OCEAN LINE 〜あの空を我が手に〜

ハーミット

文字の大きさ
6 / 29
オーストラリア奪還計画

第六話「希望へと続く第一歩」

しおりを挟む
 神崎定進が講堂にて全校集会を行った日から四日、遂にオーストラリア奪還計画に向けて艦を出航させる日となった。

 「穂月、どうやら着いたみたいだぞ」
送迎車の車窓から外を眺めていた彼は、同乗しているに津田穂月そう報告した。

 「クソっ、めんどくさいのが居る」

 瓜二つの男子生徒二人が神崎定進と津田穂月を乗せた送迎車に向けて手を振っている。

 「あの人たちは誰なんですか?」

 あの二人の事を知らない津田穂月はそう尋ねる。

 「アイツらは大阪の松山兄弟、松山の楽人らくと楽斗がくと。めんどくさい事をボヤボヤと言ってくるめんどくさい奴らだ」

 めんどくさいからと言って逃げる訳にもいかない。車から降りた二人に松山兄弟は歩み寄ってきた。

 「おうおう、東京の神崎定進やないかぁっ。オーストラリア旅行行くんやっけ?えぇなぁ俺らもグレートバリアリーフ行きたいわぁってな」

 確実にそんな事は思っていないだろう。冷やかしで松山楽人はそんな風に語りかけてきた。

 「松山楽人先輩。なんでしたら代わりますか?って言っても俺はお前らと違って戦力値が一騎当千だから、俺が行かない訳にはならないんだけどな」

 神崎定進も言い返した。津田穂月は神崎定進が良くある男子生徒の様なノリで話しているのを見た事がなく、この人達とはとても仲が良い事はよく分かった。

 「他の人とは距離があるのに、松山先輩二人とはとても仲が良いんですね」

 ちょっとした驚きなどを口にしてしまった。松山兄弟はそれを見逃さなかった。

 「いやいや、誰が仲いいって?そんな事有り得へんて、コイツとは他人や他人」と松山楽人。

 「ホンマやで他人や他人!俺は牛と豚でコイツが玉子みたいなもんやで!」と続ける松山楽斗。

 「いやいや、俺らが牛と豚やったら俺らも他人やんけ!」と言うツッコミを返す松山楽人。

 「ハッハッハッハー!あぁおもろ」二人は最後に声を揃えて締めくくる。

 津田穂月はそんな二人に圧倒されていた。

 「あっそう言えば兄貴。この娘が噂の彼女で生徒会副会長とちゃうか?隣におるし。知らんけど」

 楽斗は兄の楽人にそう呟いた。

「あぁ、初めて会うから自己紹介せなあかんなぁ。俺は松山楽人って言うねん。一応三年で大阪校の生徒会長やってるんや。めっちゃ強い能力なんやで?気になるやろうから教えたろう。物の構造を理解して使えるって能力、俺のコードは道筋ルート

そこまで言った楽人は静かに右手を上げ、その右手を楽斗が軽く叩いてバトンタッチ。

「そんで多分二人が似てるから不思議思ったんちゃうか?俺らはなんと双子やねんなそんで三年で会長と副会長をしてるんや。多分俺の能力も気になるやろう?俺のコードは組立アート。設計図通りに組み立てる能力。俺と兄貴の二人は道具を使って戦う皆を助けてるんやどや?」

 津田穂月はそれに対する回答を出そうとしたのだが、それよりも先に二人が話し出す。

 「多分なんの為にって思ったんやろ?」

 二人は揃って右手を前にだし、親指と人差し指で輪を作る。

 「そりゃぁ、金のためやわな!ハッハッハッハー!おもろ!」

 そしてまたその言葉で締めくくる。

 「俺らも自己紹介したし、俺らも自己紹介聞きたいなぁ。能力気になるわぁ」

 多分この二人は能力が一番気になるのだろうと理解して、津田穂月は自己紹介を始める。

「私は津田穂月です。コードは付与の能力で、他の人の思考能力と身体能力を向上させる事ができます」

 神崎定進はスタスタと近づく足音に気づいていた。

 「なんか用か?」

 振り返ってそう言った神崎定進に返事を返すのは埼玉校の生徒会長だった。

 「ねぇねぇ、ちょっと楽しそうな話、僕も混ぜてくれないかな?」

 神崎定進がこの多田充ただたかしに関しては居ても居なくても良いどうでも良い存在でしかなかった。

 「僕はソフィアちゃんに会えるの楽しみにしてるんだけど、皆楽しみじゃないのかなって。どうかな?」

 その問に答えを返した人物に津田穂月は騒然とした。

 「貴方のそれは性的な意味を含んでるんのでは?貴方はいちいち気持ち悪いですね」

 頭の中に直接語りかけてくる声、生徒会長達にとってこの声はあまりにも有名だった。

 「ホンマ何度聞いてもびっくりするからやめて欲しいわ。って上浦はんはどこに隠れて話しとるんや?」

 状況に慣れている松山楽人は即座にそう叫んで返事を返す。

 「私はもう艦内です。松山君は私に会えなくてガッカリかしら?」

 「んなわけないやろ?神崎と一緒におる例のあの娘は上浦はんの能力の事を知らんからめっちゃビックリしとったからなぁ?直接きて話せって思ったんや」

 「あら、それは失礼。私は上浦綾瀬かみうらあやせ今回のオーストラリア奪還計画ではテレパシーの能力を使って上の指示を各員へ伝える役目を命じられたからよろしくね」

 津田穂月は各校の生徒会長達は個性的な人が多いらしいと聞いていたが、本当にそうなんだろうなと実感していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...