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第二十二話 移ろいゆくものたち
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キムの結婚式はやはり彼女の両親と同じく質素なものだった。
結婚相手はスタンリーという科学には無縁の男だ。
彼は保育士であり、出会ったのも公園だというのだからまるで映画みたいな話である。
散歩に来ていた彼と何度も顔を合わすうちに会話をするようになったキムは彼の誠実な人柄を好ましく思った。
それになんと彼はキムの事を知らなかったのだという。
キムはチャールズと同じく有名人だ。米国を代表する大会社を率いる若き女社長であり、稀代の天才であるチャールズ・ペイトンの娘で彼女もまた優秀な科学者だ。
その彼女をスタンリーはまったく知らなかった。
早い結婚ではなかった。キムは35歳でスタンリーは37歳だった。
結婚してすぐに二人に待望の子供ができた。
うす茶色い髪に同じ色の瞳の元気な男の子だった。
名前は、チャールズ・ペイトン・ジュニア。祖父であるチヤールズの名前をもらった彼は屈託なく明るくやんちゃな男の子だった。
チャールズ・ジュニアに初めて会った日の事をマイケルはよく覚えている。
もちろんマイケルはすべてを記憶するようになったのだから鮮明に覚えているのは当然の事だ。
彼のふっくらとした頬、すべすべの肌、ふんわりとした薄茶色の髪に、黄色のおくるみから飛び出した小さな手。
触ると柔らかくて湿っていて、抱き上げると甘酸っぱい匂いがした。
カイトは自分に弟ができたのが嬉しいのか小さなチャールズを熱心に覗き込んでいた。
人が命を紡いでいくという単純で簡単に見える事。だがそれは決して簡単ではなく奇跡のような事だ。
チャールズ・ジュニアはまるで祖父の生まれ変わりのようにマイケルには思えた。
赤ん坊を抱いてマイケルは思わず泣いた。チャールズには感謝してもしきれない。彼が自分にかけてくれた愛情はとても大きかった。命の恩人だからでは片付けられない彼との繋がりを彼がいない今の方が強く感じる。
そんなマイケルの肩をホープは何も言わずにただ抱き寄せてくれた。
今の自分には持ちえないその生命の繋がりをマイケルはとても尊いものだと思う。
それは生身の人間にしかできない事だ。
この涙は後悔の涙ではなかった。子供を持てないとかそういう事じゃない。
ただ尊い。それだけだ。
ホープは機械の身でマイケルを心底愛してくれてマイケルもそれに応えた。それをマイケルは微塵も後悔していない。だってだからこそこうやってチャールズの孫を、もしかしたら生まれ変わったチャールズを愛する事ができる。
見守っていく事ができるのだから。
小さな天使。この圧倒的な存在を前に理由もなく感情が乱れる。
人を。人間を守りたいと強く思う事は、果たしてアンドロイド特有の感情なのかそれとも自分の特性なのか、マイケルにはよくわからなかった。
キムが結婚したのを期にマイケルとホープはペイトンのビルを出ることにした。
そこはペイトンビルからほんの少しの距離にあるごく普通のアパートだった。
もともとマイケルとホープが住んでいたアパートも今はペイトン所有の高層マンションになっていて、その一室に住んでも良かったが今の二人はペイトン社の庇護下にあるためにペイトンビルからあまり離れた所に住むのは不便だった。
それに新しく生活を始めたアパートも全体がペイトン社のものだ。このアパートはペイトン社の寮なので表向きはペイトン社に雇用されているマイケルとホープが住んでいるのはおかしくはない。
マイケルたちは最上階の一角に居を構える事になった。
部屋はどことなく以前のアパートに趣が似ていた。そこもマイケルがここに決めた理由の一つだった。
人の脳を転送したというのは外部に極秘だ。マイケルとホープはキムが所有するヒューマノイドだと周りの人間は思っている。
マイケルはオリジナルの特性を生かして今はキムのセキュリティを担当している。
ホープはアンディと共に秘書のような役割とペイトン社で扱うアンドロイドのメンテナンスを担当していた。
「お疲れさま」
仕事が終わって帰宅しソファーで寛ぐマイケルをホープが労ってくれた。
後ろからそっと抱きしめてくるホープをマイケルは振り仰いで軽いキスを交わした。
2人の部屋にはマイケルが人間だった時の家具をそのまま持ってきてあった。チェストの上の写真立ては以前よりも増えた。過去の写真たちに加えてホープとマイケルの写真もチャールズ・ジュニアの写真もカイトの写真もたくさん飾ってあるからだ。
本来はアンドロイドには疲労はないがマイケルは持っている記憶が膨大なために、時々眠る。
だから二人の部屋には大きなベッドもある。もちろんベッドは眠るためだけにあるものでもない。
目が覚めて最初の頃はまるで互いの存在を確かめ合わないといけないかのように、体を繋げ合っていた。
今はそれも少し落ち着いた。それでも夜にはベッドに横になり二人は眠る真似事をする。
人らしい生活をする事はマイケルにとって大切な事だ。
アンドロイドの活用は時代によって徐々に変化している。
創世記は技術が革新的に進歩しそれが終わると普及と共に問題点が浮き彫りになる。
アンドロイドを人間の感情に近づけようとしたのは技術者からしてみれば当たり前の事だったがその技術をこぞって開発した先に都合の悪い事もわかってきた。
アンドロイドを使役する立場のものにはアンドロイドの自我は都合が悪かったのだと思う。
アンドロイドやAIの感情の発達は、彼らの複雑な「感情」を「考慮」するべきだという考えを引き起こした。
つまり彼らを人として「人権」を与えるべきだという団体がいくつもできてしまった。そうするとまた別の問題が持ち上がる。労働力が低下したのだ。人の世界は人だけでは維持できない所まで来ていた。
では彼らから「感情」を排除すればいいのでは?という極端な結論になった。
ちょうどホープがマイケルに出会ったのがこの頃だったはずだ。
だが今また完璧な人間に近いアンドロイドが研究されているらしい。
マイケルのように人間の脳の完璧なコピーを作成しようとしている研究者が世界には何人かいるとキムは言った。
キムによると「まだ実験もできないでいる段階」だと言うが、この先何十年かすれば、もしかしたらそれが実現する日がくるかもしれない。
だがマイケルは目覚めるまでに40年かかり、かつこの体に慣れるまで1~2年程はかかったと思う。
アンドロイドになってからの自分の肉体の違和感は中々取れなかった。
例えばもし、マイケルの腕が何かの事故で失われたとしても痛みは即座に脳から遮断される。そして、次の日には新しい腕が自分には付いているだろう。
そういう事実が自分を人間から遠ざけてしまう。その齟齬にマイケルは随分と長い時間葛藤した。
反してそういう事にホープはまったく頓着しない。
というのも恐らくではあるが、生粋のアンドロイドたちにとっては「意識と記憶」だけが自分たちの核なのだ。
マイケルは自分の「肉体」と「記憶」を切り離せないでいる。
そういうマイケルの心情をキムは「当然の反応」だと言った。
「人間は肉体、魂、記憶。どれが欠けても自分を保てないものだと思う」と。
ではなぜマイケルは自分を取り戻せたのだろうか。
「ちょっとロマンティックに言うなら、待っていた人がいたからじゃないかしら?結局はわからないって事になるけど。強い感情はそれだけ強烈な起爆剤になりうるのかもね」
というのがキムの考えだ。
だからこそマイケルのようなアンドロイドはもう作れないだろうと彼女は言う。
「意志の問題だと思う。誰かの為に戻ろうという意志が奇跡を生んだと私は思う。これは冗談じゃなく。そしてマイケルの存在は一種のタブーなの。だから絶対に自分が人間のオリジナルのコピーだと言わないで欲しいのよ」
そのキムの言葉にマイケルは深く頷いた。
もしも自分のような存在が世の中に知れてしまえば、肉体を捨てようとする人間が大勢出てくるだろう。
今行われている研究が一気に進み、また色々な問題が浮き彫りになるかもしれない。
世界で多分唯一の(今のところ)成功例であるマイケルが実験体にされてしまうかもしれない。
マイケルとホープはだからこそひっそりと生きなければならない。
ペイトンの庇護下で。
キムが配慮してくれなければ、とてもではないけれどこんなに穏やかな生活など叶わなかったと思う。
だからこそ、ここでペイトンが愛したものを守る事が、マイケルのやるべき仕事になっていた。
「チャールズ!待てって!」
「やだ!」
「おい!ホープ、チャールズを掴まえろ!」
「や~だ!まだ遊ぶぅ!!!!」
ホープに抱えられたチャールズ・ジュニアは足をバタバタとさせた。
チャールズは今年で5歳になった。
今がわんぱく盛りだ。両親が仕事の時はもっぱらホープとマイケルが遊んでやっている。
「チャールズ・・・そろそろママとパパが帰ってくる時間だ」
マイケルは柔らかいチャールズの髪をくしゃくしゃと撫でてやる。
チャールズ・ジュニアは驚くほど祖父であるペイトンに似てきた。
好奇心の強そうな茶色い瞳。くせ毛の髪。妙に自信家なところ。それから、優しいところも。
「ねぇ、ホープ、マイケル!今度行くドイツに二人も一緒に行こうよ!」
「ママの学会だろ?せっかくだから家族で行って来いよ」
「だって俺、マイケルとホープともっと遊びたいもん」
「それは嬉しいね」
「だろ?だから今日もまだ遊ぶ!」
「今日はもうおしまい!」
「マイケルのケチ!!!」
「おお~。ケチで結構」
「大人げないぞ!」
「俺は大人じゃないんだよ」
ぎゃあぎゃあと喚くチャールズを抱えるホープはそんな二人を見て笑う。マイケルはチャールズといると妙に子供っぽくて可愛いとホープは言う。
「何笑ってんだよ。ホープ」
「同じレベルだなって」
ホープの返答にマイケルは唇を尖らせて「ちぇっ」と言った。
そうしているうちに帰宅したスタンリーが礼を言ってチャールズを連れて帰っていった。
キムはまだ仕事らしいがそのうちに戻ってくるだろう。
キムは42歳になった。
こうやって周りは変化するのだ。マイケルの大切に思う人たちはやがて皆マイケルを残して逝ってしまうだろう。
だがもう自分を責める事はなくなった。
置いていかれる寂しさも受け入れる事ができる。自分にはホープがいるから。
人はずっと進化し、変化していく。その当たり前をマイケルは眩しく見つめていた。
結婚相手はスタンリーという科学には無縁の男だ。
彼は保育士であり、出会ったのも公園だというのだからまるで映画みたいな話である。
散歩に来ていた彼と何度も顔を合わすうちに会話をするようになったキムは彼の誠実な人柄を好ましく思った。
それになんと彼はキムの事を知らなかったのだという。
キムはチャールズと同じく有名人だ。米国を代表する大会社を率いる若き女社長であり、稀代の天才であるチャールズ・ペイトンの娘で彼女もまた優秀な科学者だ。
その彼女をスタンリーはまったく知らなかった。
早い結婚ではなかった。キムは35歳でスタンリーは37歳だった。
結婚してすぐに二人に待望の子供ができた。
うす茶色い髪に同じ色の瞳の元気な男の子だった。
名前は、チャールズ・ペイトン・ジュニア。祖父であるチヤールズの名前をもらった彼は屈託なく明るくやんちゃな男の子だった。
チャールズ・ジュニアに初めて会った日の事をマイケルはよく覚えている。
もちろんマイケルはすべてを記憶するようになったのだから鮮明に覚えているのは当然の事だ。
彼のふっくらとした頬、すべすべの肌、ふんわりとした薄茶色の髪に、黄色のおくるみから飛び出した小さな手。
触ると柔らかくて湿っていて、抱き上げると甘酸っぱい匂いがした。
カイトは自分に弟ができたのが嬉しいのか小さなチャールズを熱心に覗き込んでいた。
人が命を紡いでいくという単純で簡単に見える事。だがそれは決して簡単ではなく奇跡のような事だ。
チャールズ・ジュニアはまるで祖父の生まれ変わりのようにマイケルには思えた。
赤ん坊を抱いてマイケルは思わず泣いた。チャールズには感謝してもしきれない。彼が自分にかけてくれた愛情はとても大きかった。命の恩人だからでは片付けられない彼との繋がりを彼がいない今の方が強く感じる。
そんなマイケルの肩をホープは何も言わずにただ抱き寄せてくれた。
今の自分には持ちえないその生命の繋がりをマイケルはとても尊いものだと思う。
それは生身の人間にしかできない事だ。
この涙は後悔の涙ではなかった。子供を持てないとかそういう事じゃない。
ただ尊い。それだけだ。
ホープは機械の身でマイケルを心底愛してくれてマイケルもそれに応えた。それをマイケルは微塵も後悔していない。だってだからこそこうやってチャールズの孫を、もしかしたら生まれ変わったチャールズを愛する事ができる。
見守っていく事ができるのだから。
小さな天使。この圧倒的な存在を前に理由もなく感情が乱れる。
人を。人間を守りたいと強く思う事は、果たしてアンドロイド特有の感情なのかそれとも自分の特性なのか、マイケルにはよくわからなかった。
キムが結婚したのを期にマイケルとホープはペイトンのビルを出ることにした。
そこはペイトンビルからほんの少しの距離にあるごく普通のアパートだった。
もともとマイケルとホープが住んでいたアパートも今はペイトン所有の高層マンションになっていて、その一室に住んでも良かったが今の二人はペイトン社の庇護下にあるためにペイトンビルからあまり離れた所に住むのは不便だった。
それに新しく生活を始めたアパートも全体がペイトン社のものだ。このアパートはペイトン社の寮なので表向きはペイトン社に雇用されているマイケルとホープが住んでいるのはおかしくはない。
マイケルたちは最上階の一角に居を構える事になった。
部屋はどことなく以前のアパートに趣が似ていた。そこもマイケルがここに決めた理由の一つだった。
人の脳を転送したというのは外部に極秘だ。マイケルとホープはキムが所有するヒューマノイドだと周りの人間は思っている。
マイケルはオリジナルの特性を生かして今はキムのセキュリティを担当している。
ホープはアンディと共に秘書のような役割とペイトン社で扱うアンドロイドのメンテナンスを担当していた。
「お疲れさま」
仕事が終わって帰宅しソファーで寛ぐマイケルをホープが労ってくれた。
後ろからそっと抱きしめてくるホープをマイケルは振り仰いで軽いキスを交わした。
2人の部屋にはマイケルが人間だった時の家具をそのまま持ってきてあった。チェストの上の写真立ては以前よりも増えた。過去の写真たちに加えてホープとマイケルの写真もチャールズ・ジュニアの写真もカイトの写真もたくさん飾ってあるからだ。
本来はアンドロイドには疲労はないがマイケルは持っている記憶が膨大なために、時々眠る。
だから二人の部屋には大きなベッドもある。もちろんベッドは眠るためだけにあるものでもない。
目が覚めて最初の頃はまるで互いの存在を確かめ合わないといけないかのように、体を繋げ合っていた。
今はそれも少し落ち着いた。それでも夜にはベッドに横になり二人は眠る真似事をする。
人らしい生活をする事はマイケルにとって大切な事だ。
アンドロイドの活用は時代によって徐々に変化している。
創世記は技術が革新的に進歩しそれが終わると普及と共に問題点が浮き彫りになる。
アンドロイドを人間の感情に近づけようとしたのは技術者からしてみれば当たり前の事だったがその技術をこぞって開発した先に都合の悪い事もわかってきた。
アンドロイドを使役する立場のものにはアンドロイドの自我は都合が悪かったのだと思う。
アンドロイドやAIの感情の発達は、彼らの複雑な「感情」を「考慮」するべきだという考えを引き起こした。
つまり彼らを人として「人権」を与えるべきだという団体がいくつもできてしまった。そうするとまた別の問題が持ち上がる。労働力が低下したのだ。人の世界は人だけでは維持できない所まで来ていた。
では彼らから「感情」を排除すればいいのでは?という極端な結論になった。
ちょうどホープがマイケルに出会ったのがこの頃だったはずだ。
だが今また完璧な人間に近いアンドロイドが研究されているらしい。
マイケルのように人間の脳の完璧なコピーを作成しようとしている研究者が世界には何人かいるとキムは言った。
キムによると「まだ実験もできないでいる段階」だと言うが、この先何十年かすれば、もしかしたらそれが実現する日がくるかもしれない。
だがマイケルは目覚めるまでに40年かかり、かつこの体に慣れるまで1~2年程はかかったと思う。
アンドロイドになってからの自分の肉体の違和感は中々取れなかった。
例えばもし、マイケルの腕が何かの事故で失われたとしても痛みは即座に脳から遮断される。そして、次の日には新しい腕が自分には付いているだろう。
そういう事実が自分を人間から遠ざけてしまう。その齟齬にマイケルは随分と長い時間葛藤した。
反してそういう事にホープはまったく頓着しない。
というのも恐らくではあるが、生粋のアンドロイドたちにとっては「意識と記憶」だけが自分たちの核なのだ。
マイケルは自分の「肉体」と「記憶」を切り離せないでいる。
そういうマイケルの心情をキムは「当然の反応」だと言った。
「人間は肉体、魂、記憶。どれが欠けても自分を保てないものだと思う」と。
ではなぜマイケルは自分を取り戻せたのだろうか。
「ちょっとロマンティックに言うなら、待っていた人がいたからじゃないかしら?結局はわからないって事になるけど。強い感情はそれだけ強烈な起爆剤になりうるのかもね」
というのがキムの考えだ。
だからこそマイケルのようなアンドロイドはもう作れないだろうと彼女は言う。
「意志の問題だと思う。誰かの為に戻ろうという意志が奇跡を生んだと私は思う。これは冗談じゃなく。そしてマイケルの存在は一種のタブーなの。だから絶対に自分が人間のオリジナルのコピーだと言わないで欲しいのよ」
そのキムの言葉にマイケルは深く頷いた。
もしも自分のような存在が世の中に知れてしまえば、肉体を捨てようとする人間が大勢出てくるだろう。
今行われている研究が一気に進み、また色々な問題が浮き彫りになるかもしれない。
世界で多分唯一の(今のところ)成功例であるマイケルが実験体にされてしまうかもしれない。
マイケルとホープはだからこそひっそりと生きなければならない。
ペイトンの庇護下で。
キムが配慮してくれなければ、とてもではないけれどこんなに穏やかな生活など叶わなかったと思う。
だからこそ、ここでペイトンが愛したものを守る事が、マイケルのやるべき仕事になっていた。
「チャールズ!待てって!」
「やだ!」
「おい!ホープ、チャールズを掴まえろ!」
「や~だ!まだ遊ぶぅ!!!!」
ホープに抱えられたチャールズ・ジュニアは足をバタバタとさせた。
チャールズは今年で5歳になった。
今がわんぱく盛りだ。両親が仕事の時はもっぱらホープとマイケルが遊んでやっている。
「チャールズ・・・そろそろママとパパが帰ってくる時間だ」
マイケルは柔らかいチャールズの髪をくしゃくしゃと撫でてやる。
チャールズ・ジュニアは驚くほど祖父であるペイトンに似てきた。
好奇心の強そうな茶色い瞳。くせ毛の髪。妙に自信家なところ。それから、優しいところも。
「ねぇ、ホープ、マイケル!今度行くドイツに二人も一緒に行こうよ!」
「ママの学会だろ?せっかくだから家族で行って来いよ」
「だって俺、マイケルとホープともっと遊びたいもん」
「それは嬉しいね」
「だろ?だから今日もまだ遊ぶ!」
「今日はもうおしまい!」
「マイケルのケチ!!!」
「おお~。ケチで結構」
「大人げないぞ!」
「俺は大人じゃないんだよ」
ぎゃあぎゃあと喚くチャールズを抱えるホープはそんな二人を見て笑う。マイケルはチャールズといると妙に子供っぽくて可愛いとホープは言う。
「何笑ってんだよ。ホープ」
「同じレベルだなって」
ホープの返答にマイケルは唇を尖らせて「ちぇっ」と言った。
そうしているうちに帰宅したスタンリーが礼を言ってチャールズを連れて帰っていった。
キムはまだ仕事らしいがそのうちに戻ってくるだろう。
キムは42歳になった。
こうやって周りは変化するのだ。マイケルの大切に思う人たちはやがて皆マイケルを残して逝ってしまうだろう。
だがもう自分を責める事はなくなった。
置いていかれる寂しさも受け入れる事ができる。自分にはホープがいるから。
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