲的だった…あいつは晃が強い事知らないからな…当人は強くなって晃を見つけたいのかそれとも…。

まあ、迷宮に入り始めて5日ほど経ったが一層目から五層目までは石レンガなどで造られた遺跡のような構造で、出てくる魔物はゴブリンやコボルト、スケルトンといった雑魚、らしく、階層は現在分かってる時点で五十六層でまだしたがあるそうだ。

俺等のパーティーは俺の教えもあって他の奴等に比べ頭一つ抜けている、他の奴等が一~ニ層で戦ってる間、俺等は三層を攻略した。 

そして話は今に戻るが…
「友達、か…それにしても魔人族は許せないな、罠に掛けて俺達を襲うなんて…きっとみんな…明人、君の友達の晃って奴も…」
あいつの事をよく知らないとは言え…死んだ、なぁ…ッ!
やべぇ…美咲が泣きそうな顔になってる、美咲が…てかあいつ身内が泣いたりしたらブチ切れるからな、お前がいながら泣かせてんじゃねえよとか言われる…あいつ過保護だからな…泣いてんのはアイツのせいだけどな!

「死んでねえ」
「え?」
「死んでねえよ、アイツは」
そう言うと蓮斗は黒川の言葉もあり、死んでないだろうと言ったが…何か勘違いしている気がすんな…。

あーあ…晃のヤツ、早く帰って来ねえかな。

************************************
【side 晃】

「クソが!ふざけんな!」
真っ暗な空間で、晃は絶叫する。

何故こうなった!


時は少し前に遡る……。




目が覚めた後、強化された身体を少し慣らしてフットワークなどを完璧にした後、周囲の状況などを確認する為あたりの探索に出ることにした。木の枝を拾いつつ少しずつ探索区間を広げていると複数の足音がした、音が聴こえた所に不用意に近付いてしまった。

足音の主の姿は見えなかった、最初はまだ見つけれていなかっただけだと思ったが音の場所を探っていくと、音の場所には何も居なかった。その代わりに知っている足跡が残っていた。

俺は大きめの木に登り、上から覗いて様子を伺った。
また透明狼か…?足音と足跡の数から考えて四、五匹か…群れとはツイてないな…。
透明狼は足音から洞窟に近付いているようだった。
不味いな、それにしても何で洞窟に…あの洞窟はアイツ等の巣だったのか?いや、それともまさか…あの透明狼の死体、あれの匂いを追って来たのか?アイツはこの群れのはぐれだったのか?

「昨日みたいに砂浜ならともかく森の中か…数も多い」
先制攻撃で一気に…最低でも二匹は潰せればいけるか?…蹴り技でも試すか…?クソ、厄介すぎる…ステータスも上昇してるし、不意打ちが成功すればいくら見えなくても勝てるだろか?そうだとしても問題は威力だ、ただでさえ馬鹿みたいに破壊力あるのに、この島の化け物共相手でも勝てるように十倍近くまで上げているのだ、辺りが悲惨な事になるだろう。

下手したら木に埋もれて動けなくなるかもしれん、行動は慎重にしねえと、生き返られるらしいが痛いのは嫌だ。
さて、此処で引いても洞窟に来られたら厄介だ…いや、むしろ洞窟誘い込んで攻撃すれば…いやダメだな、洞窟近くは開けているからあの群れには有利だが、別のヤツにバレる可能性がある、それにあそこは不意打ちが出来ないし万が一逃げられた場合に獣とは言え、住処がバレるのは不味い。

「…クッソ、どうする?」

「ウキ?」
…………は?
「ウキャァァ!!」
ふざけんな!今度は猿か!?

背後の方から何かの鳴き声がして晃が振り向くとそこには全身が真っ赤な毛に包まれ、尻尾が異常に発達した猿が木の枝にぶら下がって居た。
猿は木の枝を鉄棒のように尻尾で掴み、ブランコのように身体を前後に揺らした。そして勢いが強くなったところで尻尾を緩めで鳴き叫びながら縦に回転して飛び掛かって来た。

「ウォイ!?ふざけんな!」
回転しながら飛び掛かってきた猿は尻尾を回転に合わせて振り下ろして来た、尻尾にはなんだか妙な光が纏われていて、晃がそれに対して右ストレートで対応する。
ガキン!とまるで金属を殴ったような鈍い音が鳴り、余りのパンチの威力に辺りに物凄い風圧が起き、猿の尻尾と晃の拳は少しの間拮抗し、猿は後ろに吹っ飛んで木にぶつかり、晃はのけぞって木から落ちた。

晃はバサバサと葉っぱや細い木の枝を突き抜けて落ちていき、地面に衝突した。
「痛…くないな、そこまで」
猿の場所を急いで確認するが、姿はもう見えなかった、移動しやがったか…何処だ?
耳を澄ますと唐突に背後から複数の足音が聴こえ、晃は跳びながら180度回転し、下がりつつ様子を伺った。そこには何も居なかったが晃は嫌な予感を察し、さらに距離を取ろうとする。

下がろうとした途端に何かが跳ぶ音が聴こえて瞬時に腕で防御の姿勢を取る、すると鋭い何かが腕を斬りつけて目の前で何かが着地した。
ダッダッと晃の左右にも何かが走り出し、目に見えない奴等に一斉に囲まれてしまった。

「透明狼ぃ…」
どうやらさっきの音で気づかれたらしい、あのエテ公…何処行った?次見つけたら顔面ブッ飛ばす!
「ッと!」
晃の左右に居た透明狼が一斉に飛び掛かって来たところを地面に転がってそれをなんとか回避するが、もう一匹が突撃する音が聴こえて止まる隙も無く別の場所に跳躍して移動した。

朝に最低限の身体の動かし方だけでも練習しておいて良かった…何とかしっかりと回避できてる、下手にぶっ飛んで木にぶつかったりしたら不味いからな、ナイス朝の俺!

「ガルルララ…」
…透明狼ってたしかもう一匹ぐらい居なかったか?何処にいる?下手に頭の回る獣だからな…。
「ウキィイィ!」
そんなことを考えながら警戒していると、猿が何処からか現れて此方に木から飛び降りて来た、しかし攻撃したのは俺では無く透明狼がいる場所だった。

「グラガァ!」
透明狼は猿の尻尾を避けたようで、地面が少し凹んだのと土埃が舞っただけだった。その後猿に二匹増援が現れた。
ラッキー、このまま勝手に戦ってくれればどうにか逃げれ…

その時、大きな地震が起こった。転んでしまうほどの大きさで猿達が怯むほどだった。
「キャイン!」
透明狼共は急に情けない鳴き声を上げて地震の中逃げ出して猿も何かに恐怖したように近くの木に飛び乗り、何処かに行ってしまった。

地震は鳴り止まず、どうにか洞窟に一旦帰ろうとした時、地面が大きく盛り上がり…そこから巨大な木が生えた。

「ウがァッ!」
急に生えて来た巨木に吹き飛ばされ、鈍い痛みが身体に走る、かなり高く飛ばされてしまいどうにか晃は着地の受け身を取ろうとする。

その時、晃は見た…広大に広がる木々、そしてその高さから見下ろしてようやく見える程の大きさの人工建造物、それは塔だった。そしてそこの近くが緑に輝き……ビームのような何かが迫って全身を吹き飛ばした。 

それが晃が最後に見た光景だった。
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