【完結】探偵屋の恋女房〜ヤクザのお抱え探偵と下町娘の、昭和チックな幼なじみLOVE

桐乃乱

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第一章

【三】小春―探偵屋の告白 ③

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『あいつが怖くないのかよ?』
 いじめっ子は私の前でオシッコを漏らして以来、めったに話しかけなくなった。アーケードですれ違いざまに投げかけられたのは愚問だった。
『テッちゃんは優しいよ。大きなクマさんみたいで可愛いでしょ?』
 私の返事に、トモキはポカンと口を開けていたっけ……。

 ハッ。回想してる場合じゃなかった。私、仕事で汗まみれだよー。

「テッちゃんダメ。汚いよ!」
「んんん。おいしいぞ?」
「テッちゃん。酔ってるんだね……」
「小春はかわいいなぁ。食べちまいたい」

 眉をひそめたら、そこをベロリと舐められた。
 チュ。チュ。そのまま両まぶたにキスの刻印をされて、再び右頬から舐めあげられる。舐めてついばまれ、そして顎へと移っていく。味わいながら喉を鳴らすテッちゃんは、まるで熊みたい。
 血まみれの大きな手がTシャツを捲ってきたぞ。こら、手慣れすぎでしょ。色気皆無のスポーツブラを押し上げられて、膨らみが晒される。先端のつぼみは恥ずかしさで硬くなっていた。目を充血させたテッちゃんが、獲物を狙う野獣みたいにロックオンしている。

 やっぱりダメダメダメ~。
 経験のない私と千佳ちゃんは、漫画を読みながら互いの初体験(妄想)を打ち明けあった。千佳ちゃんは海辺の別荘で月明かりに照らされながら結ばれるのが夢。そして私は薔薇の花びらを浮かべた浴槽で身を清めてから、夜景の見える大きなベッドでマッチョ探偵と裸体を絡ませる……はずだった。
 なのに、なのに。血まみれマッチョベアーが尖りをパクリとしちゃったぞ! 
 ジュル。ぴちゃ。ぴちゃ。

「いやぁ。しょっぱいからぁ!」
 首筋がゾクゾクして力が抜けていく。頬が焼けるように熱い。
「イチゴより甘いぞ。んん」
「こら、ダメ。薔薇の花びらのお風呂がさき~」

 抗議は傲慢な舌先でかわされる。乳輪をなぞられて、くすぐったさと不思議なうずきに声が出ちゃう。

「あぁん。あっ。はぁん。だめぇ……」
「風呂はあとだ。薔薇でも桜でもキウイでも、好きな花びらを入れてやるぞ」
「それ、テッちゃん家にある木だから~」

 花京院家には果樹園や素敵なイングリッシュガーデンがある。赤い実を吸われながら乳房を揉みしだかれて、身をよじることもできない。私のお腹を甘噛みしながら下へ、下へと頭を下げていくテッちゃん。

「チッ。ジャマだぞ」

 彼はジーンズに抗議してパンティもろとも毟(むし)り取った。転がされた私は、辛うじてダブルベッドの端っこでうつ伏せの体勢に。ロ、ロマンスの欠片もないよ~。ひい~。

 酔っ払った客は、私のことなんか何とも思ってないくせに「好きだよ」とか「付き合って」とか、終いには両親の目を盗んで「お小遣いあげるから抱かせて」なんて誘ってくる。お酒は欲望を暴走させる。テッちゃんも然り。床に落ちたジーンズを拾って逃げるんだ、小春。後で謝られるなんて、惨めでしかない。
 ほふく前進する私の背後から、熱い肉体が覆い被さった。むき出しのお尻に塊が押し付けられる。私の身体にはない、長くて熱い隆起……。

「小春、好きだ」

 耳元で、十三年間待ちわびた言葉が魔法のように飛び出した。
 だからぁ、ロマンスはどこなんじゃ~。この酔っ払いめ~!

「うそだぁ。私を振ったじゃない」
「蓮さんに命令されてる……。本当は、小春が卒業したら俺は……」
「蓮さん? 組長さんに?」なぜ?
「レイのせいで俺は……くそっ。新寺しんてら弁護士が余計なことをするから……」
「レイ……って、美人のホステスさん?」

 振り向いたら、手で口を塞がれた。

「むむむむ~」
「うう、小春。頼むから何も聞かないでくれ……」

 これ以上、組に関わる内容を聞いたらいけない。
 小娘の私でも直感した――。

 でも、長い指が股間を探ってるのはストップ、ストップ~!
 指の腹が割れ目をなぞると、電流が走った。ああ……私、濡れてる。男の指が蜜を絡め取り、驚くほど繊細な力加減で輪を描く。何度も、何度もこすり、くちゅくちゅと音を立てて茂みに隠された芽を苛む。頭を撫でられる何百倍も気持ちいい……。
 他人から与えられるピリピリした快感が鮮烈すぎて、怖くなった。

「むん、むむむ~」

 そこを入念にお手入れしなくちゃと思っていたけれど、まだ実行していないし、アイテムもゲットしていない。
 テッちゃんも私が好き。やっと相思相愛になれた。でも、私はテッちゃんと初デートすらしてないよ。
 映画館や水族館、遊園地のイチャコラはどこ行ったー?
 ハッ。ダメだよ。私は借金トンズラ王の娘。そんな資格はない。

 私はテッちゃんの恋人にはなれないんだ――。

 二人とも汗だくで、血の匂いが寝室に充満していた。もがいても鋼鉄の肉体はビクともしない。
 どうしよう。死んだ振りでもしたら、酔っ払いは手を離してくれるのか? 
 だらりと四肢を投げ出したら横抱きにされてしまった。彼が身を屈(かが)めると、おでことおでこがくっついた。無精ひげが伸びて凄くワイルドだ。眼光は探偵屋になって力強くなった。
 間髪入れずに乳房を揉まれ、親指でつぼみを擦られる。重い腕が再び股間に伸びてきた。お尻には下着の中で膨らんだ彼の逸物が当たっている。
 恋心と別離の覚悟が綯い交ぜになり、言葉がこぼれた。

「で、デート~! ヤキヤマボニーランド~」

 一度だけでも手をつないで歩きたかった。でも、さよならだね。

「明日だ。ヤキヤマでも、ネズミーランドでも、どこでも連れてってやるさ」
 父さんそっくりな物言いに悲しくなる。酔っ払いの約束は、一度も守られた事はなかった。
 ああ、どうやったら彼は身体を離してくれるの?

「はあはあ。テッちゃん、コンドーム。コンドームがないよ……」

 探す間に、トイレまで走れるだろうか。だが彼は身体を離さず蜜壺に指を差し込んできた。熱い息が耳に吹き込まれる。

「そんなの必要ないだろ。すぐに孕ませてやるからな」

 だ、誰か助けてー!
 私の股間はもじゃもじゃ、ブラとパンティは色気のない紺色。流血とアルコールと汗の充満した寝室に、強引な酔っ払い。いくら大好きな相手でも、初体験がこれじゃあんまりだよ~。
 ベッドサイドの時計は二十二時半過ぎ――。注射してから随分たった。まだ酔いは覚めないの?

「テッちゃん、聞いて!」

 だがマッチョ探偵は指を更に奥へと侵入させて、探険している。柔らかな蜜路をゆっくりと確かめるようにかき回され、羞恥で頬が熱くなった。いつもは素っ気ないテッちゃんが、今夜はどうしちゃったの?

「きついな……」
 くちゃくちゃと卑猥な水音がしている。ああ、そんなふうに敏感な芽を親指で擦らないで……。

「お願い、私を行かせて……」
 仰いで懇願したら、荒い鼻息を吹きかけられた。

「ああ。何度でもいかせてやるさ」
 何度でも? 一度でいいんだってば。もう一本の手がブラからこぼれた乳首を摘まんだ。

「違うの。外へ出してってこと!」
「ああ? こはるぅ、お前は俺の子供が欲しくないのか?」

 不機嫌なマッチョ探偵は愛撫を止めて、私を仰向けに転がした。うわぁん。私はボールじゃないぞ~。
 
「こ、こども?」
「くそ。出ちまいそうだ」

 ボクサーパンツをズリ下げたテッちゃん。生まれて初めて遭遇した勃起に衝撃を受ける。
 何あれ、私の腕より太いの? どうしよう、絶対に痛いじゃん。ダメダメダメ~!
 恐怖で閉じた私の膝頭を、充血した彼の眼が捉える。だが、パカーンと勢いよく左右に開脚させられてしまった乙女の私。彼の手が添えられた欲棒が付け根に近づいてくるのを、震えながら凝視した。

「テッちゃん、ストップ!」
「うっ」
 ドクドクドクドクッ!
 生温かい何かが、股間にかかった。
 ドサリ。刈り上げ頭がむき出しのお腹に落ちてくる。

「!」
 うつ伏せたテッちゃんの背後には、見知らぬ中年女性が立っていた。

「あなたはセックスを拒否していたので、気絶させましたよ。よかったかしら?」
「あ、あなたは誰……?」
「私は彼の同僚で、相沢と申します」

 ベッド脇に立つ人物の声は、凪(なぎ)のように穏やかだ。特徴のない目に普通の鼻と唇。そして短い黒髪。典型的な中年の日本人女性だ。だが、服装だけがこの場にそぐわない。彼女は暗闇に溶け込む黒いジャージ姿だった。

「なぜ、テッちゃんの部屋に入ってこられるの?」

 やはりおかしい。壁掛け時計はもうすぐ二十三時。ドアは自動で錠が下りていたはず。
 相沢と名乗った女性が近づいて、テッちゃんへ手を伸ばしてきた。もしや、彼を狙っているの?

「危ない!」
 私は下半身の状態を忘れて、うつ伏せのテッちゃんを庇(かば)った。正体不明の女が柔らかく微笑む。

「さあ、彼の命を救いたければ、私とおいでなさい――」

 ちょっ。一体どうなっちゃうの――?
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