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第2章 二人の誤算
夜明けの結合 i(William)
しおりを挟むその日もどうにかいつも通りに出仕したウィリアム。
彼は昼過ぎになると敷地内のひと気のない場所にある日当たりの良い長椅子に腰掛けて、ぼんやりと空を仰いでいた。陽の光が眠気を訴える目に刺さって染みる。
見上げた空はセリーナの瞳のように青かった――
昨夜(正確には今朝だが)は、ものすごい発散してしまい、すっかり不満も憂いも無くなったかのように感じられたが、現実は何も変わっていない。目の前には御し難い問題が立ち塞がっていた。
日々の鍛錬では条件反射のようにノルマをこなしている内に、次々と限界だっと思っていたところを追い越すようになっていた。
能力の形態から見た適応性を知り、応用する訓練などもあり興味深い。実践することで緻密性も高められている……そこまできてしまっては、もはや脱落の道は無に等しい。
そもそも殿下には自分を手放す気が全く無いように思われた。それは自らも研修の場に趣き、時には参戦する姿勢からも読み取れた。
期待されている……そう思えば悪い気はしなかった。自分のこの能力を発揮してみたいという欲もある。
このまま行けば、数カ月後には異動の指示が出るのだろう。そしてまたセリーナと離れ離れになってしまう……
しかも今までのような手紙のやり取りができる遠距離恋愛ではなく、ある日突然姿を消した所在不明の相手を待ち続けるという想像恋愛である。
事情を知ってる僕だって辛いのに、知らされなかったセリーナは一体どれほどの衝撃を受けるのか……想像するだけで胃が痛む。罪悪感に押し潰されそうだ。
きっと最初は何があったのかと心配してくれるのだろう。
毎日不安で、心が休まらなくなって、もしかしたら体調を崩してしまうかもしれない。
そして理不尽な僕の行いに怒りを覚えるのだ。裏切られたと思われて、憎まれるようになってしまうかもしれない……
あるいは、長い時間が経つにつれて諦められてしまったり、どうでもいい人物に成り下がってしまったり――考え出したらきりがない。
セリーナも絶望感を味わうのだろうか。
自分だったら半狂乱になると思う。現実を受け入れられなくて、もしかしたら頭がおかしくなるかもしれない……
(やめよう……やっぱり僕には無理だ)
精神衛生上に大変良くない影響を与える考えを切り捨てて、ウィリアムはセリーナに事情を伝える決心をする。
もちろん話せる内容には限りがあるが、言える範囲で事情を伝え、待ってて貰えるように努めたい。
万が一、セリーナを失ったら、それこそ生きてる意味も分からない……
僅かな昼休憩を終えて執務室に戻る。
ウィリアムは上司が戻ってきた時に、開口一番で明後日の休暇を願い出ようと考えていた。ところが、その上司から先に話があると呼び出される。何かと思えば〝例の場所への呼び出し〟という内密の指示を含んだ書類を受け取った。
どこまで分かっているのか、手渡す上司は頷くのみである――内容までは判らなかった。
確かに自分も話すべきことがあった(セリーナへ伝えられる事柄の範囲について確認したいことがあった)が、その矢先にこれだ。
今までの経験から真っ先に疑ってかかる癖が付いていた。
しかも、わざわざ昼間の時間帯――急用であると匂わせるタイミングで呼ばれるなんて……
(嫌な予感しかしない……)
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