人形と呼ばれた僕は、黒狼殿下に溺愛される

yahagi

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冒険の終わり

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「ダンティスとハロルドは、どうしてダンジョンに慣れているの?」

「俺達の剣の師匠の方針です。生き残るためにとにかく戦えと、ダンジョンに放り込まれました。あんまり楽しかった思い出はないですね」

「俺とダンティスは同じ剣の師匠に習っていまして、俺もダンティスも無茶苦茶しごかれました。野営は当たり前だったし、お小遣いも少なくて、高いドロップアイテムの敵は優先的に狩っていましたね」

「なんだか遠い目をしているね。僕の専属に着く前の話でしょう? 大変だったんだね、二人とも」

 ダンティスとハロルドは苦笑している。
 
「俺の場合、町に戻る度にダンティスがセックスをさせてくれるから、結構楽しかったですけどね。冒険の後のダンティスのご飯も美味しかったし、良い思い出です」

「じゃあ、二人のなれそめはダンジョンなのか?」

 ザイルの問いに、ハロルドが答える。

「セックスをするようになったきっかけはダンジョンでしたね。飲み歩くお金もなくて、一杯ひっかけたら宿屋でずっとセックスしていました。まだ付き合っていない頃ですね」

「とにかく毎日ギリギリで生きていたので、恋愛について考えられるようになったのは、ダンジョンを卒業してからでしたね。ハロルドが思ったより本気でびっくりした覚えがあります」

 ダンティスは野菜を切って鍋に入れている。
 同じ様に肉も切り、鍋に入れて水を入れた。
 鍋を火にかけて、煮込んでいく。

「ダンティスが鈍いんだよ。まあ、今では俺の嫁だし、鈍いのもダンティスらしくて良いけどね」

 ハロルドはにっこり笑ってバケットをあぶり始めた。
 バターを溶かして、バケットに染み込ませる。

「良い匂いだ。アンチョビの缶詰めも持ってきたから、ちょっと焼かせて貰うぜ。これに醤油をちょっと垂らすとうまいんだよ」

 鍋はぐつぐつ煮込まれて、とっても美味しそう。
 しばらくしてシチューが出来上がったと言って、ダンティスがお椀によそってくれた。
 アンチョビもあぶったバケットに乗せて、いただきます。

「んう~、美味しい。シチューもトロトロだ」

「シェラヘザードは初めてのダンジョンだもんな。どうだった?」

「すっごく楽しかった! 素早いモンスターは怖いけど、スライムとボーンナイトは倒せたし、すごく満足してる! 連れてきてくれてありがとう!」

「シェラヘザードが楽しめたんなら何よりだ。明日も帰り道で、ボーンナイトとスライムを倒そう」

「うんっ」

 僕はお椀の中身を平らげて、おかわりをした。
 バケットもおかわりして食べて、お腹いっぱい。
 後片付けが済んだら、就寝だ。
 ダンティスとハロルドにおやすみの挨拶をして、僕はテントに入った。

 僕は寝袋を広げて、寝てみた。
 思ったより寝心地は悪くない。

「シェラヘザード、どうだ、寝袋は」

「芋虫になった気分。思ったより眠れそう」

「俺が出口側で寝るからな。何かあったら起こしてくれ」

 僕達は寝袋で寝始めた。
 興奮して寝付けないかもと思ったけれど、身体は疲れていたようで、すんなり寝付く事が出来た。

 朝起きて、ダンティスの作ったサンドイッチを食べる。
 レタスとトマトがたっぷりで美味しい。

「帰りは、モンスターを蹴散らして進もう。ボーンナイトとスライムは、じっくり戦って良いぞ」

 ザイルの言葉に、皆が頷く。
 テントをたたみ、後片付けをして、セーフティエリアを後にする。

「もっと奥に進もうと思ったら、一泊じゃ無理だね。冒険者って大変だなぁ」

「そうだな。風呂に入れないし、戦闘をすると汚れる。着替えも持ってきているが、限度があるな」

 僕達は階段を上がり、麻痺花のエリアに入った。
 ダンティスが前に出て、麻痺花と対峙する。
 何度見ても、大きく口を開けて、よだれを垂らす姿は、凶悪そのものだ。
 麻痺薬をうまく避けて、麻痺花を切り捨てるダンティス。
 ハロルドも蔦で攻撃してくる麻痺花をうまく避けて、本体に攻撃を入れていた。

 麻痺花エリアを抜けると、ボーンナイトがわらわらと襲いかかって来る。
 ダンティスが前に出て、迎え撃つ。
 僕もこぼれたボーンナイトを相手に、剣を振るった。

「えいやぁっ!」

 剣が当たると、バラバラに壊れるボーンナイト。
 僕は連続でボーンナイトを倒し、束の間の冒険者気分を味わった。

「せいっ! ……これで、全部かな」

「ああ。よく頑張ったな、シェラヘザード。じゃあ、上の階へ行こう」

 僕達は適度に敵を切り捨てながら、一階に戻って来た。
 ホーンラビットを切り捨てて進み、やっとスライムエリアにたどり着いた。

「えいっ!」

 僕はスライムに切りかかる。
 コアを刺さないといけないので、結構難しい。
 ダンティスとハロルド、ザイルは一太刀で倒しているが、僕は何回も振りかぶる必要があった。

「えいっ! やあっ! せいっ!」

 カラン。
 スライムのコアが落ちた。
 ドロップアイテムを拾い、次のスライムに切りかかる。
 僕の冒険に、スライムは丁度良い敵だった。

 それから1時間後。
 スライムのコアを大量に獲得した僕がいた。
 いっぱい倒せて、大満足。

「いっぱい倒したな。冒険者ギルドへ行って換金して貰おう」

 ザイルの言葉に頷いて、僕達はアメジストダンジョンを出た。

「太陽が眩しいね。ダンジョンにも太陽はあったけど、ちょっと違うね」

「そうだな。ダンジョンの中は不思議に満ちている。長時間潜っていると、より違いを感じると思う」

 冒険者ギルドはすぐに見つかった。
 中に入ると、受付があり、依頼のボードがあり、人がそこそこ集まっている。

「シェラヘザード様、あちらの受付へどうぞ」

 ダンティスに促され、僕は受付に顔を出した。

「次の方、どうぞ」

「あのっ、換金お願いしますっ」

 僕はスライムのコアやぼろぼろの剣を出した。
 ダンティスやハロルド、ザイルが、各々狩ったモンスターのドロップアイテムを机に出す。
 結構な数を机の上に出し終えたら、5番の札を渡され、少々待つことになった。

「ドキドキするねっ。いくらぐらいになるかなあ」

「少なくとも、銀貨にはなるだろう。換金したら昼飯だな。俺はエールが飲みてえ」

「5番の方、いらっしゃいますか~」

「あっ、呼ばれてる。はい、5番です」

 僕は札を出し、受付へ立った。

「銀貨3枚と、銅貨4枚になります。どうぞご確認下さい」

「ありがとう!」

 僕はお金をしまい込み、ザイルと共に冒険者ギルドを出た。
 ダンティスとハロルドも後についてくる。

「分厚いステーキを出す飯屋へ行こう。冒険の後だ。パーッと行こうぜ」

 ザイルが連れてきてくれたお店は、繁盛していて、少し並んだ。
 中に入れた時にはお腹ぺこぺこで、僕は迷わずステーキとご飯のセットにした。

「俺はステーキ二枚とバケットにエール」

 ザイルに続き、注文する。

「僕はステーキとご飯のセット。エールも下さい」

「ステーキ二枚とバケット、エールをそれぞれ二人前ずつ」

「あいよっ! まずはエール4つね」

 ドドンと置かれたエールを手に取る。

「じゃあ、アメジストダンジョンの冒険成功を祝って。乾杯!」

「乾杯!」

 グラスをぶつけ合い、ぐっと飲む。
 ごくっごくっごくっぷはーっ!
 ああ、美味しい。
 そこにステーキが届いた。

「はい、まずはステーキ一枚ね。ご飯も置いておくよ」

 焼きたての分厚いステーキがドンと置かれた。
 ご飯も大盛りだ。
 僕は早速ナイフで切り分け、お肉を口に運んだ。

「美味しいっ! お肉はじゅわっとジューシーで、ステーキソースがさっぱりしてるよ」

「ステーキ二枚を3つ、はいよっと。バケットもここ、置いておくよ」

 ザイル達も食べ始めて、お肉がとっても美味しいという話になった。

「うちはアメジストダンジョン6階で、ドロップアイテムとして落ちる肉を使ってるんだ。他ではなかなか味わえないだろうね」

 女将さんは胸を張ってそう言った。
 綺麗に食べきった僕達は、店を出た。

「宿屋に戻って、風呂に入ろうか。午後は自由行動にしよう」

「僕は宿屋でお昼寝しているよ。ザイルも一緒にどう?」

「いいぜ。じゃあ、俺達は昼寝しとく。夜飯は5の刻に合流しよう。宿屋の前で待ち合わせな」

 僕達は頷いて、まずは宿屋の部屋に入った。
 お風呂を沸かして、まず僕からお風呂に入る。
 湯船は二人で浸かれない広さだったので、一人ずつ入る事にした。
 お風呂から上がったら、柔らかいベッドに寝そべる。
 昨夜はよく眠れたけれど、ちゃんとしたベッドに寝そべると、たちまち睡魔が襲ってくる。
 うとうとしていたら、ザイルがお風呂から出てきて、僕を抱き締めた。

「おやすみ、シェラヘザード。スライム相手に随分頑張っていたから、疲れが出たんだろう」

 ザイルの優しい声に誘われて、僕はすやすや眠ってしまった。

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