契約結婚した俺は、愛する旦那様に囚われる

yahagi

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最高の笑顔

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 旦那様に囚われて3ヶ月。
 俺は毎日抱き潰されていた。
 当然、腰は立たない。

 そしてある日、レイリーがやってきた。
 食堂で夕食を食べながら、レイリーのお嫁さんの産んだパステルちゃんの話題になる。
 パステルちゃんとロラベルの婚約を結ぼうと言うレイリーと、気が進まない旦那様。

「どうして駄目なんだ? パステルは美人に育つぞ」

「俺みたいに男しか愛せないかもしれない。一応赤子のふたなりは探させている」

「そうかぁ。それを言われちゃ弱いな。俺はお前と家族になりたいんだがなぁ」

「ふふ。恋人じゃなく家族か。俺はまだそこまで吹っ切れてないのかもしれないな」

「だって、出産から半年くらい経ったろう。まだ離縁してないって事は、うまくやってるんじゃないのか?」

 レイリーはぐっと前に乗り出した。
 真剣な金の瞳が、旦那様を射抜く。

「俺はまだ、お前が好きだ、レイリー。でも、ロナウドの事も手放したくない。ロナウドは毎晩抱き潰して、逃げれないようにしてるんだよ」

「お前、何やってんだ!」

「レイリー。ロナウドは俺に付き合ってくれるそうだ。この3ヶ月は家から出さないよう厳命して過ごしているが、楽しそうに笑ってる。俺は独占欲だけで束縛してるんだ」

「契約結婚だったんだっけ? そんなの、改めて愛してるって言えばいいだろう。お前はロナウドを愛してるんだよ、エレン。そうじゃなきゃ、そこまでしない」

「こんな醜い気持ちが、愛だっていうのか、レイリー。俺は君の幸福を願うことが出来たよ。でも、ロナウド相手にはそれが出来ないんだ」

 レイリーは紅茶を飲み、カラトリーを置いてエレンに言い募った。

「俺はお前をまだ愛しているよ、エレン。正直、離縁して寂しそうにしてたらまた襲ってやろうと思っていた。愛は綺麗なんかじゃねえよ、エレン。それでいいんだよ」

 旦那様は、端正なお顔に一筋の涙を流した。
 誰よりも信頼している男、レイリーの言葉は、頑なだった旦那様の心を確かに溶かした。

 夕食後、レイリーを晩酌に誘ったが断られた。
 
「またセックスしたくなっちまう。口元の黒子がセクシーだな、エレン。キスしたくなる。吹っ切れてねえのは俺も同じさ」

 意味ありげに見つめ合う二人。
 二人っきりにしてあげようかな、と考えたところで、旦那様が言った。

「お前のことは、親友だと思ってる。セフレじゃない。だからセックスしないよ、レイリー」

「俺達、もっと早くにヤっちまえば良かったよな。一回こっきりじゃぁ、ヤり足りねえよ」

「お前がそんな野獣みたいな男だとは思わなかった。でも、気持ちはわかるつもりだ。片思いが長すぎて、なかなか吹っ切れない」

 レイリーは旦那様の肩を抱いて、チュッとキスをした。

「ロナウドとよく話し合えよ。今度会ったときに不安そうにしてたら、犯っちまうからな」

 レイリーは燃えるような赤い髪をなびかせて、帰って行った。
 レイリーが帰った後、旦那様はギラギラした目で、俺を見た。

「風呂に入って寝室に来い。話はセックスの後だ」

「はぁい」

 俺は風呂で準備してから、寝室へ行った。
 バスローブを脱いだ旦那様はもう勃起していて、俺は喜んで咥えた。

 6発ヤって、ベッドに転がる。
 汗ばんだ肌を合わせ、キスを繰り返す。

「今日は……お前のお陰でレイリーと親友らしく過ごせた。ありがとう」

「エッチしたかったでしょ。よく我慢したね」

「お前がいるからな。耐えられた。これからもずっと俺の側にいてくれるか?」

「それって、プロポーズ?」

「俺は、逃がすつもりはないぞ。俺の顔、好きだろう。愛してるよ、ロナウド。ロラベルと一緒に、俺と生きてくれ」

「はい……っ、俺も愛してるよ、旦那様」

 俺達は何度もキスをして、愛を誓い合った。
 その日は寝ずにセックスしてしまい、俺の腰は当然立たない。
 愛が通じたんだから、仕方ないとその時は思った。

 それから一週間経っても二週間経っても俺の腰は立たないまま。
 夜、セックスに応じてしまう俺も俺だが、旦那様も悪いと思う。

 お昼ご飯の時に、俺は疑問をぶつけてみた。

「旦那様、俺の腰、立たないままなんだけど、どういうこと?」

「こうしておけば、俺から逃げられないだろう? お前は自由にしておくと、どこに行くか分からないからな」

「愛を誓い合ったでしょ。旦那様を愛してる。俺はどこにも行かないよ」

「信用できない。用事は全て使用人に任せてくれ。お前は俺に抱かれていればいい」

 旦那様が変な方に振り切ったぞ。
 話は終わり、昼食の続きを食べる。

「骨董品の仕分けと、取引先の清算をやりたいんだけど、駄目?」

「骨董品の取り扱いなら、俺の妻の事業としてやらせてやる。家に帰るのはナシだ」

「俺は絶対に帰ってくるってば! わかった、家に帰れなくていいから、自分の足で歩かせて!」

「……そのうちな。考えておく」

 旦那様は本当に考えてくれたみたいで、それから三日後、苦渋の表情で宣言した。

「今夜からは3発にする。絶対に逃げるなよ」

 俺は絶対に逃げないことを約束し、ゆっくり眠った。
 翌朝はフラフラするものの、自分で歩けて感動した。
 絶対に逃げないという約束を、俺はそれから半年守り続けて、やっと一日の休みをもぎ取った。
 お目付役は、アンナ。
 俺は自分の家の整理をしに帰ってきた。

 まずは骨董品の仕分けをして、家の雑誌類を整理する。
 アンナが手伝ってくれたので、午前中で整理は終わった。

 次は酒場だ。
 大まかな取引先はみんな酒場に顔を出す。
 俺はホットドッグを食べながら、エールを飲みつつ、取引先の皆に説明をする。
 アンナも果敢にホットドッグに挑戦していた。
 
「なんでえ、ロナウドがいねえと思ったら結婚してたのか。ミドガスタル伯爵夫人たぁ、大したもんだ」

「次からはミドガスタル伯爵邸に持って行ってやるからな。高く買ってくれよ!」

「お前の目利きは確かだからな。顧客もお前が戻って来て、安堵するだろう」

 俺は久々に取引先と会話が出来て、満足だった。
 ミドガスタル伯爵邸へ、これからは骨董品を持ってきて貰うようにした。
 アンナもミドガスタル伯爵邸の説明をしてくれて、俺は明日から復職出来そうな勢いだ。

 皆で飲んでいると時間があっと言う間に過ぎていく。
 夜が近付いてきて、アンナに言われた。

「奥様、お時間です」

 俺は仕方なくミドガスタル伯爵邸へ戻った。
 そういや、キックスを見なかったなぁ、と思っていたら、翌日骨董品の山と一緒にやってきた。

「ご結婚、おめでとうございます。ロナウドさん、お幸せそうで何よりです。これ、結婚祝いです。皆さんでどうぞ」

 キックスは町で人気の茶菓子を買ってきてくれた。

「おう、ありがとな。お茶でも飲んでいってくれ」

「いえいえ、俺は結婚祝いを届けに来ただけですから。ミドガスタル伯爵にロナウドさんの情報を売ったのは俺なんで、幸せになってくれて良かったですよ」

 にこーっと笑うキックスは相変わらず良い男だ。
 
「ありがとうな。今は幸せだよ」

 でも、キックスと寝てみたかったな、というのはある。
 まあ、ないものねだりというやつだ。
 キックスは身持ちが固いからな。
 
 俺は早速骨董品の仕分けに熱中した。
 アンナが紅茶を入れてくれる。

 呪いのかかったものもないし、俺は値段をつけていく。
 久しぶりに充実した時間を過ごして、俺はご機嫌だった。

 夕食後、お風呂に入って夫婦の寝室へ行くと、旦那様が待っていた。

「ロナウド、ご機嫌だな」

「仕事らしい仕事をしたからな。俺はちゃんと帰ってきたろ。たまに酒場に行かせてくれよ」

「夜は駄目だ。昼なら良い。半年に一回な」

「わかったよ。旦那様にしては、譲歩した方なんだろうしな」

 それから3発セックスをして、抱き締め合った。

「ところで、情報屋のキックスとはどういう関係だ?」

「えーと……」

 俺はセックスしてみたいと思っていることまで暴露させられた。
 翌日は腰が立たなかったけれど、自業自得なので仕方ない。




「母さん、また腰が立たないの? 父さんが無理させたんだね」

「ロラベル、これは父さんと母さんが仲がよい証拠だ。ロナウドの世話は俺が全部するからね。今日はパステルが遊びに来る日だ。庭にテーブルを出そう」

「わあい。今日はくるみのケーキを焼いてくれるかな? パステルはくるみが好きなんだよ」

 あれから、10年。
 俺と旦那様は、相変わらずの毎日を過ごしていた。
 ロラベルはすくすくと育って、もう家庭教師について勉強している。
 レイリーの子供のパステルと仲が良く、一度婚約するという話が浮上している。
 ロラベルも父親に似て顔が良い。
 パステルの弟リドランも今日来ると言っていた。
 レイリーはよく遊びに来てくれる、良い親友だ。
 
「あっ、来たよ。パステル、リドラン、こっちだよーっ」

 ロラベルが駆け出して行く。
 燃えるような赤い髪のパステルは、弾ける笑顔で挨拶した。

「こんにちは、エレンおじさんと、ロナウドおじさん。ロラベルも元気そうで良かった!」

「お姉ちゃん、僕にもあいさつさせてよ。こんにちは!」

「こんにちは、パステル。リドラン。ゆっくりしていってね」

 子供達は庭へ駆けていく。
 そこへレイリーがやってきた。

「今日はよろしくな。もしかして、ロナウドは腰が立たねえのか。ヤりすぎだろう、エレン」

「お前に言われたくない。嫁さんは三人目の赤ん坊の相手で来られないんだろう」

「ああ。赤ん坊は何度見ても可愛いからな。今日こそエレン、パステルとロラベルの婚約を承諾して貰うぞ」

「まあ、ロラベルがいいと言ったらな」

「よしっ、おーい、ロラベル! パステルと婚約するぞ。パステルをお嫁さんにしてくれ!」

 ロラベルは迷っているようだ。

「あのね、おじさん。俺はお父さんみたいに男が好きかもしれない。14歳まで待てる? そしたら俺も覚悟を決めるから」

 それを聞いてびっくりしたのは俺だ。

「ええっ、ロラベルって男が好きなの?」

「気になる相手が出来たと告白してきた。相手は家庭教師の青年だ。閨事の授業でムラムラしたそうだ。まだ女が駄目と決まったわけではないが、男とのセックスをまず体験してみたいそうだ」

「へええ。まだ小さいと思ってたのに、ロラベルってしっかりしてるんだね」

 しょんぼりしたレイリーが戻ってくる。
 うちのパステルは美人なのに……と呟くレイリーが俺の隣に座る。

「ふたなりの婚約者はいねえよな?」

「残念ながらいない。男ならリドランでも良いわけだが、パステルと仲が良いし、出来れば婚約したい所ではある。だが、セックス出来るかどうかわからないだろう。14歳まで待ってやれるか?」

「おう。パステルはロラベル大好きだからよ、聞いてみたら待つって言ってたわ。女もいける男だといいなあ、ロラベル」

「ロラベルも不安がっていたよ。でもまずは性欲の発散を男で覚えさせてからだ。その後に女を抱かせる。それは約束しているんだ」

「お前もそうやって性を覚えたのか?」

「俺が許されたわけないだろう。女だけあてがわれて、吐いた思い出しかない。だからな、お前との一夜は最高に良かったよ」

 さよならのキスをした、むふふな夜のことは、旦那様ってば、よぉく覚えてるもんね。
 
「その割りに二回目を許されねえよな、俺。たまに俺はエレンが欲しくなる。どうしようもねえよ、未だに惚れてんだ」

「俺も大好きだよ、レイリー。一生俺を好きでいてくれ。俺もお前に惚れてるから、幸せだ」

 二回目……と呟くレイリーはへしょげている。
 ヤりたいんだろうなぁ、レイリー。
 俺は旦那様より年上だし、良い雰囲気になったら二人きりにしてあげたいんだけど、旦那様が俺を離さないんだよね。
 親友のままでいたいって気持ちもわかるけど、たまにレイリーが気の毒。
 まあ、こんな話も出来るようになったんだから、仲が良いって事だろう。

 子供達は庭で楽しそうに笑ってる。
 俺は旦那様を見つめてみる。
 恋する瞳で見ているのは、なんとレイリーではなく俺である。
 契約結婚で始まった俺達だったけれど、今では愛し合っている。
 俺の書いた離婚届は、とっくに破り捨てられてしまった。

「ロナウド、風が冷たくなってきたから家に入るよ。さぁ、俺につかまって」

 旦那様のブルーグレーの髪がさらりと揺れる。
 深い海の色の瞳が優しく俺を見つめる。
 俺は旦那様に抱き上げられて、居間のソファに降ろされた。
 すぐさま、ケーキと紅茶が運ばれて来る。

「パステル、くるみのケーキが届いたぞ。みんな、手を洗ってきなさい」

「はーい!」

 俺はわちゃわちゃと手を洗う子供達を見て、頬を緩めた。
 俺はとても幸せだ。
 たくさんの幸福をくれる旦那様を、心から愛している。

 こんな幸福を、10年後も、20年後も、積み重ねていきたい。

「母さん、来週レイリーおじさんの知り合いのお家で葡萄狩りはどうですか、だって。父さん、その日は母さんに無理させないでね」

「葡萄狩りか。いいね、行こう。きっとすごく美味しいよ。ね、旦那様」

「わかった。その日は気をつける。俺は仕事で行けないが、母さんと楽しんで来なさい」

「やったぁ! パステル、葡萄狩り行けるってーっ! リドランも一緒だよ!」

「わあい!」

 子供達は楽しそうに笑っている。
 俺は葡萄狩りの日以外は、抱き潰される覚悟を決めた。
 俺の外出については、未だに良い顔をしない旦那様。
 愛されているけれど、信用がちょっと足りていない気がする。

 それから、みんなでケーキを食べて紅茶を飲んだ。
 とても楽しいひと時だった。

 その夜、抱き潰された後で、旦那様がぽつりと言う。

「俺を、愛しているか」

「心から愛しているよ、エレン。一生愛しているよ。大好きだ」

「ずっと俺の側にいてくれ、ロナウド。俺も心から愛している」

 舌を絡め合い、唾液を飲み込む。
 抱き締め合い、キスを繰り返す。

 旦那様が幸福そうに笑ってくれるから。
 俺も、最高の笑顔を返すのだ。
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