魔王を倒して還ってきたら、ヒャッハ―な世界に変わってました(涙)

梅田遼介

文字の大きさ
14 / 21

14話

しおりを挟む
「じゃあまずは異界門ゲートの事から説明するわ――」

 奈保子の話は衝撃的なものだった。

「10年ぐらい前にね、ある町で初めて異界門が見つかってん」

 西日本のある地方都市で、住民らが相次いで「妖怪のようなものを見た」と訴える事件が起こった。
 警察やマスコミに多数の目撃情報が寄せられた。
 さらに同時にその地域で住民が何者かに殺されたり行方不明になるという事件も頻発した。

「そりゃあ結構な騒ぎになってたんよ」

 常にネタを探しているマスコミはその怪奇的な事件に飛びついた。
 大勢の記者やテレビレポーターたちがその小さな町に押し寄せた。
 その騒ぎの様子は当時小学生だった奈保子もよく覚えているという。

 ――10年前にそんな騒ぎがあったなんて俺の記憶にはない。これは確定だな。

 きっとここはパラレルワールドみたいなものなんだろう。
 どうやら俺は帰る世界を間違えたらしい。
 そう俺は心の中でうなづいて話を聞いていた。




 地元で「行方不明の人たちは神隠しにあったのだ」という噂が流れた。
 とある局の女性レポーターがそのネタに飛びついた。
 神隠しなら神社だろう。
 そんな単純な理由で朝のワイドショーで地元の小さな神社から生中継が行われた。
 この辺りから強い妖気を感じます、という自称霊能力者の怪しげなコメントを紹介している時。
 カメラマンが妙な事を言い出した。

「なんか空間が歪んで見える、言うてね」

 その様子はすぐに、実際にテレビの画面を通して視聴者にも伝わった。
 画面の風景の一部だけが蜃気楼のようにユラユラと揺らめいて見えたのだ。
 目の前で起きた怪奇現象に興奮した女性レポーターがカメラに向かって必死で話していた、その時。

 女性レポーターの背後にある空間の揺らぎが次第に大きくなった。
 その中から、体長3メートルを越えようかという頭に角の生えた巨大な怪物が音もなく現れた。
 茶色い、巨大な、まるで鬼のような怪物。
 気付かず話し続ける女性レポーターの頭を背後から鷲づかみにし、そのまま――握りつぶした。

「ウチではたまたまその番組は見てへんかったけど、生中継やったから大勢の人たちが見てた。すごい大騒ぎやったよ、怪物が出たって言うて」

 レポーターの女性が無残に殺されると映像はすぐにスタジオへ切り替えられた。
 しかし生中継で流されてしまったものは隠しようもない。
 人を襲う怪物の存在は一瞬のうちに「事実」として日本中、そして世界中の人々に拡散された。

 惨劇はそれで終わらなかった。
 現場の撮影スタッフたちはパニックになって逃げ惑い、次々と捕まって殺されていった。
 そんな中でもカメラマンは何故か逃げずにその様子を撮り続け、最後に殺された。
 そのカメラ映像は後に回収され、世界中で共有されることになる。
 世界で初めて「異界勢力」による襲撃を捉えた貴重な資料として。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん
ファンタジー
いつも現代人を異世界に連れていく女神さまはついに現代の道具を直接異世界に投じて文明の発展を試みるが… 勘違いから生まれる異世界物語を毎日更新ですので隙間時間にどうぞ

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...