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下校
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担任の話が終わり授業が始まった。
一時限目が数学と知るや否や俺は即座に寝る体制に入った。ちなみに俺の成績は良いとも言えないし悪いとも言えない。中の上と俺自身、自負している。
数学なんて将来、使うのかね・・・?
などと数学の将来における必要性といったくだらない事を考えているといつの間にか深い眠りに落ちてしまった・・・。
誰かに頭を強く叩かれ俺は目を覚ました。
「痛いなぁ~。誰だよ?」
頭を押さえながら上を向くとそこには見知った顔がいた。
「アンタいくらなんでも寝過ぎよ。一体どれだけ寝たら気が済むの?もう下校時間よ!」
確かに時計を見たら午後四時を過ぎていた。
ずっと変な体勢で机に突っ伏していたからか少し首筋が痛くなっているのを感じた・・・。
麗華に先に校門前で待っているように言って俺も帰り支度をすることにした。
合流し、帰路を辿っていると不意に麗華が立ち止まり呟いた。
「そうか~。瑠璃が死んでもう少しで一年が経つのね」
立ち止まった場所を見たらたくさんの花が置いてあった。色とりどりの綺麗な花だった。
そう俺たちが立っている場所こそが俺の彼女が死んだ場所なのである。
「懐かしいなぁ~。もうそんなに経ったのね。」
そんな言葉を口にしている瞬間も麗華は少し涙目になりながら下唇を噛んでいた。
「帰ろう・・・。日が暮れちまうよ。」
「うん・・・。」
俺は彼女が死んだ場所を一瞥してから後を去ったのであった。
何も喋らずただ黙って帰路を二人で辿ると別れ道が見えてきた。
「私はこっちだから。」
「俺はこっち・・・。」
あの場所に行って少しだけ瑠璃との楽しかった過去を思い出してしまい俺は少し涙が目尻から溢れてしまいそうになった。
「ほら!元気出して!どんなに泣いても瑠璃は死んだの!もう戻って来ないんだから!!」
不覚にもその麗華の言葉に少し苛立ってしまった。
「お前に何がわかる!突如として愛する人を失った悲しみが!一人取り残された苦しみがお前にわかるのか?」
ハッと我に帰った時にはもう遅かった。
「ごめん・・・。」
涙を流しながら謝っている麗華の姿が目に映ったと同時に麗華が走り出した。
「待ってくれ!」
一人取り残された俺はただ呆然と立ち尽くしていた。
家に帰ったあとすぐに2階にあがり自室に籠った。
「いったい俺は何してんだ・・・。」
つくづく自分に嫌気がさす。彼女は死んだという事実に真正面から向き合わず前に進もうとしない自分に。
「お兄ちゃ~ん!ご飯だよ~!」
下から妹の声が響いてきた。
「沙耶。悪いけど今日はいらない。」
あんなことがあったからか今日は食欲がないのですぐに寝ることにした。
何かを察したのか妹は静かに言葉を紡いだ。
「あまり無理しないでね。」
「分かってる。心配してくれてありがとうな。」
少し眠るのが怖い。理由は単純で寝てしまうとまたあの日の光景を夢に見てしまうからだ。
だけど寝ないと明日に支障が出てしまうので少し古臭い方法ではあるが羊を数えているのであった・・・。
一時限目が数学と知るや否や俺は即座に寝る体制に入った。ちなみに俺の成績は良いとも言えないし悪いとも言えない。中の上と俺自身、自負している。
数学なんて将来、使うのかね・・・?
などと数学の将来における必要性といったくだらない事を考えているといつの間にか深い眠りに落ちてしまった・・・。
誰かに頭を強く叩かれ俺は目を覚ました。
「痛いなぁ~。誰だよ?」
頭を押さえながら上を向くとそこには見知った顔がいた。
「アンタいくらなんでも寝過ぎよ。一体どれだけ寝たら気が済むの?もう下校時間よ!」
確かに時計を見たら午後四時を過ぎていた。
ずっと変な体勢で机に突っ伏していたからか少し首筋が痛くなっているのを感じた・・・。
麗華に先に校門前で待っているように言って俺も帰り支度をすることにした。
合流し、帰路を辿っていると不意に麗華が立ち止まり呟いた。
「そうか~。瑠璃が死んでもう少しで一年が経つのね」
立ち止まった場所を見たらたくさんの花が置いてあった。色とりどりの綺麗な花だった。
そう俺たちが立っている場所こそが俺の彼女が死んだ場所なのである。
「懐かしいなぁ~。もうそんなに経ったのね。」
そんな言葉を口にしている瞬間も麗華は少し涙目になりながら下唇を噛んでいた。
「帰ろう・・・。日が暮れちまうよ。」
「うん・・・。」
俺は彼女が死んだ場所を一瞥してから後を去ったのであった。
何も喋らずただ黙って帰路を二人で辿ると別れ道が見えてきた。
「私はこっちだから。」
「俺はこっち・・・。」
あの場所に行って少しだけ瑠璃との楽しかった過去を思い出してしまい俺は少し涙が目尻から溢れてしまいそうになった。
「ほら!元気出して!どんなに泣いても瑠璃は死んだの!もう戻って来ないんだから!!」
不覚にもその麗華の言葉に少し苛立ってしまった。
「お前に何がわかる!突如として愛する人を失った悲しみが!一人取り残された苦しみがお前にわかるのか?」
ハッと我に帰った時にはもう遅かった。
「ごめん・・・。」
涙を流しながら謝っている麗華の姿が目に映ったと同時に麗華が走り出した。
「待ってくれ!」
一人取り残された俺はただ呆然と立ち尽くしていた。
家に帰ったあとすぐに2階にあがり自室に籠った。
「いったい俺は何してんだ・・・。」
つくづく自分に嫌気がさす。彼女は死んだという事実に真正面から向き合わず前に進もうとしない自分に。
「お兄ちゃ~ん!ご飯だよ~!」
下から妹の声が響いてきた。
「沙耶。悪いけど今日はいらない。」
あんなことがあったからか今日は食欲がないのですぐに寝ることにした。
何かを察したのか妹は静かに言葉を紡いだ。
「あまり無理しないでね。」
「分かってる。心配してくれてありがとうな。」
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