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8.魔物大発生

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「おはよう」

 朝になり、斧を持って宿主に話し掛ける

「おはようございます。それは…?」

 俺の手元に持っている斧を宿主は見つめた

「ああ、昨日勧めてくれた武器屋で買った物だ」

「そうでしたか、良かったです」

 今日はギルドに行ってランク上げを進めるつもりだ、今のランクでは金貨50枚を返すなんて不可能だからな

「あ、そういえばランクアップの条件を聞いていなかったな」

 一日の依頼上限が5つなので、条件によってはかなり掛かるかもしれない

「ギルドに着いたら聞くか、…??」

 そんなことを考えていると、街の中心で何やら騒いでいる人達がいた

「魔物が街の近くに押し寄せている!!」

「魔物?」

 すごく物騒な事を喋っていた

「冒険者達が食い止めている間に住民は避難してくれ!」

 そんなに数が来てるのか?

「もうそこまで魔物が来ている!早く逃げてくれ!」

「どうしようか、俺も行くしかないか」

 その群衆を眺めていると、一人の男が駆け寄ってくる

「ルーク!どうしたんだ、早く行くぞ!」

 俺に話し掛けてきたのはサザベルだった

「あ、あぁ、今行く」

 サザベルの勢いで思わず返事してしまった

「昨日のゴーレムや魔物凶暴化の張り紙と関係があるのか?」

 昨日のゴーレムに関係があるとすれば、何か人為的なものを感じる



「本当に魔物が来ているな…!」

 森に着くと冒険者達がゴーレムや他の魔物と戦っていた

「!」

 俺が魔物を倒そうとすると、森の奥から強大な魔力を感じた

「俺は端の方をやる!」

 サザベルに話をつけ、人が少ない端の方に行く


「よし、ここなら見られないな」

 森の奥にある強大な魔力が、この異常事態と関係していると推測する、なら、そこに行って何か見ないといけない

「魔物が邪魔だな…」

 森の奥に行こうとしても、魔物やゴーレムが邪魔になる

「なら…【風刃】!!」

 いつもより多くの魔力を注ぎ込んだ【風刃】は、大きく速く動いた

「よし!」

【風刃】は前にいる魔物を一掃する

「そろそろか…」

 魔力は近いが、ゴーレムが次から次へと湧いてくる

「もう戦う暇は無いな」

 何かあるかもしれないと、魔力を温存してゴーレムを掻い潜る

「お前は…!?」

 ゴーレムを掻い潜ると、その先に大きい服を着た魔族がいた

「ユウシャ…」

 深くフードを被った状態で、カタコトで喋りだした

「誰だ?」

 この魔物の発生がこいつのせいだとすぐに分かった、しかも俺が勇者ということを知っていた

「イケ…」

 その魔族が言葉を放つと、周りの物がゴーレムになり始める

「この数はまずい…」

 ゴーレムは合計で30体程になり、更に数を増やしている

「逃げるな…!」

 魔族は俺の前から歩いて離れている

「くそっ…【石砲】!!」

 新しく覚えたスキルを使い、その魔族にどうにか当てようとするが、ゴーレムに伏せがれてしまう

「やるしかない…!!」

 恐らく奴をやれば、ゴーレムが増えることが無くなる、そう考え、斧を両手で持ち魔族に向かっていく

「邪魔だ!!」

 俺を通さないようにゴーレムが塞いで来る

「【風刃】!」

 ゴーレムを魔法や斧で倒しながら、ついに魔族の近くまで来る

「…ハヤク……」

 そう放った途端、後ろからストーンゴーレムがとんでもない勢いで突進してくる

「強化魔法も使えるのか…」

 魔物への強化魔法を使っているのを見るのは初めてだ

「【石砲】!!」

 魔力を込めた魔法でストーンゴーレムを怯ませる

「【風刃】!」

【風刃】を奴の首元に当てようとする

「ムダ…」

【風刃】は奴に避けられしまうが、それは罠で使っていた

「おらぁぁ!」

 斧は魔族の心臓を斬り裂いた

「…死んだな」

 魔族が死んだのを確認し、後ろを振り返る

「まだ全然残っているな」

 魔族は死んだが、集まってきた魔物が俺に向かってきている

「うおぉぉぉ!!」




「はぁ、はぁ、これで終わったよな……?」

 魔物を倒し続けて10分ほど経ち、周りにいる魔物を倒しきった

「血が出てきた、街に戻るか…」

 街の住民の元へ帰る



「お、おい、大丈夫か?」

 森から帰っていると、1人の冒険者がいた

「ああ、ちょっと戦ってただけだ、街は大丈夫か?」

 その冒険者に街の安否を確認する

「もちろんださっき魔物が止んだんだ、お前も早く治療してもらえ」

 そう言われてその冒険者に治療所まで案内してもらった


 治療所


「生きていたのか!大丈夫か?良かったぜ…」

 治療所へ行くと、怪我していたサザベルと会った

「大した怪我じゃないが、念の為来たんだ」

 治療所では回復魔法を掛けてくれた

「ありがとう、治療費はいくらだ?」

「治療費は大丈夫です、街を守ってくださって感謝しかありません」

 治療費はいらないようで、借金があるので内心ホッとした

「そ、それと、今回の報酬金として、戦いに参加した冒険者は金貨1枚を受け取れるらしいので、是非ギルドに行ってみてください」

 報酬なしとは思っていなかったが、金貨1枚とは羽振りがいいな

「分かった、行ってみる」

 治療所を出て、ギルドに向かい始める

「あれをやっとくか」

 俺が発動したスキルは【鑑定】以前はギルドの魔道具で鑑定をしていたが、スキルを覚えたのでもうする必要はなくなった

「おお!!」

 魔力は4800になっていた、前に比べ4000以上伸びている

「これは…?」

 スキル欄から見つけたのは【ゴーレム生成】というのがある

「ゴーレム生成…あの魔族が使っていたスキルか?」

 砂や岩をゴーレムに出来るということか?召喚魔法では無さそうだし

「まぁ、また試して見るしかないな」

 次に依頼を受けた時に試そうと思う

「着いたな」

 ステータスを見ているとギルドに着いた

「こんにちは、金貨1枚を受け取れると聞いたんだが…」

 受付で受け取れるか質問すると、受付嬢がすぐさま袋を取り出した

「はい!お疲れ様です!」

 本当に受け取れる様で良かった

「それでですね…今回の魔物について、何か知っていることはありませんか?」

 そう質問され今回のことを話そうと思ったが、あの魔族が俺の事を勇者だと知っている以上、無闇に話さないようにした

「いや…何も知らないな」

 受付嬢はそれに対し「そうですか…」と残念そうな顔をして、罪悪感が沸いた

「何かあれば知らせてくださいね」

 そう言われて、俺は疲れた状態でギルドを出る

「今日は豪華な食事にするか…」

 そう思いいつもの飲食店に行き、そのまま帰った
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