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オーストラリア奪還計画
第七話「本田綾乃の申し出」
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「あ、そう言えば先輩にお手紙を預かっていたんです」
思い出した津田穂月は鞄から手紙を一つ取り出した。
「それは誰からなんだ?」
神崎定進は渡された手紙を受け取り、津田穂月に聞き返す。
「それは、同じクラスの本田綾乃さんから預かった物です」
「あぁ、そうか分かった。穂月と同じクラスの人間なら危害を加えてくる事もないだろう」
神崎定進は封を開けて手紙を読み始めた。
「なぁなぁ、もしかしてそれひょっとしてラブレターとちゃうか?なんてなっ」
松山楽人はそんな冗談で静かになった空気を賑わす。
「出航の前に伝えたいことがあるらしいから、学校に来てくれって…ちょっと距離があるけどまぁ、しばらくは帰って来れないし行ってくる」
そう言って神崎定進は颯爽と空へ飛び立って行く。しかしその捨て台詞からその場で話をしていた一同が思った事は完全に一致していた。
「完全にラブレターやん」
そう口に出したのはやはり松山楽人だった。彼は隠そうとしない限り基本的に思った事が口に出る。
場の空気は驚きに包まれながら、一同はただ飛んでいく神崎定進を見送っていた。
その後松山楽人はどこかに電話をかける。
「もしもし、これから学校に用があるらしいわ。じゃっ」
明らかに神崎定進の事を言ってるのは明らかで、一同はそんな電話をしている松山楽人を見つめる。
「あぁ、ちょっとアイツを捜してるって奴とこないだ知り合うたからな、連絡したってん」
一方、神崎定進の幻想の能力を使った飛行速度は結構なものである。意識が保てるならばどこまでも速くなれる為、神奈川の横須賀にある港から東京郊外にある学校までは三十分でたどり着ける。
高速移動等で発生した身体異常は自身の能力で上書きする事で対処可能な為、意識と集中力さえ持てばどこまでも速くなれる。神崎定進は自身で飛行する方が圧倒的に速く移動できる。
手紙には学校の門の前で待っていると書かれており、そして門の前にいる生徒は一人だけ。長い青髪に色を合わせた青いボストン眼鏡の女生徒だけである為、神崎定進彼女が手紙を差し出した本田綾乃だと判断した。
「結構待たせたかな?」
上空十メートル位にまで降下した所で門の前に立つ生徒に声をかけた。彼女は左右をキョロキョロと探し、声が上から聞こえている事に気づき上を見上げた。
「わぁっ会長…あっそんな、全然待っていませんよ」
流石に距離がある為、神崎定進は一度着陸してから再び会話を再開する。
「それで、何か用があるんだろ?」
少し離れた所に着陸し、数歩歩いて距離を調節しながら、待っていた彼女に尋ねた。
「あの、これは有名な話なんですが、神崎先輩は津田さんとお付き合いされている事は分かっています!分かっているんですが、私先輩のカッコイイ姿を見てずっと話がしたかったんです!他の人と
お付き合いしているのに他の女の子と仲良くするのはやっぱりダメですよね?」
神崎定進には引っかかることがあった。それは神崎定進と津田穂月は付き合っていないのに付き合っていると勘違いされている事。
「別に俺と穂月は付き合ってなんてないから、まぁ仲良くなりたいって言うなら別にいいけど?」
神崎定進は相変わらずふてぶてしい様子で申し出に応える。
「それより、有名な話ってのは何が有名なんだ?」
受け取った意味だと付き合っていると言う間違いが皆に知れ渡っている事になる。それは困ると思って、神崎定進は少し威圧気味に聞いてしまっていた。
「神崎先輩と津田さんが付き合っているって噂です」
それにより縮こまった様子で本田綾乃は答えた。
「ごめん、怖がらせてしまった。それで、君の名前は穂月から聞いてるけどなんて呼べば良い?」
さっきの事は一度忘れて、初対面で大切なやり取りをする事にした。
「先輩にならなんて呼ばれても大丈夫です」
呼ばれたく相手がいるのか。と神崎定進は感じていた。
「じゃあ、綾乃って呼ぶことにするよ。で、俺の事も自由に呼んでくれていいから」
それでも基本的に年下の場合は神崎先輩と呼ぶ事ばかりだ。
「じゃあ定進さんってお呼びします」
あまり呼ばれない名前だが、そこまで変わった呼び方でもないし、問題はない。
「じゃあ、俺はすぐに横須賀に戻らないとならないから、談話なんかはまたオーストラリアから帰って来てからにしてくれ。それで、家が近いなら送るけど?」
津田穂月の知り合いだと聞いてきたが、元々手紙は昨日の段階で渡される事を想定していたような書き方だったし、学校から港までは結構距離がある為、もうすぐにでも帰らなければならなかった。
本田綾乃の要望に真に応えられるのはしばらく後、オーストラリア奪還計画が終わってからとなる。
思い出した津田穂月は鞄から手紙を一つ取り出した。
「それは誰からなんだ?」
神崎定進は渡された手紙を受け取り、津田穂月に聞き返す。
「それは、同じクラスの本田綾乃さんから預かった物です」
「あぁ、そうか分かった。穂月と同じクラスの人間なら危害を加えてくる事もないだろう」
神崎定進は封を開けて手紙を読み始めた。
「なぁなぁ、もしかしてそれひょっとしてラブレターとちゃうか?なんてなっ」
松山楽人はそんな冗談で静かになった空気を賑わす。
「出航の前に伝えたいことがあるらしいから、学校に来てくれって…ちょっと距離があるけどまぁ、しばらくは帰って来れないし行ってくる」
そう言って神崎定進は颯爽と空へ飛び立って行く。しかしその捨て台詞からその場で話をしていた一同が思った事は完全に一致していた。
「完全にラブレターやん」
そう口に出したのはやはり松山楽人だった。彼は隠そうとしない限り基本的に思った事が口に出る。
場の空気は驚きに包まれながら、一同はただ飛んでいく神崎定進を見送っていた。
その後松山楽人はどこかに電話をかける。
「もしもし、これから学校に用があるらしいわ。じゃっ」
明らかに神崎定進の事を言ってるのは明らかで、一同はそんな電話をしている松山楽人を見つめる。
「あぁ、ちょっとアイツを捜してるって奴とこないだ知り合うたからな、連絡したってん」
一方、神崎定進の幻想の能力を使った飛行速度は結構なものである。意識が保てるならばどこまでも速くなれる為、神奈川の横須賀にある港から東京郊外にある学校までは三十分でたどり着ける。
高速移動等で発生した身体異常は自身の能力で上書きする事で対処可能な為、意識と集中力さえ持てばどこまでも速くなれる。神崎定進は自身で飛行する方が圧倒的に速く移動できる。
手紙には学校の門の前で待っていると書かれており、そして門の前にいる生徒は一人だけ。長い青髪に色を合わせた青いボストン眼鏡の女生徒だけである為、神崎定進彼女が手紙を差し出した本田綾乃だと判断した。
「結構待たせたかな?」
上空十メートル位にまで降下した所で門の前に立つ生徒に声をかけた。彼女は左右をキョロキョロと探し、声が上から聞こえている事に気づき上を見上げた。
「わぁっ会長…あっそんな、全然待っていませんよ」
流石に距離がある為、神崎定進は一度着陸してから再び会話を再開する。
「それで、何か用があるんだろ?」
少し離れた所に着陸し、数歩歩いて距離を調節しながら、待っていた彼女に尋ねた。
「あの、これは有名な話なんですが、神崎先輩は津田さんとお付き合いされている事は分かっています!分かっているんですが、私先輩のカッコイイ姿を見てずっと話がしたかったんです!他の人と
お付き合いしているのに他の女の子と仲良くするのはやっぱりダメですよね?」
神崎定進には引っかかることがあった。それは神崎定進と津田穂月は付き合っていないのに付き合っていると勘違いされている事。
「別に俺と穂月は付き合ってなんてないから、まぁ仲良くなりたいって言うなら別にいいけど?」
神崎定進は相変わらずふてぶてしい様子で申し出に応える。
「それより、有名な話ってのは何が有名なんだ?」
受け取った意味だと付き合っていると言う間違いが皆に知れ渡っている事になる。それは困ると思って、神崎定進は少し威圧気味に聞いてしまっていた。
「神崎先輩と津田さんが付き合っているって噂です」
それにより縮こまった様子で本田綾乃は答えた。
「ごめん、怖がらせてしまった。それで、君の名前は穂月から聞いてるけどなんて呼べば良い?」
さっきの事は一度忘れて、初対面で大切なやり取りをする事にした。
「先輩にならなんて呼ばれても大丈夫です」
呼ばれたく相手がいるのか。と神崎定進は感じていた。
「じゃあ、綾乃って呼ぶことにするよ。で、俺の事も自由に呼んでくれていいから」
それでも基本的に年下の場合は神崎先輩と呼ぶ事ばかりだ。
「じゃあ定進さんってお呼びします」
あまり呼ばれない名前だが、そこまで変わった呼び方でもないし、問題はない。
「じゃあ、俺はすぐに横須賀に戻らないとならないから、談話なんかはまたオーストラリアから帰って来てからにしてくれ。それで、家が近いなら送るけど?」
津田穂月の知り合いだと聞いてきたが、元々手紙は昨日の段階で渡される事を想定していたような書き方だったし、学校から港までは結構距離がある為、もうすぐにでも帰らなければならなかった。
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