人形と呼ばれた僕は、黒狼殿下に溺愛される

yahagi

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町へお出かけその2

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 雑貨屋、蟹屋、散髪屋ときて、次の店は宝飾品店だった。
 落ち着いた店内に、煌びやかなジュエリーが並んでいる。
 こういう風にジュエリーを見たことがないので、どれもこれも魅力的だ。

「シェラヘザード、兎のペンダントトップがあったぞ。ルビーで出来てて、結構可愛い」

 ザイルに呼ばれて行ってみると、とても可愛い兎のペンダントトップだった。

「凄く可愛い。でも……やっぱり高いね。予算内ではあるんだけど……」

「気に入ったのなら買ってやる。今日の記念に、ネックレスにしよう」

 ザイルはペンダントトップと、別売りのチェーンまで買ってくれた。
 お店で首につけてくれたので、僕の胸にはルビーの兎が揺れている。
 僕はとっても良い気分で、次の店に歩いていった。

 おおよそ大通りを案内して貰った後、到着したのは大衆食堂だった。
 混み合う店内で4人席に座る。
 ザイルは壁を指差した。

「メニューは壁に書いてある。後は日替わりがおすすめだ」

「じゃあ僕はね、唐揚げ丼!」

「俺は日替わりで」

「俺は豚肉の赤ワイン煮込み」

「おーい、女将さん、日替わり2つと唐揚げ丼、豚肉の赤ワイン煮込みとエール4つ!」

「あいよっ、まずエール4つね!

 ドンと置かれたエールで、まず乾杯する。

「今日の冒険に、乾杯!」

「乾杯!」

 ごくっごくっごくっごくっ、ぷはーっ!
 とっても美味しい!

「今日の日替わりは豆と豚肉の煮込みね、バケットがつくよ。はい、日替わり二人前と、唐揚げ丼と、豚肉の赤ワイン煮込みね」

 唐揚げは揚げたてで、とても美味しそう。
 フォークで口に運んだら、熱々の肉汁が流れ込んできた。
 米を食べつつ、唐揚げを食べる。
 上にかかっていたソースが酸味があって美味しい。

 ダンティスとハロルドは、シェアしながら食べている。
 どっちも美味しそうだ。

「日替わり、一口食べてみるか?」

「うん。僕の唐揚げも食べていいよ」

 スプーンですくって、一口。
 豚肉は煮込まれていて、トロトロだ。
 豆はほくほくしていて、とても美味しい。

「美味しいね。豆の塩気が豚肉と合っているよ」

「唐揚げも美味いな。熱々なのがたまらねえ」

 僕達は美味しく昼食を食べた。
 店を出て、目指すは湖だ。

「北の検問所から出て、15分くらいで湖だ。屋台も出ているから、小腹がすいたらつまみ食いも出来るぞ」

「へえー。じゃあ、町の人は気軽にピクニック出来る?」

「たまにホーンラビットが出るからな。ピクニックするには、護衛が必要だ。少々腕に覚えがあれば、勝てるモンスターだ」

「そうなんだね。町の外は危険だって教わってきたけど、モンスターについては、あんまり勉強していないんだよね」

「普通はそんなもんだ。戦うことになって、初めて特性や生息地を調べる。初心者の冒険者が通る道だ」

「あっ、もしかして、冒険者ギルドで調べるの?」

「正解だ。冒険者ギルドの書庫に詳しい本がある。帰りに寄ってみよう」

 それから町を出て、15分程歩くと、遠くに雄大な湖が見えた。
 あまりに神秘的な光景で見とれてしまった。
 近くに近付くと、たくさんの屋台と冒険者、商人が見えた。

「町人っぽい人はいないみたい。ピクニックに最適な場所なんだけどな」

「ここをもうちょい歩くと丘があるぜ。人が来ない良い場所がある。今度ピクニックに行こう」

「うんっ」

 近くに行くと、食べ物の良い匂いでいっぱいだ。
 屋台の中には、骨董品や書物もある。
 こんな所で売っている本はどんな内容かと思ってぱらりと見てみると、艶本だった。
 慌てて本を閉じたけれど、ザイルに見つかってしまった。

「昼間から閨にふける話だな。これ、男と男の濡れ場が結構あるから、買うか?」

「買いません。僕は冒険の書みたいな奴がいいの!」

「サングラスのお兄さん。艶本を三冊買ったらこの冒険の書をつけてあげるよ。場所はすぐそこの王都を舞台にした冒険の書だ。写本は三冊あると聞いているから、うまくすれば宝が手に入るよ」

「どれ、見せてみろ」

 ザイルは冒険の書をざっと読んで、店主に返した。

「町中をぐるぐる回るタイプの冒険の書だな。シェラヘザードの暇つぶしには良いかもしれない。どうする? 買うか?」

「冒険の書が気になる。ザイル、三冊選んで」

「よっしゃ。エロいのを選んでやろうな」

 ザイルが選んだ三冊と冒険の書をハロルドが持ってくれた。

「湖で釣りしてる人がいるよ。あっ、釣れた!」

「この辺は色々釣れる。シェラヘザードも釣り、したいか?」

「僕は釣りっていうより、釣りしてお魚を食べる冒険がしてみたいな」

「丘にピクニックに来たときに、釣りして、魚を焼こうか。きっと楽しいぞ」

「うんっ」

 それから、林檎酒を飲んだ後、湖を後にした。
 町に戻り、大通りを通って冒険者ギルドへ寄った。
 冒険者ギルドは本に出てくるまんまで、受付に女性がおり、依頼はボードに貼られている。
 僕はサラマンダーの捕獲という依頼を読んでみた。
 生け捕りにして、テイマーがテイムするらしい。
 期間は今月一杯で、報酬は金貨5枚。
 ちょっと報酬額が少ない気がする。

 次の依頼は、サンダーバードの捕獲。
 なになに、生死は問わず。
 一匹につき銀貨5枚出す。
 上限なし。
 これは良さそうな依頼だね。

「シェラヘザード様、こちらをご覧ください」

 それは、町の絵師からの依頼だった。
 第三王子妃シェラヘザード様の似顔絵。
 秋の収穫祭のポスターに描きたいらしく、情報提供を求めている。
 報酬は要相談。

「うーん……似顔絵かぁ。別にいいんだけど、悪用出来るよね……」

「はい。シェラヘザード様のオッドアイは大変珍しいので大丈夫かと思いますが、第三者に被害があってもいけません」

「何か面白い依頼あったか?」

「ザイル。これなんだけど……」

「……似顔絵か。そうだな、どの道公開は避けられない。公務に似顔絵描きっていうのがあるんだよ。この依頼は取り下げさせよう。王宮から正式な交付があるからな」

「秋の収穫祭に間に合うように出来る?」

「明日、画家を呼んで似顔絵を描かせる。そしたら間に合うよ」

「良かった。僕も収穫祭を祝いたいし、この町の人にも僕を知って欲しい」

「良い心がけだ。収穫祭にも公務として出席しよう。お前を狙う奴が来るかもしれないが、その時はその時だ。お前のことは、必ず俺が守る」

「うん。信頼してるよ」

 それから二階の書庫で、ホーンラビットを調べた。
 大きな絵が描いてあって、情報が細かく書いてある。
 ホーンラビットは比較的暖かい場所で見つかる事が多い。
 寒い場所でも目撃情報あり。
 急所は心臓で、魔石がある。
 討伐証明は左耳。

「ザイルもここに通ったの?」

「ああ。その本を暗記する位、通い詰めたよ。情報は何より大事だ」

「黒狼少年は勉強家だったんだね。強いから実力で何とかしちゃうのかと思ったよ」

「実力まかせはなぁ、徐々にキツくなって来るんだ。情報も実力のうちだぜ」

 僕はモンスター図鑑を一通りパラパラ読んで、棚にしまった。

 冒険者ギルドを出て、王宮に戻る。
 町を抜けて、王宮に帰り着いたら、なんだか安心して力が抜けた。

 時刻は3の刻を少し過ぎていたので、食堂に入り、お茶の時間となった。
 今日のケーキはモンブラン。
 柔らかい栗のクリームに、ラム酒の香りが抜けていく。

「どうだ、町は楽しかったか?」

「うん、とっても楽しかったよ。兎のネックレス、ありがとう。収穫祭は来週でしょう。僕、今からとっても楽しみ!」

「そうか。明日は画家が来るから、宜しくな」

 僕は頷いて、紅茶を飲んだ。
 お茶の時間が終わり、僕はダンティスが磨いてくれた兎の置物を、書棚に飾った。
 書棚には艶本3冊と、冒険の書も収められている。
 首にはザイルが買ってくれた兎のネックレスがある。
 今日はとても楽しかった。
 僕は冒険の書を取り出し、ソファで読み始めた。
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