【完結】探偵屋の恋女房〜ヤクザのお抱え探偵と下町娘の、昭和チックな幼なじみLOVE

桐乃乱

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最終章

【一】小春―お披露目パーティーのビックリ発言 ②

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 全ての招待客が揃うと、テッちゃんに促されて前にでた。
「皆さま、本日はお忙しい中をお越しいただき、心から感謝申し上げます。このスタジオは女性たちが楽しく生活できるように、お手伝いをする場所です。まだまだ未熟な面もありますが、どうぞよろしくお願いいたします」
 パチパチパチパチ。パチパチパチパチ。
「それでは、乾杯の音頭をお願いします」
 テッちゃんと私がお願いしたのは、もちろん龍青会組長だった。蓮さんがネクタイ姿なのはレアらしい。そういえば出前を配達すると、いつもYシャツの襟ボタンが開いてたっけ。
「ご存じの通り、うちの嫁さんには不自由な生活をさせてる。ここで皆の奥方と楽しく過ごしてもらえるとありがたい。小春ちゃん、よろしく頼む」
 組長さんに頭を下げられてビックリ。
「それじゃ、『キッチンスタジオ・小春亭』の繁盛と、小春ちゃんの安産を願って、乾杯!」
「「乾杯!」」
 ん? 安産?
 カチン。カチン。
「「安産ー⁉」」
 組長、なんでバラしちゃってるのー⁉
「やったな、テツ!」
 若頭がテッちゃんの背中をバンバン叩いてる。あ、痛そう。
「テツさんも俺らと仲間っすね!」
 七緒さんの旦那さんが小躍りしている。
「ほら、テツ。飲めよ!」
 若頭ってば、なんでビールを勧めるのー。体質知ってるでしょー!
「俺は警護中ですから。気持ちだけいただきます」
 ふう。なんとかテッちゃんが回避してるぞ。酌攻撃から気を逸らさねば。
「皆さま、どうぞお召し上がりください」
 テーブルクロスがかけられたキッチンテーブルや作業台には、私とリエママが作った料理が並んでいる。
「うまそうだな」
「いただこうか」
「会長、私が取りましょう」
「蓮(れん)さん、お肉が美味しそうだよ!」
「初(はつ)果(か)ちゃん、ケーキがあるぞ」
「ほほほほ。蓮さんは奥さまに首ったけね」
「俺だって負けてないぜ、蘭」
 会長夫妻や組長夫妻、若頭夫妻らが移動していった。やれやれ。
「本当は安定期に入るまで内緒にするつもりだったのに……」
「小春、すまん。俺と親父が話しちまった」
「小春ちゃん、ごめんなさい!」
 頭を下げる鉄平パパとテッちゃん。
「嬉しくて安部一族にも知らせちゃったのよ。ごめんなさいね」
 家族に喜んでもらえて、私は果報者だよ。
「ううん。いずれは分かる事だから。ビックリしただけ」
 まさか組長さんにプンスカする勇気なんてないもんね。
「小春ちゃん、おめでとう。予定日はいつなのかしら?」
 英子さんがズバリ聞いてきたぞ。夫の高松氏は笑いをかみ殺しているけど、なんでかな?
「来年の四月二十一日です」
「二十一日……。体調に気をつけてね」
「ありがとうございます」
 英子さんはションボリと肩を落として食べ物の方へ行ってしまった。歓談しながらキッチンスタジオの設備やキッズコーナー、女性の身体に優しいソファーセットなどを紹介した。テッちゃんは室内外の防犯カメラや探偵事務所に繋がる非常階段などのセキュリティー面を男性陣に説明し、納得してもらえたようだった。初果ちゃんの送り迎えは相沢さんが担当するとか。七緒さんは体調を見て、明彦さんが車で送迎することになった。
 ちなみに、佐竹明彦さん宅はテッちゃんの実家と五十メートルしか離れていない。
「やっぱり絶品親子丼は最高だな!」
 わっはっはと豪快に笑う会長に褒めてもらった。
「このパーティー用オードブルもホテルで出せるレベルだわ」
 小夜子夫人の言葉に、蘭ママや女性達が頷く。
「幼い頃から義母(はは)に教えてもらったおかげです」
「小春ちゃんの努力のたまものよ~」
 私がリエママに肩を抱かれてる所をテッちゃんがスマホで撮影していた。
「そういえば、サダが店で絶品親子丼を提供したいと申し出てるんだが。小春ちゃん、考えといてくれよ」
 蓮さんのビックリ発言に皆が飛びついた。
「それいいな!」
「いつでも『定(さだ)』で食べられるなんて、最高~。明彦さん、一緒に食べに行こうよ!」
 七緒さん、つわりは大丈夫なの?
「それじゃメニューは『小春亭の絶品親子丼』にするといい」
「会長、ナイスネーミングっすね!」
 明彦さんも気が早いぞ。
「加藤弁護士に相談するといい」
 テッちゃんまで乗り気なの?
 客人達の期待に満ちた眼差しに戸惑ってしまう。屋代亭が閉店し、本音はすごく寂しかった。料理教室で細々と伝えていけたらと思っていたけれど、違った道を提示された。
「急ぐことはない。ゆっくりと考えたらいい」
 テッちゃんは決して私の考えを疎(おろそ)かにしない。私は大きな手をギュッと握り返して頷いた。
 その夜もテッちゃんに背後から抱きしめられて眠った。
 私もマッチョ探偵を大事にするね……。
 ピンポーン。翌日、自宅のチャイムがなった。
「こんにちは、小春ちゃん!」
「突然ごめんなさい!」
 英子さんと七緒ちゃんが紙袋を抱えて立っていた――。
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