英傑奇譚

レン

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勃発

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 走っていくと数分で着いた。
 一番最初に目に映ったのは夜の空を赤色に変え一面を熱気で覆う火柱だった。
「一体何があったんだ?」
 あまりに酷い状況に唖然としていると頑張って怪我人の救助をしている人が俺を見て叫んだ。
「オクタプルの人が来たぞ!やった!助かった!」
 大騒ぎする職員の方たち。
 けどそれどころじゃなかった。俺の意識は別のところにもってかれていたのだ。
 炎が轟々と燃え盛る更にその奥、一瞬だが人影が見えたのだ。
 おかしな事に俺はそいつが犯人であると確信した。
 普通なら逃げ遅れた人なのかと思うだろう。
 けど俺の本能が告げたのだ。
 この先にいる奴はヤバいと・・・・。
 でもそんな事で怖気付いていられないのは俺が一番よくわかっている。
 俺は意を決して倒壊した建物の中に入っていった。
「前が見えねぇ・・・。」
 見渡す限り炎で前など見えはしなかった。
 建物の奥に進んでいくといきなり横にあった研究機器が大爆発した。
「ヤバい!」
 勢いが凄まじく俺は吹っ飛んだ。
「グッ・・・!」
 倒れてしまったが何とか体制を立て直し立ち上がると次は目の前で爆破した。
「何!?」
 俺は全速力でそこから逃げ何とか爆風に巻き込まれずに済んだ。
 そして爆発した時のことを思い返す。
 おかしいな。先程は機器が爆発した。けど問題は目の前の爆発。
 普通、爆発したりするには何かしらその原因があるはず。先程の機器の故障による爆発みたいな。
 あれは物体が爆発したというより空中で何も無いのにいきなり爆破したみたいな感じだった。
 色々、爆発のことについて考察しているとまた目の前が爆発した。
 しかも次は違う感じだった。
 俺のいく先々で爆発しているのだ。
 爆発から逃げていると少し広い部屋に着いた。
 そして着いたと同時に目の前に一人の男が瓦礫の上に座っていた。
「手の甲の8の数字とその仮面。君が『オクタプル』の『No.8』なのか?」
 目の前の男は俺を見て冷静に言った。
「あぁ。俺が『No.8』だ。お前が犯人だな?」
「よく分かったな。俺が逃げ遅れた人っていう考えは無いのか?」
 あるわけのに変なことを聞いてくる男。
「まず何故お前は少しも汚れていない?テレビでも見たがあんなにすごい爆発だったのに。」
「そして逃げ遅れた奴が呑気に瓦礫の上で足を組みながら座ったりしないからな。」
「やっぱりオクタプルの奴らは頭も良いなぁ。」
「おっと。自己紹介がまだだったな。」
「俺の名前はクリミナ。」
「この国に変革をもたらす者の一人だ。」
「変革だと?何をするつもりだ?」
「知りたければ俺を倒してみな。」
 はっきり言って今も怖い。考えてることも能力のことも分からない正体不明の奴を相手にしているのだから。
 きっと目の前のこいつは今まで相対してきた全ての能力者と比較しても桁違いに強いだろう。
 無能力者に毛が生えた程度の強さしかない俺からしたらここで死ぬ可能性だってある。
 だけどさっきも言った通りここでやらないと俺は後悔する。
 後悔のない選択を俺はしたい。たとえここで俺が死のうとも。
「さてやるか・・・。」
 俺は拳を前に突き出し戦闘態勢に入る。
「変革の前の腹ごしらえと行こうか。しかもオクタプルのメンバー。これほどいい遊び相手はいないな。」
 クリミナも立ち上がり俺の方を向く。
 そして市民を守るための戦いが始まるのであった。
 
 
 

 
 
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