異世界転移した俺の、美味しい異世界生活

yahagi

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もち米発見

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 翌日、支店に出社した俺は、リカルドが走者として出るとアラブレヒトに伝えた。
 アラブレヒトは大量の金貨が入った鞄を持ち、競いハヌーンに出掛けていった。

「社長、やる気ね。私も休みの日にリカルドに賭けようかしら」

 メリッサさんは書類を読みながらそう言っていた。
 俺はメリッサさんの手伝いだ。
 俺は書類を綴じながら、リカルドの勝利を祈った。

 お昼ご飯は、ドリアだった。
 きのこがたっぷりで、すごくおいしかった。

 午後からも、俺はメリッサさんの手伝いだ。
 ひたすら書類を綴じながら、今日のおやつは大学芋にしようと考える。
 良さげな時間にキッチンに入り、さつまいもを一口大に切る。
 俺は鼻歌を歌いながら、調理を続けた。

 鐘3つ、大学芋を配膳していると、皆がやってきた。
 
「今日のおやつは大学芋です。温かいうちにどうぞ」

 皆、フォークで食べ始める。
 美味しそうな表情に、俺は頬を緩めた。

「今日から旦那が競いハヌーンに出てるんだろ。ハヤトは気になっちまうよなぁ」

「俺、明日休みだから賭けてきてやるよ。社長に貰ったボーナスの金貨30枚は手をつけてねえからな」

「競いスケートの方にも出るんだろ? 楽しみだな、ハヤト」

 俺は笑顔で頷いて、大学芋を食べた。
 リカルドは勝つ男だ。
 きっとアラブレヒトも儲けているに違いない。

 食後は後片付けして、メリッサさんの手伝いだ。
 俺は真剣に書類を綴じた。

 鐘4つを過ぎた頃、アラブレヒトが帰ってきた。
 重そうな鞄はパンパンだ。

「リカルドは6レース中5レースで勝った。圧巻の強さだったよ」

「リカルド、凄い! 騎士団長もいるのに、よく勝ったね」

「騎士団長とは接戦だったよ。どっちが勝ってもおかしくなかった」

「アラブレヒトは勿論勝ってきたんだよね」

「勿論さ。金貨5000枚以上稼いできたよ」

 アラブレヒトはメリッサさんの入れたお茶に口をつけた。

「ところで、明日第三王子一行が到着するそうだ。ハヤトも呼ばれる可能性があるから、礼服を着てきてね。何もないといいんだけど、オセロもボウリングもそろそろだろ? 発案者は全部ハヤトだからさ。気になるよね」

「わかったよ、アラブレヒト。準備だけはしておくよ。何かあれば、遠慮なく言ってくれ」

「ありがとう、ハヤト。第三王子一行は明後日競いハヌーンを見に行く予定だよ。その翌日に競いスケートを見に行って、その翌日はオセロ大会にも参加される。ボウリング大会は月末だから、それまで滞在なさるかどうかだな」

「王子様はオセロ強いのかな。アラブレヒトも出るよね。リカルドも出るし、楽しみだね」

 居間の机に卓上コンロを置き、メリッサさんが鍋を置いた。
 今夜はあんこう鍋のようである。

「居酒屋の店主が、一匹おすそ分けしてくれたの。皆で食べましょう。今ご飯を持ってくるわ」

 ぐつぐつ煮えるあんこう鍋はいい香りがしている。
 俺達は器に取り分け、食べ始めた。

「うまいっ、身がぷるぷるだ。スープもうめえ」

「濃厚なのにごくごく飲めちゃう。味噌の風味と肝がたまらないわね」

「ああ、美味い。染み入るような味だね」

 本当に美味しい。
 俺達は冬のご馳走を余すことなく堪能した。

 食後は、家に帰る。
 外は雪がちらついており、結構寒い。
 俺はコートを着込んで家路を歩いた。

 明かりのついた部屋に帰ると、リカルドが出迎えてくれた。

「よぉ、おかえり。レースはほとんど勝ったぜ。流石に全勝とはいかなかったが、満足だ。ハヌーンが疲れちまうから、全勝は難しいな」

「十分凄いよ。アラブレヒトが金貨5000枚以上稼いでいたよ。お疲れ様。ご飯は食べた?」

「おう。今日はスペアリブの美味い店に行ってきた。たらふく肉を食ったから、満腹だぜ」

「そうそう、明日第三王子一行が到着するんだって。明後日に競いハヌーン、翌日に競いスケート、翌日にオセロ大会に参加予定だって」

「おう、わかった。オセロ大会は俺も出るから、休みを貰うわ。月末はボウリング大会だしな」

「イベントが目白押しだね。よいしょっと。こたつ布団をかけて、座布団を用意して、机にみかんを置く。よし、コタツが出来たよ。こっち来て座ってみて」

「どれどれ……。あったけえな。足がぬくい」

「一応、横になることも出来るよ。後はお餅があるといいんだけど。もち米ってないかな?」

「モチモチした米ってことだろ。なくはねえけど、ボソボソして食いずらいぜ」

「水加減と調理方法で食感はなんとかなると思うんだ。明日、早速穀物屋に行ってみるよ」

 リカルドとトランプでババぬきをする。
 リカルドはババを持ってもポーカーフェイスで全くわからない。
 結果、俺の負け。

 次は神経衰弱をやったんだけど、これもリカルドは強い。
 めくった所をしっかり覚えていて、確実に手札にしていくのだ。
 俺は手札4枚、リカルドは12枚。
 圧倒的に強いリカルドに俺は負け続けたのだった。



 翌日、礼服を着た俺に、リカルドは大袈裟に誉めてくれた。
 俺は早速穀物屋へ行き、飼料扱いのもち米を発見した。
 店主もボソボソして美味しくないと、渋い顔だった。
 俺は小間物屋に臼と杵と、のし餅用の型を発注し、明日届けてくれるように頼んだ。

 出社した俺は、さっそく買ってきたもち米を倉庫に入れて、メリッサさんの手伝いをした。

「今度は何を作るの? ハヤト」

「お餅っていう、モチモチした食べ物です。お餅をつくのに道具が必要なのと、一人では作れないので、手伝って貰っていいですか?」

「勿論よ。何でも言って頂戴」

 俺はメリッサさんにお餅の作り方と、調理方法を伝えた。

「へえ、お鍋に入れてもいいのね。日持ちするなら、たくさん作りましょうよ!」

「はい。明日はたくさん作りましょう。餅つきは結構力も必要なので、男手もあると助かります」

「心配要らないわ。皆新しい食材には興味津々だもの。あっ、社長は朝から町長のお家よ。打ち合わせですって。第三王子一行がとうとう到着するわね」

「王族の人が来る事って、珍しいんですか?」

「この町が出来た時にも、王族の誰かが来たはずよ。つまりすっごく珍しい訳。競いハヌーンの成功は大きかったわね」

 そうなんだ。
 競いハヌーンをやろうって話をしたのは、俺だし、呼ばれるかもしれないな。

「そう言えばね、うちは各種麺類を工場で作ってるでしょう。それをね、穀物屋みたいに、麺類屋っていうのを町長が作ったそうよ。これからは麺類も積極的に市民に売っていきたいんですって」

「それは素晴らしいですね。おにぎり屋むすびもヒットしたし、案外バケット以外も受け入れられるんじゃないですかね」

「競いハヌーン大会でパスタやうどんを食べたお客さんも多かったでしょう。問い合わせが結構あったみたいね」

「それは凄いですね。俺はパスタもうどんも好きなので、広まるのは嬉しいですね」

 俺達はお喋りしながら手を動かした。
 そこに、一人の従業員がひょいと顔を出した。

「あれが第三王子一行だと思いやすぜ。騎士団が護送してます」

 俺達も外に出てみた。
 20数名の騎士がハヌーンに乗って3台のハヌーン車を護送している。
 槍や剣も持っているし、ものものしい。
 一行は大通りを抜けて、町長の家へ向かっていった。

「なんか……凄い迫力だったね」

「ええ。流石王子様だわ。これから昼食かしら。きっとパスタが出されるわね。この町特産だもの」

「王子様が食べるパスタって、豪華そうだよね。なんだかおなかが空いてきたよ」

「うちも昼食はパスタにしましょう。メニューはペペロンチーノでどう?」

「いいですね。ハインケルも好きだって言っていましたよ」

 それから、美味しいペペロンチーノを昼食に食べた俺達は、午後も仕事に勤しんでいた。
 俺はもち米を研いでおき、浸水させておいた。
 明日もち米を蒸して、餅つき会である。
 あんこも炊いておかないといけない。
 後は醤油と、大根おろしかな。
 そう言えばきな粉は粉屋にあるんじゃないか?
 俺は早速粉屋へ行ったら、少しだがあった。
 あるだけ買って帰り、今日のおやつ用にきな粉団子を仕込む。
 
 お茶は緑茶を入れて、きな粉団子を配膳する。
 おやつ時、皆フォーク片手に食べ始めた。

「うめえっ。この香ばしい香りと甘さがいいな」

「美味しいわ。優しい味ね。お団子のほのかな甘みと合っているわ」

「この甘さが丁度良い。いくらでも食えるぜっ」

 俺達はきな粉団子を満喫して緑茶を飲んだ。
 その後は仕事に精を出した。
 鐘4つを過ぎてもアラブレヒトは戻らなかった。

 夕食はお揚げのうどん。
 俺はうどんを食べながら、アラブレヒトは大丈夫かと少し心配になった。

「アラブレヒト、大丈夫かな」

「社長だもの。きっと美味しいものを食べているわ。ハヤトは呼び出されないで済むのかしら。そっちの方が心配ね」

「ありがとうございます、メリッサさん」

 食後、俺は灯りのついた家に帰った。
 リカルドは絶好調で、今日も5勝したそうだ。
 俺はリカルドとコタツでオセロをしながら、今日の戦果を、ゆっくりと聞いたのだった。
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