イクメンパパの異世界冒険譚〜異世界で育児は無理がある

或真

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第一章

帰路へ

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 無事仲間も増えたし、王都に戻ろうと奴隷市から出ると日はとっくのとうに沈んでいた。王都なら街灯があるからまだ明るいけど、奴隷市は郊外にあるからかなり暗い。

 この暗闇の中歩いて王都に帰るのはちょっと危ないよな。ギルドの職員さんが夜は色んな魔物が活発に動くって言ってたし、今日は野宿するしかなさそうだ。

 奴隷市場の建物内で一夜を過ごすということも出来るが、あんな悪意の塊みたいな空間にはもう居かねるから言語道断。本当に残念なことに、野宿をすることになりそうだ。

 そもそも俺自身、野宿にはかなり抵抗がある。なんと言っても、俺は圧倒的インドア派だからキャンプとかの経験もないし、正直言って野宿って怖い。

 寝てる時にそろりそろりと魔物が忍び寄って無防備のれいちゃんを丸呑みしたらと思うと、不安が絶えない。

 うわぁああ!

 本当に憂鬱だ。

「あぅー」

 れいちゃんも野宿を察したのか、随分憂鬱そうに喃語をする。俺も同じ気持ちだよ。アグラもこの真っ暗闇に対して、

「うわぁ……」

 と暗い声を上げる。

「これは野宿になりそうだな……」

「本当に勘弁だわ。独房から出て晴れて自由の美香と思いきやいきなり野宿かよ!何なら独房の方が快適だわ!」

 アグラはそう叫び怒り散らす。憂さ晴らしか、地面をドンドンと踏みつけている。

「まぁまぁ、そんな怒っても何も変わらないし、とりあえず火でも起こすか。」

 怒っているアグラを宥めるように俺はせっせと作業を急かす。この宥め方、これこそ大人の余裕ってやつだな。

 まあまあ、冗談はさておき何と言っても異世界は寒いんだ。予想以上に。

 特に昼と夜の寒暖差はひどい。昼間はまるで真夏のインドでダウンジャケットを数枚着込んでいるようなのに対して、夜はシベリアをパンツ一丁で徘徊しているような感覚だ。

 異世界の気候は日本人には酷なものなんだ。だから一刻も早く火を起こし暖をとる必要がある。

 という訳で薪を集めに場を離れようとした瞬間ー

「火起こしたぞ」

 背後のアグラからそんな声が聞こえてきた。

「え、早いな……」

 俺は驚きと動揺を隠せず、思わずそう声を漏らした。恐る恐る背後を向くと、確かに火は起こされていた。

 ただその火は少し妙だった。いや、明らかにおかしい。何と言っても、薪を全く使ってなく、炎が宙に浮いている感じなんだ。

「これ、どういうこと?」

「ん?お前知らないのか?」

 はい、知りません。こちとら異世界人なもんでね!

「はぁ、しょうがないから教えてやるよ!」

 アグラの話によると、この火はクルシュ族の特性らしい。クルシュ族は体の一部を炎に変えられるという特殊能力を持っているらしい。その特殊能力は体内から放出されたものにも適応されるという。つまり排泄物や息なども発火させることができるそうだ。

 まあフレイムウンコの使い道はわからんが、この炎の最も注目すべき特徴は、消えないということだ。

 もちろん水を大量に吹きかければ消える。ただ、風などの自然的要因によっては消えないという結構すごい炎らしい。

「ってことはこれはお前の息を発火させたのか?」

「ああ、まあそういうことだな。」

 幸運なことに暖の問題は結構早く解決したので、腹も減ったし、飯にすることにした。

 インベントリーの中を探ってると、転移する前に買った卵と牛乳を見つけた。インベントリー内では時間は経過しないみたいだし、腐ってるってことはないだろう。

 さて、卵と牛乳で何ができるかだな。火はあるが肝心の調理器具がない。

 困ったなーなんか便利なスキルがあったらなーって、あるじゃないの!心情創造者っていうスキルが!

 今日はれいちゃんの耳栓とアイマスク代(四百円くらい)しか使ってないから安いフライパンと菜箸くらいなら生成しても二千円以内に収まるな。

 ご飯を生成してもいいんだけど、1600円くらいじゃあ全員満足には食えないだろうし。

 という訳で早速生成していく。いきなり手中に現れたフライパンと箸にアグラは驚いた表情を見せたが無視無視。れいちゃんもそろそろ離乳食離れだからな、ちょっと固形っぽいものを作ってやろう。

 まあここで多分一番簡単なのは玉子焼きだな。あれは塩とかの調味料がなくても美味しいし、子供にも食べさせられると思う。というわけで早速卵液を作っていく。油がないからちょっと出来栄えは悪くなりそうだな。

 宿から奪ってきたボウルをインベントリーから出して卵液を混ぜていく。綺麗に混ぜ終えると、あらかじめアグラの火で熱しておいたフライパンに卵液を半分くらい流し込む。

 全体的に焼けてきたら、一度フライパンの奥の方に巻き返す。ただ、生成したフライパンは円形だから綺麗に巻き返すのが難しいな。

 半分残った卵液を再びフライパンの中に流し込み、焼けてきたら再び巻き返す。うん、いい感じだな。

 できた玉子焼きを皿に盛り付け、切り分けていく。同時にコップに牛乳を人数分注いで、完成だ。

 デザートにはスライムのムニムニもあるし、これならどうにか腹が膨れそうだな。

「飯できたぞ。」

「お、お前料理できるのか……」

「まあ一応親だし?」

「あぅ!」

「さあ、冷める前に食うぞ。」

 腹が随分減っていたのか、俺たちは皆ホクホクの玉子焼きを一心不乱に食べ始めた。
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