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4章(5)
絞め殺される、と思ったが類の指は藍豪の首を撫でるように這い、頬に到達した。
ひんやりとした類の手のひらに頬を包まれ、藍豪は戸惑いながら類の顔を見上げる。憎悪とためらいとがないまぜになった苦しげな顔をして、類はそっと顔を寄せ、藍豪に口づけた。
驚きで固く閉ざした唇を、類の舌先が這う。抵抗しようにも後ろ手に縛られた腕は自身の体重で押し潰され、脚はせいぜい類の尻を蹴り上げることしかできない。両手でがっちりと頬を挟まれているため、いくら身を捩っても類から逃れられない。
類の手が、するすると首に戻ってきた。気道を押し潰すように絞め上げられ、酸素を求めて口が開く。
類はその瞬間を見逃さなかった。舌を捩じ込み、藍豪の舌を絡め取る。手のひらとは対照的に類の舌は熱く、じっとりと湿って、執拗に藍豪の舌を追いかけ回し、吸ったり噛んだりしている。
首にかけられていたはずの手がTシャツの裾をめくり上げ、ひやりとした外気に晒された肌が粟立った。
「なに、を……」
唇の端から唾液をこぼしながら、藍豪は息も絶え絶えに尋ねる。
類の考えていることがまるでわからない。氷のように冷たい指先が胸の先端を摘み上げ、藍豪は息を詰めた。くすぐったいような、奇妙な感覚がする。
類は指先で弄んでいたそれを口に含むと、舌先でちろちろと舐めた。途端に背骨からぞくぞくとした感覚が這い上がり、腰が浮きかける。
藍豪は必死で類の手から逃れようと身を捩った。類の行為が、どんな意味を持っているかわからないほど愚鈍ではない。藍豪も類と同じ歳の頃は、阿片で稼いだ金に物を言わせて女を買ったりしたものだ。藍豪が抱く女の条件はひとつだけ。姉に似ているかどうかだった。娼館の女を買ったこともあるし、仕事仲間が抱える妾を借りたこともある。
類の指や舌が躰を這うたびに、藍豪は自分が男に組み敷かれるだけの女に成り下がったような気がした。
音を立てて藍豪の胸に吸いついた類が、顔を上げる。
「どうして殺さないんだって、思ってます?」
藍豪は類から目を逸らしながら、うなずいた。こんなことをされるくらいなら、死んだほうがマシだ。
類はそれすらも見抜いたように藍豪の顎を掴むと、無理やり視線を合わせる。窓から差し込む明るい日差しを受けて、類の目はぎらぎらと輝いていた。
「藍豪、あなたを簡単に殺す気はありません。あなたからなにもかも――人としての尊厳も、お姉さんとの美しい思い出も、すべて奪って……藍豪は、僕のものになるんです」
類が顎を掴んでいた手を解いて、藍豪のズボンに手を伸ばす。逃げようと引いた腰を素早く掴まれ、ズボンと共に下着も一気に膝の辺りまで引き下ろされる。中途半端に下ろされたズボンが足の自由を奪い、身動きが取れない。
藍豪は心の中で、過去に抱いた女たちに必死で詫びた。その日の機嫌によっては、手ひどい扱いをした女もいたのだ。まさに今の藍豪のように手足の自由を奪われ、やめてほしいと泣き喚く女を無理やり組み敷いたこともある。今になってようやく、藍豪はあの時の女たちの気持ちがよくわかった気がした。
乱暴に躰を転がされ、うつ伏せになる。類の冷たい手が腰を引き起こし、藍豪はシーツに突っ伏した顔を無理やり持ち上げ、後ろを振り返った。
「やめろ、それ以上は……」
類の指先が尻の形をなぞっている。ひたひたと尻を這っていた指が腰の前に回ってきて、藍豪はぐっと悲鳴を噛み殺した。
逃げようにも類の腕が、がっちりと腰を掴んでいて逃げられない。上半身をシーツに突っ伏し、類に向かって尻を突き出す体勢を強いられ、体重のかかった肩が痛む。
類の手がゆるゆると藍豪の萎えたものを扱きはじめ、藍豪は躰を強張らせた。ぐっとせり上がってくるものを感じ、追い払うように首を振る。
「我慢しないで」
自分でも、類の手の中で張りつめていくのがわかる。類は鈴口から溢れたものを手のひらに塗り広げ、ぐちぐちと水音を立てながら反り立ったものを擦る。喉から上がってくる声を、藍豪は必死に飲み込んだ。
「吴大人から聞きました。お姉さんとのこと」
快感でくずおれそうになった腰を、類の腕がしっかりと抱き起こす。あとすこしで達しそうということころで、類はおもむろに藍豪のものを握っていた手を離した。押し寄せていた快感の波が急速に去っていく。
類は藍豪が頑丈に封じ込めていた記憶の箱を、力任せにこじ開けた。
「お姉さんは王老板の妾だったんですよね?」
脳内に、どっと記憶が溢れ返る。王に服を引き裂かれ、裸で縛られた姉。白く細い裸体に縄が食い込む姿は、めまいがするほど美しかった。姉は、泣いていた。見ないで、と言って藍豪から目を逸らし続けていた。
――いいことを思いついた。
王は呆然と立ち尽くす藍豪に向かって、言い放った。
――お姉さんが孕むまで、そこで見ているといい。
藍豪の呻きが、シーツの海に吸い取られる。地獄以外の、何物でもなかった。椅子に縛りつけられ、目を逸らすことも許されず、姉の裸体が太った王に押し潰されているのを見続ける。王が精を吐き出すたびに、藍豪は絶叫した。姉の躰が震え、弓のようにしなるのを、藍豪はなにもできずに見ていたのだ。
ぬるついた類の指が、尻を撫でる。固く閉じた後ろに、類の細い指が捩じ込まれた。本能が類の指を押し出そうと躍起になり、腹筋が収縮する。
「今度は、藍豪の番ですよ」
みちみちと類の指がなかへめり込んでいく。粘膜が指を押し返そうと蠢く。
苦痛の呻きを漏らして、顔を上げる。
藍豪はそこに、椅子に縛りつけられた姉の幻覚を見た気がした。
ひんやりとした類の手のひらに頬を包まれ、藍豪は戸惑いながら類の顔を見上げる。憎悪とためらいとがないまぜになった苦しげな顔をして、類はそっと顔を寄せ、藍豪に口づけた。
驚きで固く閉ざした唇を、類の舌先が這う。抵抗しようにも後ろ手に縛られた腕は自身の体重で押し潰され、脚はせいぜい類の尻を蹴り上げることしかできない。両手でがっちりと頬を挟まれているため、いくら身を捩っても類から逃れられない。
類の手が、するすると首に戻ってきた。気道を押し潰すように絞め上げられ、酸素を求めて口が開く。
類はその瞬間を見逃さなかった。舌を捩じ込み、藍豪の舌を絡め取る。手のひらとは対照的に類の舌は熱く、じっとりと湿って、執拗に藍豪の舌を追いかけ回し、吸ったり噛んだりしている。
首にかけられていたはずの手がTシャツの裾をめくり上げ、ひやりとした外気に晒された肌が粟立った。
「なに、を……」
唇の端から唾液をこぼしながら、藍豪は息も絶え絶えに尋ねる。
類の考えていることがまるでわからない。氷のように冷たい指先が胸の先端を摘み上げ、藍豪は息を詰めた。くすぐったいような、奇妙な感覚がする。
類は指先で弄んでいたそれを口に含むと、舌先でちろちろと舐めた。途端に背骨からぞくぞくとした感覚が這い上がり、腰が浮きかける。
藍豪は必死で類の手から逃れようと身を捩った。類の行為が、どんな意味を持っているかわからないほど愚鈍ではない。藍豪も類と同じ歳の頃は、阿片で稼いだ金に物を言わせて女を買ったりしたものだ。藍豪が抱く女の条件はひとつだけ。姉に似ているかどうかだった。娼館の女を買ったこともあるし、仕事仲間が抱える妾を借りたこともある。
類の指や舌が躰を這うたびに、藍豪は自分が男に組み敷かれるだけの女に成り下がったような気がした。
音を立てて藍豪の胸に吸いついた類が、顔を上げる。
「どうして殺さないんだって、思ってます?」
藍豪は類から目を逸らしながら、うなずいた。こんなことをされるくらいなら、死んだほうがマシだ。
類はそれすらも見抜いたように藍豪の顎を掴むと、無理やり視線を合わせる。窓から差し込む明るい日差しを受けて、類の目はぎらぎらと輝いていた。
「藍豪、あなたを簡単に殺す気はありません。あなたからなにもかも――人としての尊厳も、お姉さんとの美しい思い出も、すべて奪って……藍豪は、僕のものになるんです」
類が顎を掴んでいた手を解いて、藍豪のズボンに手を伸ばす。逃げようと引いた腰を素早く掴まれ、ズボンと共に下着も一気に膝の辺りまで引き下ろされる。中途半端に下ろされたズボンが足の自由を奪い、身動きが取れない。
藍豪は心の中で、過去に抱いた女たちに必死で詫びた。その日の機嫌によっては、手ひどい扱いをした女もいたのだ。まさに今の藍豪のように手足の自由を奪われ、やめてほしいと泣き喚く女を無理やり組み敷いたこともある。今になってようやく、藍豪はあの時の女たちの気持ちがよくわかった気がした。
乱暴に躰を転がされ、うつ伏せになる。類の冷たい手が腰を引き起こし、藍豪はシーツに突っ伏した顔を無理やり持ち上げ、後ろを振り返った。
「やめろ、それ以上は……」
類の指先が尻の形をなぞっている。ひたひたと尻を這っていた指が腰の前に回ってきて、藍豪はぐっと悲鳴を噛み殺した。
逃げようにも類の腕が、がっちりと腰を掴んでいて逃げられない。上半身をシーツに突っ伏し、類に向かって尻を突き出す体勢を強いられ、体重のかかった肩が痛む。
類の手がゆるゆると藍豪の萎えたものを扱きはじめ、藍豪は躰を強張らせた。ぐっとせり上がってくるものを感じ、追い払うように首を振る。
「我慢しないで」
自分でも、類の手の中で張りつめていくのがわかる。類は鈴口から溢れたものを手のひらに塗り広げ、ぐちぐちと水音を立てながら反り立ったものを擦る。喉から上がってくる声を、藍豪は必死に飲み込んだ。
「吴大人から聞きました。お姉さんとのこと」
快感でくずおれそうになった腰を、類の腕がしっかりと抱き起こす。あとすこしで達しそうということころで、類はおもむろに藍豪のものを握っていた手を離した。押し寄せていた快感の波が急速に去っていく。
類は藍豪が頑丈に封じ込めていた記憶の箱を、力任せにこじ開けた。
「お姉さんは王老板の妾だったんですよね?」
脳内に、どっと記憶が溢れ返る。王に服を引き裂かれ、裸で縛られた姉。白く細い裸体に縄が食い込む姿は、めまいがするほど美しかった。姉は、泣いていた。見ないで、と言って藍豪から目を逸らし続けていた。
――いいことを思いついた。
王は呆然と立ち尽くす藍豪に向かって、言い放った。
――お姉さんが孕むまで、そこで見ているといい。
藍豪の呻きが、シーツの海に吸い取られる。地獄以外の、何物でもなかった。椅子に縛りつけられ、目を逸らすことも許されず、姉の裸体が太った王に押し潰されているのを見続ける。王が精を吐き出すたびに、藍豪は絶叫した。姉の躰が震え、弓のようにしなるのを、藍豪はなにもできずに見ていたのだ。
ぬるついた類の指が、尻を撫でる。固く閉じた後ろに、類の細い指が捩じ込まれた。本能が類の指を押し出そうと躍起になり、腹筋が収縮する。
「今度は、藍豪の番ですよ」
みちみちと類の指がなかへめり込んでいく。粘膜が指を押し返そうと蠢く。
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