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いちご狩りとお茶会
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そんなわけで、海辺の町での騒動を乗り越えて、王宮に戻ってきた僕達。
まず出迎えてくれたのは、ザイルの乳兄弟のウェインだった。
ウェインは海辺の町での騒動も本にするつもりらしい。
僕とザイルは、なるべく詳しく説明した。
「ふむふむ、それでパンサーと賊は逃げていったんだね」
「うん。後は騎士団が追っていって、僕達はタウンハウスに帰ってきた感じかな。夕飯が蟹のフルコースでね、滅茶苦茶美味しかったよ」
「ふふ。パンサーという敵のことも興味深いけれど、全身火に包まれたって言うシェラヘザードが夢中なのは蟹なんだね。火傷もそんなに酷くないようで、安心したよ」
「まだ包帯は巻いてるけど、少し赤くなった程度なんだ。数日もすれば治るだろうってお医者様も言っていたよ」
ウェインは細かくメモを取っていたけれど、目線を上げて微笑んだ。
「ザイルに愛想を尽かさないでくれて、ありがとう。ザイルの敵だった男からしたら、ザイルは恐ろしい男なんだろうね」
「もう戦争は終わったのに、しつこいよね。僕はザイルから離れないし、ずっと愛し続けるよ。パンサーはまた現れるだろうけど、負けないんだから!」
「その意気だよ、シェラヘザード。君がいれば、ザイルは幸せだ。そんな賊なんかに、負けないよ」
ウェインはにっこり笑って、一冊の本を手渡した。
黒狼夫妻の冒険~鏡の間と波乱万丈な結婚式~
タイトルには、そう書いてある。
「今週発売予定なんだ。波乱万丈な結婚式の歌劇も、同時に始まるよ。歌劇は是非見て欲しいな」
「ありがとう。ぜひ見に行くよ」
「じゃあ、またね。ザイルは本当に良いお嫁さんを貰ったね。大事にするんだよ」
「わかってる。滅茶苦茶大事にするよ」
ザイルは優しい顔で僕を見ていた。
王子妃教育も落ち着いてきた頃、季節は冬になり、随分寒くなってきた。
そんなある日、ザイルから嬉しいお誘いがあった。
「温室でいちご狩りしようぜ。王子妃教育は、今日はお休みだ」
「嬉しいよ。いちご狩り、楽しみだ」
僕は動きやすい格好に着替えて、髪を三つ編みに編んだ。
胸にはルビーの兎が輝いている。
僕とザイル、ダンティスとハロルドは、王宮の庭をぐるりと回り、温室にやってきた。
「うわあ、思っていたより大きな温室だね。いちごがいっぱいだ!」
「十分甘いから、そのまま食えるぞ。さあ、食おうぜ」
「うんっ」
僕達は散らばって、いちごを摘み始めた。
僕も一つ摘まんで、口に入れる。
じゅわっと、爽やかな甘味とみずみずしさが口内に広がる。
「すごく甘い! とっても美味しいよ!」
僕は大喜びでいちごを食べた。
ちょっと食べすぎかな、と思うくらい食べて、椅子に座って休憩する。
僕はいちご狩りが大好きになっていた。
「すっごく楽しかったよ。いちごは甘くて美味しいし、摘みたてを味わえるのが良いね!」
「気に入ったみたいで良かったよ。王子妃教育も終盤だろう? もう一息、頑張ってな」
「ありがとう、ザイル。僕、頑張るよ」
いちご狩りを経て、僕は王子妃教育を頑張った。
たまに観劇を見に行ったり、いちご狩りをしながら、王子妃教育を終わらせた頃には春になっていた。
僕の王子妃教育が終了したので、お祝いにミレトリア様とファーゼス様がお茶会を開いて下さった。
「王子妃教育が終わって、やっとゆっくり出来るわね、シェラヘザード。あなた達は狙われているから、視察も最低限しか行けないのよね。少し窮屈かしら?」
「ミレトリア様、ありがとうございます。視察にはたまにしか行けませんが、民と触れ合うことが出来て楽しいです。今度、お忍びで町に連れて行って貰えるんです。息抜きもザイルが考えてくれてます」
「愛されてるねえ、シェラヘザード。ザイルは君に何かしてあげたくてたまらないんだろうね。王子妃教育が終了したから、抱き潰される事も覚悟しておくといい」
「はい、ありがとうございます、ファーゼス様。ザイルにたくさん愛して貰えるから、僕はとっても幸せです」
僕はいちごのケーキを食べながら、香り高い紅茶を一口飲んだ。
「警備の問題があるけれど、公務でアメジストダンジョンの視察があるじゃない? 王宮ではなくて、町の宿屋に泊まるんじゃないかしら。いつもとは違う場所で愛されるのも良いものよ」
「ミレトリア様はここ三ヶ月ほど公務に集中なされていらっしゃいましたよね。ぜんぜんお顔を拝見致しませんでした。それほど難しい問題が持ち上がったのですか?」
「実はね、懐妊したの。悪阻が酷くて顔を出せなかったの。今は安定期に入ったから大丈夫よ。ふふふ、旦那様が大喜びでね、あの怖いお顔で笑っていらしたわ」
「それはおめでとうございます。王子様か姫君か、待ち遠しいですね」
「おめでとうございます、ミレトリア様。お身体をお大事になさってください」
「ありがとう。今日は久しぶりにお喋りを楽しめるわ。ケーキのおかわりも遠慮なく申し付けて頂戴ね」
それから、僕達は色んな話をした。
ファーゼス様は公務で町に出た際に、素敵な指輪を旦那様から贈られたそうだ。
大きなダイヤモンドのついた指輪は、ファーゼス様の左手で輝いている。
ミレトリア様は、お熱い事ね、と笑った。
僕はいちご狩りに行った事を話した。
甘くてみずみずしいいちごが食べ放題で、つい食べ過ぎたと話したら、ミレトリア様もファーゼス様も同意してくれた。
「いちご狩りは私もうちの子供たちも大好きよ。とっても美味しいし、楽しいわよね」
「俺も夫といちご狩りに行くけど、つい食べ過ぎてしまうよ。本当に美味しいよな」
僕はまた行きたいとはしゃいで喋った。
気付けば二個目のケーキを食べ終えて、僕は紅茶を飲んでいた。
「話は尽きないけれど、そろそろ時間ね。また集まりましょうね」
ミレトリア様はにこやかに微笑み、解散の宣言をした。
夜、さっそくザイルにミレトリア様のご懐妊の話をすると、ザイルも嬉しそうに微笑んだ。
「そりゃあめでたいな。兄様もさぞお喜びだろう。明日花を用意させよう」
「赤ちゃんの産着を縫ってお渡しするのは失礼かな?」
「作れるんなら、是非頼む。姉様もお喜びになるだろう」
僕はしばらく産着作りに精を出す事に決めた。
それから、しばらくして、アメジストダンジョン行きの日程が決まった。
「警備の関係で遅くなったが、アメジストダンジョンへ行くぞ。ダンジョンの中で一泊、町の宿屋で一泊する。装備も揃えてあるし、ダンティスとハロルドも一緒だ」
「うわぁい、やったぁ! 僕もスライムと戦いたい!」
「アメジストダンジョンは弱いモンスターしか出ないとはいえ、当たればダメージを受けるからな。シェラヘザードは一人で動くのは禁止だぞ」
「わかってる。ザイルから絶対に離れないから。でも、そしたら夜はどうするの? 見張りを立てる?」
「モンスターが寄ってこないセーフティエリアがある。そこにテントを張って寝る感じだな」
「すっごくわくわくするよ。僕がダンジョンに行けるなんて、夢みたいだ」
僕は興奮冷めやらず、ザイルの胸に飛び込んだ。
小さな頃から、ずっと冒険に憧れてきた。
町への外出も許されない僕にとって、ダンジョンは夢のまた夢だった。
この国に来て、僕は何度感動したことだろう。
夢が叶っていく幸せは、何度経験しても慣れる事はない。
僕はザイルの胸に抱きついて、少し涙ぐんだ。
アメジストダンジョンの視察当日。
僕は身軽な服装に胸当て、腕と足に防具をつけて、短剣も装備した。
ダンティスとハロルドも冒険者のように防具を身につけ、長剣を装備している。
「ダンティスとハロルドに戦闘はまかせるぞ。シェラヘザードは俺と一緒に行動な。怪我に気を付けて進もう」
「はい、かしこまりました」
「ダンティス、ハロルド。宜しくね!」
「お任せください、シェラヘザード様」
アメジストダンジョンのある町まで三時間くらいだ。
僕達は馬車に乗り、騎士団と共に出発した。
町に到着したのは、お昼時だった。
僕達は町長さんの屋敷に挨拶に訪れた。
「黒狼殿下、シェラヘザード様。ようこそ、この町へおいでくださいました。アメジストダンジョンは最弱のダンジョンですが、初心者には根強い人気を誇ります。どうぞごゆっくり視察して下さい」
町長さんのお宅でお昼ご飯を頂いた後、明後日泊まる宿を取りに行った。
二泊でダブルベッドを2部屋取ったザイルは、鍵をダンティスに渡して、荷物を運び入れた。
「じゃあ、行くか。テントは背負っていくぞ。シェラヘザードはポーションを持つといい。よし、準備は整ったな」
「こちらも、準備は出来ています」
「よぉし、出発だ!」
胸がドキドキしている。
先頭はダンティスとハロルドだ。
宿屋を出て、アメジストダンジョンへ向かう。
途中にある八百屋と肉屋で野菜と肉を買い、荷物に詰める。
「これから本物の冒険をするんだね。ああ、胸がドキドキするよ」
「一階はスライムとホーンラビットが出る。ダンジョンは死体が残らずに、ドロップアイテムに変わる。時々コインを落とすこともあるぞ」
そして、僕達はアメジストダンジョンに入った。
中は広々とした平原が広がっている。
空があり、太陽がある。
「なんだか、ダンジョンじゃないみたいだ。あっ、あれって、スライム?」
「スライムだ。近付くと襲ってくるぞ。ダンティス、お手本を見せてやってくれ」
「行きます……はっ」
ダンティスが近付くと、スライムが襲ってきた。
ぽよんぽよん。
スライムの攻撃を避けて、ダンティスが剣を振り上げる。
ぽよんぽよん。
ザクッ。
ダンティスの剣がスライムのコアを貫いた。
スライムはキラキラと消えていく。
カラン。
コアが一個落ちた。
ドロップアイテムだ。
「さて、シェラヘザードもやってみるか」
「うんっ」
僕は次のスライムに近付いた。
まず出迎えてくれたのは、ザイルの乳兄弟のウェインだった。
ウェインは海辺の町での騒動も本にするつもりらしい。
僕とザイルは、なるべく詳しく説明した。
「ふむふむ、それでパンサーと賊は逃げていったんだね」
「うん。後は騎士団が追っていって、僕達はタウンハウスに帰ってきた感じかな。夕飯が蟹のフルコースでね、滅茶苦茶美味しかったよ」
「ふふ。パンサーという敵のことも興味深いけれど、全身火に包まれたって言うシェラヘザードが夢中なのは蟹なんだね。火傷もそんなに酷くないようで、安心したよ」
「まだ包帯は巻いてるけど、少し赤くなった程度なんだ。数日もすれば治るだろうってお医者様も言っていたよ」
ウェインは細かくメモを取っていたけれど、目線を上げて微笑んだ。
「ザイルに愛想を尽かさないでくれて、ありがとう。ザイルの敵だった男からしたら、ザイルは恐ろしい男なんだろうね」
「もう戦争は終わったのに、しつこいよね。僕はザイルから離れないし、ずっと愛し続けるよ。パンサーはまた現れるだろうけど、負けないんだから!」
「その意気だよ、シェラヘザード。君がいれば、ザイルは幸せだ。そんな賊なんかに、負けないよ」
ウェインはにっこり笑って、一冊の本を手渡した。
黒狼夫妻の冒険~鏡の間と波乱万丈な結婚式~
タイトルには、そう書いてある。
「今週発売予定なんだ。波乱万丈な結婚式の歌劇も、同時に始まるよ。歌劇は是非見て欲しいな」
「ありがとう。ぜひ見に行くよ」
「じゃあ、またね。ザイルは本当に良いお嫁さんを貰ったね。大事にするんだよ」
「わかってる。滅茶苦茶大事にするよ」
ザイルは優しい顔で僕を見ていた。
王子妃教育も落ち着いてきた頃、季節は冬になり、随分寒くなってきた。
そんなある日、ザイルから嬉しいお誘いがあった。
「温室でいちご狩りしようぜ。王子妃教育は、今日はお休みだ」
「嬉しいよ。いちご狩り、楽しみだ」
僕は動きやすい格好に着替えて、髪を三つ編みに編んだ。
胸にはルビーの兎が輝いている。
僕とザイル、ダンティスとハロルドは、王宮の庭をぐるりと回り、温室にやってきた。
「うわあ、思っていたより大きな温室だね。いちごがいっぱいだ!」
「十分甘いから、そのまま食えるぞ。さあ、食おうぜ」
「うんっ」
僕達は散らばって、いちごを摘み始めた。
僕も一つ摘まんで、口に入れる。
じゅわっと、爽やかな甘味とみずみずしさが口内に広がる。
「すごく甘い! とっても美味しいよ!」
僕は大喜びでいちごを食べた。
ちょっと食べすぎかな、と思うくらい食べて、椅子に座って休憩する。
僕はいちご狩りが大好きになっていた。
「すっごく楽しかったよ。いちごは甘くて美味しいし、摘みたてを味わえるのが良いね!」
「気に入ったみたいで良かったよ。王子妃教育も終盤だろう? もう一息、頑張ってな」
「ありがとう、ザイル。僕、頑張るよ」
いちご狩りを経て、僕は王子妃教育を頑張った。
たまに観劇を見に行ったり、いちご狩りをしながら、王子妃教育を終わらせた頃には春になっていた。
僕の王子妃教育が終了したので、お祝いにミレトリア様とファーゼス様がお茶会を開いて下さった。
「王子妃教育が終わって、やっとゆっくり出来るわね、シェラヘザード。あなた達は狙われているから、視察も最低限しか行けないのよね。少し窮屈かしら?」
「ミレトリア様、ありがとうございます。視察にはたまにしか行けませんが、民と触れ合うことが出来て楽しいです。今度、お忍びで町に連れて行って貰えるんです。息抜きもザイルが考えてくれてます」
「愛されてるねえ、シェラヘザード。ザイルは君に何かしてあげたくてたまらないんだろうね。王子妃教育が終了したから、抱き潰される事も覚悟しておくといい」
「はい、ありがとうございます、ファーゼス様。ザイルにたくさん愛して貰えるから、僕はとっても幸せです」
僕はいちごのケーキを食べながら、香り高い紅茶を一口飲んだ。
「警備の問題があるけれど、公務でアメジストダンジョンの視察があるじゃない? 王宮ではなくて、町の宿屋に泊まるんじゃないかしら。いつもとは違う場所で愛されるのも良いものよ」
「ミレトリア様はここ三ヶ月ほど公務に集中なされていらっしゃいましたよね。ぜんぜんお顔を拝見致しませんでした。それほど難しい問題が持ち上がったのですか?」
「実はね、懐妊したの。悪阻が酷くて顔を出せなかったの。今は安定期に入ったから大丈夫よ。ふふふ、旦那様が大喜びでね、あの怖いお顔で笑っていらしたわ」
「それはおめでとうございます。王子様か姫君か、待ち遠しいですね」
「おめでとうございます、ミレトリア様。お身体をお大事になさってください」
「ありがとう。今日は久しぶりにお喋りを楽しめるわ。ケーキのおかわりも遠慮なく申し付けて頂戴ね」
それから、僕達は色んな話をした。
ファーゼス様は公務で町に出た際に、素敵な指輪を旦那様から贈られたそうだ。
大きなダイヤモンドのついた指輪は、ファーゼス様の左手で輝いている。
ミレトリア様は、お熱い事ね、と笑った。
僕はいちご狩りに行った事を話した。
甘くてみずみずしいいちごが食べ放題で、つい食べ過ぎたと話したら、ミレトリア様もファーゼス様も同意してくれた。
「いちご狩りは私もうちの子供たちも大好きよ。とっても美味しいし、楽しいわよね」
「俺も夫といちご狩りに行くけど、つい食べ過ぎてしまうよ。本当に美味しいよな」
僕はまた行きたいとはしゃいで喋った。
気付けば二個目のケーキを食べ終えて、僕は紅茶を飲んでいた。
「話は尽きないけれど、そろそろ時間ね。また集まりましょうね」
ミレトリア様はにこやかに微笑み、解散の宣言をした。
夜、さっそくザイルにミレトリア様のご懐妊の話をすると、ザイルも嬉しそうに微笑んだ。
「そりゃあめでたいな。兄様もさぞお喜びだろう。明日花を用意させよう」
「赤ちゃんの産着を縫ってお渡しするのは失礼かな?」
「作れるんなら、是非頼む。姉様もお喜びになるだろう」
僕はしばらく産着作りに精を出す事に決めた。
それから、しばらくして、アメジストダンジョン行きの日程が決まった。
「警備の関係で遅くなったが、アメジストダンジョンへ行くぞ。ダンジョンの中で一泊、町の宿屋で一泊する。装備も揃えてあるし、ダンティスとハロルドも一緒だ」
「うわぁい、やったぁ! 僕もスライムと戦いたい!」
「アメジストダンジョンは弱いモンスターしか出ないとはいえ、当たればダメージを受けるからな。シェラヘザードは一人で動くのは禁止だぞ」
「わかってる。ザイルから絶対に離れないから。でも、そしたら夜はどうするの? 見張りを立てる?」
「モンスターが寄ってこないセーフティエリアがある。そこにテントを張って寝る感じだな」
「すっごくわくわくするよ。僕がダンジョンに行けるなんて、夢みたいだ」
僕は興奮冷めやらず、ザイルの胸に飛び込んだ。
小さな頃から、ずっと冒険に憧れてきた。
町への外出も許されない僕にとって、ダンジョンは夢のまた夢だった。
この国に来て、僕は何度感動したことだろう。
夢が叶っていく幸せは、何度経験しても慣れる事はない。
僕はザイルの胸に抱きついて、少し涙ぐんだ。
アメジストダンジョンの視察当日。
僕は身軽な服装に胸当て、腕と足に防具をつけて、短剣も装備した。
ダンティスとハロルドも冒険者のように防具を身につけ、長剣を装備している。
「ダンティスとハロルドに戦闘はまかせるぞ。シェラヘザードは俺と一緒に行動な。怪我に気を付けて進もう」
「はい、かしこまりました」
「ダンティス、ハロルド。宜しくね!」
「お任せください、シェラヘザード様」
アメジストダンジョンのある町まで三時間くらいだ。
僕達は馬車に乗り、騎士団と共に出発した。
町に到着したのは、お昼時だった。
僕達は町長さんの屋敷に挨拶に訪れた。
「黒狼殿下、シェラヘザード様。ようこそ、この町へおいでくださいました。アメジストダンジョンは最弱のダンジョンですが、初心者には根強い人気を誇ります。どうぞごゆっくり視察して下さい」
町長さんのお宅でお昼ご飯を頂いた後、明後日泊まる宿を取りに行った。
二泊でダブルベッドを2部屋取ったザイルは、鍵をダンティスに渡して、荷物を運び入れた。
「じゃあ、行くか。テントは背負っていくぞ。シェラヘザードはポーションを持つといい。よし、準備は整ったな」
「こちらも、準備は出来ています」
「よぉし、出発だ!」
胸がドキドキしている。
先頭はダンティスとハロルドだ。
宿屋を出て、アメジストダンジョンへ向かう。
途中にある八百屋と肉屋で野菜と肉を買い、荷物に詰める。
「これから本物の冒険をするんだね。ああ、胸がドキドキするよ」
「一階はスライムとホーンラビットが出る。ダンジョンは死体が残らずに、ドロップアイテムに変わる。時々コインを落とすこともあるぞ」
そして、僕達はアメジストダンジョンに入った。
中は広々とした平原が広がっている。
空があり、太陽がある。
「なんだか、ダンジョンじゃないみたいだ。あっ、あれって、スライム?」
「スライムだ。近付くと襲ってくるぞ。ダンティス、お手本を見せてやってくれ」
「行きます……はっ」
ダンティスが近付くと、スライムが襲ってきた。
ぽよんぽよん。
スライムの攻撃を避けて、ダンティスが剣を振り上げる。
ぽよんぽよん。
ザクッ。
ダンティスの剣がスライムのコアを貫いた。
スライムはキラキラと消えていく。
カラン。
コアが一個落ちた。
ドロップアイテムだ。
「さて、シェラヘザードもやってみるか」
「うんっ」
僕は次のスライムに近付いた。
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