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国王は女魔王と相思相愛になりました。
だって俺達は(私達は)相思相愛だから
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リツシウン王国国王ウスイは、大きなため息をついた。賽は投げられた、と思った、あらためて。これからのことを考えると、急に不安を感じてしまった。だが、傍らに、半分心配そうに、半分嬉しそうにして見つめている、長身で見事な長い黒髪の妖艶さも漂わせる美しい、若い魔族の女、というより女魔王である、を見て、彼女と共に生きるんだ、絶対離さない、と強い気持ちに襲われて、思わず彼女を抱きしめた。
「直ぐに、再洗礼を行う。準備せよ。」
大広間の軍人、貴族、官僚、側近、聖職者達から喜びのどよめきがあがり、それは城内に広がり、さらに王都全体、国全体に広がっていった。
ウスイがツチイと出会ったのは、彼が最初に幽閉というか追放された辺境の城でのことだった。
子供心に、突然の境遇の変化と周囲の人間の態度の変化に気づき、恐怖を感じたものだ。自分が連れてこられた城がおとぎ話に出て来る悪魔や化け物が巣食うところのように見えて泣き叫んだものだった、侍女達を困らせた、泣いてばかりいる王子様は。
彼がこの城に送られたのは、王太子の地位を失ったからだった。何故かというと、王妃となっていた聖女に子供が生まれたからだった。彼は、国王の子供ではなかった。国王の兄がの子供であり、国王にとっては甥にあたる。何故国王に彼の父がなれなかったのかというと、彼の妻が再洗礼派の信徒であることを守り続けたからであり、その妻と彼の父は離婚しようとしなかったからである。つまり彼は、その妻と離婚して聖女と結婚しなかったのである。聖女を受け入れるために、三位一体教会の信徒となった王家としては、聖女と結婚しない上、再洗礼派の信徒であってはなおさらである、だからウスイの父は国王になれなかったのである。
では、その夫婦の子供である彼が王太子となったのは、国王と聖女との間に子供がいなかったからである。そして、子供ができたから、彼は王太子ではなくなったわけであり、消えてもらう、殺すことは教皇も、聖女も反対したから免れたのだが、その代わり辺境の城に送られたのである。そこは、再洗礼派の信徒だけの地であり、聖女による聖結界の外側で魔獣や魔族が度々侵入しているところだった。
時折泣きながら城内を一人歩いていると、やはり泣いている少女と出会った。子供から見ても、平民や下級貴族とは思えない感じだが、見慣れない、異国のものかと思われる装いの、巫女家とな黒色の髪の美しい少女だった。彼よりも幼い子のように思われた。出会った瞬間に、この子が自分と同様に不幸な環境に放り込まれ、悲しんでいる、孤独でいると感じて、彼女を励まさないといけない、守ってあげねばならないと思った。そして、初めて自分から他人に自分の意志で声をかけた。彼を一目見て彼女は泣き止んだ。これがリツシウン王国国王ウスイとターイカン国女魔王ツチイとの出会いだった。
彼女は、父魔王が別の、対立するミーナ国の魔王に敗れ、行方不明、僅かな家臣と落ちのびてきていたのである。この城は、かつて魔族と人間、性格にはミーナ(魔王)国とリツシユン王国との戦いの場であり、拠点を奪い合った名残りなのである。聖結界が張られ、その後、魔界ではターイカン(魔王)国がミーナ国を押し返し、この国があまり人間界への侵攻に関心がなかったことから、両方から忘れられ半ば廃墟となり、ウスイとツチイの側は広い城塞の一部ずつを使っていて、互いに気が付いていなかったということだったのである。
その後ウスイは、聖女の子供の死去で王太子に返り咲き、この城を後にしたが、その少し前に、ツチイも父の無事が判明し、その地に向って旅出だったのである。二人は一旦別れた。このままであったなら、2人は、幼い初恋として全て忘れてまっていたであろう。
が、2人は偶然にも再会するのである。
聖女が、また妊娠したからだった、ウスイが辺境に事実上追放されたのは。12歳になっていた彼は、流石にことの成り行きを理解することができた。そして、泣くこともなかった。思い出の、廃墟に近い城塞、かつて2年間過ごしている間に多少改築、修繕、手を入れていたところも朽ち果てていて、またゼロから、完全にゼロからというわけではなかったが、何とか住むためには、我慢と忍耐と少しづつ手を入れていくことしかなかった。それでも、彼には、かつての思い出の場所を巡り歩くという楽しみがあった。ここで遊んだ、ここで喧嘩した、ここで転げ落ちて泣いた、彼女ととも泣いたというところを。
「ああ、こんなに低い・・・。あの頃はずいぶん高い所だと思ったものだが・・・。」
などと独り言をつぶやいていた時、後ろから、
「お前は?」
との声。振り返ると、10歳くらいの黒色の髪の美少女が立っていた。ツチイだった。彼女は、ミーナ(魔王)国との従属国となって、何とか独立を保ったターイカン国魔王がミーナ国の王族の女性を正妃として娶ることになったことから辺境に幽閉といえるような処遇をうけたのだった、色々な面で邪魔者であるからだった。
二人にとっては、そんなことはどうでもよかった。再会できたということで十分だった。互いの立場、状況がある程度わかるようになっていた二人は、より互いを知るため、城塞の中の互いの領域を行きかうだけでなく、家臣達の目を盗んで外に出るようになった。そこで二人は、今まで魔族と人間が互いに知らなかった、知ろうとしなかった相手の姿を垣間見たのである。
その2年後、ウスイは聖女の子供が再び幼くして死んだことにより、ツチイはミーナ国の王族と婚約したことにより、その地を去ることになった。
「直ぐに、再洗礼を行う。準備せよ。」
大広間の軍人、貴族、官僚、側近、聖職者達から喜びのどよめきがあがり、それは城内に広がり、さらに王都全体、国全体に広がっていった。
ウスイがツチイと出会ったのは、彼が最初に幽閉というか追放された辺境の城でのことだった。
子供心に、突然の境遇の変化と周囲の人間の態度の変化に気づき、恐怖を感じたものだ。自分が連れてこられた城がおとぎ話に出て来る悪魔や化け物が巣食うところのように見えて泣き叫んだものだった、侍女達を困らせた、泣いてばかりいる王子様は。
彼がこの城に送られたのは、王太子の地位を失ったからだった。何故かというと、王妃となっていた聖女に子供が生まれたからだった。彼は、国王の子供ではなかった。国王の兄がの子供であり、国王にとっては甥にあたる。何故国王に彼の父がなれなかったのかというと、彼の妻が再洗礼派の信徒であることを守り続けたからであり、その妻と彼の父は離婚しようとしなかったからである。つまり彼は、その妻と離婚して聖女と結婚しなかったのである。聖女を受け入れるために、三位一体教会の信徒となった王家としては、聖女と結婚しない上、再洗礼派の信徒であってはなおさらである、だからウスイの父は国王になれなかったのである。
では、その夫婦の子供である彼が王太子となったのは、国王と聖女との間に子供がいなかったからである。そして、子供ができたから、彼は王太子ではなくなったわけであり、消えてもらう、殺すことは教皇も、聖女も反対したから免れたのだが、その代わり辺境の城に送られたのである。そこは、再洗礼派の信徒だけの地であり、聖女による聖結界の外側で魔獣や魔族が度々侵入しているところだった。
時折泣きながら城内を一人歩いていると、やはり泣いている少女と出会った。子供から見ても、平民や下級貴族とは思えない感じだが、見慣れない、異国のものかと思われる装いの、巫女家とな黒色の髪の美しい少女だった。彼よりも幼い子のように思われた。出会った瞬間に、この子が自分と同様に不幸な環境に放り込まれ、悲しんでいる、孤独でいると感じて、彼女を励まさないといけない、守ってあげねばならないと思った。そして、初めて自分から他人に自分の意志で声をかけた。彼を一目見て彼女は泣き止んだ。これがリツシウン王国国王ウスイとターイカン国女魔王ツチイとの出会いだった。
彼女は、父魔王が別の、対立するミーナ国の魔王に敗れ、行方不明、僅かな家臣と落ちのびてきていたのである。この城は、かつて魔族と人間、性格にはミーナ(魔王)国とリツシユン王国との戦いの場であり、拠点を奪い合った名残りなのである。聖結界が張られ、その後、魔界ではターイカン(魔王)国がミーナ国を押し返し、この国があまり人間界への侵攻に関心がなかったことから、両方から忘れられ半ば廃墟となり、ウスイとツチイの側は広い城塞の一部ずつを使っていて、互いに気が付いていなかったということだったのである。
その後ウスイは、聖女の子供の死去で王太子に返り咲き、この城を後にしたが、その少し前に、ツチイも父の無事が判明し、その地に向って旅出だったのである。二人は一旦別れた。このままであったなら、2人は、幼い初恋として全て忘れてまっていたであろう。
が、2人は偶然にも再会するのである。
聖女が、また妊娠したからだった、ウスイが辺境に事実上追放されたのは。12歳になっていた彼は、流石にことの成り行きを理解することができた。そして、泣くこともなかった。思い出の、廃墟に近い城塞、かつて2年間過ごしている間に多少改築、修繕、手を入れていたところも朽ち果てていて、またゼロから、完全にゼロからというわけではなかったが、何とか住むためには、我慢と忍耐と少しづつ手を入れていくことしかなかった。それでも、彼には、かつての思い出の場所を巡り歩くという楽しみがあった。ここで遊んだ、ここで喧嘩した、ここで転げ落ちて泣いた、彼女ととも泣いたというところを。
「ああ、こんなに低い・・・。あの頃はずいぶん高い所だと思ったものだが・・・。」
などと独り言をつぶやいていた時、後ろから、
「お前は?」
との声。振り返ると、10歳くらいの黒色の髪の美少女が立っていた。ツチイだった。彼女は、ミーナ(魔王)国との従属国となって、何とか独立を保ったターイカン国魔王がミーナ国の王族の女性を正妃として娶ることになったことから辺境に幽閉といえるような処遇をうけたのだった、色々な面で邪魔者であるからだった。
二人にとっては、そんなことはどうでもよかった。再会できたということで十分だった。互いの立場、状況がある程度わかるようになっていた二人は、より互いを知るため、城塞の中の互いの領域を行きかうだけでなく、家臣達の目を盗んで外に出るようになった。そこで二人は、今まで魔族と人間が互いに知らなかった、知ろうとしなかった相手の姿を垣間見たのである。
その2年後、ウスイは聖女の子供が再び幼くして死んだことにより、ツチイはミーナ国の王族と婚約したことにより、その地を去ることになった。
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