22 / 40
第一章
増えた仲間
しおりを挟む
親にとって、子供は全てだ。俺だってれいちゃんが生まれる前は「子供なんてしょうもない」なんて思っていた。だけど今は違う。
れいちゃんは俺の生きがいだ。れいちゃんには幸福になってほしい。そんな思いを胸に俺は毎日を生きている。
そんな生きがいを失うなんて。しかも目の前で殺されたなんて。
俺なら絶対に耐えられない。
「辛いことを聞いて悪かった……」
「お前が謝る必要なんてない……あいつらが悪いんだ。だからこそ……私は復讐する。子を殺した奴らを皆殺しにするまで私は死ねない。」
彼女の目は本気だった。彼女の今の生きがいは復讐心。復讐心を原動力に彼女は今日も生きていた。そんな強固な決意を壊すことは俺にはできないし、しない。むしろ、俺は協力する。
「ねぇ店員さん、やっぱりこの奴隷買います。」
そう店員さんに話しかけると、顔を引き攣らせながら値段の精算を行ってくれた。
「こんなイカれ女を買うなんて、お客さんすごいですね。」
「いえいえ、この人そんなにイカれてませんよ。」
なぜだろうか、俺はこの女に深く共感していた。別に子を亡くした訳でもないのに、なぜか彼女と同様の深い怒りを感じていた。一人の親として俺に出来ることは、彼女の意志を尊重することだ。
彼女の怒りを冷ましてはならない。
「ハハッ、そうですか。言っときますけど、返品は受けつけてないですからね。」
「ハハッ、返品する気なんかないですから。」
「じゃあ代金はー金貨10枚ですね。」
おっと、金貨10枚は中々に高いな。払えない金額ではないけど、ちょっと懐が狭くなっちゃうな。こりゃ王都に戻ったらギルドからの依頼を増やさないと。
金貨10枚ちょうどを店員に支払うと、彼は独房の鍵を開けて女を外に出した。
「奴隷印を書き替えるのでちょっと待っててくださいね。」
店員はそう言うと、女の手の甲に描かれていた印を消し、新たに印を描いていく。複雑な円形の模様を描き終えると、店員は、
「あとは主人の血印をここに押せば完成です。」
奴隷印とは、奴隷契約の証明のようなもので、主人となる者の血印を押すと完成する。奴隷印が完成すると、奴隷は主人の命令に背けなくなり、命令違反時には容赦なく死が訪れるらしい。そしてもちろんこの印を取り消せるのは、主人のみ。
奴隷たちが脱獄しようとしないのは、この奴隷印があるからだったのか。脱獄しようとしたら即死亡。きっと『脱獄するな』とか言う命令をされていたのだろう。
俺は店員に渡された針で親指を挿し、女の手の甲に描かれた奴隷印に血印を押す。
すると奴隷印が突然発光し、どんどん赤黒い色に染まっていく。どうやら契約成立ってことみたいだな。
「これで契約完了ですね。」
クルシュ族の女はもっと奴隷契約を嫌がりそうだったけど、意外なことに従順だった。暴れたりしそうで心配だったけど、どうやら杞憂で終わったみたいだ。
それにしてもれいちゃんは良く気づいたな。
『れいちゃんの方がお前よりよっぽど周りを見てるな。』
うるさいな!てかお前は刀なんだから目ないだろ!神威だけには言われたくねぇよ。
まあそれはさておき、用も済んだし、ここはれいちゃんの教育に悪いからさっさと退散しますか。
「じゃあいくか。」
そう言って奴隷市の出口に向かおうとしたその時。
「……アグラだ。」
「え?」
「名前……アグラだ。」
クルシュ族の女は顔を赤らめてモジモジしながら、小声でそう呟いた。
「……ツンデレ?」
「ッー!だまれ!」
「あ、ごめん。」
晴れてツンデレ(?)のアグラさんが俺のパーティに参加することになったのだった。
れいちゃんは俺の生きがいだ。れいちゃんには幸福になってほしい。そんな思いを胸に俺は毎日を生きている。
そんな生きがいを失うなんて。しかも目の前で殺されたなんて。
俺なら絶対に耐えられない。
「辛いことを聞いて悪かった……」
「お前が謝る必要なんてない……あいつらが悪いんだ。だからこそ……私は復讐する。子を殺した奴らを皆殺しにするまで私は死ねない。」
彼女の目は本気だった。彼女の今の生きがいは復讐心。復讐心を原動力に彼女は今日も生きていた。そんな強固な決意を壊すことは俺にはできないし、しない。むしろ、俺は協力する。
「ねぇ店員さん、やっぱりこの奴隷買います。」
そう店員さんに話しかけると、顔を引き攣らせながら値段の精算を行ってくれた。
「こんなイカれ女を買うなんて、お客さんすごいですね。」
「いえいえ、この人そんなにイカれてませんよ。」
なぜだろうか、俺はこの女に深く共感していた。別に子を亡くした訳でもないのに、なぜか彼女と同様の深い怒りを感じていた。一人の親として俺に出来ることは、彼女の意志を尊重することだ。
彼女の怒りを冷ましてはならない。
「ハハッ、そうですか。言っときますけど、返品は受けつけてないですからね。」
「ハハッ、返品する気なんかないですから。」
「じゃあ代金はー金貨10枚ですね。」
おっと、金貨10枚は中々に高いな。払えない金額ではないけど、ちょっと懐が狭くなっちゃうな。こりゃ王都に戻ったらギルドからの依頼を増やさないと。
金貨10枚ちょうどを店員に支払うと、彼は独房の鍵を開けて女を外に出した。
「奴隷印を書き替えるのでちょっと待っててくださいね。」
店員はそう言うと、女の手の甲に描かれていた印を消し、新たに印を描いていく。複雑な円形の模様を描き終えると、店員は、
「あとは主人の血印をここに押せば完成です。」
奴隷印とは、奴隷契約の証明のようなもので、主人となる者の血印を押すと完成する。奴隷印が完成すると、奴隷は主人の命令に背けなくなり、命令違反時には容赦なく死が訪れるらしい。そしてもちろんこの印を取り消せるのは、主人のみ。
奴隷たちが脱獄しようとしないのは、この奴隷印があるからだったのか。脱獄しようとしたら即死亡。きっと『脱獄するな』とか言う命令をされていたのだろう。
俺は店員に渡された針で親指を挿し、女の手の甲に描かれた奴隷印に血印を押す。
すると奴隷印が突然発光し、どんどん赤黒い色に染まっていく。どうやら契約成立ってことみたいだな。
「これで契約完了ですね。」
クルシュ族の女はもっと奴隷契約を嫌がりそうだったけど、意外なことに従順だった。暴れたりしそうで心配だったけど、どうやら杞憂で終わったみたいだ。
それにしてもれいちゃんは良く気づいたな。
『れいちゃんの方がお前よりよっぽど周りを見てるな。』
うるさいな!てかお前は刀なんだから目ないだろ!神威だけには言われたくねぇよ。
まあそれはさておき、用も済んだし、ここはれいちゃんの教育に悪いからさっさと退散しますか。
「じゃあいくか。」
そう言って奴隷市の出口に向かおうとしたその時。
「……アグラだ。」
「え?」
「名前……アグラだ。」
クルシュ族の女は顔を赤らめてモジモジしながら、小声でそう呟いた。
「……ツンデレ?」
「ッー!だまれ!」
「あ、ごめん。」
晴れてツンデレ(?)のアグラさんが俺のパーティに参加することになったのだった。
121
あなたにおすすめの小説
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる