異世界転移した俺の、美味しい異世界生活

yahagi

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アラブレヒトvs.リカルド

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 翌朝の目覚めは爽快だった。
 ちょっと腰が痛いけど、気にしない。
 朝食のうどんを茹でて、スープに入れる。
 リカルドの分はお肉たっぷり。

「お待たせ、肉うどんだよ」

 俺もリカルドの隣に座って、うどんをすする。
 うん、美味しい。
 出汁の味ってほっとするよね。

「美味い。うどんも屋台やってんのか?」

「うん。うどんと焼きうどんと天ぷらそばと、焼きそばの屋台をやってる。あとはパスタ」

「へえ。ハヤトが仕事の時に回ってみるかな。新しい食いもんはそれだけで楽しみだぜ」

 リカルドは美味しそうに肉うどんを食べた。
 新しい食べ物が好きなリカルドに、色んなものを食べさせたい。
 俺は頬を緩めて、うどんをすするのだった。

 後片付けを済ませて、家を出る。
 目指すは紳士の遊び場。
 アラブレヒトが待っている。

 裏路地を抜けて二階へ入る。
 入り口に近いテーブルでは賭事をしているらしく、異様な雰囲気だ。
 そこに支配人がやってきた。

「ようこそ、リカルド様。アラブレヒト様がお待ちです」

 奥のレーンを見ると、アラブレヒトがいた。

「おはよう、ハヤト、リカルド。今日は良い勝負をしよう」

「望むところだ。言っておくぜ、俺が勝つ!」

「戦いじゃ敵わないけど、ボウリングなら負けないよ!」

 リカルドは鉄球を持って、レーンに立った。

「初手は譲ってやる。その自信の程を、見せてみろ」

 アラブレヒトは頷いて、鉄球を持つと、華麗なフォームで鉄球を投げた。

 ガコンガコーン!
 球は勢いはないが、真っ直ぐヒット!
 ストライクだ。

 次はリカルドが投げる。
 勢いのある球が、真っ直ぐピンを弾き飛ばし……ストライク!

 次もアラブレヒトはストライクだ。
 リカルドも真剣だ。
 綺麗なフォームで鉄球を投げて、ストライク!
 熾烈なバトルが繰り広げられる横のレーンでは、普通にガターが出ている。
 あの二人だけ特別なのだ。

「あっ」

 アラブレヒトが一本残した。
 それを刈り取り、スペア。

 次もリカルドはストライク。
 
 その後もストライクが出続け、11回目、リカルドの球が左にズレた。
 一本残った。
 これを丁寧に倒し、スペア。
 これで同点である。
 最後の12回目、アラブレヒトはストライク。
 リカルドもストライクだった。

「おいおい、同点だぜ!」

「アラブレヒトと同点だ!」

「リカルドさん、勝って下さい!」

 ギャラリーは白熱している。
 休憩を挟み、第二ゲーム。

 集中した二人は、連続でストライクを出し続けた。
 12回目、渾身の球を投げたアラブレヒト。
 球はまっすぐピンを弾き飛ばし、ストライク。
 リカルドもストライクだ!

「二人とも凄い! パーフェクトだ!」

「ありがとう、ハヤト。こんなに燃える対戦はないよ。リカルド、流石に強敵だ。是非、打ち倒したい!」

「それはこっちの台詞だぜ。こんな強敵がいるとは、やはり侮れねえぜ。アラブレヒト、もう1ゲームだ!」

 二人は謎のアイコンタクトを交わし、鉄球を持った。

 俺は隣のレーンのおっちゃんに挑ませてもらう事にした。
 俺もボウリングやりたくなったのである。

 おっちゃんはあんまり上手ではなく、俺もあんまり上手じゃない。
 お互い二回ずつ投げて、スペアがたまに出ると大喜びする。
 そんな程度だ。
 12回目、俺はスペアを取っておっちゃんに勝った。

「兄ちゃん、なかなかやるなぁ! 俺は毎日来てるんだが、なかなかうまくならねえのよ」

 おっちゃんはフレンドリーに、次の挑戦者を募集している。
 さて、どうなったかな?

 支配人に聞いてみたところ、第三ゲームはアラブレヒトがひとつスペアを出して負け。
 今は第四ゲーム、両者ずっとストライクだそうだ。

 やがて12回目、アラブレヒトはストライク。
 リカルドはスペアだった。
 第四ゲームは、リカルドの負け。

「当然午後もやるよね?」

「当然だ。今の所同点だからな。負けやしねえぜ!」

「こちらこそ。じゃあ、また後でね、ハヤト、リカルド」

 アラブレヒトも食事に行くのだろう。
 リカルドが俺を抱き締める。

「ホルモン屋に連れて行ってくれるんだろ。行こうぜ」

「うん!」

 リカルドは汗ひとつかいておらず、飄々としている。
 さすがAランク冒険者だな。
 鍛え方が根本から違うのだろう。

 ホルモン屋エールに到着すると、良い香りがしてきた。

「へえ、高級感あるじゃねえの。入ろうぜ」

 リカルドと二人で中に入る。
 店はちょっと混んでいて、手前の席に案内された。
 二人でメニューを見ながら、鍋は必要だよね、と話す。

「ハヤトは鍋、普通のとピリ辛とどっちが良い?」

「じゃあ、ピリ辛で」

「了解。じゃあピリ辛もつ鍋を二人前と、味噌炒め定食とエール」

「俺は味噌煮込み定食とエール」

「かしこまりました」

 店員はエールと卓上コンロを置いて去っていく。

「良い匂いだな。腹が減ったぜ」

「リカルドがパーフェクト出したときは驚いちゃったよ。本当に凄いよ」

「ってことは、アラブレヒトも相当凄いんだろう。町人で俺とやりあえるんだからな」

 リカルドはアラブレヒトの凄さをちゃんとわかってる。
 真剣勝負だ。
 俺が言わずとも伝わるものはあるんだろう。

「ま、俺が勝つけどな。じゃあ、今日の勝利に、乾杯」

「乾杯」

 自信ありげなリカルドも格好良い。
 俺はエールをぐっと飲んで、ぺろりと泡を舐めた。

「お待たせいたしました」

 ぐつぐつ煮えるピリ辛もつ鍋が卓上に置かれる。
 次いで味噌炒め定食と味噌煮込み定食が配膳された。

「俺、エールおかわりで」

「かしこまりました」

 リカルドはエールを受け取ると、まずもつ鍋を取り分けた。
 俺にも取り分けてくれる。優しい。
 
「頂きます……うん、ぷりぷりでうめえな。ホルモンってこんなにうめえのか」

「頂きます。美味しいよね。俺、鍋も炒め物も煮物も好きでさ。肉屋が内臓余ってるっていうから、この店を作ったんだ」

「ハヤトは優しいな。おっとそうだ、王都の方は海が近くて、漁船もいっぱい出てる。デカい魚もいっぱい捕れるし、魚や貝、魔獣まで色々だ」

「ふんふん。王都って凄く都会なんだよね。海が近いなんて羨ましいな」

「そこでな、タラって魚が滅法捕れるんだが、その腹にいるタラコが余ってしょうがねえって嘆いててな」

「えーっ。唐辛子と漬けて辛子明太子にして食べたらすっごく美味しいのに。余るなんてもったいない!」

「やっぱり何か思い付くのか。俺が嫁に聞いといてやるって、約束してあるんだよ。唐辛子と漬けりゃあいいのか」

「うん! 辛さは何種類か作ったらいいと思う。これから冬だし、近隣には売れるんじゃないかな。あと、お米の炊き方も教えてあげるといいよ。バケットにも合わなくはないけど、やっぱり白いご飯のおかずにピッタリだからさ」

「へえ。しっかり覚えておくよ。他にも何個か頼まれてるんだ。後で聞いてくれ」

「うん。お鍋、〆のうどんを入れるね」

 俺はうどんを入れてぐつぐつ煮込んだ。
 たくあんを食べて、エールを飲む。

「俺もエールおかわり!」

 すかさず持ってきてくれたエールをぐっと飲んで、ご飯を食べる。
 辛子明太子、食べたいなあ。
 海の魚って何がいるんだろう。
 ワクワクしちゃう。

 リカルドと〆のうどんを食べて、店を出た。
 紳士の遊び場へ向かう足取りは軽い。
 リカルドはライバルを見つけたのかもしれないな。

 俺は途中でチョコレート屋ピスタチオに寄り、大きなオペラを買った。
 ボーリングを見ながら食べるのだ。
 太陽は二つ輝いている。
 しかし吹き抜ける風は冷たい。
 確実に冬が近づいていた。
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