聖女を追放した国は悲惨な運命が・・・なんで悲惨な状態にはならないのよ!

転定妙用

文字の大きさ
16 / 65
国王は女魔王と相思相愛になりました。

魔王が教会で洗礼を受ける奇跡?

しおりを挟む
 聖女ケイとの婚約を破棄し、彼女を偽聖女して断罪、彼女と聖女に連なる者達の追放を命じたウスイは、彼女達が去るのを待って、すぐに、王都の再洗礼派総教会に向かった、ツチイを連れて。もちろん家臣達も付き従っていた。

 彼が、実母に連れられ洗礼を受けた総教会は、この数十年間、修理も十分できず、外観も汚れ、朽ちかけさえし、内部はいたるところほころびが見えているほどだった。
 それでも、国王が再洗礼をしに訪れる、それは国王が、王家が再洗礼教会に、その信徒として復帰するということであるから、どこからそれを知ったのか、王都の民衆が駆け付けてきていた。

 国王の再洗礼を後方で押しあいへし合い感激のうちに見ていた民衆は、国王と傍らの女性が洗礼を終えると大歓声を上げた。その直後、
「我が傍らにいる者は、我が妻ツチイである。彼女は魔族、魔王である。そして、再洗礼教会の信徒になった。つまり、魔族も再洗礼派教会の信徒になったのである。神の祝福は彼女らにも与えられる。今ここに、再洗礼派教会の信徒であるリツシユン王国とタイカ―ン魔王国は二重王国となり、ともに共存共栄する道を選んだ、いや、それが神の意志である。」
 なんとなく、一時静まり返っていた民衆も意味することがわかり、大きな歓声と祝福の声を上げた。そして、彼ら自身ですら、王都にこれだけの再洗礼派教会の鐘があったのかと思わせるほどの数の鐘が王都中に、その清楚な、美しい響きを王都中の人々の耳に届けたのだった。
 七十年間、ひたすら隠れて、細々とおのれの信仰を守り続けた人々は、大手を振ってその信仰を、真の神への経験な祈りを捧げられる喜びを感じていた。すぐに自分達の教会の修理、清掃を始めるのだった、自主的に。

 ツチイ、女魔王である彼女は、ウスイがひたすら自分の手をひいて、かけ続けているようで、それについて行くのがやっとだというように思えてならなかった。

 二度目に出会った時、既に自分達の立場、関係がわかるようになっていて、互いの事情も語り合い、理解しようとして、そして理解できた。お互いに、相手も大変な事情を抱えていることを知り、思わずため息をついたものだ。魔界、彼女の国と彼女が知るその周辺の事情、人間・亜人界、ウスイの国とその周辺国、宗教の関係の事情など話は尽きなかったが、一段落すると二人でため息を、それは大きなため息をつくことを繰り返したものだった。そのうち、ふとツチイは、本当にふとっだった、思いついた時にはいい考えだとは思ったのは確かではあったが、
「私達が手を組んで、お互いの敵と戦ったらどうかしら?魔族と人間が組めば、無敵じゃない?それに、あなたと私が組めば・・・。」
「?・・・?」
 彼女の言葉に、彼は目を丸くしてしまった。しばらく言葉が出てこなかった。 
「そうすれば、2人で一緒にいられるじゃない?私と一緒にいるのは嫌?」
 わざと拗ねてみせた。それは10歳くらいの少女、人間も魔族も大差がない、とは思えないほど、妖艶で、それでいて切ないものを感じさせた。それは、人間の目から見ても、かなりの美少女であるツチイであるから当然だったかもしれないが。
「もちろん僕だって一緒に、ずっといたいよ・・・ああ、そうだ、そうすればいいんだ。」
 彼は、目を輝かせて、叫ぶように言った。
「?」
 彼の言葉と反応に、今度は彼女の方が目を点にすることになった。

 それから、彼は彼女とともに、互いの敵を協力して打ち破るか、とても熱心に相談するようになった。この頃の二人では、知識も経験も不足だったから、考えることも、童話や遊びに毛が生えた程度でしかなった。それでも、彼は彼女が驚くほど真剣に考えようとした、考えているように彼女には思えた。

 彼には、他人の魔力を高める力があった。彼はある時、偶然からそれを知った。二人で試すと、相性がいいのか、2人の間では、それが飛躍的だということが分かった。それもあっての彼女の発言だったのだが。
 さらに強いとは言えないが、彼にも聖女のような力があることもわかり、それを応用して聖結界を無効にしたり、ツチイをスムーズにその中に導きいれることもできることもわかった。

 二人は、二人の計画は中途半端のまま、別れることになったが、手紙のやり取りが続いた。そのルートを二人は確保していた。彼の手紙は、彼女への思いと自分の近況を知らせる内容の次に、あの計画を掘り進めていることがわかる、そして、彼女と謀議を巡らす内容が占めた。
 戸惑う彼女も次第に深化するその内容に、
「やれるかもしれない。そして、一生ともにすごせるかもしれない。」
と思うようになり、自分も負けてはいられないとせっせと準備を始めることなった。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

処理中です...