異世界転移した俺の、美味しい異世界生活

yahagi

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第三王子殿下の依頼

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 翌日、鐘10に、俺は町長の家にいた。
 貴族の家だから当たり前だけど、凄く広い。
 俺は出された紅茶に口をつけて、緊張を和らげる。
 俺のとなりにはいつも通りのリカルドがおり、リカルドはクッキーも頬張っている。
 清々しい態度に頬が緩んだ所で、ものものしい騎士達と、アラブレヒトと町長一家、第三王子殿下が現れた。

「待たせたね。俺が第三王子、エリックだ。今日は来てくれてありがとう」

「俺はハヤトです。えっと、何かお伺いされたい事があると聞きました」

「思っていたよりも小柄で大人しそうだ。アラブレヒトの言っていた通りだね。実はね、君の故郷の話を聞いた。もう戻れないそうだね」

「はい。どうやってこちらに来たのかさえ不明です」

 心臓がバクバクする。
 俺は正直に話すことにした。

「俺はね、君の故郷に興味はある。だけど行けない場所に固執しても仕方ない。だから、君の故郷については不問としよう。俺はね、この地に根付いた麺文化をもっと広げていきたいと考えている。美味しいものが、俺は大好きなのさ」

「はい」

「君が考案した料理は数あれど、競いハヌーン会場で売っているホットドッグとポップコーン、競いスケート会場のたこ焼きとソフトクリーム。あれらは素晴らしかったね。俺はチョコレート味のソフトクリームが好きだな。それで話というのはね……」

「はい」

「何か王都に相応しい菓子を、考案してくれないか? 勿論お礼はするよ。菓子といえばドライフルーツをたっぷり使ったものばかりでね。料理ギルドに登録されたパンケーキですら、中々王宮では出てこない。君は拡声器を使った移動販売をしているだろう? なんて面白いアイディアだろう。王都でも真似したい。そこで何を売るかが問題なのさ」

「はい」

 うーんと、何がいいだろう。
 俺は心のレシピ帳をめくりながら、第三王子殿下の話に耳を傾けた。

「出来れば王都ならではの料理にしたい。王族が直々に手掛けると大仰になりがちだが、市民に手軽に買って貰える菓子がいい」

「では……わたあめは如何でしょうか。砂糖を原料にした菓子で、ふわふわとしていて食感も軽く、雲のように口で溶けます。王都は夢や希望が詰まっておりますので、ぴったりかと存じます。魔道具代がかかりますので、売り値は俺なら銅貨5枚取ります」

「ハインケル、どう思う」

「このあたりで言うなら、高額な菓子です。しかし、ふわふわとしていて雲のように口で溶ける菓子は他に知りません。希少価値が高いので、売れるでしょうね。ちなみに、普通の菓子は銅貨3枚です」

「ううむ、少し高額で希少性があるのか。それも魅力的だ。ぜひ食べてみたい。魔道具が必要だと言っていたな。では、できるまで待つ。作って見せよ」

 わたあめは機械がなくちゃ作れない。
 サンラクさんに頑張って貰おう。

「はい。デメリットは手づかみ、もしくはそのままかぶりつく食べ物なのですが、それで宜しかったでしょうか」

「わかった。しかし、王家ではなかなか口に出来ぬな。何かナイフとフォークで食べる菓子も考案出来るか?」

「では、ミルクレープは如何でしょう。クレープを20枚程重ねて作る豪華なケーキです。フルーツを中に入れて頂けたら、より美味しくなります。ナイフとフォークで召し上がって頂くので、屋台には向きません」

「ふふふ、そう睨まずとも連れて行ったりしないよ、リカルド。こういう会話を求めていたんだ。楽しくてたまらないよ。ハヤト、ミルクレープも作ってみて欲しい。ハインケル、サポートを頼むよ」

「お任せください、殿下」

 それで会談は終了し、第三王子殿下は自室へと戻られた。
 俺はふうーっと息を吐き出し、ぬるくなった紅茶を飲み干した。

「お疲れ様、ハヤト。さっそくだけど、必要なものはあるかい?」

 ハインケルが優しく聞いてくれる。
 俺は果物を思い浮かべた。

「今の時期、手に入る果物ってあるかな。メロンとかイチゴがあると良いんだけど」

「メロンもイチゴもあるよ。温室があるからね。ゴールデンメロンとルビーイチゴは、そのまま食べても絶品だよ。帰りに少し持って帰って味見すると良いよ」

「ありがとう、ハインケル。まずはわたあめの魔道具を依頼してくる。多分4日位かかるから、試食はボウリング大会の後でどうかな」

「いいとも。協力は惜しまないから何でも言ってね。じゃあ、今日は解散しようか。お疲れ様」

 アラブレヒトは居残りだそうで、俺とリカルドが帰された。
 果物をたくさんお土産に持たせてくれた。

「一緒にいてくれてありがとうね、リカルド。心強かったよ」

「俺達は夫婦だ。俺も協力は惜しまねえぜ。まずはこのフルーツ、支店に置いてこようか。ゴールデンメロンもルビーイチゴもすげえうまいぞ」

「そりゃあ楽しみだ。じゃあ、支店に置いて、昼ご飯は一緒に食べない?」

 リカルドはにっこり頷いて、俺の肩を抱いた。
 それから一度支店に寄り、俺達はホルモン屋エールへやってきた。
 
「ピリ辛モツ鍋2人前と、味噌ホルモン焼き定食とエール」

「俺は味噌煮込み定食とエールでお願い」

「かしこまりました」

 俺とリカルドはエールで乾杯した。
 
「料理なら何とかなるんじゃねえか? 無茶ぶりって程でもねえし、気楽にやれよ」

「うん。今日、ミルクレープの方は試作してみようと思う。フルーツも手に入ったし、豪華なケーキになりそうだよ。リカルドにも試食をお願いしていい?」

「勿論だぜ。俺は今日これから紳士の遊び場でボウリングしてくる。後は大会の前日、ボウリングやって調整だ。アラブレヒトに今度こそ、勝つ!」

 ぐつぐつ煮えた鍋が届き、他の料理も届いた。
 俺は鍋を取り分けた。

「ホルモンがぷりぷりで美味しい。やっぱり冬は鍋だね」

「脂が甘くてたまんねえな。エールが進むぜ」

 俺達は美味しい料理を堪能して、店を出た。
 紳士の遊び場へ行くリカルドを見送って、俺は魔道具屋サンラクへやって来た。

「サンラクさん~。いませんか~」

「いるぞ。ハヤトじゃねえか。何か入り用か?」

「実は、第三王子殿下の依頼に、わたあめ製造機が必要なんです」

 俺はわたあめについて知っていることを全部喋った。

「ふむふむ。木の棒ですくってこんもりさせていくわけだな」

「はい。最終的には、こういうフォルムになります。覆いをつけて貰って、ザラメを入れるところがあって、こんな感じです」

「おう。面白そうな依頼だ。四日貰うぜ。大型になるから、出来たら配達してやる。そうだ、俺も競いハヌーンに行ってきたんだがな、リカルドに賭けて大勝ちしたんだわ。旦那によろしく言っといてくれ」

「わかりました。わたあめ製造機、よろしくお願いします」

 俺は支店に戻り、一息ついた。
 まずはフルーツの試食である。
 俺はメロンとイチゴをカットして、そのまま食べてみた。
 芳醇な甘さと酸味が、ものすごく美味しい。
 このままでも十分美味しいけれど、細かく刻んで、今日はケーキに入れる。
 まずは生クリームだけのミルクレープを作る。
 重ねる枚数は20枚。
 メロンとイチゴもたっぷり入れる。

 次にカスタードクリームと生クリームを塗ったミルクレープを作る。
 メロンとイチゴもたっぷり入れる。

 よし、鐘3つ。
 おやつ時だ。

「今日は2種類のミルクレープを作ってみました。どっちが美味しいか、食べ比べて下さい」

 メリッサさんは二種類のケーキを前にニコニコしている。
 ナイフで切り分け、フォークで口に運ぶ。

「ん~~~っ、すっごく美味しいわ! フルーツがたっぷり入ってて豪華なケーキね!」

「はい。紅茶が合うと思います。俺はクリームをどっちにしようか迷ってしまって」

 俺もミルクレープをぱくり。
 有名ミルクレープ店のミルクレープと同じくらい美味しい。
 あっ、でもカスタードクリームが入ると結構味が違うな。
 どっちも美味しいけれど、カスタードクリームも美味しいな。

「どっちも美味しいけれど……カスタードクリーム入りの方が、豪華な感じがして好きよ」

「俺もそう思う!」

「俺は生クリームだけのほうが、フルーツが美味く感じたな」

「私はカスタードクリーム入りが美味しかったわ。フルーツも美味しかったわ」

 支店の皆は多数決でカスタードクリーム入りの勝ち。
 これはカスタードクリーム入りに決定でいいだろう。

「後は枚数の調整をしたいので、明日もミルクレープを作って良いですか?」

「勿論よ、ハヤト。こんな美味しいケーキを食べられるなんてラッキーよ」

 俺はありがたく、明日もミルクレープを作らせて貰う事にした。
 俺は魔道具が出来上がるまで暇なので、メリッサさんの手伝いをして過ごした。
 夕食は天津丼。
 俺は美味しく天津丼を食べた。

 食後は、リカルドの待つ家に帰る。
 リカルドの分のミルクレープも持ち帰って来た。
 家に入り、居間のコタツでリラックスするリカルドを見て、頬を緩める。

「リカルド、ただいま。ミルクレープ作ってみたんだけど、食べれる?」

「おう、おかえり。全然食えるぜ」

 俺はケーキ用のお皿にミルクレープを出し、ナイフとフォークを添えた。
 二つのケーキを並べて、リカルドに試食をお願いする。

「生クリームだけのミルクレープと、カスタードクリーム入りのミルクレープ。どっちが美味しいかと思って」

「頂きます……うん、すげえうまい。フルーツがたっぷり入ってて豪華だ。層になってるのがポイントなんだな。……なるほど。俺ならカスタードクリーム入りだな。生クリームだけのミルクレープは、フルーツに負けてる感じがするぜ」

「そっかあ。支店でもカスタードクリーム入りがいいっていう人が多かったんだ。カスタードクリーム入りに決定するよ」

 俺は香り高い紅茶を入れて、リカルドに差し出した。
 リカルドはケーキ二個をペロリと平らげて、紅茶に口をつけた。

「ああ、うまかった。ナイフで切らなきゃ食えない菓子だから、第三王子殿下の要望にピッタリだな。きっと茶会で披露するんだろうぜ」

「ふうん。美味しいもの、いっぱいありそうだよね、王都って」

「この町ほどではないけどな。俺はうどんもラーメンも好きだし、焼きそばもそばも好きだ。勿論パスタも好きだから、その点で言えば王都はもの足りねえ。麺類が皆無だからな。第三王子殿下が言ってたろ。麺文化を広げたいって」

「そっかぁ。俺も麺文化を広めるのは賛成だよ。美味しいし、乾麺なら手軽に作れるしね!」

「今日の面会で無茶言われなくて良かったな。俺も安心してボウリングに集中できる」

 リカルドはニッコリ笑い、コタツから出た。

「一緒に風呂入ろうぜ。洗いっこしよう」

 俺は輝く笑顔で頷くと、コタツから出てリカルドにギュッと抱き付いた。
 いつでも頼もしいリカルドが大好きだ。
 俺はチュッとキスをしたリカルドにすりつきながら、浴室へと歩くのだった。
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