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最高の笑顔
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旦那様に囚われて3ヶ月。
俺は毎日抱き潰されていた。
当然、腰は立たない。
そしてある日、レイリーがやってきた。
食堂で夕食を食べながら、レイリーのお嫁さんの産んだパステルちゃんの話題になる。
パステルちゃんとロラベルの婚約を結ぼうと言うレイリーと、気が進まない旦那様。
「どうして駄目なんだ? パステルは美人に育つぞ」
「俺みたいに男しか愛せないかもしれない。一応赤子のふたなりは探させている」
「そうかぁ。それを言われちゃ弱いな。俺はお前と家族になりたいんだがなぁ」
「ふふ。恋人じゃなく家族か。俺はまだそこまで吹っ切れてないのかもしれないな」
「だって、出産から半年くらい経ったろう。まだ離縁してないって事は、うまくやってるんじゃないのか?」
レイリーはぐっと前に乗り出した。
真剣な金の瞳が、旦那様を射抜く。
「俺はまだ、お前が好きだ、レイリー。でも、ロナウドの事も手放したくない。ロナウドは毎晩抱き潰して、逃げれないようにしてるんだよ」
「お前、何やってんだ!」
「レイリー。ロナウドは俺に付き合ってくれるそうだ。この3ヶ月は家から出さないよう厳命して過ごしているが、楽しそうに笑ってる。俺は独占欲だけで束縛してるんだ」
「契約結婚だったんだっけ? そんなの、改めて愛してるって言えばいいだろう。お前はロナウドを愛してるんだよ、エレン。そうじゃなきゃ、そこまでしない」
「こんな醜い気持ちが、愛だっていうのか、レイリー。俺は君の幸福を願うことが出来たよ。でも、ロナウド相手にはそれが出来ないんだ」
レイリーは紅茶を飲み、カラトリーを置いてエレンに言い募った。
「俺はお前をまだ愛しているよ、エレン。正直、離縁して寂しそうにしてたらまた襲ってやろうと思っていた。愛は綺麗なんかじゃねえよ、エレン。それでいいんだよ」
旦那様は、端正なお顔に一筋の涙を流した。
誰よりも信頼している男、レイリーの言葉は、頑なだった旦那様の心を確かに溶かした。
夕食後、レイリーを晩酌に誘ったが断られた。
「またセックスしたくなっちまう。口元の黒子がセクシーだな、エレン。キスしたくなる。吹っ切れてねえのは俺も同じさ」
意味ありげに見つめ合う二人。
二人っきりにしてあげようかな、と考えたところで、旦那様が言った。
「お前のことは、親友だと思ってる。セフレじゃない。だからセックスしないよ、レイリー」
「俺達、もっと早くにヤっちまえば良かったよな。一回こっきりじゃぁ、ヤり足りねえよ」
「お前がそんな野獣みたいな男だとは思わなかった。でも、気持ちはわかるつもりだ。片思いが長すぎて、なかなか吹っ切れない」
レイリーは旦那様の肩を抱いて、チュッとキスをした。
「ロナウドとよく話し合えよ。今度会ったときに不安そうにしてたら、犯っちまうからな」
レイリーは燃えるような赤い髪をなびかせて、帰って行った。
レイリーが帰った後、旦那様はギラギラした目で、俺を見た。
「風呂に入って寝室に来い。話はセックスの後だ」
「はぁい」
俺は風呂で準備してから、寝室へ行った。
バスローブを脱いだ旦那様はもう勃起していて、俺は喜んで咥えた。
6発ヤって、ベッドに転がる。
汗ばんだ肌を合わせ、キスを繰り返す。
「今日は……お前のお陰でレイリーと親友らしく過ごせた。ありがとう」
「エッチしたかったでしょ。よく我慢したね」
「お前がいるからな。耐えられた。これからもずっと俺の側にいてくれるか?」
「それって、プロポーズ?」
「俺は、逃がすつもりはないぞ。俺の顔、好きだろう。愛してるよ、ロナウド。ロラベルと一緒に、俺と生きてくれ」
「はい……っ、俺も愛してるよ、旦那様」
俺達は何度もキスをして、愛を誓い合った。
その日は寝ずにセックスしてしまい、俺の腰は当然立たない。
愛が通じたんだから、仕方ないとその時は思った。
それから一週間経っても二週間経っても俺の腰は立たないまま。
夜、セックスに応じてしまう俺も俺だが、旦那様も悪いと思う。
お昼ご飯の時に、俺は疑問をぶつけてみた。
「旦那様、俺の腰、立たないままなんだけど、どういうこと?」
「こうしておけば、俺から逃げられないだろう? お前は自由にしておくと、どこに行くか分からないからな」
「愛を誓い合ったでしょ。旦那様を愛してる。俺はどこにも行かないよ」
「信用できない。用事は全て使用人に任せてくれ。お前は俺に抱かれていればいい」
旦那様が変な方に振り切ったぞ。
話は終わり、昼食の続きを食べる。
「骨董品の仕分けと、取引先の清算をやりたいんだけど、駄目?」
「骨董品の取り扱いなら、俺の妻の事業としてやらせてやる。家に帰るのはナシだ」
「俺は絶対に帰ってくるってば! わかった、家に帰れなくていいから、自分の足で歩かせて!」
「……そのうちな。考えておく」
旦那様は本当に考えてくれたみたいで、それから三日後、苦渋の表情で宣言した。
「今夜からは3発にする。絶対に逃げるなよ」
俺は絶対に逃げないことを約束し、ゆっくり眠った。
翌朝はフラフラするものの、自分で歩けて感動した。
絶対に逃げないという約束を、俺はそれから半年守り続けて、やっと一日の休みをもぎ取った。
お目付役は、アンナ。
俺は自分の家の整理をしに帰ってきた。
まずは骨董品の仕分けをして、家の雑誌類を整理する。
アンナが手伝ってくれたので、午前中で整理は終わった。
次は酒場だ。
大まかな取引先はみんな酒場に顔を出す。
俺はホットドッグを食べながら、エールを飲みつつ、取引先の皆に説明をする。
アンナも果敢にホットドッグに挑戦していた。
「なんでえ、ロナウドがいねえと思ったら結婚してたのか。ミドガスタル伯爵夫人たぁ、大したもんだ」
「次からはミドガスタル伯爵邸に持って行ってやるからな。高く買ってくれよ!」
「お前の目利きは確かだからな。顧客もお前が戻って来て、安堵するだろう」
俺は久々に取引先と会話が出来て、満足だった。
ミドガスタル伯爵邸へ、これからは骨董品を持ってきて貰うようにした。
アンナもミドガスタル伯爵邸の説明をしてくれて、俺は明日から復職出来そうな勢いだ。
皆で飲んでいると時間があっと言う間に過ぎていく。
夜が近付いてきて、アンナに言われた。
「奥様、お時間です」
俺は仕方なくミドガスタル伯爵邸へ戻った。
そういや、キックスを見なかったなぁ、と思っていたら、翌日骨董品の山と一緒にやってきた。
「ご結婚、おめでとうございます。ロナウドさん、お幸せそうで何よりです。これ、結婚祝いです。皆さんでどうぞ」
キックスは町で人気の茶菓子を買ってきてくれた。
「おう、ありがとな。お茶でも飲んでいってくれ」
「いえいえ、俺は結婚祝いを届けに来ただけですから。ミドガスタル伯爵にロナウドさんの情報を売ったのは俺なんで、幸せになってくれて良かったですよ」
にこーっと笑うキックスは相変わらず良い男だ。
「ありがとうな。今は幸せだよ」
でも、キックスと寝てみたかったな、というのはある。
まあ、ないものねだりというやつだ。
キックスは身持ちが固いからな。
俺は早速骨董品の仕分けに熱中した。
アンナが紅茶を入れてくれる。
呪いのかかったものもないし、俺は値段をつけていく。
久しぶりに充実した時間を過ごして、俺はご機嫌だった。
夕食後、お風呂に入って夫婦の寝室へ行くと、旦那様が待っていた。
「ロナウド、ご機嫌だな」
「仕事らしい仕事をしたからな。俺はちゃんと帰ってきたろ。たまに酒場に行かせてくれよ」
「夜は駄目だ。昼なら良い。半年に一回な」
「わかったよ。旦那様にしては、譲歩した方なんだろうしな」
それから3発セックスをして、抱き締め合った。
「ところで、情報屋のキックスとはどういう関係だ?」
「えーと……」
俺はセックスしてみたいと思っていることまで暴露させられた。
翌日は腰が立たなかったけれど、自業自得なので仕方ない。
「母さん、また腰が立たないの? 父さんが無理させたんだね」
「ロラベル、これは父さんと母さんが仲がよい証拠だ。ロナウドの世話は俺が全部するからね。今日はパステルが遊びに来る日だ。庭にテーブルを出そう」
「わあい。今日はくるみのケーキを焼いてくれるかな? パステルはくるみが好きなんだよ」
あれから、10年。
俺と旦那様は、相変わらずの毎日を過ごしていた。
ロラベルはすくすくと育って、もう家庭教師について勉強している。
レイリーの子供のパステルと仲が良く、一度婚約するという話が浮上している。
ロラベルも父親に似て顔が良い。
パステルの弟リドランも今日来ると言っていた。
レイリーはよく遊びに来てくれる、良い親友だ。
「あっ、来たよ。パステル、リドラン、こっちだよーっ」
ロラベルが駆け出して行く。
燃えるような赤い髪のパステルは、弾ける笑顔で挨拶した。
「こんにちは、エレンおじさんと、ロナウドおじさん。ロラベルも元気そうで良かった!」
「お姉ちゃん、僕にもあいさつさせてよ。こんにちは!」
「こんにちは、パステル。リドラン。ゆっくりしていってね」
子供達は庭へ駆けていく。
そこへレイリーがやってきた。
「今日はよろしくな。もしかして、ロナウドは腰が立たねえのか。ヤりすぎだろう、エレン」
「お前に言われたくない。嫁さんは三人目の赤ん坊の相手で来られないんだろう」
「ああ。赤ん坊は何度見ても可愛いからな。今日こそエレン、パステルとロラベルの婚約を承諾して貰うぞ」
「まあ、ロラベルがいいと言ったらな」
「よしっ、おーい、ロラベル! パステルと婚約するぞ。パステルをお嫁さんにしてくれ!」
ロラベルは迷っているようだ。
「あのね、おじさん。俺はお父さんみたいに男が好きかもしれない。14歳まで待てる? そしたら俺も覚悟を決めるから」
それを聞いてびっくりしたのは俺だ。
「ええっ、ロラベルって男が好きなの?」
「気になる相手が出来たと告白してきた。相手は家庭教師の青年だ。閨事の授業でムラムラしたそうだ。まだ女が駄目と決まったわけではないが、男とのセックスをまず体験してみたいそうだ」
「へええ。まだ小さいと思ってたのに、ロラベルってしっかりしてるんだね」
しょんぼりしたレイリーが戻ってくる。
うちのパステルは美人なのに……と呟くレイリーが俺の隣に座る。
「ふたなりの婚約者はいねえよな?」
「残念ながらいない。男ならリドランでも良いわけだが、パステルと仲が良いし、出来れば婚約したい所ではある。だが、セックス出来るかどうかわからないだろう。14歳まで待ってやれるか?」
「おう。パステルはロラベル大好きだからよ、聞いてみたら待つって言ってたわ。女もいける男だといいなあ、ロラベル」
「ロラベルも不安がっていたよ。でもまずは性欲の発散を男で覚えさせてからだ。その後に女を抱かせる。それは約束しているんだ」
「お前もそうやって性を覚えたのか?」
「俺が許されたわけないだろう。女だけあてがわれて、吐いた思い出しかない。だからな、お前との一夜は最高に良かったよ」
さよならのキスをした、むふふな夜のことは、旦那様ってば、よぉく覚えてるもんね。
「その割りに二回目を許されねえよな、俺。たまに俺はエレンが欲しくなる。どうしようもねえよ、未だに惚れてんだ」
「俺も大好きだよ、レイリー。一生俺を好きでいてくれ。俺もお前に惚れてるから、幸せだ」
二回目……と呟くレイリーはへしょげている。
ヤりたいんだろうなぁ、レイリー。
俺は旦那様より年上だし、良い雰囲気になったら二人きりにしてあげたいんだけど、旦那様が俺を離さないんだよね。
親友のままでいたいって気持ちもわかるけど、たまにレイリーが気の毒。
まあ、こんな話も出来るようになったんだから、仲が良いって事だろう。
子供達は庭で楽しそうに笑ってる。
俺は旦那様を見つめてみる。
恋する瞳で見ているのは、なんとレイリーではなく俺である。
契約結婚で始まった俺達だったけれど、今では愛し合っている。
俺の書いた離婚届は、とっくに破り捨てられてしまった。
「ロナウド、風が冷たくなってきたから家に入るよ。さぁ、俺につかまって」
旦那様のブルーグレーの髪がさらりと揺れる。
深い海の色の瞳が優しく俺を見つめる。
俺は旦那様に抱き上げられて、居間のソファに降ろされた。
すぐさま、ケーキと紅茶が運ばれて来る。
「パステル、くるみのケーキが届いたぞ。みんな、手を洗ってきなさい」
「はーい!」
俺はわちゃわちゃと手を洗う子供達を見て、頬を緩めた。
俺はとても幸せだ。
たくさんの幸福をくれる旦那様を、心から愛している。
こんな幸福を、10年後も、20年後も、積み重ねていきたい。
「母さん、来週レイリーおじさんの知り合いのお家で葡萄狩りはどうですか、だって。父さん、その日は母さんに無理させないでね」
「葡萄狩りか。いいね、行こう。きっとすごく美味しいよ。ね、旦那様」
「わかった。その日は気をつける。俺は仕事で行けないが、母さんと楽しんで来なさい」
「やったぁ! パステル、葡萄狩り行けるってーっ! リドランも一緒だよ!」
「わあい!」
子供達は楽しそうに笑っている。
俺は葡萄狩りの日以外は、抱き潰される覚悟を決めた。
俺の外出については、未だに良い顔をしない旦那様。
愛されているけれど、信用がちょっと足りていない気がする。
それから、みんなでケーキを食べて紅茶を飲んだ。
とても楽しいひと時だった。
その夜、抱き潰された後で、旦那様がぽつりと言う。
「俺を、愛しているか」
「心から愛しているよ、エレン。一生愛しているよ。大好きだ」
「ずっと俺の側にいてくれ、ロナウド。俺も心から愛している」
舌を絡め合い、唾液を飲み込む。
抱き締め合い、キスを繰り返す。
旦那様が幸福そうに笑ってくれるから。
俺も、最高の笑顔を返すのだ。
俺は毎日抱き潰されていた。
当然、腰は立たない。
そしてある日、レイリーがやってきた。
食堂で夕食を食べながら、レイリーのお嫁さんの産んだパステルちゃんの話題になる。
パステルちゃんとロラベルの婚約を結ぼうと言うレイリーと、気が進まない旦那様。
「どうして駄目なんだ? パステルは美人に育つぞ」
「俺みたいに男しか愛せないかもしれない。一応赤子のふたなりは探させている」
「そうかぁ。それを言われちゃ弱いな。俺はお前と家族になりたいんだがなぁ」
「ふふ。恋人じゃなく家族か。俺はまだそこまで吹っ切れてないのかもしれないな」
「だって、出産から半年くらい経ったろう。まだ離縁してないって事は、うまくやってるんじゃないのか?」
レイリーはぐっと前に乗り出した。
真剣な金の瞳が、旦那様を射抜く。
「俺はまだ、お前が好きだ、レイリー。でも、ロナウドの事も手放したくない。ロナウドは毎晩抱き潰して、逃げれないようにしてるんだよ」
「お前、何やってんだ!」
「レイリー。ロナウドは俺に付き合ってくれるそうだ。この3ヶ月は家から出さないよう厳命して過ごしているが、楽しそうに笑ってる。俺は独占欲だけで束縛してるんだ」
「契約結婚だったんだっけ? そんなの、改めて愛してるって言えばいいだろう。お前はロナウドを愛してるんだよ、エレン。そうじゃなきゃ、そこまでしない」
「こんな醜い気持ちが、愛だっていうのか、レイリー。俺は君の幸福を願うことが出来たよ。でも、ロナウド相手にはそれが出来ないんだ」
レイリーは紅茶を飲み、カラトリーを置いてエレンに言い募った。
「俺はお前をまだ愛しているよ、エレン。正直、離縁して寂しそうにしてたらまた襲ってやろうと思っていた。愛は綺麗なんかじゃねえよ、エレン。それでいいんだよ」
旦那様は、端正なお顔に一筋の涙を流した。
誰よりも信頼している男、レイリーの言葉は、頑なだった旦那様の心を確かに溶かした。
夕食後、レイリーを晩酌に誘ったが断られた。
「またセックスしたくなっちまう。口元の黒子がセクシーだな、エレン。キスしたくなる。吹っ切れてねえのは俺も同じさ」
意味ありげに見つめ合う二人。
二人っきりにしてあげようかな、と考えたところで、旦那様が言った。
「お前のことは、親友だと思ってる。セフレじゃない。だからセックスしないよ、レイリー」
「俺達、もっと早くにヤっちまえば良かったよな。一回こっきりじゃぁ、ヤり足りねえよ」
「お前がそんな野獣みたいな男だとは思わなかった。でも、気持ちはわかるつもりだ。片思いが長すぎて、なかなか吹っ切れない」
レイリーは旦那様の肩を抱いて、チュッとキスをした。
「ロナウドとよく話し合えよ。今度会ったときに不安そうにしてたら、犯っちまうからな」
レイリーは燃えるような赤い髪をなびかせて、帰って行った。
レイリーが帰った後、旦那様はギラギラした目で、俺を見た。
「風呂に入って寝室に来い。話はセックスの後だ」
「はぁい」
俺は風呂で準備してから、寝室へ行った。
バスローブを脱いだ旦那様はもう勃起していて、俺は喜んで咥えた。
6発ヤって、ベッドに転がる。
汗ばんだ肌を合わせ、キスを繰り返す。
「今日は……お前のお陰でレイリーと親友らしく過ごせた。ありがとう」
「エッチしたかったでしょ。よく我慢したね」
「お前がいるからな。耐えられた。これからもずっと俺の側にいてくれるか?」
「それって、プロポーズ?」
「俺は、逃がすつもりはないぞ。俺の顔、好きだろう。愛してるよ、ロナウド。ロラベルと一緒に、俺と生きてくれ」
「はい……っ、俺も愛してるよ、旦那様」
俺達は何度もキスをして、愛を誓い合った。
その日は寝ずにセックスしてしまい、俺の腰は当然立たない。
愛が通じたんだから、仕方ないとその時は思った。
それから一週間経っても二週間経っても俺の腰は立たないまま。
夜、セックスに応じてしまう俺も俺だが、旦那様も悪いと思う。
お昼ご飯の時に、俺は疑問をぶつけてみた。
「旦那様、俺の腰、立たないままなんだけど、どういうこと?」
「こうしておけば、俺から逃げられないだろう? お前は自由にしておくと、どこに行くか分からないからな」
「愛を誓い合ったでしょ。旦那様を愛してる。俺はどこにも行かないよ」
「信用できない。用事は全て使用人に任せてくれ。お前は俺に抱かれていればいい」
旦那様が変な方に振り切ったぞ。
話は終わり、昼食の続きを食べる。
「骨董品の仕分けと、取引先の清算をやりたいんだけど、駄目?」
「骨董品の取り扱いなら、俺の妻の事業としてやらせてやる。家に帰るのはナシだ」
「俺は絶対に帰ってくるってば! わかった、家に帰れなくていいから、自分の足で歩かせて!」
「……そのうちな。考えておく」
旦那様は本当に考えてくれたみたいで、それから三日後、苦渋の表情で宣言した。
「今夜からは3発にする。絶対に逃げるなよ」
俺は絶対に逃げないことを約束し、ゆっくり眠った。
翌朝はフラフラするものの、自分で歩けて感動した。
絶対に逃げないという約束を、俺はそれから半年守り続けて、やっと一日の休みをもぎ取った。
お目付役は、アンナ。
俺は自分の家の整理をしに帰ってきた。
まずは骨董品の仕分けをして、家の雑誌類を整理する。
アンナが手伝ってくれたので、午前中で整理は終わった。
次は酒場だ。
大まかな取引先はみんな酒場に顔を出す。
俺はホットドッグを食べながら、エールを飲みつつ、取引先の皆に説明をする。
アンナも果敢にホットドッグに挑戦していた。
「なんでえ、ロナウドがいねえと思ったら結婚してたのか。ミドガスタル伯爵夫人たぁ、大したもんだ」
「次からはミドガスタル伯爵邸に持って行ってやるからな。高く買ってくれよ!」
「お前の目利きは確かだからな。顧客もお前が戻って来て、安堵するだろう」
俺は久々に取引先と会話が出来て、満足だった。
ミドガスタル伯爵邸へ、これからは骨董品を持ってきて貰うようにした。
アンナもミドガスタル伯爵邸の説明をしてくれて、俺は明日から復職出来そうな勢いだ。
皆で飲んでいると時間があっと言う間に過ぎていく。
夜が近付いてきて、アンナに言われた。
「奥様、お時間です」
俺は仕方なくミドガスタル伯爵邸へ戻った。
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「おう、ありがとな。お茶でも飲んでいってくれ」
「いえいえ、俺は結婚祝いを届けに来ただけですから。ミドガスタル伯爵にロナウドさんの情報を売ったのは俺なんで、幸せになってくれて良かったですよ」
にこーっと笑うキックスは相変わらず良い男だ。
「ありがとうな。今は幸せだよ」
でも、キックスと寝てみたかったな、というのはある。
まあ、ないものねだりというやつだ。
キックスは身持ちが固いからな。
俺は早速骨董品の仕分けに熱中した。
アンナが紅茶を入れてくれる。
呪いのかかったものもないし、俺は値段をつけていく。
久しぶりに充実した時間を過ごして、俺はご機嫌だった。
夕食後、お風呂に入って夫婦の寝室へ行くと、旦那様が待っていた。
「ロナウド、ご機嫌だな」
「仕事らしい仕事をしたからな。俺はちゃんと帰ってきたろ。たまに酒場に行かせてくれよ」
「夜は駄目だ。昼なら良い。半年に一回な」
「わかったよ。旦那様にしては、譲歩した方なんだろうしな」
それから3発セックスをして、抱き締め合った。
「ところで、情報屋のキックスとはどういう関係だ?」
「えーと……」
俺はセックスしてみたいと思っていることまで暴露させられた。
翌日は腰が立たなかったけれど、自業自得なので仕方ない。
「母さん、また腰が立たないの? 父さんが無理させたんだね」
「ロラベル、これは父さんと母さんが仲がよい証拠だ。ロナウドの世話は俺が全部するからね。今日はパステルが遊びに来る日だ。庭にテーブルを出そう」
「わあい。今日はくるみのケーキを焼いてくれるかな? パステルはくるみが好きなんだよ」
あれから、10年。
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ロラベルはすくすくと育って、もう家庭教師について勉強している。
レイリーの子供のパステルと仲が良く、一度婚約するという話が浮上している。
ロラベルも父親に似て顔が良い。
パステルの弟リドランも今日来ると言っていた。
レイリーはよく遊びに来てくれる、良い親友だ。
「あっ、来たよ。パステル、リドラン、こっちだよーっ」
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燃えるような赤い髪のパステルは、弾ける笑顔で挨拶した。
「こんにちは、エレンおじさんと、ロナウドおじさん。ロラベルも元気そうで良かった!」
「お姉ちゃん、僕にもあいさつさせてよ。こんにちは!」
「こんにちは、パステル。リドラン。ゆっくりしていってね」
子供達は庭へ駆けていく。
そこへレイリーがやってきた。
「今日はよろしくな。もしかして、ロナウドは腰が立たねえのか。ヤりすぎだろう、エレン」
「お前に言われたくない。嫁さんは三人目の赤ん坊の相手で来られないんだろう」
「ああ。赤ん坊は何度見ても可愛いからな。今日こそエレン、パステルとロラベルの婚約を承諾して貰うぞ」
「まあ、ロラベルがいいと言ったらな」
「よしっ、おーい、ロラベル! パステルと婚約するぞ。パステルをお嫁さんにしてくれ!」
ロラベルは迷っているようだ。
「あのね、おじさん。俺はお父さんみたいに男が好きかもしれない。14歳まで待てる? そしたら俺も覚悟を決めるから」
それを聞いてびっくりしたのは俺だ。
「ええっ、ロラベルって男が好きなの?」
「気になる相手が出来たと告白してきた。相手は家庭教師の青年だ。閨事の授業でムラムラしたそうだ。まだ女が駄目と決まったわけではないが、男とのセックスをまず体験してみたいそうだ」
「へええ。まだ小さいと思ってたのに、ロラベルってしっかりしてるんだね」
しょんぼりしたレイリーが戻ってくる。
うちのパステルは美人なのに……と呟くレイリーが俺の隣に座る。
「ふたなりの婚約者はいねえよな?」
「残念ながらいない。男ならリドランでも良いわけだが、パステルと仲が良いし、出来れば婚約したい所ではある。だが、セックス出来るかどうかわからないだろう。14歳まで待ってやれるか?」
「おう。パステルはロラベル大好きだからよ、聞いてみたら待つって言ってたわ。女もいける男だといいなあ、ロラベル」
「ロラベルも不安がっていたよ。でもまずは性欲の発散を男で覚えさせてからだ。その後に女を抱かせる。それは約束しているんだ」
「お前もそうやって性を覚えたのか?」
「俺が許されたわけないだろう。女だけあてがわれて、吐いた思い出しかない。だからな、お前との一夜は最高に良かったよ」
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「その割りに二回目を許されねえよな、俺。たまに俺はエレンが欲しくなる。どうしようもねえよ、未だに惚れてんだ」
「俺も大好きだよ、レイリー。一生俺を好きでいてくれ。俺もお前に惚れてるから、幸せだ」
二回目……と呟くレイリーはへしょげている。
ヤりたいんだろうなぁ、レイリー。
俺は旦那様より年上だし、良い雰囲気になったら二人きりにしてあげたいんだけど、旦那様が俺を離さないんだよね。
親友のままでいたいって気持ちもわかるけど、たまにレイリーが気の毒。
まあ、こんな話も出来るようになったんだから、仲が良いって事だろう。
子供達は庭で楽しそうに笑ってる。
俺は旦那様を見つめてみる。
恋する瞳で見ているのは、なんとレイリーではなく俺である。
契約結婚で始まった俺達だったけれど、今では愛し合っている。
俺の書いた離婚届は、とっくに破り捨てられてしまった。
「ロナウド、風が冷たくなってきたから家に入るよ。さぁ、俺につかまって」
旦那様のブルーグレーの髪がさらりと揺れる。
深い海の色の瞳が優しく俺を見つめる。
俺は旦那様に抱き上げられて、居間のソファに降ろされた。
すぐさま、ケーキと紅茶が運ばれて来る。
「パステル、くるみのケーキが届いたぞ。みんな、手を洗ってきなさい」
「はーい!」
俺はわちゃわちゃと手を洗う子供達を見て、頬を緩めた。
俺はとても幸せだ。
たくさんの幸福をくれる旦那様を、心から愛している。
こんな幸福を、10年後も、20年後も、積み重ねていきたい。
「母さん、来週レイリーおじさんの知り合いのお家で葡萄狩りはどうですか、だって。父さん、その日は母さんに無理させないでね」
「葡萄狩りか。いいね、行こう。きっとすごく美味しいよ。ね、旦那様」
「わかった。その日は気をつける。俺は仕事で行けないが、母さんと楽しんで来なさい」
「やったぁ! パステル、葡萄狩り行けるってーっ! リドランも一緒だよ!」
「わあい!」
子供達は楽しそうに笑っている。
俺は葡萄狩りの日以外は、抱き潰される覚悟を決めた。
俺の外出については、未だに良い顔をしない旦那様。
愛されているけれど、信用がちょっと足りていない気がする。
それから、みんなでケーキを食べて紅茶を飲んだ。
とても楽しいひと時だった。
その夜、抱き潰された後で、旦那様がぽつりと言う。
「俺を、愛しているか」
「心から愛しているよ、エレン。一生愛しているよ。大好きだ」
「ずっと俺の側にいてくれ、ロナウド。俺も心から愛している」
舌を絡め合い、唾液を飲み込む。
抱き締め合い、キスを繰り返す。
旦那様が幸福そうに笑ってくれるから。
俺も、最高の笑顔を返すのだ。
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無口で武骨な次期侯爵(28)×純真無垢な第三王子(18)
《愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます》の最終話に出てきた二人の話ですが、この話だけで独立させています。
ニつの話に齟齬があるかもしれませんが、その時はそっと目をつぶってください。
Rは18と15の中間程度です(当社比)。
※付けます。
全6話の予定です。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
Xアカウント(@wawawa_o_o_)
S級エスパーは今日も不機嫌
ノルジャン
BL
低級ガイドの成瀬暖は、S級エスパーの篠原蓮司に嫌われている。少しでも篠原の役に立ちたいと、ガイディングしようとするが拒否される日々。ある日、所属しているギルドから解雇させられそうになり、焦った成瀬はなんとか自分の級を上げようとする。
何故か男の俺が王子の閨係に選ばれてしまった
まんまる
BL
貧乏男爵家の次男アルザスは、ある日父親から呼ばれ、王太子の閨係に選ばれたと言われる。
なぜ男の自分が?と戸惑いながらも、覚悟を決めて殿下の元へ行く。
しかし、殿下はただベッドに横たわり何もしてこない。
殿下には何か思いがあるようで。
《何故か男の僕が王子の閨係に選ばれました》の攻×受が立場的に逆転したお話です。
登場人物、設定は全く違います。
※ショートショート集におまけ話を上げています。そちらも是非ご一読ください。
※画像は男の子メーカーPicrewさんよりお借りしています。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
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