異世界転移した俺の、美味しい異世界生活

yahagi

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屋台と騎士団長

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 ちょっと腰が痛い翌朝。
 昨夜リカルドは六発もヤった。
 そのリカルドは上機嫌で朝食を食べている。

 今朝はオムレツとトマトサラダと、バタートースト。
 俺はアラブレヒトからの伝言を伝えた。
 
「紳士の遊び場で待つ、かぁ。燃えるぜ。アラブレヒト以外の猛者もいるんだろうな」

「いるって聞いているよ。俺は明日のボウリング大会、リカルドが優勝するって、信じてるから!」

「おう、任せとけ。必ず優勝してやる」

 俺もバタートーストをザクッと食べながら、精一杯リカルドにエールを送った。

 朝食後は、後片付けをして、別々の場所へ向かう。
 でも昨日の今日だからといって、支店まで送ってくれた。

「俺のハヤトを襲おうなんざ、許せねえからな。先に騎士団に寄ってから紳士の遊び場へ向かう。普通は職を追われる事になるが、治癒持ちは重宝されるからな。そこまでいけねえと思う」

「俺は、俺のことを諦めてくれて、反省してくれればいいよ。あんまり無理しなくて良いからね」

「そうだな。まずはそこからだ」

 リカルドは俺を支店に送り届けると、チュッとキスをして歩いていった。
 リカルド、格好良いなぁ。
 分厚い胸板に引き締まった腹筋、くびれた腰に、がっしりとした両足。
 顔は俺が大好きなたれ目顔。
 明日のボウリング大会では、脚光を浴びるだろうから、今から覚悟しとこう。

 出社して、メリッサさんと次の屋台について話し合う。

「私は餃子が一押しよ。あれはすごく美味しいし、作り置きも出来るでしょ。屋台をやるべきよ」

「良いですね。あっ、メリッサさん、天命鳥って知ってますか?」

「知ってるわ。頭が発光する珍しい鳥で、食べれば寿命が伸びると言われているわ。すっごく美味しいんですって」

「俺、昨日の帰りにその天命鳥を拾ったんですよ。怪我をしてたんで、騎士に預けたんですけど、その騎士が家まで送ってくれて。そのまま犯されそうになったんです」

「な、なんですって!?」

「リカルドが丁度帰ってきたんで助かったんですけど、危なかったんですよ。騎士様だから大丈夫だと思っていて」

「旦那さん、帰ってきたのね。ほっとしたわ。そんな騎士様は珍しいわね。よく騎士をやっているわね、その人」

 メリッサさんはぷりぷり怒っている。
 俺は心配して貰えて嬉しくて、昨日の怖さが霧散していく。

「リカルドが、騎士の知り合いに話してくれるって。俺の旦那様が頼もしくて、俺は幸せですよ」

「あら、御馳走様。何かあったら言って頂戴ね。力になるわ」

「ありがとうございます、メリッサさん」

 それから会議は進み、餃子の他にも屋台を出すべきじゃないかという話になった。

「汁気がある食べ物で、ロールキャベツはどうでしょう? 目新しさはあると思うんだけど、餃子と似てるかな?」

「食べてみなくちゃわからないわ。今日の昼食に作ってくれる? ハヤト」

「了解です」

 俺はキッチンに入り、手を洗った。
 まずキャベツの芯をくり抜き、一枚ずつ剥がす。
 鍋にたっぷりの湯を沸かして、塩を混ぜる。
 キャベツを鍋に落として箸で軽く押さえ、2~3分ゆでる。

 肉だねはひき肉、玉ねぎのみじん切り、パン粉、卵、塩、こしょうを合わせるだけ。
 肉だねが出来たら、キャベツで包む。
 すべて巻き終えたら、鍋やフライパンなど2つくらいに分けて、できるだけ隙間がない状態で詰めておく。
 だし汁、醤油、みりんを別容器で混ぜ合わせてから、それぞれの鍋のロールキャベツが浸かるよう、そそぎ入れる。
 鍋を中火にかけ、沸いたら落とし蓋をして火を少し弱める。
 その状態で煮る時間は45分~1時間ほど、じっくりキャベツが柔らかくなるまで煮る。

「さあ、完成だ。ロールキャベツなんて、久し振りだな」

 俺は帰ってきたアラブレヒトから順に配膳した。

「今日はロールキャベツだよ。屋台で出すべきかどうか、審査をお願いします」

「頂きます。……うん、キャベツが柔らかくて、中の肉も美味しいね。中々目新しくて良いね」

 アラブレヒトは付け合わせのケチャップをたっぷりかけて食べた。

「これは飯が進む味だぜ。屋台、やればいいんじゃねえの?」

「出汁が染みてて美味しいわ。ケチャップをつけても美味ね」

「これは屋台にしてもいいと思うよ。美味しいし目新しいね」

 皆の評価は良好だ。
 俺はロールキャベツも屋台にする事にした。

「そうだ、ハヤト。リカルドは何か忙しいのかい? 朝、顔を見せたっきり、来ないんだよ」

 そこで俺は、天命鳥の話をした。
 俺が襲われたくだりで、アラブレヒトは眉をしかめた。

「そんな事があったのかい。それなら仕方ないね。何より大事なのはハヤトの安全だ」

 リカルドは全然練習出来てないんじゃないかな。
 俺は心配になりながらも、仕事に戻った。

 鐘3つが鳴った。
 おやつ時だ。
 その時丁度、歌が聞こえてきた。

「おいしい~クレープはいかがですか~。おいしいクレープ~、木イチゴ味とチョコ味が選べます~。おいしいクレープ~はいかがですか~」

 俺はお財布を持って外へ出た。
 そこそこお客さんが集まっていたので、最後まで待つ。

「チョコ味12個頼むよ」

「オーナー! 丁度良かった。クレープは絶好調に売れてるんですよ。やっぱり住宅街を回るのがいいみたいです」

「それは良かった」

 店主はクレープにチョコレートソースを塗り、くるくると巻いた。

「お得意様のお嬢様が、違う菓子も食べたいと仰せで。ほとほと困っているんですよ。こんな風に歩き回る屋台を増やして貰えませんかね?」

「わかった。増やせるように考えるよ。お得意様には、もう少し待って貰って」

「わかりました。宜しく頼みます」

 俺は支店に戻り、皆にクレープを配った。
 屋台を増やす話をすると、賛成された。

「石焼き芋も、クレープも美味いし、いっそいくつかまとめて屋台を始めちまったらどうだ?」

「甘いもんは男も好きだぜ。肉はもっと好きだけどな!」

「じゃあ、鈴カステラと、肉まんとあんまんとピザまんをやろうかな」

 屋台の予定が目白押しだ。
 餃子とロールキャベツの屋台もあるし、順番にやっていこう。

 俺がまず商業ギルドに行こうかと考えていると、来客があった。

「旦那様と騎士団長がいらしてるわ」

「今、行く!」

 応接室に入り、お茶に口をつける。
 騎士団長は、短く刈り上げた銀髪に、落ち着いたブルーグレーの瞳をしていた。
 まさに騎士団長って感じで格好良い。
 すると、騎士団長がガバッと頭を下げた。
 
「この度の不始末、誠に申し訳ない!」

「はい……」

「ケインは治癒持ちの為、罰金刑と謹慎を命じるのが精一杯だった。だが、再発防止の為、注意喚起はしていく。誠に申し訳ない!」

「本人は、俺を襲おうとした事を認めたんですか?」

「ああ。ケインは君に惚れたそうで、ペラペラと喋ってくれたよ。だが、強姦未遂だけでは、ここまで出来なかった。丁度ケインの被害者が詰め所に駆け込んで来てね。その彼については詳細を伏せるけれども、かなりひどい扱いを受けていた」

「そうだったんですか……」

「証拠も持って来たのが大きかった。ケインはこれから昇進も出来ないし、場合によってはその彼と結婚することになる。あまり良い言葉ではないが、ざまあみろ! と言ったところだ」

「俺のことを追いかけたりしないなら、それでいいです。わざわざ謝罪に来てくれて、ありがとうございます」

 騎士団長は引き締めた顔をほんの少し緩めて笑った。

「お礼が遅くなったが、天命鳥を助けてくれてありがとう。あの鳥はある貴族のペットでね。どうしても見つけ出さねばならなかった。本当にありがとう」

「どう致しまして」

 リカルドは騎士団長の横で静かに話を聞いていた。
 リカルドはニッコリ笑うと、騎士団長の肩に腕を回した。

「ルナウドはおっかねえ騎士団長様だ。ケインみてえな軟弱な小悪党は、これから地獄を見るだろうぜ。これで解決だ。良かったな、ハヤト」

 俺は輝くような笑顔で頷きを返し、立ち上がったリカルドにギュッと抱き付いた。

「あのリカルドが結婚したと聞いて、いささか驚いたものだが、仲が良いのだな」

「へへん。まあな。幸せでいっぱいだぜ。ルナウドはまだ結婚しねえのか?」

「俺は貴族だが、男性と結婚したくてね。武勲を上げて、父に結婚を認めさせたい。だが、中々俺は出撃許可が出なくてね。先日のブラックタイガーだって、リカルド達冒険者が行くからと、ストップがかかった」

 騎士団長は腕を組み、ふうとため息をついた。

「騎士団は町を守らねえといけねえからな。なかなかルナウドが出撃するような大惨事は起こらねえよ」

「……そうだな。平和であることを喜ぶべきでもある。リカルド達がブラックタイガーを倒してくれて、本当に助かったよ」

「何かデカい獲物の時は声をかけるよ。それまで婚約者と仲良くな」

「わかった。では、これで失礼する」

 騎士団長はすっと立って、出て行った。
 リカルドは俺をギュッと抱き締めて、出て行った。

「夜、迎えに来る。飯は食ってていいぞ」

「わかった」

 これからボウリングの練習かな?
 ちょっと時間が足りなそうだ。
 今日は9時まで紳士の遊び場かな。

 俺は鞄を持って外に出ると、冷たい風に吹きつかれ、一度戻ってジャケットを着た。
 もう冬はすぐそこだ。
 行き交う人も暖かい格好をしている。
 俺はまだ吐息が白くならない事を確認すると、歩を進めた。
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