聖女を追放した国は悲惨な運命が・・・なんで悲惨な状態にはならないのよ!

転定妙用

文字の大きさ
15 / 65
国王は女魔王と相思相愛になりました。

二重王国の建設に向けて

しおりを挟む
 聖女達の出迎えに頭を深くさげ、感謝を示しながらもウスイ王太子は、それと時期を同じくして、ミーナ国の使者の許しを受け、即位するツチイは頭を下げながらも、心に同じ理想を掲げていた。

 ウスイを追って、新国王に即位した男と彼を支持した幹部クラスは家族ともども、海外に逃亡していた。彼らの領地の大部分は没収したものの、その一部と地位を親族の者に与え、家名を存続させた。その他の参加者には、教皇の二度の教書が届けられてた時点で領地に戻った者は叱責のみ、償い金の自発的な提出を促したが、と、それから時間を経るに従い領地没収の比を増やしていったが、基本的に処刑はなかった。が、ウスイの家臣、使用人、その他の支援者の殺害、暴行、略奪等に対しては、厳罰でのぞんだが、それも、その家族のみに限定、赤ん坊も例外ではなかったが、したから、教皇をはじめ、思った以上に寛大な措置に留めたことで安心し、彼への評価を高めた。

 その後、度々、彼は辺境に遠征、魔族の征伐を起こすようになった。
「聖女様の夫として恥ずかしくない者になりたいという思いからであろう。思い込みすぎとはいえ、感心だが、民の負担も考えるように。」
との教皇の思いを多くの者達が同じくしていた。

 実はそうではなかった。彼は、ツチイとともにミーナ国壊滅のための戦いを進めるとともに、二重王国建設のための実験をしていたのだ。
 ミーナ国の魔王軍は従属関係を破棄したターイカン国に侵攻したものの、別の方面から侵攻するリツシユン王国軍に苦戦、そのうち、反撃してくるターイカン軍に押されていく。どちらかに兵力を集中して、そちらを撃破した後に全軍を他の方に集中して・・・と当然のことを考えるのだが、それが失敗の連続となり戦況はますます不利になっていった。

「申し上げます。4天王様方、全員戦死、副魔王様も同じく戦死。戦姫様も戦死されました。もはや、闘っているのは、本隊のみ。」
 その報告に、魔王ミーナ7世は絶望するより、怒り狂った。
「どういうわけだ。あのような小娘に、どうして、こんなことになったのだ?」
 起死回生の、陣頭指揮による総突撃、自信はあった。なのに・・・と、狼頭の魔王は怒鳴った。
「人間の王がともにいると・・・。」
「それがどうしたというのだ?」
 もっともな疑問だった。

「愛の勝利よ。分からない?」
 目の前に現れた女魔王ツチイは、信じられない魔力を感じさせていた。
「ば、馬鹿な・・・この魔力は?こんな力があるはずは・・・。」
「だから、愛の、といったでしょ?狐顔の愛人女の後をさっさと追いなさい。」
「くそー!」
 なんだ、力が入らない、と一瞬感じた後、彼の記憶は消えた。
「もう~、大丈夫だったのに~。」
「ごめん、ごめん。つい、心配になっちゃって・・・。」
 ツチイとウスイは、互いに馬上で、体を伸ばして唇を重ねていた。それは、あの日の一か月前のことだった。

 戦いの第一幕は終わった。
 辺境の地、聖結界の外の地での統治、農業をはじめとする産業の振興、農業や牧畜を行っているとはいえ、あまりにも、ウスイの目には粗放的な、おおざっぱな、非効率的な魔族の地、ターイカン魔王国のそれの改善などを行ってきた、並行して。それも、それなりに進んだ、自信が持てるくらいに。
 国造りの第一幕も終わった。
 後は、ウスイにとっては愛するツチイといるための第二幕を上げるだけだった。上げなければならなかった。彼は、聖女ケイと結婚してはならなかったからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

処理中です...