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13.これからの生活
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この男が、一人で何十年もの間、砦で生活をしている様子が、アルマにはなんとも想像しがたかった。
それに先ほど見た荒れた畑も、調理場で埃を被った器を見ても、まるで人の住んでいる雰囲気が感じられない。
「わたしの前の、生贄さんは料理とか、しなかったんですか?」
「勘違いも甚だしいが、これから喰われるってのに自分から肥える奴はいなかったな。泣きながら干したもんばっか食ってた気がする」
カルナは過去を思い出しているように、遠い目をする。なにかを思い出したのか、カルナは「ああ」と声を漏らした。
「十年か二十年か前に、お前みたいにここで働く女がいたな」
その女性がいなくなってから、畑は使われなくなり、調理場も掃除が行き届いているとは言いがたい状態になったのか。
「お前は食わなきゃ死ぬから、ちゃんとやれよ」
アルマの今後やるべきこと、方向性は決まったようだ。
まずは調理場の掃除。それから畑を手入れして、作物を育てられるようにする。カルナと番人のドルシーは生肉も食べられると言うので食べ物に困らないかもしれないが、アルマは砦から出られない以上、商人が持ってくるものと、砦内での自給自足が命綱だ。
これから冬を迎えるため、干したものや塩漬けを多く蓄えなければならない。
「カルナさん」
アルマの呼びかけに、カルナは視線だけを寄越す。
「リオさんは、次いつ来ますか?」
「七日後の予定だが……入用なら商会まで早馬を出して、明日にでも呼べばいい」
カルナはさして興味もなさそうに告げる。
アルマはほっと胸を撫で下ろした。自分の要求を拒否されなかっただけでも、いい方だ。カルナも興味こそないものの、アルマを邪険に扱おうという意思は見られない。
アルマは自分の行く先がある程度、見通せたことに安心して、ポケットから干しいちじくの入った小瓶を取り出した。レスターからの荷物に入っていたものだ。砦内に食糧がほとんどないことを見越していたのかもしれない。
少しかじると、強烈な甘みに舌が痺れたように感じ、アルマはリスのようにちびりちびりと干しいちじくを口に含む。
その様子を正面で見ていたカルナは、露骨に嫌そうな顔をした。
「貧乏くさい食べ方すんなよ。腐るほど送られてきてんだろ?」
確かに腐るほとではないが、アルマが持て余すくらいにはある。
アルマはよく噛み締めた欠片を飲み込んで言った。
「でも、大事に食べたくて」
ふうん、と気のない返事。アルマのことを気にしているのか、そうではないのか、よく分からない。
なおも干しいちじくを千切るように食べるアルマを、カルナはじっと観察している。
「まだ腹が減ってるなら、食料獲ってきてやってもいいぞ」
「え?」
「裏山まで行かなくても、さっきの羊をバラせばいいだけだからな」
アルマの顔から、さあっと血の気が引く。
「あれはだめです! 非常食って言ったじゃないですか!」
楽しそうにくつくつと笑うカルナを見ながら、口の中に溜め込んでいた欠片を一気に飲み干す。
「お前、ビビりすぎだろ。あれがバラされても、お前は喰わないって」
笑いを噛み殺すカルナを、じとりと睨む。口に残る甘さが、やけに腹立たしく感じられた。
それに先ほど見た荒れた畑も、調理場で埃を被った器を見ても、まるで人の住んでいる雰囲気が感じられない。
「わたしの前の、生贄さんは料理とか、しなかったんですか?」
「勘違いも甚だしいが、これから喰われるってのに自分から肥える奴はいなかったな。泣きながら干したもんばっか食ってた気がする」
カルナは過去を思い出しているように、遠い目をする。なにかを思い出したのか、カルナは「ああ」と声を漏らした。
「十年か二十年か前に、お前みたいにここで働く女がいたな」
その女性がいなくなってから、畑は使われなくなり、調理場も掃除が行き届いているとは言いがたい状態になったのか。
「お前は食わなきゃ死ぬから、ちゃんとやれよ」
アルマの今後やるべきこと、方向性は決まったようだ。
まずは調理場の掃除。それから畑を手入れして、作物を育てられるようにする。カルナと番人のドルシーは生肉も食べられると言うので食べ物に困らないかもしれないが、アルマは砦から出られない以上、商人が持ってくるものと、砦内での自給自足が命綱だ。
これから冬を迎えるため、干したものや塩漬けを多く蓄えなければならない。
「カルナさん」
アルマの呼びかけに、カルナは視線だけを寄越す。
「リオさんは、次いつ来ますか?」
「七日後の予定だが……入用なら商会まで早馬を出して、明日にでも呼べばいい」
カルナはさして興味もなさそうに告げる。
アルマはほっと胸を撫で下ろした。自分の要求を拒否されなかっただけでも、いい方だ。カルナも興味こそないものの、アルマを邪険に扱おうという意思は見られない。
アルマは自分の行く先がある程度、見通せたことに安心して、ポケットから干しいちじくの入った小瓶を取り出した。レスターからの荷物に入っていたものだ。砦内に食糧がほとんどないことを見越していたのかもしれない。
少しかじると、強烈な甘みに舌が痺れたように感じ、アルマはリスのようにちびりちびりと干しいちじくを口に含む。
その様子を正面で見ていたカルナは、露骨に嫌そうな顔をした。
「貧乏くさい食べ方すんなよ。腐るほど送られてきてんだろ?」
確かに腐るほとではないが、アルマが持て余すくらいにはある。
アルマはよく噛み締めた欠片を飲み込んで言った。
「でも、大事に食べたくて」
ふうん、と気のない返事。アルマのことを気にしているのか、そうではないのか、よく分からない。
なおも干しいちじくを千切るように食べるアルマを、カルナはじっと観察している。
「まだ腹が減ってるなら、食料獲ってきてやってもいいぞ」
「え?」
「裏山まで行かなくても、さっきの羊をバラせばいいだけだからな」
アルマの顔から、さあっと血の気が引く。
「あれはだめです! 非常食って言ったじゃないですか!」
楽しそうにくつくつと笑うカルナを見ながら、口の中に溜め込んでいた欠片を一気に飲み干す。
「お前、ビビりすぎだろ。あれがバラされても、お前は喰わないって」
笑いを噛み殺すカルナを、じとりと睨む。口に残る甘さが、やけに腹立たしく感じられた。
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