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紅い月編
VSゼロ、part 2
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「来ないのかい?」
「…」
さて、向こうが攻撃する様子が無いとは言え、迂闊に攻めてカウンターを決められたり、隙ばかり探すのに集中して攻められた時に防御出来なかった。何て事にはする訳にはいかない。
向こうもそれは分かっているだろう。だが、今のゼロの目的は力量を見極めることだろうから、是非攻撃して欲しい訳だ。
ゼロは先程と同じで、両腕は何の力も入れずにぶら下げていて構えない。それでは瞬間的なカウンターどころか、防御すら出来そうにない。
しかし晃は攻めない。それは見ただけの感想であり、未知数のゼロの能力を懸念して攻められない。
「…しょうがない、少し状況を動かさないとね」
数十秒の膠着の後、遂に痺れを切らしたゼロが両腕を上げ、構える。
それを見て息を飲み、一瞬喉からカヒュ、と変な音がした。
気が付いたら、ゼロは目の前にいて、拳を俺の顔の前に留めていた。
…っ?
…!?
「はっ!?」
晃は左脚を軸に、ゼロの左脇に回転蹴りを放ったが、踵を簡単に受け止められ、そして足首を掴まれる。
そうすると、そのまま後方に勢いよく後方に振り、投げた。
軽々と投げられた晃は、結界に衝突して地面に落ちる。
「ぐっ!?」
晃は直ぐに起き上がり、ゼロの居た場所を睨み付ける。
しかし、そこにゼロはもう居ず…
今度は晃の腹部に足を突き出していた。
当てる事はしない。ギリギリの位置で留めて、こちらの顔を見ている。
クソが。
晃はゼロの足を掴む。折れるのではないかと言われる程強い握力で握り締め、確実に折るつもりで側面から殴ろうとする。
しかし、ゼロが足を動かすとあまりの強さに晃は引っ張られ、そのまま握っていた足は離れてしまった。
行き場を失った両手を構えに戻そうと引くが、今度はゼロは左に回り込んでいて、左脇に蹴りを出し、寸止めする。
「ゼロッ!」
今度は脚に蹴り込もうとするが間に合わない。
蹴ろうと動き始めた時点で既にゼロはそこには居ないのだ。
晃がトップスピードで動いても、ゼロは初動で見極めてしまう上、晃より圧倒的に速い。このままでは攻撃が当たりはしない。
「おちょくってんのか」
今のゼロの動き。三度の寸止めした攻撃箇所は俺が狙い、躱された所だ。俺の攻撃を避け、近付き、俺が出来なかった事を俺にやってみせ、俺は出来るけどねってか。
「やっすい挑発してくれんな、俺は怒りっぽいんだ。直ぐに感情の制御が効かなくなっちまう」
「いやいや、そんな意図はないよ?ただ僕の動きを見てみないと、そっちも動き難いと思ってね」
ゼロはヘラヘラと笑ってそう言ってくる。しかし、動き難いと言う表現は正しい。攻めと防御を両方見れたお陰で、やり易くはなって来た気がする。
まあ、挑発の為に、正確にはビビってる、とかそう言うニュアンスで言ってきてるよなゼロ。
「言ってくれるな…そっちが手加減してくれる間に、手加減無しの一撃を叩き込むから覚悟しておけ」
「ははは…お手柔らかに頼むよ」
刹那、モーション無しで“縮地法”を使い、足払いを仕掛ける。
完全に不意を突いた一撃は…いとも簡単に躱された。しかし、回避による上方への跳躍は、少なくとも移動を封じることが出来た。
「ッラ!」
真上にいるゼロ目掛けて拳を放つ。
それさえも止められる。が、今度は空いている左腕で拳を放った。
ゼロは俺の拳を両手を重ねて止めた。実際は片手だけでも大丈夫だったろうが兎に角、今ゼロが防御に使える四肢は無い。
入る!
そう思った晃は、一瞬で現実を叩き付けられた。
止められた。止められたのだ。重ねていた両手、その内右拳と触れていた右手は、気がつかぬ内に擦り抜ける様に移動して、俺の左拳を受け止めた。
そしてゼロは晃の拳を握り、そのまま晃の背後に着地した。
両腕を引っ張られて、そのまま空中に弧を描く様に投げられ、地面に叩き付けられた。
「グッ」
石で出来た地面との衝突による衝撃で、口から声が漏れる。
しかし、痛くはあるが、ダメージは大した事はない。
拳を握っていた感覚がふと無くなる。晃は直ぐに立ち上がり、ゼロを見る。
ゼロは相変わらず微笑みを絶やさず、構え無しで立っている。
何だあれは。初動で見極める、なんてものではない。不意を突いたノーモーションでの足払い、ここまでは良い。ゼロならば反射で回避されてもおかしくないからだ。
しかし、二度目の左拳の防御。あれは何だ、動きを読んでいても、反射で反応しても、あんな風に防御は出来ない。
どれだけ動きが速くても、防御に間に合わせるには無理がある。しかし、ゼロは完全な防御を、触れている晃に気が付かせる事なくしてみせた。
「どうなってんだ、今のは…」
思考をいくら巡らせても、答えが出る筈が無い。
俺が今まで体験した事がない異常な結果。
…異世界のみに存在する、“スキル”と“固有スキル”…、未知の能力。
鑑定するのは少しズルだと思って、しなかったツケがここに来たか。
「…しまったな、つい第二段階を使ってしまった。手加減しているとはいえ、流石だね」
第二段階?何のことだ?
…よく分からないが、少しは力を引き出せたと考えよう。
「何段階あるか知らないが、全部引き出させてやるよ!」
晃は縮地法で距離を詰め、拳を突き出す。受け止められつつも、掴まれない様に何度も蹴りを混ぜたラッシュを繰り出す。
ゼロはそれらを全て防御し、捌きながらも少しづつ後退していく。
晃は攻撃の手を休めない。そして拳と蹴りの速度もどんどん上昇する。
「シッ!」
「む…」
徐々に加速していく攻撃に、ゼロは遂に防御が崩れる。
「オラァ!」
そこに刃物を突き刺す様に鋭い拳を腹部目掛けて素早く打つ。
…やはりだ、完璧に防御された。
鋭く打たれた拳は、腹部すれすれの場所で右手に受け止められる。
今度は首に蹴りを繰り出すが、さっきまで防御に使っていた右手に受け止められる。
そこから何度も攻撃するが、全て右手だけで防御されてしまった。
「なら…」
晃は一時距離を取る。
全て完璧に受けられてしまうなら、受け止め切れない攻撃をするまでだ。
「…“龍爪拳”!」
蒼いオーラを右腕に集め、縮地法で間合いに入る。
そこで腹部目掛けて龍爪拳を叩き込む。
ここで初めて、ゼロは防御らしい防御をした。
両腕を交差させ、龍爪拳を受けたのだ。ゼロは吹き飛ばされ、蒼炎の小爆発の追撃がダメージを与えていく。
「力量や能力を見切るのは終わりだ…ゼロ、お前もそろそろ攻撃して来いよ」
「今のは中々の一撃だったよ…うん、お言葉に甘えようかな。行くよ」
その瞬間、ゼロの身体がブレた。
「なっ…ガッ!」
俺の視界は反転し、気が付いたら結界に叩き付けられていた。
ダメージは先程の比では無い、ゼロは完全に攻撃に転じた訳だ。
「ぐっ…うっ」
起き上がる暇もなく、ゼロの追撃が襲い掛かる。
姿が捉えられない。攻撃しているのがゼロでは無いと言われても否定しようが無く、防御すらもままならない。
もしもゼロが殺すつもりで来ていたら、俺はもうこの世にはいないだろう。
もしゼロが勝利に拘った瞬間、俺は立っては居ないだろう。
遂に膝を崩し、身体を丸くして防御する。
…“気配察知”!
姿が見えないならば気配を追うまで、そう考えたが気配を捉えたところで、身体が着いて行く訳でもなく、気配の移動からスピードが尋常では無い事ぐらいしか分からなかった。
結果、俺は抵抗虚しく気絶した。
「…」
さて、向こうが攻撃する様子が無いとは言え、迂闊に攻めてカウンターを決められたり、隙ばかり探すのに集中して攻められた時に防御出来なかった。何て事にはする訳にはいかない。
向こうもそれは分かっているだろう。だが、今のゼロの目的は力量を見極めることだろうから、是非攻撃して欲しい訳だ。
ゼロは先程と同じで、両腕は何の力も入れずにぶら下げていて構えない。それでは瞬間的なカウンターどころか、防御すら出来そうにない。
しかし晃は攻めない。それは見ただけの感想であり、未知数のゼロの能力を懸念して攻められない。
「…しょうがない、少し状況を動かさないとね」
数十秒の膠着の後、遂に痺れを切らしたゼロが両腕を上げ、構える。
それを見て息を飲み、一瞬喉からカヒュ、と変な音がした。
気が付いたら、ゼロは目の前にいて、拳を俺の顔の前に留めていた。
…っ?
…!?
「はっ!?」
晃は左脚を軸に、ゼロの左脇に回転蹴りを放ったが、踵を簡単に受け止められ、そして足首を掴まれる。
そうすると、そのまま後方に勢いよく後方に振り、投げた。
軽々と投げられた晃は、結界に衝突して地面に落ちる。
「ぐっ!?」
晃は直ぐに起き上がり、ゼロの居た場所を睨み付ける。
しかし、そこにゼロはもう居ず…
今度は晃の腹部に足を突き出していた。
当てる事はしない。ギリギリの位置で留めて、こちらの顔を見ている。
クソが。
晃はゼロの足を掴む。折れるのではないかと言われる程強い握力で握り締め、確実に折るつもりで側面から殴ろうとする。
しかし、ゼロが足を動かすとあまりの強さに晃は引っ張られ、そのまま握っていた足は離れてしまった。
行き場を失った両手を構えに戻そうと引くが、今度はゼロは左に回り込んでいて、左脇に蹴りを出し、寸止めする。
「ゼロッ!」
今度は脚に蹴り込もうとするが間に合わない。
蹴ろうと動き始めた時点で既にゼロはそこには居ないのだ。
晃がトップスピードで動いても、ゼロは初動で見極めてしまう上、晃より圧倒的に速い。このままでは攻撃が当たりはしない。
「おちょくってんのか」
今のゼロの動き。三度の寸止めした攻撃箇所は俺が狙い、躱された所だ。俺の攻撃を避け、近付き、俺が出来なかった事を俺にやってみせ、俺は出来るけどねってか。
「やっすい挑発してくれんな、俺は怒りっぽいんだ。直ぐに感情の制御が効かなくなっちまう」
「いやいや、そんな意図はないよ?ただ僕の動きを見てみないと、そっちも動き難いと思ってね」
ゼロはヘラヘラと笑ってそう言ってくる。しかし、動き難いと言う表現は正しい。攻めと防御を両方見れたお陰で、やり易くはなって来た気がする。
まあ、挑発の為に、正確にはビビってる、とかそう言うニュアンスで言ってきてるよなゼロ。
「言ってくれるな…そっちが手加減してくれる間に、手加減無しの一撃を叩き込むから覚悟しておけ」
「ははは…お手柔らかに頼むよ」
刹那、モーション無しで“縮地法”を使い、足払いを仕掛ける。
完全に不意を突いた一撃は…いとも簡単に躱された。しかし、回避による上方への跳躍は、少なくとも移動を封じることが出来た。
「ッラ!」
真上にいるゼロ目掛けて拳を放つ。
それさえも止められる。が、今度は空いている左腕で拳を放った。
ゼロは俺の拳を両手を重ねて止めた。実際は片手だけでも大丈夫だったろうが兎に角、今ゼロが防御に使える四肢は無い。
入る!
そう思った晃は、一瞬で現実を叩き付けられた。
止められた。止められたのだ。重ねていた両手、その内右拳と触れていた右手は、気がつかぬ内に擦り抜ける様に移動して、俺の左拳を受け止めた。
そしてゼロは晃の拳を握り、そのまま晃の背後に着地した。
両腕を引っ張られて、そのまま空中に弧を描く様に投げられ、地面に叩き付けられた。
「グッ」
石で出来た地面との衝突による衝撃で、口から声が漏れる。
しかし、痛くはあるが、ダメージは大した事はない。
拳を握っていた感覚がふと無くなる。晃は直ぐに立ち上がり、ゼロを見る。
ゼロは相変わらず微笑みを絶やさず、構え無しで立っている。
何だあれは。初動で見極める、なんてものではない。不意を突いたノーモーションでの足払い、ここまでは良い。ゼロならば反射で回避されてもおかしくないからだ。
しかし、二度目の左拳の防御。あれは何だ、動きを読んでいても、反射で反応しても、あんな風に防御は出来ない。
どれだけ動きが速くても、防御に間に合わせるには無理がある。しかし、ゼロは完全な防御を、触れている晃に気が付かせる事なくしてみせた。
「どうなってんだ、今のは…」
思考をいくら巡らせても、答えが出る筈が無い。
俺が今まで体験した事がない異常な結果。
…異世界のみに存在する、“スキル”と“固有スキル”…、未知の能力。
鑑定するのは少しズルだと思って、しなかったツケがここに来たか。
「…しまったな、つい第二段階を使ってしまった。手加減しているとはいえ、流石だね」
第二段階?何のことだ?
…よく分からないが、少しは力を引き出せたと考えよう。
「何段階あるか知らないが、全部引き出させてやるよ!」
晃は縮地法で距離を詰め、拳を突き出す。受け止められつつも、掴まれない様に何度も蹴りを混ぜたラッシュを繰り出す。
ゼロはそれらを全て防御し、捌きながらも少しづつ後退していく。
晃は攻撃の手を休めない。そして拳と蹴りの速度もどんどん上昇する。
「シッ!」
「む…」
徐々に加速していく攻撃に、ゼロは遂に防御が崩れる。
「オラァ!」
そこに刃物を突き刺す様に鋭い拳を腹部目掛けて素早く打つ。
…やはりだ、完璧に防御された。
鋭く打たれた拳は、腹部すれすれの場所で右手に受け止められる。
今度は首に蹴りを繰り出すが、さっきまで防御に使っていた右手に受け止められる。
そこから何度も攻撃するが、全て右手だけで防御されてしまった。
「なら…」
晃は一時距離を取る。
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「…“龍爪拳”!」
蒼いオーラを右腕に集め、縮地法で間合いに入る。
そこで腹部目掛けて龍爪拳を叩き込む。
ここで初めて、ゼロは防御らしい防御をした。
両腕を交差させ、龍爪拳を受けたのだ。ゼロは吹き飛ばされ、蒼炎の小爆発の追撃がダメージを与えていく。
「力量や能力を見切るのは終わりだ…ゼロ、お前もそろそろ攻撃して来いよ」
「今のは中々の一撃だったよ…うん、お言葉に甘えようかな。行くよ」
その瞬間、ゼロの身体がブレた。
「なっ…ガッ!」
俺の視界は反転し、気が付いたら結界に叩き付けられていた。
ダメージは先程の比では無い、ゼロは完全に攻撃に転じた訳だ。
「ぐっ…うっ」
起き上がる暇もなく、ゼロの追撃が襲い掛かる。
姿が捉えられない。攻撃しているのがゼロでは無いと言われても否定しようが無く、防御すらもままならない。
もしもゼロが殺すつもりで来ていたら、俺はもうこの世にはいないだろう。
もしゼロが勝利に拘った瞬間、俺は立っては居ないだろう。
遂に膝を崩し、身体を丸くして防御する。
…“気配察知”!
姿が見えないならば気配を追うまで、そう考えたが気配を捉えたところで、身体が着いて行く訳でもなく、気配の移動からスピードが尋常では無い事ぐらいしか分からなかった。
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