イクメンパパの異世界冒険譚〜異世界で育児は無理がある

或真

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第一章

いざダンジョンへ

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 転移してから三日目の朝、俺は早朝から自分のステータスとにらめっこしていた。

 なんと言ってもユニークスキル『心情創造者』の存在がずっと気になっているのだ。

 『心情創造者』の効果は想像したものを具現化できるというものなのだが、朝からずっと試してみても、全く具現化する気配がないんだよな。

「れいちゃんどうすればいいのかなー」

「あぅあぅ!」

 ん?れいちゃんは何か俺に伝えようとしてるみたいだけど。なになに、鑑定してみろ?まあ、れいちゃんがそう言うならやってみるけど。

《ユニークスキル 心情創造者》
想像した物を具現化する能力。※四百円以内

 「想像したものを具現化する能力。」そこまではいいんだけど、最後の一文は一体何なんだ!?しかも四百円って!これは消費税込みなのか?

「四百円しか使えないなんて聞いてないぞ!」

「あぅ!?」

 思わず叫んでしまったよ。れいちゃんごめんね、驚かせちゃって。

 でも四百円って、遠足のおやつ代くらいじゃないか。金貨をガッポガッポ具現化しようかと思ってたのに、これじゃあ銅貨一枚も具現化できないじゃないか。

 待て、でも異世界の食材や物を取り寄せられるなら結構有用じゃないか?試しに缶コーヒーを具現化してみよう。

「おおっ!本当に出てきた!しかも冷たくなってる!マジで四百円分だけ取り寄せ可能なのか?」

「あうあう!」

 そうだよって言ってるような気がする。

 次はお菓子だ!シュークリーム、ポテトチップス、チョコレートなど色々あるな。よーし、片っ端からやってみようか。
 
***

 ダメだった。

 何度やってもお菓子が出来る気配がない。どうやら、この能力は本当に一日四百円までしか使えないみたいだ。

「はぁー」
「あぅぅ……」

 さすがに落ち込むわ。まさかこんな制限があるとは思わなかったよ。俺の手の内に残ったのは缶コーヒーのみか。なんだこのクソスキル。

 ごめんなぁ、れいちゃん。俺は心の中で謝りながら冷たい缶コーヒーを啜る。って、れいちゃんに朝ご飯を作らないと。

 そういえば転移前、コンビニで買ったプレミアム離乳食を持ってたはずなんだけど、それは一体どこに行ったんだか。

 インベントリーを漁ってみると、コンビニのレジ袋に入ったままの状態で見つかった。良かった。無くしたかと思った。

 きちんとプレミアム離乳食もあったし、早速ご飯を作っていこう。離乳食に水を入れて、粥状にしていく。

「はい、お待たせしました~」

「あぅあぅ~」

 れいちゃんが美味しそうにプレミアム離乳食を食べてる。それを眺めているだけで癒されるなぁ。

 最近の離乳食はすぐ出来るし、子供にとっても大満足の味だし。本当に便利な世の中になったな。そんなことを考えながら、俺も朝食を取ることにする。

 インベントリーに卵と牛乳が残っていたな。それで卵焼きでも作ってみようかな。部屋に備え付けられたキッチンへと向かう。

 まずフライパンを温めるために火属性魔法を使ってみる。イメージするのはガスコンロのような炎。すると目の前に小さな火が現れ、徐々に大きくなっていく。

 おお。初めて魔法を使ってみたけど、結構簡単にできたな。そのままフライパンを熱している間に、卵を割っていこう。

 いい感じに焼き色がついたらそのまま皿に盛り付ける。調味料はなさそうだからそのまま頂くしかなさそうだけどね。あとは牛乳をコップに注いで、完成だ。

 うん、普通に美味い。やっぱり自分で作る飯が一番美味いな。

 牛乳もがぶ飲みしてと。おっと、気づいたら全部食べ終わってたわ。

 よく考えたら、この牛乳って三日前のやつなのに腐ってないな。インベントリー内では時間が経過しないらしい。なら食材やら死体の保存に問題はなさそうだな。

「ごちそさま」

「あうぅ~!」

 れいちゃんも完食してくれたようだ。食器は今後も必要になるだろうし、宿のものを頂戴しておこうか。

 さあ、今日は何をしようかな。まあ、一泊分の金しか払ってないし、とりあえずギルドに行ってみようかな。

「れいちゃん、いくぞー」

「あぅ!」

***

「うーん、いい依頼がないな。」

「あぅ……」

 今の目標は白銀冒険者になること。白銀冒険者になるにはブイブイ言わせないといけないし、難易度が高い依頼を受けたいんだけどな。

『なぁなぁ、今日はダンジョン行こうぜぇ。』
『いいねぇ!そろそろ荒稼ぎしたいし。』

 背後で冒険者達の話し声が聞こえる。ふむ、ダンジョンか。ちょっと興味あるかも。

「れいちゃんどうかな?」

「あぅ?あー!」

 れいちゃんも賛成みたいだ。なら、今日はダンジョンに潜入決定だ。

***

 ダンジョンっていうのは秘密の魔境というより各都市の施設って感じらしい。ダンジョン自体は自然発生するが、その運営は各都市がやっていて、入場料をとる都市も少なくないと言う。ここ、王都レグリアももちろん入場料をとっている。

「おぉ、相当でかいな。」

「あぅ。」

 ダンジョンは地下に潜るイメージだったけど、ここは塔みたいな形状をしてるな。

「まあ、当たって砕けろだな。」

「あぅ!!」

「じゃあ、一回入ってみるか。」

「あぅあぅ!」

「受付はっと、あそこの列に並ぶのか。」

 並んでいる人の数は多いが、すぐに順番が来た。

「次の人、どうぞ。」

「はい、よろしくお願いします。」
「あぅ!」

「えっ、子供!?」

 受付の人、驚いてるな。まあそりゃあ、子連れがダンジョンに潜入するとは思わないわな。

「迷子ですかね?」

「いえ、ダンジョンに潜入しようと思ってるんですけど。」

「あぅ!」

「えっ?冒険……者?」

「あ、はい。親子揃ってですね、ハハッ。」

「じ、じゃあ、ギルドカードを拝見しますね……」

 れいちゃんと自分のギルドカードを受付の人に手渡す。

「ほ、ほんとに鉄ランク冒険者だ……」

 受付の人が絶句してる気がしたのだが、きっと気のせいだろうな。

「も、問題ないですかね?」

「は、はい。入場料銅貨一枚です。」

「銀貨一枚でお願いします。」

 銀貨一枚をきちんと手渡す。

「受け取りました。お釣りの銅貨九枚です。ご確認ください。」

 えっと、三、六、九枚と。お釣りはちょうどだな。

「ダンジョン内での怪我などの責任は負いませんので、ご武運を。」

「はい。」

「あぅ!」

 受付の人に見送られながら、俺たちは聳え立つダンジョンに足を踏み入れた。
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