異世界転移した俺の、美味しい異世界生活

yahagi

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第1回競いハヌーン大会

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 競いハヌーン当日。
 会場には多数の人が詰め掛け、凄い熱気だ。
 俺はアラブレヒトと一緒に人を掻き分け、VIP席に向かっていた。
 
「あっ、ポップコーンとエールを買っていこうよ。試作を俺も食べたけれど、独特の食感と塩味で、本当に美味しかった」

「うん、並ぼうか。それにしても人が多いね。開始は鐘10なのに、もう長蛇の列が出来ているよ」

 賭け窓口は5つもあるのに、フル稼働だ。
 それでも行列が出来ている。

「VIP席は係員が聞きに来てくれるから気楽だね」

 今日は貴族も見にくると聞いている。
 俺は快晴に晴れた空を見つめ、今日の競いハヌーンの成功を願った。

「え~予想はいりやせんか~予想売るよ~。ハヌーンや選手の様子も載ってるよ~」

 アラブレヒトは早速予想も買っていた。
 そこで順番がきて、無事ポップコーンとエールも買えた。

 VIP席に入り、席に着く。
 早速ポップコーンを頬張っていると、アラブレヒトが予想を読んでううむ、と唸った。

「騎士団長は最有力。後は冒険者も結構やるみたいだね。テスト走行で勝ったブラウンと、もう一人、ミダルも結構調子が良さそうだ」

 俺も予想を読ませて貰った。
 ハヌーンの調子はどうかと思ったら、2番と6番のハヌーンの調子が特別良いらしい。
 2番は騎士団のヨーデル、6番は冒険者のミダルが乗るハヌーンだ。

 しばらくして、貴族が入ってきた。
 黒の礼服でピシッと決めた町長とハインケルは流石の貫禄だ。
 奥方らしき貴婦人もおり、美しいドレスを身にまとっている。
 しゃなりしゃなりと歩いて着席した貴婦人は、優雅に紅茶を飲んでいた。

 その他にも数名貴族の紳士がおり、皆最前列に着席する。
 俺達はその後ろだが、十分よく見える。
 侍従らしき使用人がポップコーンを配り、後方に下がる。
 そして、賭け窓口の担当者がやってきた。

「まもなく開会式が始まります。町長様のお言葉を頂いた後、第1レースです。走者は、端から1番ルナウド騎士団長、2番ヨーデル、3番クルーラー、4番ブラウン、5番エプリコット、6番ミダル。どなたかにお賭けになりますか?」

 貴族は次々に賭けていった。
 金貨が大量に賭けられ、胸がドキドキしてくる。

「俺は騎士団長とミダルに金貨10枚ずつ。ハヤトは?」

「俺は騎士団長に金貨6枚。アラブレヒトはなかなか飛ばすね」

「これは小手調べさ。いやあ、胸が踊るね」

 俺はリカルドのお金、金貨5枚と自分の分を金貨1枚で、合計金貨6枚。
 金貨を賭けるだけでもドキドキするのに、アラブレヒトは凄いな。

 賭け窓口の担当者は一礼して去っていった。
 町長が拡声器を使って開会の挨拶をする。
 しかし、長い。
 ありがたいお話って、どうしてこう長いんだろう。

「……以上により、第一回競いハヌーン大会を開催する! 怪我のないようにやってくれ!」

 パチパチパチパチ!
 会場からは拍手の音が溢れ、口笛も聞こえてくる。
 オーケストラが演奏され、選手入場だ。
 どの走者も強そうだし、キリッとしている。

「騎士団長~、勝ってくれ~! 負けたら昼飯代がねえっ」

「ミダルー! 頑張って勝て! 冒険者の星!」

「クルーラー、大穴のお前に賭けたぞー! 勝ってくれー!」

 走者達はヤジを飛ばされながら、手を振って入場した。
 ずらりと並んだハヌーンに跨がり、スタートを待ちわびる。

「さあ、始まりました。第一回競いハヌーン大会。司会は私タパスと、相方ジャーニーでお送りいたします!」

「選手入場が完了致しました。さあ、スタートの鐘が鳴ります。鳴った、鳴りました! 一番に躍り出たのは、4番ブラウン、さあ、一周目です」

 実況を聞きながら、レースを見守る。
 今は4、5、3、2、1、6。
 騎士団長とミダルは体力温存していると思われる。
 俺はポップコーンを頬張りながら、二周目を見守った。

「おおっと、5番エプリコット、前に出た! 現在1位です。おおっと4番ブラウン抜き返す! 3番クルーラー、2番ヨーデルも前に出た! 現在の1位は……3番クルーラー!」

「3周目に入ります。このまま3番クルーラーが逃げきれるか、見物ですね。3番クルーラー全力疾走だ! 早い早い! 2位以下をぐっと突き放しました!」

 実況は場を盛り上がらせ、観覧席の人々もぐっと身を乗り出す。
 楽団の勇壮な曲が走者を後押しする。
 さあ、3周目後半戦だ!

「後残り半周となりました! 4番ブラウン前に出た! 後ろから追い抜いてくる影がやってくる! 1番ルナウド騎士団長だーっ!」

「1番ルナウド騎士団長、物凄い速さです! 6番ミダルもそれに続く! 3位に4番ブラウンが後を追う! あと100メートル、行けえええ! 1番ルナウド騎士団長が勝利です!」

 VIPルームは喜びに湧いた。
 ルナウド騎士団長に賭けてない人は多分いない。
 お金は3倍になって返ってきた。

「ふむ、これは面白い。騎士団長はわかりやすく強そうだが、他の走者も勝てる要素を秘めているね。こんなに簡単にお金を増やせてしまうなんて、つい競いハヌーンにハマってしまいそうだ」

「あらあなた、私もこの競技を気に入ったわ。わたくしも連れてきて下さいまし。それにしても、午前中はあと2レースもあるんでしょう? ハヌーンが疲れてしまわないかしら」

「そうだね、エリーヌ。騎士団長は強いけれど、流石に全勝は無理だ。騎士団長は午後も走る。どれかのレースは諦めないといけないだろうね」

「6番ミダルと4番ブラウンにも賭けましょう。うふふ、うちでも走者を鍛えて出場させましょうよ」

 貴婦人はたおやかに笑い、ポップコーンをついばんだ。
 貴族たちの話によると、経歴不問で競いハヌーンの走者を募集し始めたらしい。
 それと競いスケートの話題もチラッと出た。
 こっちの走者も募集するそうだ。

 雑談をしているうちに第2レースの時間になった。
 皆思い思いの走者に賭けてゆき、俺も儲けた分気前よく金貨20枚賭けた。
 アラブレヒトは1番、6番に金貨20枚ずつ。
 どんどん金額が上がっていく。

「さあ、第2レース始まるよーっ! 開始の鐘が鳴った! 駆け出して来たのは2番ヨーデル! 次いで5番エプリコットが2位をひた走る! この両名は先程のレースで5位と6位。これは期待できるか?!」

「6番ミダルが3位につけている! その次に4番ブラウン。1番ルナウド騎士団長は6位だぁっ!」

「先程の1番ルナウド騎士団長の勝利は見事でした。第2レース、騎士団長に賭けた人も多いんじゃないでしょうか。今回も最後に抜いて1位を飾るのか、大注目です!」

 実況が煽る中、ハヌーンは凄い速度で走っていく。
 俺は2周目に入ったレースにぐっと身を乗り出した。

「4番ブラウン、凄い速度です! さて2周目に入りました。1位4番ブラウン、2位6番ミダル、3位5番エプリコット! このまま走りきるのか、どうなのか!?」

「全速力で走らせるとハヌーンも疲弊しますからね。どこでハヌーンを休ませるかも大事になってきます。このレースは捨てて温存して、次のレースで突き放すという戦略も取れますね」

 実況に夢中になっていると、侍従がさっと動いて伝言を聞いた。
 それをハインケルに伝え、侍従は下がった。

「アラブレヒト、ハヤト。外の屋台はほとんど売り切れたそうだ。仕込み直しに戻った屋台も多いと聞く。とりあえず呼べるだけ全部の屋台を集めて貰えるか?」

「わかったよ。俺が屋台をかき集めてくる。アラブレヒト、第3ゲームも金貨30枚、騎士団長に賭けておいて。これ、お金。じゃあ、行ってくる!」

 俺はVIP席を飛び出し、町まで早足で歩いた。
 四方八方人混みに押されて、なかなか進めない。
 寒いはずなのに凄い熱気で、皆レースに夢中だ。
 俺は楽団の高らかなラッパの音を聞きながら、町へと急いだ。

 途中、移動販売の石焼き芋の店主と行きあった。

「オーナー! クレープと肉まんも鈴カステラも、あっちゅうまに品切れです。今仕込みに戻っています。俺は芋をたっぷり積んで戻る所なんですよ」

「そうか。俺は他の屋台もかき集めてくる。何というか、凄い人の勢いだ。しばらくはこの熱気が続くだろう」

「競いハヌーン、俺も第1ゲーム賭けて勝ちましたよ。へっへっへ、第2ゲームも騎士団長に賭けたんすよ。面白くって、ヤバいですね」

 俺は店主と別れて、町に入った。
 どこか閑散としている街並みを眺めつつ、屋台を回る。
 店主達は移動することを快諾してくれて、移動を開始する。
 俺は最後にロールキャベツの屋台に話をつけた。
 これで全部だな。
 
 俺はまた来た道を戻り、人混みをかき分けて歩く。
 もう第3ゲームも終わって、払い戻しの時間のようだ。

 俺はVIP席に入って、屋台の移動を指示出来たとアラブレヒトとハインケルに報告した。

「ご苦労だったね。今は昼休みだから、お昼を楽しむといいよ」

 ハインケルは優雅にホットドッグを食べていた。
 アラブレヒトは俺の分のホットドッグとエールを差し出した。

「第2ゲームは1番ルナウド騎士団長の勝ち。お金は2倍になって返ってきたよ。第3ゲームは、6番ミダルの勝ち。お金は4倍になって返ってきたよ。ハヤトは残念だったね」

「アラブレヒトは全勝かい? 流石だね」

「トータルでいうと、儲かっているね。まあ、初日くらいは大盤振る舞いしたっていいさ」

 アラブレヒトはにこやかにホットドッグを食べた。
 にこにこしているし、上機嫌だ。
 俺は次のゲームの予想を聞いてみた。

「次は走者が大規模に入れ替わる。1番ルナウド騎士団長、2番キース、3番ウェイト、4番ブラウン、5番ガリウス、6番ミダル。ハヌーンは変えていないから、疲労はたまっていると思うよ」

「俺はリカルドにも頼まれているし、また騎士団長に賭けるよ。アラブレヒトは?」

「俺は1番、3番、5番かな。新しい走者にも注目したい。ふふふ、金貨50枚ずつ賭けるよ」

「ええっ!」

 貴族だって30枚ずつ程度なのに、アラブレヒトは余裕の表情で微笑んだ。

 昼食の時間が終わり、午後の部が始まった。
 選手入場からヤジが飛びまくり、凄い騒ぎである。

「騎士団長ー! 勝てーっ!」

「キース、応援してるぞーっ!」

「ミダル、二連勝を狙っていけ! 頼むぞ!」

 やがて始まった第4レースは、3番ウェイトが勝った。
 すると、貴婦人が堪えきれないように立ち上がった。

「わたくし、次のレース、ルナウド騎士団長に金貨100枚賭けますわ。ルナウドもエガリーテ家の血を継ぐ者。きっと期待に応えてくれますわ」

「では、私も同額賭けよう」

「私も」

「私も」

「俺も金貨100枚賭ける。ハヤトは?」

「俺は金貨50枚賭けるよ」

 賭け窓口の担当者は金貨を背負って出て行った。
 さあ、結果はいかに。
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